梅雨入りを前に真夏日、猛暑日が到来。放課後児童クラブ熱中症ゼロ実現のために国は臨時の補助金を設定しよう
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。本州の一部が梅雨入りしていますが、梅雨より先に真夏日、猛暑日が到来しています。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)のエアコン、空調機器の整備に不安があります。国は予算を惜しまず、エアコン整備に臨時かつ緊急の補助金を設定しましょう。何度も取り上げているテーマですが、重要なことですから、何度でも繰り返し訴えているのです。
※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。
<6月ですでに真夏>
きょう6月14日は全国各地で真夏日、猛暑日になると予報されています。日本気象協会のウェブサイト(tenki.jp)によると、前橋と熊谷で気温35度、東京でも32度の予報。京都、福知山も35度で、大阪33度、奈良34度です。東北地方でも軒並み35度に迫る予報になっています。この気温の高い状態が今後もずっと続くということではないでしょうが、梅雨があければこのような暑さは続きますし、何よりも、たった1日の猛暑、気温上昇でも、熱中症になってしまう危険性がもちろんあります。
私のような50歳を超える世代には、気温が30度を超えるのは7月になってから、そもそも30度を超えるという日は「すごい暑い」という記憶の方が多いでしょう。まして35度ともなると、「砂漠だよ!」と子ども同士で話題になったものです。それが今では30度なんて当たり前、35度も普通によくあることで、37度だ、38度だというニュースが夏になると連日、伝えられます。涼しいというイメージがある北海道や東北地方ですら同じです。(もっとも、盆地であれば北海道でも容易に真夏日になることは以前から変わりないのでしょうが)
国会も地方議会も、だいたいのところ、どっかりと居座ってああだこうだと言うのは年配の方々が多いですね。そのような方々の記憶に基づく夏の暑さと、今の時代の夏の厚さは、もうまったく違うということを、それら「予算を決められる立場」にある方々が、しっかりと認識しているのでしょうか。それが私には大いに不安です。「夏は暑いもんだ。暑い中、遊んで子どもはたくましく育つんだ」という考えが残っているとしたら、「子どもを殺す気か」と、私は言います。
日本の夏の暑さはもう1970年代、1980年代の夏ではない。湿度の高さとあいまって、「少しでも対策を誤ると、容易に死に至る」という「災害」である認識をしっかりと持つことが必要です。
<軽視されてやいないか?放課後児童クラブの空調>
かつて、空き家やボロい民家を借りて児童クラブにしていた時代は昔話になりつつあります。エアコンは高嶺の花で、保護者が寄附をしてくれた中古のエアコンを取り付けて使用していた(私にもその経験がたくさんありますが)ことが多く、なかなか新品のエアコンを取り付けることができなかった時代も、次第に昔話になりつつあるようです。多くの地域で児童クラブの設備に行政がそれなりに努力をするようになり、小学校の建物の一部を転用したり専用施設を建てたりと、児童クラブの設備投資には、以前に比べて改善された点はあります。もちろんそれは、過去と比較して「改善されてきた」ということであって、「現状に適切などうか」という観点でみると、不安なことだらだけです。
近年、新築される児童クラブは24時間換気で適切に室温を管理する設備が整っており、エアコンも天井埋め込み型や吊り下げ型といった、馬力の高い機器が使われることが増えていると思われます。そのようなエアコンは強力ですが、ここに立ちはだかるのが「大規模」という壁です。児童クラブは設備面で以前と比べて改善されてきてはいますが、児童クラブに対する子育て世帯のニーズはずっと右肩上がりで、多くの児童クラブでは、子どもがギュウギュウ詰めになっています。おおむね40人という適正規模を超えて子どもを入所させているクラブはまったく減っていないことは、国の調査でも明らかです。そもそも、40人にしたって、体温を発する人間がそれだけ50~60平方メートル程度のスペースに滞在していれば、よほど強力なエアコン、空調設備が備わっていなければ、夏場の室温はあっという間に30度近くになります。
つまり、大規模であれば格別、大規模でなくても40人前後の適正規模といったって、エアコンや空調機器の能力不足が心配ということです。外気温が高くなればなるほど、冷房の能力も落ちます。備え付けのエアコンや空調機器では能力不足なのです。児童が登所する前、職員が数人しかいない時間帯と、子どもたちが登所してきて何十人もクラブ内にいる時間帯とでは、エアコンの効き具合が異なるのは当たり前です。この時期、多くの児童クラブでは、子どもと職員が「暑い!ムシムシする!」と言いながら、不快な気分で過ごしているのです。
そのあたり、綿密に配慮してエアコンや空調機器の設備投資をしている市区町村や事業者が、どれだけあるでしょう。北海道や北東北など、これまではエアコンは必ずしも必要な設備ではないという認識があった地域でも、もはやエアコンは必須の設備です。
SNSでは、この数日の暑さに対して「エアコンが壊れている」という放課後児童クラブの関係者と思しき方からの投稿がありました。修理は無事に完了したのでしょうか。エアコンが壊れたまま児童を受け入れるということは、児童への安全配慮義務に違反します。もちろん職員に対しても、快適な職場環境の形成という労働安全衛生法の趣旨に背く状態になります。健康を損ねればそれこそ違法です。
2024年の夏も猛暑の予報になっています。今まで、ギュウギュウ詰めの児童クラブで熱中症の犠牲が出なかったことは偶然だと認識しましょう。国は、臨時に、緊急に、エアコン整備に使える、使い勝手の良い補助金を設定するべきですし、市区町村は予算化するべきです。もっといえば、補助金はそうそう簡単に設定されないのは当然で、それを待っていては子どもたちが熱中症のリスクにさらされ続けることですから、市区町村が独自にでも、エアコン整備、エアコン強化の補助金を設定するべきです。子ども(そして職員も、ですが)の命は絶対に守らねばならないのですから、その命を脅かす熱中症という危険を軽減するためにも、予算を惜しむべきではありません。いいじゃないですが、その補助金は、家電メーカーのみならず販売店や取り付けに従事する職人さんを含めて、しっかりと社会に還流されて経済を潤すのですから。児童クラブにじゃんじゃん投資して、国内経済を潤しましょう。
機器の設置だけではありません。エアコンや空調機器は、定期的なメンテナンスが必要です。掃除がしっかりできていないエアコンは能力が発揮できないだけでなく電気量も無駄に使います。エアコンの清掃、点検に必要な費用もまた、しっかりと児童クラブ側に補助してください。
<困るのは、児童クラブ室内だけではない>
夏場の児童クラブが困るのは、クラブの室内が暑くて不快、ということだけではありません。同じぐらいに困ること、クラブ職員が頭を抱えるのは「遊び場」の問題です。子どもの命を守るため、熱中症の危険がある状態で外遊びを長時間させることはできません。(もっとも、室温が高い状態で、室内遊びをしても熱中症の危険性は同じように高いのですが)
子どもたちがたくさん遊べる場が、夏場は減ってしまうのです。もちろん職員も工夫をこらして、例えば夏休みなど朝から子どもを受け入れている場合は、気温が高くなりすぎる前の午前中の早い時間に外遊びをさせることがありますし、逆に、日差しが傾いてくる夕方に集中して外遊びを行う工夫もあります。ただ、工夫には限度があります。朝でも夕方でも気温が下がらない日も、もちろんあります。また、今の時期のような6月の猛暑日は、太陽の高度が高く、地域によって異なるものの概ね、頭上高くから日差しが照り付けますね。これは、同じ面積あたりの太陽から受ける熱量が多いことを意味します。つまり、「頭や肩が熱くなる」(熱です。)のです。体温上昇を容易にもたらします。地面もまた、すぐに熱せられます。身長の低い子ども、しゃがんで何かしら遊ぶことが多い子どもにとっては、さらに熱中症の危険が高まります。
子どもたちが体を動かして遊べる場で、かつ、熱中症の危険が少ない場所が、必要です。しかしこれは本当に難しい。小学校や地区の公民館、センターなどの体育館やプレイルームを、児童クラブが使えるように市区町村が便宜を図ることが必要です。地域の人々も使う施設ですから、その点の調整を行政が行ってください。不足するようなら、そのような場所を行政が早期に増やしてください。または、民間の企業が提供しているスポーツクラブや文科系のクラブを利用できるように、その費用を補助してください。児童クラブ側も、地域にある空調が整っているスポーツクラブや文科系のクラブと提携して、子どもたちに、熱中症の危険を減らしつつ体を動かせ、かつ、スポーツやダンス、音楽、その他の娯楽を楽しめる機会を積極的に取り入れるよう、考えを改めましょう。「校庭や公園で遊ぶことが大事」という固定観念は、何の得にもなりません。
熱中症対策は、まずはエアコンの整備ですが、合わせて、「子どもたちが、どういう時間を過ごすことができるか」を考える契機にもなります。命を守りつつ、夏場の制約の多い季節をどう乗り切るか、子どもに関わる人たちの英知を結集しましょう。
そして議場にたくさんいる50代以上の方々、あなたたちの「夏」の感覚はもう時代遅れです。日本の夏はもう災害級の暑さであり、人間が熱中症で容易に死に至る危険性がある季節であるという認識を持ってください。命を守るための予算や制度を積極的に考え、打ち出してください。(むろん行政執行部、そして、こども家庭庁の方々も同じです。だいたいにおいて、真夏日の大規模クラブを訪れてみてください、どれほど過酷な環境に子どもたちが、そして職員がさらされているかどうかを知ってください。想像以上ですよ)
<おわりに:PR>
放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されます。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)になる予定です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。アマゾンでは予約注文が可能になりました!お近くに書店がない方は、アマゾンが便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)