市区町村のHPによる放課後児童クラブの情報提供で見えてきたことパート2。いくら何でも、ひどすぎますよ!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。全国の市区町村で行われている学童保育(正式には、放課後児童健全育成事業)の様子を知るために、各市区町村のホームページにアクセスして、そこから放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の情報を確認する作業を続けています。
先日は、驚きの内容を紹介しました。今回は、これまでで徐々に見えてきたことをご紹介します。
※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。
全国市区町村のHPを、五十音順で1つ1つ確認して、所管部署やクラブ数、クラブの運営種別(公設公営か、公設民営か、民設民営か)や運営主体(=事業者。企業や団体名)、指定管理者制度か事業委託か、また利用料金、開設時間などをチェックしています。4月5日時点で125の市区町村(千葉県いすみ市まで)、HPを見てみました。感想を言えば「本当に学童保育は、てんでんばらばら!」です。
なにがバラバラかといえば、「扱い」です。保育所は、設置が市区町村に半ば義務づけられているので、たいていのHPではそれなりに紹介されています。ですが、放課後児童クラブは、そもそも「任意事業」です。必要とする住民がいない地域では、設置することはないわけです。それは当然のことですが、設置していたとしても、HPでどれだけ情報を掲載しているかについて、本当にこれはもう、バラバラです。
そして、担当している部署も、呼び方も、本当にバラバラ。教育委員会だったり福祉系の部局の担当課だったり。児童クラブ、学童クラブ、学童保育所、育成室、何通りあるのでしょうか。それもこれも、「おそらく、学童保育が保護者主体で誕生して発展した地域」だったり、「保護者が作って運営してきたクラブを行政で引き受けた地域」だったり、「周辺の状況を見て行政が先にクラブを設置した地域」だったりで、歴史がきっと様々に異なっていることが影響しているのでしょう。
あっと驚いた地域では、「放課後児童クラブ」のページはあっても、何も文章が掲載されていない地域がありました。例えば静岡県伊豆市です。岐阜県池田町も、そうでした。そこまでではなくても、クラブ名の表記はしてあるものの、利用料金や開設日、開設時間について「各クラブにお問い合わせください」というレベルの情報提供に留まる市区町村は、ちらほら、見かけました。
児童クラブを利用するのはその地域の住民さんですから、その地域に住む人が、入所することになる児童クラブに問い合わせれば、必要な情報は手に入るでしょう。わざわざHPに掲載しなくても。いずれ入所に必要な書類も取り寄せるわけですから、その依頼と同時に聞けばいいですし、資料には利用の手引き等もあるでしょうから、それを見れば事足りる。そう考えて、市区町村の担当部署は、HPに詳細な情報を掲載していないのでしょう。
ですが、その考えであるとしたら、私は残念です。いくらなんでも、ひどすぎます。
・電話をして問い合わせなくても、HPを見る、確認することで情報を得ることができれば、知りたい側にとっては楽であること。(まして今は、電話をかけることが苦手、あまりしたくないという方もそれなりにいます)
・将来、その地域に住む可能性がある人が、事前の情報収集として児童クラブの様子を確認したいと思っているかもしれない。そのような人たちには、不親切な対応になっている。
・委託や指定管理者は当然、民設民営クラブに補助として運営費を交付している場合であっても、運営には、税金からなる補助金が交付されていることになります。国の考え方では、運営に必要な費用の5割、つまり半分は補助金を充てるとなっているので、収入の半分は税金である、とも言えます。納税者たる国民は、税金からなる補助金が投入されていることについて知ることができるのは当然です。どの事業者が、税金からなる補助金をもらってクラブを運営しているのかまで、明記するべきなのです。
つまり、私の考える、市区町村のHPにおける理想的な情報提供としては次の通りです。
・クラブの目指す役割と理念がしっかり説明されている
・クラブの正式名称を記載した一覧表がある(できれば、単位数も)
・担当している部署の明記がなされている
・利用料金、開設時間など使い勝手に関わる情報は必ず記載がある
・運営種別がはっきりとクラブごとに明記されている(公設公営、公設民営、民設民営)
・公設民営の場合は、事業者名と、民営化の手法(指定管理者か、事業委託か)が明記されている
・民設民営の場合は、事業者名と、委託なのか補助なのかの違いが明記されている。そもそも民設民営クラブもしっかりと一覧表に記載されている
・地域住民向けの必要書類が入手できる、あるいは入手先について分かりやすく記載されている
いま、多くの地域で、子育て世帯を呼び込もうと躍起になっていますね。文京区など特別区は人口がさらに増えてクラブが足りず困っているようですが、大都市への通勤圏でも、通勤に1時間前後の時間が必要な地域は、人口が減るのではないかと不安にかられ、なんとか子育ての充実をアピールして、子育て世帯の流入と、流出を防ごうと頑張っています。また、いわゆる地方にある自治体(町村が多いですね)には、自治体のHPとは別に「子育て応援」「移住・定住促進」のポータルサイト(テーマに関連する種々の情報を集めたサイト)を作成し、そこで児童クラブの使い勝手をアピールしようとしています。そこで、如実に差が出ています。丁寧に児童クラブの情報を提供して、移住や引っ越しを検討する人に参考になってもらいたいと思う自治体と、そうではない自治体の差が。
私がこれまでみた、たった125の地域だけですが、すでに特徴が浮き彫りになってきています。
・放課後児童クラブは子育て支援に必要な公共の児童福祉サービスだから、地域住民に、しっかりと情報を伝えたいと丁寧に掲載する地域と、そうではない地域
・子育て世帯に引っ越してきてほしいから、どういう放課後児童クラブがあるのか、どのような利用形態なのか、しっかり伝えたい、参考にしてほしいと考えている地域と、そうではない地域
なお、これは基礎自治体だけの話ではありません。広域自治体、つまり都道府県でも、放課後児童クラブに関する情報提供について、かなり大きな差があります。地域内すべての児童クラブを一覧表にして掲載している広域自治体と、単に放課後児童支援員認定研修の情報だけ掲載して、他は市区町村のHPを見て情報収集しなさいとしている広域自治体と、その落差は極めて著しいものがあります。私が見た中では福島県の情報提供は丁寧に感じました。そして東京都は、やはりレベルが違います。北海道も好感が持てる丁寧な情報提供の形態だと感じました。
考えを拡げれば、市区町村の行政執行部における放課後児童健全育成事業への取り組み、優先順位が、市区町村のHPでの表現につながっているですから、丁寧な情報提供をしている地域は、子育て支援にも熱心だ、と言えるのではないでしょうか。もちろんそれが、クラブの運営を営利の広域展開事業者に任せる、任せないの違いとはまったく関係していないのは確かでしょう。丁寧な情報提供をしていると私は好感を持った宮城県石巻市のHPですが、近年は急速に営利の広域展開事業者にクラブ運営を任せるようになっています。
まだまだこれから全国で1,500以上の市区町村のHPをのぞいていくことになるので、もっと驚いたことが見えてくるでしょう。私としては、「担当部署としては、教育委員会がもしかしたら福祉部局より多いのかもしれない」と、思い始めています。「呼び名は、放課後児童クラブや学童クラブなどクラブ派が多く、学童保育所はかなり少なそうさ」とも、予想し始めています。毎日、楽しみながら、いろいろな市区町村のHPをのぞいています。
ぜひみなさんも、ちょっと閲覧するには大変かもしれませんが、気になる地域が登場したら、目を通してみてくださいね。そしてご自身の住んでいる地域が登場し、情報が間違っていたら、ぜひ教えてください。すぐに修正しますから。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。
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