日本版DBSの報告書案。放課後児童クラブは義務化の対象外。国は学童の子どもを守らない!私たちが動こう!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。
前日に引き続き、日本版DBSを取り上げます。9月5日、こども家庭庁は、日本版DBSの報告書案を取りまとめ、有識者会議に提出しました。同日夕方から報道が相次いでいます。9月5日16時32分配信の時事通信の記事を引用します。
「学校や保育所などに確認を義務付け、学習塾などには自主的に確認した場合に認定する制度を設ける。確認の対象は性犯罪の前科のみとした。子どもの性被害を防ぐ対策を学校などに求める新法案にDBS創設を盛り込む方針で、今秋に想定される臨時国会にも提出する。」
「報告書案によると、性犯罪歴の確認を義務付けるのは学校や保育所のほかに、認定こども園や児童養護施設、障害児入所施設など。塾やスポーツクラブ、認可外保育施設、放課後児童クラブ(学童保育)、俳優や歌手を養成する芸能事務所などは義務付けの対象外とするが、自主的に確認を行った事業者を認定する制度を設ける」
つまり、学童保育所(この場合は、放課後児童クラブのこと)は、学校や保育所とは違い、義務付けの対象外とすることと、認定制度を設けてその制度を利用する事業者に対しては日本版DBSの利用ができる、という仕組みです。認定制度を利用すれば学童保育所においてもその役割を達せられると、国は考えているようです。
これも先の時事通信の記事を一部引用します。「小倉将信こども政策担当相は5日の記者会見で、「認定制度への参加を強く働き掛けることで、実質的に義務化と同程度の状況にできる」と強調した。」
違います。学童保育所において任意の適用となるとどういう問題が起こるか。容易に想像できます。学童保育所は慢性的な人手不足です。有資格者となる教員免許や保育士資格を取得した、実は性犯罪前科前歴がある者が過去の性犯罪歴を隠して応募してきても、その有資格の「ありがたさ」から、採用に向けのハードルが一気に下がります。採用されやすくなるのです。
それを、日本版DBSの制度を使って確認をしてくれればいいのですが、手続きの煩雑さや費用負担面、そして、「知らなければなかったこと」と言わんばかりに過去の確認をしないまま有資格者ならもれなく採用してしまおうという、「子どもの最善の利益を守る」ことよりも「事業を継続して収益を上げること」を優先する、残念な事業者が非常に多くある現状で、どれだけ、事業者の誠意やコンプライアンスに期待できるというのですか。
残念ながら、小倉大臣が述べたような、実質的な義務化と同じには、ならないと私は確認しています。
学童保育所(放課後児童クラブ)の義務化が絶対に必要です。
今回、私が極めて残念に思うのは、国の、学童保育に対する軽視の姿勢です。保育所は許認可施設だから義務化、放課後児童クラブはそうではない(届出制)だから義務化はなじまない、という理屈のようです。また、公の資格である「放課後児童支援員」の施設への配置が「参酌基準」(なるべく従ってね、ということ)とされていることも影響しているようです。保育所と異なり、放課後児童クラブは、公の資格者が「必ず」配置されなければならない施設ではないという理屈ですね。
しかし、今や小学生の多くが学童保育所を利用しています。放課後子供教室、全児童対策事業も含めると、新1年生の半数以上が学童保育所を利用しているデータもあります。それほど、多くの子どもたちが利用する、重要な子育て支援インフラ、社会的資源にあるにもかかわらず、許認可施設ではないということだけで、義務化の範囲から外されるのは、「守られるべきは子どもの最善の利益」という児童の権利に関する基本的な考え方から、まったく逸脱しています。国は「守るべきは制度の仕組み」にこだわりすぎです。
学童保育の子どもたちは、性犯罪から守る国の仕組みから、外されたということです。これは極めて重要な事態です。にもかかわらず、学童保育の業界団体もまた、沈黙しています。まったく理解できません。
国の会議に呼ばれて意見を言う立場だけで満足しているようでは、単に既得権益を守っているだけの、身内だけを大事にしているだけの、典型的な「ダメな業界団体」です。あなたたちが守りたいのは、子どもの最善の利益では、ないようですね。自分たちの特権的な立場と、保護者を利用しての「学童保育指導員」の立場を守るだけにしか、興味関心が無いようですね。そこには社会正義を感じられません。感じられるのは、自分たちの利益と立場だけを保持する極めて内向きの事なかれ主義、だけです。
今回の原因は児童福祉法において、放課後児童クラブが、法定任意事業と等しい位置付けにされていることがそもそもの要因でしょう。この是正をいまこそ、国会に強く働きかけねばなりません。保育所や児童館と同様の、児童福祉施設として位置づけられるべきです。今の「地域子ども・子育て支援事業」のままでは、子どもの最善の利益が守られないことが、今回のことで明確となった以上、学童保育(放課後児童クラブ)の児童福祉法上の位置づけを早急に見直す必要があることを、もう何度も主張していますが、改めて訴えます。
そして、今回の日本版DBSにおける放課後児童クラブの義務化対象外については、国会で法律が制定されるまでの間に、署名活動(今はネット署名が大変盛んです)をもって、義務化とするべきだという学童保育業界の強い主張を、国に届けるべきです。他にも、起訴されなかったり事業者の懲戒処分だけで済まされた性犯罪歴は、日本版DBSの対象外となっているようです。これも問題です。本家イギリス版のように、捜査機関が関わった事案や懲戒処分だけにとどまった者も情報提供の対象とするべきです。これらを求める署名活動は、今すぐに取り掛からねばなりません。
学童の子どもを守る。それが、学童保育を守ることにもなるのです。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育における子どもたちの人権保護について、種々の意見提言を行っています。学童保育の運営に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った運営の方策についてその設定のお手伝いすることが可能です。
育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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