車内閉じ込め事件に思う。保護者を誹謗中傷する時点で子どもに関わる資格は無し。保育指針を見直そう。
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。
前回のブログで取り上げた岡山県の保育園児が車内に取り残された、大変いたましい事件について、いろいろな意見がSNS上に投稿され続けています。前日(9月12日)には、遺族が保育園側を訴えたいということについて、批判的な意見の投稿が相次ぎました。
中でも私が見て、大変がっかりしたのは、遺族に対して「バカ保護者」とつづられた投稿です。投稿主の方がどういう方なのかはもちろん分かりませんが、保育・教育関係の分野に身を置いている可能性がうかがえる方でした。
どんな理由があれ、他人への誹謗中傷は絶対に許されません。まして、原因はどうあれ、お子さんを亡くされて心理的に極めて厳しい状況にある遺族に対して、たとえSNS上であっても、投げかける言葉ではありません。本当にその投稿主が保育教育関係であるなら、「二度と、子どもに関わる仕事に就いていただきたくない」と申し上げたいほどです。
裁判についても理解できない、そんなことをしたら保育士の成り手がなくなる、保育所保育園の廃業になる、という投稿も多いですね。保育、学童保育、教育の分野に身を置くと思われる方からの投稿も多いです。ただ、そんな投稿をすると、逆に、知識や見識、いや常識が欠けていると見られるだけです。日本は現代的な民主主義国家であり、誰しもが、裁判を受ける権利を持っています。国民の基本的な権利を行使することができるのは当然であり、それに対して保育教育界隈から批判の声が起こるとしたら、「そんな基本的な知識を持たないで、子どもの育ちに関わる専門職だなんて、よく言えますね」と、逆に批判を浴びても本来ならおかしくないと私は思います。
誰しも裁判を受ける権利がある。責任があるかどうかは、原告と被告の双方が主張し合って、裁判所が判断する。それ以上でも以下でもありません。過失責任の程度を問う民事裁判は、ごく普通に行われていることです。
さて前日のブログも触れましたが、車内取り残しを防ぐ数々のグッズや仕組みが紹介されています。それはそれで少しでも車内取り残しによる悲劇のリスクを低減させるならどんどん利用するべきだと思いますが、これもSNSにおいて不思議なことに、「保育に関わる側が、保護者の意識を醸成させていく方策を取るべきだ」というような意見がほとんど見られないのが、私には気がかりです。
厚生労働省が公表している「保育所保育指針解説」(平成30年2月版)を見てみます。インターネットで閲覧できるものの349ページには、「保育所を利用している保護者に対する子育て支援」として、「保護者との相互理解」「日常の保育に関連した様々な機会を活用し子どもの日々の様子の伝達や収集、保育所保育の意図の説明などを通じて、保護者との相互理解を図るよう努めること。」とあり、その指針の解説を以下のようにつづっています。長いですが、大事なことです。
「家庭と保育所の相互理解は、子どもの家庭での生活と保育所生活の連続性を確保し、育ちを支えるために欠かせないものである。設備運営基準第 36 条は、「保育所の長は、常に入所している乳幼児の保護者と密接な連絡をとり、保育の内容等につき、その保護者の理解及び協力を得るよう努めなければならない」と定めている。保育所保育が、保護者との緊密な連携の下で行われることは、子どもの最善の利益を考慮し、子どもの福祉を重視した保護者支援を進める上で極めて重要である。家庭と保育所が互いに理解し合い、その関係を深めるためには、保育士等が保護者の置かれている状況を把握し、思いを受け止めること、保護者が保育所における保育の意図を理解できるように説明すること、保護者の疑問や要望には対話を通して誠実に対応すること、保育士等と保護者の間で子どもに関する情報の交換を細やかに行うこと、子どもへの愛情や成長を喜ぶ気持ちを伝え合うことなどが必要である。」
要は、保育所は家庭としっかり連携を取って、保育所側が考える保育における狙いを理解できるように対話をすること、ということです。仮に、無断欠席に関する連絡をするにあたって、なかなか連絡が取れない家庭、保護者があるようなら、普段からその件について保育所側は保護者と話し合って対応を続けるべきなのです。欠席するなら必ず施設側に連絡をするような意識を保護者側が持てるまで、何度も働きかけるべきなのです。
もちろんこのことは、学童保育(放課後児童健全育成事業)にも、根拠となる指針は異なりますが、意図する内容としてはほぼ同じことが示されています。保護者の子育てを支援することは、そういうことなのです。
取り残し防止グッズはそれはそれで大切です。しかしもっと大事なのは、保育をする側は常に保護者の意識に働きかけ、子どもの安全を常に考えるような子育てになるように、保護者を導く仕事をすることなのです。
もちろん、その意識の形成には、「施設の利用規則はこうなっています。これは必ず厳守してください」と、利用方法に関するルールを定めてその遵守の徹底を求めることも1つです。入所時、入園時や年度替わりに、必ず、利用の規定を念入りに保護者側に伝達することも必要です。子育てからのアプローチとルール順守からのアプローチ、双方を組み合わせることが必要でしょう。
そういう工夫をたくさん凝らしても、それでも、出欠確認の連絡がルーズな保護者がいるかもしれませんし、必ずいるでしょう。私も学童保育の運営責任者だった時代があるので、そういう方が必ずいるのを理解しています。その場合は、「あの保護者は言うことを聞かない」ではなく、「子育て能力に関して一定の制限があるのかもしれない。だから丁寧に関わっていく必要がある」と、認識するべきなのです。
保護者の子育てに関する能力の足りない部分に腹を立てるより、そうした保護者の下にいる子どもの安全安心をどう確保するかに、保育の専門者なら意識を向けるべきなのです。
車内取り残しという悲惨な事故、事件を防ぐために、学童保育も保育所も児童館も、すべて児童福祉に関する世界にいる人は、この悲惨な悲劇を防ぐために、建設的な意見を出し合って社会に訴えていくべきなのです。保護者を叩いても批判しても、何も事態は変わりません。そのことに、子どもを受け入れる側が早く気が付いてほしいです。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育、子育て支援にまつわる各種の問題について提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。
育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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