「打倒!小1の壁クエスト」第13話。大事なのは、みんなを当事者にしてしまうこと!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。
「打倒!小1の壁」クエストです。主人公は、来春にお子さんが新1年生となるご夫婦。小1の壁は、実は学童保育にたくさんある、学童保育ならではの慣習にあることに気付き始めた勇者夫婦です。
~打倒!小1の壁クエスト~第13話:大事なのは、みんなを当事者にしてしまうこと!
(前回までのあらすじ)4月の保護者会総会に参加した勇者夫婦。保護者会役員を決めるため、くじ引きをしようとした流れに我慢できず、会長に立候補してしまいました。
勢いも手伝って保護者会会長に立候補した勇者夫婦。とはいえ、学童保育所に入ったばかりで、実は保護者会が何かもよく分からない。ですが、困ったときは聞けばいい。相談すればいい。そう思えば、あまり深刻なことではないのかもしれません。
勇者パパ「ということで、保護者会の会長になりましてね。実はそれほど大変なことはないと思うのですが、どうですか?」
ハギ「ははは。まあ、楽にやることは簡単じゃよ。今まで通りにやればいいのじゃ。これまでの会議の議事録を見て、去年はこんなことをした、というのが分かれば、その通りにすればよい。だが、おぬしは、今のままではおかしいと思ったから会長に名乗り出たわけじゃろ。だとしたら、大変じゃよ」
勇者ママ「だと思います。今までこうだったとか、学童はこういうものだとか、なんていうか、過去のしがらみに縛られ過ぎです。だいたい、働く親の立場で考えて学童をやっているとは思えませんから。開所の時間だって、働く側の立場に立ってみればせめて小学校の登校班と同じ午前7時半に学童を開くべきですよ。そんなことすらしないんですから、職員とか運営側のやりやすいようにしか、やってないと思うんです。おかしいですよ絶対」
ハギ「後は例えば、一日保育のお昼ご飯じゃな。お弁当持参が当たり前だったが、徐々に、学童で昼食を提供しようという流れが生まれつつある。保護者の利便性向上がその後押しになっているのだがの、お弁当を実は作れない家庭もあるんじゃ。貧困だけでなく、親が、子どもに対して何をすればよいのかが分からない親が増えているんじゃ。きっと、幼少期に親から手をあまりかけられていなかったんじゃな。学童保育は、そういった、子育てが実はうまくできない家庭にも寄り添った施設であるべきじゃと、わしは思っておる。業界では少数派だがの」
お弁当問題か、確かにうちは春休み、パパが頑張ったから乗り切った。でも長い夏休みを思うと心配。確かに学童で食事が用意されたらどんなに楽かと、勇者ママは思いました。
勇者パパ「なにか、保護者会運営のコツはありますか?」
ハギ「保護者会が学童の運営に加わっているというスタイルということは、もっと昔は、保護者会そのものが学童保育所を運営していたということじゃ。事業運営の一部を集約化して運営本部を設けて法人化したというスタイルじゃ。法人化しないと、補助金の受け皿に不向きだったり金融機関で口座を持てないからの。それはそうと、運営のコツは何と言っても、みんなで相談して話を進めることじゃ。時々あるんじゃが、会長が独断であれこれ決めるのは、絶対にダメじゃ。みんなというのは役員会のメンバーじゃが、まずは役員みんなで相談する。そして次に大事なのは、責任は会長が負うという覚悟を周りに示すことじゃ。みんなで相談して、決まったことは会長が責任を負う。これがはっきり伝わると、実は周りの人は安心して、積極的に参加してくれるもんじゃよ」
勇者ママ「でもそれって、なんかあったとき、うちだけが責任を負うんですよね?おかしくないですか?」
ハギ「いいや。会長というのはトップじゃ。トップが責任を負うのは当たり前じゃろ。ママさんとこの会社は社長が責任を負わんのかね?」
勇者ママ「もちろん社長が責任を負うと思いますよ。でも、学童でなんかあったら責任は会長だけが負うのはちょっと。ボランティアなのに」
ハギ「そこが間違いなんじゃ。ボランティアは、善意でやってあげる、じゃないんじゃよ。自ら進んで責任を負うことが、本来のボランティアじゃ。そして学童の保護者会は、もしその保護者会が運営に加わっているという形態であるならば、会長があえて責任を負う覚悟をもたねば務まらないんじゃよ。そしておぬしら夫婦はそれを進んで名乗り出たんじゃ。それはすごいぞ。だが引き受けた以上、とことんやりぬく。そのためにこそ、周りの理解と協力が必要で、だから、みんなで相談して決めていくんじゃ。もっとも難しい問題のときは、会長が最終決断するということも、事前の了解があれば問題はないぞ」
勇者パパ「それは分かります。でも実際、どれだけの責任がかかりますかね?」
ハギ「なんともいえんの。職員の雇用業務や職務執行には関わらないようじゃから、その点における過失や使用者責任は問われまい。イベントの際の事故は、なんともいえんが、全責任を負うという位置でもあるまい。だからあまり心配はせんでもよかろう。後は、人間関係にまつわるトラブルじゃな。こればかりはなんともいえんの。会長の言動に傷ついた、ハラスメントだ、慰謝料を払え、という事態が絶対に起こらんとは言えぬし、そうそう起こるとも思わん。まあ、そういうのも避けるためにしっかりと相談することじゃ。相談はの、みんなを当事者にする、ということじゃ。当事者になった人は、たいてい、しっかりとあれこれ考えるもんじゃよ。自分が困ることにはなりたくないからの。ほっほっほっ」
みんなを当事者にする。この言葉にとてもヒントを得たような気がします。勇者夫婦は翌月の役員会でさっそくもちかけました。
「みなさん、夏休みのお弁当ですが、どう思いますか?うちは春休みはなんとか乗り切りました。みなさんどうでしょう?」
問いかけると口々に「大変!」「時間が無いからいつも同じ冷食ばかり」「弁当が配達されたら楽」という意見が出ました。一方で「弁当はお金がかかりますよね?」とか「給食も弁当もいいですけど、それって学童の先生たちに負担にならないかしら?かといって役員会で手配することになったら絶対困るし」と言う意見も出ました。
盛り上がる盛り上がる。やっぱりお弁当問題は学童保護者に大事な話題なんだと勇者夫婦。「では、みんなにアンケートを取ってみませんか?」と提案したところ、すんなりまとまりました。
後日、アンケート実施についてベテラン職員に話を持ち掛けた勇者パパ(相変わらずお迎えはパパの役目)。ところが返ってきたのは「夏休みに何か宅配弁当でもしたいんですか?ダメです」という答え。
「どうしてですか?というより、まずアンケートをして保護者さんたちの考えを知る段階なんですが」と話す勇者パパに「宅配弁当実施の前提のアンケートですよね?ここの学童はおうちからお弁当を持ってきてもらうことになっているので、アンケートを取っても変わりません。親がお弁当を作って持ってくるのは親の愛情です。食育です。学童の基本です」と、断固反対の姿勢を崩さぬベテラン職員。
さあどうしたものか。「職員さんとしては反対ということは分かりました。ですが、保護者会は学童保育所の組織とは別の団体です。職員さんには負担を一切かけない方式で、保護者へのアンケートは行います。保護者さんたちに誤解を招かないよう、アンケートの実施には職員さんは反対をした、よって保護者会独自の行動である、ということも申し添えますので」と、勇者パパは告げました。負担を一切かけないとは、プロセスに関与する余地を与えないということを分かっているかな?と、帰りながら思う勇者パパでした。
役員同士のSNSで話をまとめ、これまた既存の学年別連絡網でアンケートの周知を案内。こういうときに既存の構造を利用するのは楽ですね。自由回答なので半分も集まればいいかなと思った役員会ですが、なんとほぼすべての保護者から回答が集まりました。そして予想通り「昼食を学童で用意できればありがたい」が、圧倒的多数の意見となりました。アンケートには開所時間についても盛り込みました。それも「午前7時半開所希望」がもっとも多い意見となりました。
お弁当と開所時刻。しかも容易には変えられない。でも実は大きな壁たちです。しかも一番大きな壁は、「今までこうしてきた」という意識の壁。もう、壁だらけですね。「打倒!小1の壁」のクエストで、小1の壁についてさらに打倒法を考えましょう。(たぶん続く)
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育に関連する多くの問題、小1の壁の問題解決や、保護者の負担感といった学童保育に立ちはだかる多くの問題の解決について、学童保育の運営に関して具体的な実践と経験を積んだ代表が、具体的な解決策を提示することが可能です。
学童保育の運営についても、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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