そろそろ徹底的に議論が必要。「放課後児童クラブの利用ができる状況」とは? 親の元が絶対優先なのか?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。(ぜひグーグルのAIで「萩原和也 放課後児童クラブ」と検索してみてください!)
つい最近まで、旧ツイッター(X)では、保育所を舞台に、「買い物を済ませて迎えに来る保護者のことが理解できない」という趣旨の投稿をめぐっていろいろな見解が飛び交って、なかなか愉快でした。いや愉快というのは、「ほほーいろいろな見解があるのだな」という程度の意味です。そして保育士であることがうかがえる方のアカウントからは、長時間にわたってこどもが保育所で過ごすことに対して「親のキャリアデザイン、親の仕事の状況で、こどもを不幸に追いやってはならない。こどもこそ最優先だ」という投稿もありました。「(保育所に)こどもをすぐに迎えに来ることこそ『こどもまんなか』です!」と言い切る投稿も見かけました。はっきりいってわたくし萩原には笑止千万ですが、世論に向けてもうそろそろ「こどもが保育所や児童クラブで過ごす時間の意味」についてもっと議論をわき起こす必要がありますね。こどもを早く迎えに来るのがこどもまんなかと保育者が思っているようでは、そりゃ保育者の専門性も待遇も低いままでやむを得ないわ、とわたくしはあきれています。
<※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。
※放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾンで発売中です。(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!>
<児童クラブの利用、お断り>
放課後児童クラブは、放課後等に保護者が不在、つまり留守の小学生の健全育成を行う事業です。保護者が仕事や学業、介護などで留守にしている家庭のこどもが対象、となっています。そのため、保護者が自宅にいるとか、保護者が仕事等を終えたら、「こどもの保育ができる状態」と判断されるので、放課後児童クラブの利用はできません、とする自治体はめずらしくありません。
先日、わたくしがXにも投稿しましたが、新潟県魚沼市は児童クラブの説明資料のQ&Aのページに、明確にこう記載しています。
Q:仕事終わりに買い物をしてから迎えに行きたいがそれまで利用できるか。
A:ご利用いただけません。お仕事が終わり次第速やかにお越しください。
質問のような利用が発覚した場合は、改善いただくようお声掛けさせていただき、それでも改善が見られない場合は利用停止とする場合があります。
保護者が退勤後、買い物をしてから児童クラブにこどもを迎えに行くことを明確に拒否しています。ここまで明確に記載している自治体は他になかったようにわたくしは記憶していますが、「保護者が在宅の場合は利用できません」という趣旨のことは、ごくごく普通に、あちこちの自治体が児童クラブの説明に掲載しています。例えば、内職や自営業の場合、保護者が家にいるので児童クラブの入所要件に該当しない、としている自治体はごく普通です。もっとも、そのような場合でも相談すれば入所できるとしている自治体も多いです。また、国の通知で劇的に改善の兆しが出た、育児休業中の児童クラブ利用も、この範疇の問題で扱えますね。育児休業中で保護者が自宅にいる場合、児童クラブの利用はできませんとする自治体が圧倒的に多かったのは、まさに保護者が家にいるからにほかなりません。国の通知を受けて、令和9年度の児童クラブ利用案内には、育児休業中の利用は原則可能とする自治体が急増しています。
この、保護者が家にいる場合や、保護者の就労等の事情が済んだ場合に、速やかにこどもを迎えにきてくださいという自治体の姿勢は、まさに「児童クラブは、こどもを預かる場所。こどもを預かる機能」と言う理解にあることを示していると、わたくしは考えます。保護者の仕事が終わればこどもを手元に引き取れるでしょ、育児休業や自営業は自宅に保護者がいるのだから(保護者が何をしているかどうかは関係なく、保護者がこどもを直接、視界に入れることができるのだから)こどもを児童クラブに入れなくても大丈夫でしょ、ということですね。
つまり、児童クラブはこどもの託児場所、こどもを預かる場所であるという理解があまりにも根強いからこそ、設置主体の自治体や運営主体の事業者双方とも、「親の用事が終わったらすぐに迎えに来なければなりませんよ」という姿勢になるのだと、わたくしは考えます。「こどもをすぐに迎えに来るのがこどもまんなか」と考える保育者の思考には、保育所も児童クラブも、「親元で過ごせないかわいそうなこどもを預かっている場所」という理解が根付いているのでしょう。いったい、どうして保育士の資格を取れたのかわたくしには理解できませんが。
結局、児童クラブは児童の健全育成をする場である、という理解よりも「こどもを預かる場所」という理解しか、この社会に根付いていないのでしょう。
さてさてこれも最近、Xにて、保育士を育てる側にいると思われる方のアカウントに「保育所はこどもを預かる場所だ」という趣旨の投稿がありました。これにもわたくしは失笑を禁じ得ませんでした。学問側にいる方々の視野の狭さが明瞭でしたから。
わたくしも、児童クラブはこどもを預かる行為をしていることは否定しません。外形的に見て、児童クラブは確かにこどもを「預かって」います。ただしそれは、こどもを預かるという行為をして、その上で、こどもの育成支援という事業を行っているということとセットです。単に「児童クラブはこどもを預かっています。以上。」ではありません。ですが、この、「児童クラブはこどもを預かったうえで、こどもに適切な援助と支援を行う、つまり育成支援をする場であり仕組みである。また保護者の子育てを支えているのです」という本質的なことについては、「こどもを預かる場所です」と言い切る言葉、文章では、とても読み手つまり一般社会に伝わらないのです。伝わるはずがありません。その結果としてこの社会には「児童クラブ(保育所と読み替えても可)ってこどもを預かるだけの場所よね。そこで働く人はこどものお守りよね。だったら、安い給料で十分でしょ。だってこどもを見ているだけなんだから。そういう人たちに払う給料はうんと安くていいので、保育料や利用料をもっと下げてほしい」という理解がこびりついてしまっているのです。
そもそも児童クラブの放課後児童支援員にしても、児童クラブで為す仕事は、単にこどもを預かっているのではないという理解を研修を通じて深めます。認定資格研修でも口酸っぱく言われているはずです。それを、保育者の養成側が「子どもを預かるんです!」と言い切るようでは、そりゃ一般社会の大勢の人は「そりゃそうだ」となりますわな。こうして、保育者の専門性はその存在も意義も社会に知られず、理解されず、保育士や児童クラブ職員がいくら「私たちの仕事には専門性があります。職務に見合った高い賃金が必要です」と訴えても「え、こどもを預かって様子を見ているだけでしょ」と一般社会に冷たくあしらわれておしまい、ということになるのです。
こどもを預かるだけ、と言い切る保育者の養成者は、「預かるという行為そのものが専門性だ」(キリッ)とでも言いたいのでしょうか。だとしても失格ですね。世間がどう理解するか、受け手の理解を考えて意見を発する必要こそ学識者には必要です。単に自分の言説を理解しない方がレベルが低いのだという理解であるなら、その方の養成者としての力量は、推して知るべし。
<受け入れ側の事情を客観的にするな>
「親の用事が済んだら一刻も早く迎えに来てほしい」という児童クラブの現場の願いは、とりわけ大規模児童クラブの職員に根強いものがあります。わたくしもずっと現場から意見を目の当たりにしてきました。その現場の気持ちは理解できます。なぜなら、クラブで過ごしているこどもの人数が減れば、その分、まだクラブにいる他のこどもたちともっと関わることができるからです。決して、親の用事が済んだこどもが邪魔なわけではないのです。ただ、「大人との関わり」が必要な大勢のこどもたちを前にして、「親が迎えに来られるなら早く来てほしい。買い物は迎えに来た後に親子で済ませて。それが大人との関わりだし、そうやってこどもが降所してこどもの人数が減れば、まだ児童クラブで過ごしているお迎え待ちのこどもと関わる余裕が増えるから」と大規模クラブの職員が切実な気持ちになるのは、よく分かります。
「こどもたちと満足に関われることができない。だから保護者は用事を済ませたら早く迎えに来てほしい」というのは、分かりやすい理屈です。ですがわたくし萩原はあえて言いますが、児童クラブの職員配置や運営の状況を、「こどもの早迎え」の原因とすることはやめるべきです。大規模児童クラブにしたのは設置主体でしょうし、運営主体かもしれません。保護者やこどもではありません。ですから大規模児童クラブにした側が、大規模児童クラブに起因する種々の困難やトラブルを解決する責務を負っているのであって、それを「保護者に早く迎えに来てもらうことで、登所児童数を減らして他のこどもとの関わりの機会を増やすことにつなげる」とするのは、筋が違うとわたくしは考えます。職員数を増やすなり、こどもを過ごす場所を一時的にせよ増やす、支援の単位を増やすといった対策を自治体や運営側が講じることこそ必要なのです。親に早く迎えをせかすことは、その日その時だけ限定の、こどもと関わる機会増の効果はあっても、本質的な解決とはまったく異なります。
気持ちは分かるんですよ。でも、大規模になったのはこどもや保護者の責任ではありません。大規模状況を回避しようと施設増への投資、人員増への投資が足りていない設置主体や運営主体の問題だ、ということです。そしてそれは現場職員ではどうしようもない、権限がないことです。結局、現場の職員が板挟みとなるのです。もうね、そういう、現場だけに負担を強いる児童クラブの構造は、いい加減、やめるべきです。児童クラブで働く人がなかなか足りないのは有資格の方々が潜在的に多数いても現場に入らないから。なぜでしょうか。それは現場のしんどさ、不条理さを知っている方々がきっと多いのだろうとわたくしは予想します。なら、そのしんどさを補う他の要因つまり賃金がもっと高くなればいいんです。手取り18万円と手取り25万円なら、25万円の手取りなら「まあ、あれだけ給料をもらっているんだから文句は言えないか」として仕事として取り組もう、という人が増えるのは当たり前です。基礎資格を拡大し、大学の学部要件を緩和して放課後児童支援員の認定資格研修受講者を増やせば児童クラブの人手不足が解消するなんてことは200パーセントありません。その点、こども家庭庁は絶対的に間違っています。単に「人手不足解消に役立ちそうな策を講じました」という「仕事やっている感」を世間に示すアピールだけです。ばかばかしい。まして外国人の労働力に期待するということになれば完全に取り返しのつかない事態を招きます。外国人を無意味に排斥するのではありません。しっかりと日本における子育てを学んでいる外国人であれば問題ありませんが、来日してすぐに人手不足を埋める労働力として計算するのは認められない、と言いたいのです。
<結局、児童クラブでこどもを過ごすことは、親元と過ごすことと比べて悪いのか?>
このことは明確に言えます。「ケースバイケース。人それぞれ」であると。100の子育て世帯があれば100通りの子育てがあります。児童クラブで過ごすこどもにも同じ。単純に大雑把に分類して考えることはできませんが、ただ、わたくしから見て「これは誤解だ」ということは明確に指摘しておかねばなりません。以下、紹介します。
「親のキャリアデザイン形成のために、こどもが長時間、児童クラブで過ごすことが悪だとは、言えるはずがない」
→簡単に言えば、親が仕事に夢中で、子育てより仕事を選択しているという状況ですね。月曜から土曜日まで、こどもをクラブに連れてくる。平日の、仕事が休みの日は親は研修や視察や自己研鑽のために公開授業に参加するなどして、やっぱりこどもはクラブに登所する。そういう親を苦々しく思っている保育者、職員は実は多いでしょう。「休みの日ぐらい、仕事をしないで、こどもと一緒にいたらどうなの?」と思うのです。
わたくしはそれこそ「自分たちの専門性を都合よく使うことはするな」と言いたい。仕事や他のことでも、何か夢中に取り組んでいる保護者を責めることが馬鹿げています。重要なのは、こどもと過ごす機会、こどもと過ごす時間において、その時間の長短ではなく、その時間の間に親がどれだけこどもと関わっているかという、関わりの質、関わりの濃密度にあります。こどもと過ごす時間が夜の7時から朝の7時までである家庭だとしても、その間、こどもとたくさん会話し、こどもと一緒に関わり合いながら過ごす家庭が、子育てに無関心であるとか、子育てに努力していないとは、とても言えません。
むしろ、午後5時ごろに連日、こどもを迎えに来ている家庭であっても、それから一緒に買い物をしている世帯であったとしても、親はずっとスマホに夢中、買い物も親とこどもがてんでんばらばらに買いたいものを買い物かごに入れて親が精算するだけ、家に戻っても相変わらずスマホ。そんな時間の過ごし方をしている子育て世帯かどうか、もちろん、第三者が外から見ては分かりませんよね。同じように時間が短いキャリア世帯の子育て世帯であっても同じ。早く迎えに来る世帯が必ず子育てに熱心で夢中で、こどもの精神的に充実した子育てをしているかどうかとは言えないのに、なぜ、早くこどもを迎えにくることがこどもまんなかになるのか、まったく意味不明です。
保護者のキャリア形成のために、こどもの育ちが犠牲となってはならないという意見は、多くの保育士の心をつかみそうです。「なんてったて、こどもは親と過ごすのが一番」という思い込みがとても根強いと見受けられます。そうでしょうか。わたくしは全く違う意見です。そもそも、仕事に熱心な保護者の子育てが、こどもをないがしろにしていることを意味しないからです。夜の数時間でもこどもにずっと関わっている、キャリア形成に熱心な保護者の子育てが不幸であるとは、まったく根拠がありません。むしろ、保育側が「親が仕事熱心で、こどものことはそっちのけなのね」的な見解をSNSで示すたびに、それを見た、仕事と育児の両立に悩む保護者は、心を痛めて自責の念にかられるのです。なんて罪作りなんでしょう。
さらに言えば、生産年齢人口が減っている日本社会で、キャリア形成に努める方々―比較的、専門性の高いスペシャリストであるイメージーが、「そうか、仕事を控えて育児をしないと肩身が狭い」となることで社会経済活動の最前線から身を引くことによる損失を、保育側が考えないのは実に視野が狭い。キャリア形成をいったん中断することによる不利益ー再びキャリア形成のレールに乗れるかどうかわからないこと。何より収入が減ることーはとても補えそうにありません。
何より、この現実的に子育てを中心となってするのは女性です。「仕事ばかりして、子育てしたらどうなの? 親の考え方でこどもが犠牲になるの?」と批判する保育者は、母親つまり女性の社会経済活動を抑え込み家庭での子育てに従事することを余儀なくさせる言動を行っているということを自覚しているのでしょうか。結局のところ、「男は外で働く。女は家庭で育児中心」という、もはやとても問題だらけの旧態依然とした日本の家庭制度をいまだに尊重しているのが、当の保育側であるのではないのでしょうか。そういう女性の社会経済活動を盛んにさせていき、男性だろうと女性だろうと社会経済活動を思うように実現できるように支えるのが保育所であり児童クラブであるはずなのに。自分で自分の首を絞める保育者の言動には、ほとほと呆れます。そういえばSNSでは園長の肩書のアカウントが、保育士が出勤しなかったら社会が止まる、だから保育士の待遇を良くしなければという、頓珍漢な意見を披露していました。どんな言論でも好きに発表することは当然に大事ですし、そんな頓珍漢な意見でもSNSで披露する権利はそのナントカ園長さんにはありますが、ごくごく普通の社会常識を備えたごくごく一般の多くの人は、その園長の投稿を見て「保育所の園長って、そんな程度の知性なの? 仕事の責務を取引材料にして世間を脅すの? 保育の世界ってそんな程度で園長が務まるの? そりゃ給料なんざ10万円台でいいわ」と思うのが関の山です。保育士が出勤しなければ社会が止まる? あまりに雑すぎる脅しですね。しかもまったく効果がないブラフにもならないこけおどし。
なお買い物ですが、わたくし萩原の見解は「どうでもいいじゃん、そんなこと」です。退勤後、児童クラブに迎えに行く途中に買い物を済ませることがなぜダメなのかが分かりません。単に買い物をする場所が児童クラブに向かう途中にあるから、ということでもありませんね。こどもと一緒だと、15分で終わる買い物が30分になるということはありがちですが、手早く買い物を済ませることで他にやりたいことができるのであれば、児童クラブより前に買い物を済ませるほうが当然に合理的です。単に「親の仕事がおわったのだから、すぐにこどもを迎えに来なさい」というのは、それこそ児童クラブを単なるこどもの託児所であると考えている証左です。
児童クラブは、児童健全育成の場ですよ。託児所ではありません。
育成支援の理解と知識と実践について日々研さんを積んでいる(ことが当然に期待されている)職員たちが、こどもの健全な育ちを援助し支援する。それによってこどもが安全安心な場で過ごすことができる。それが児童クラブです。そのことが保護者の子育てを支えることになります。買い物に使う時間ぐらい、児童クラブの職員に任せなさいよ。
育児休業や自営業ですが、当然にそのような保護者はそれぞれやるべきことがあります。育児休業なら赤ちゃんの育児であり、自営業ならビジネスをしています。それを「家に保護者が在宅だから」として児童クラブの利用を認めないとか、入所判定に用いる点数を相当に低い点数にするとか、そのようなこともそれこそ児童クラブは託児所であると自治体や運営主体が考えている証左です。保護者が他になすべきことがあって、対象となる小学生児童との関わりの時間を十分に確保できないなら、託児所であるとしても利用の要件になるはずですよ。
この社会にいまこそ必要なのは、児童クラブの本来の役割である「児童の健全育成」にもっと評価を置くべきことです。その点を児童クラブ側が強く訴えているのかどうか、わたくしにはそうとは受け取れないのが残念です。児童クラブ側も「親が一番。親元で過ごすのがこどもにとって絶対的に一番」という理解にとらわれすぎです。
もし、親が働いていない、あるいは休みがいっぱいあるのに児童クラブを利用していて、こどもが児童クラブで過ごしている間に親が単に自分の娯楽にだけ、「ずっと」時間を費やしている様子が明らかなら、それは児童福祉的なアプローチの話になります。どうして、この子の子育てに取り組まないのか、避けているのか、それこそ児童クラブ側が真剣に保護者と関わっていくことが必要だ、ということです。間違ってなりませんが、保護者の休憩休息の時間ー外来語は嫌ですが、レスパイト、と称されることーのために児童クラブを利用するのは大いに歓迎としなければなりません。保護者が休息し、肉体的精神的な疲れをいやすことで、再び、連日の子育てに関わっていくチカラを養うことは重要です。保護者がひと息つくための児童クラブ利用を、児童クラブ側は進んで認めるべきでしょう。そうではなく、わたくしも結構目にしてきましたが、仕事が午後3時ごろに終わってもそれから恋人と過ごしてこどもの迎えは閉所時刻ギリギリ、というのが連日続く保護者には、こどもの心理的な状況ー親から大事にされていないという疎外感ーを踏まえた対応が必要だ、ということです。
親が留守のときだけ利用できる、という観念を変えることに有効かもしれないのが、未就学児で始まった「こども誰でも通園制度」です。わたくしはこれを児童クラブでも適応するべきだと考えます。大規模で待機児童が出ている地域ではなかなか難しいとしても、待機児童が生じていない地域は実はたくさんあります。児童クラブが必要であると考える理由は子育て世帯それぞれに違います。保護者が現実的に「こどもが児童クラブで過ごしてくれると、こちらとしてはありがたい」という事由があるなら児童クラブを利用できる制度が必要です。それこそ単なる託児だ、という強硬な反対意見が出そうですね。「萩原は児童クラブは託児所じゃないといつも主張しているのに、超短期の預かりである、こども誰でも通園制度を児童クラブに認めるというのは本末転倒じゃないか!」という意見が出そうですね。
「よいではないか。まず保護者の子育てを支える役割は果たせる。どだい、こども誰でも『学童』制度があるとして、その時間を利用したい保護者であれば、その時間にこどもを手元にいさせたとしても他にやりたいことがあるのだからこどもと関わることはほとんどなかろう。であれば、子どもとの関わりのプロフェッショナルである児童クラブ職員がいる、こども誰でも『学童』制度を利用すれば、こどもと関わる大人が少なからず存在する、ということになる。それこそ、育成支援の入り口になる。そもそも受け入れている時間が数時間の関わりであるとしても、育成支援の専門家ならこどもとの関わりによっていろいろなことを気付くはずである。それを保護者と共有することで、こどもの育ちを保護者と一緒に援助支援できる」
これが萩原の見解です。夏休みなど小学校の長期休業期間中の受入制度に萩原が根本的に反対ではないのも、上記の見解があるからこそです。わたくしがこれまで出会った、一緒に仕事をした、すぐれた育成支援の専門家、すぐれた児童クラブ職員は、たとえ短時間でのこどもとの過ごし方でも、一切妥協しません。年間通じて在籍しているこどもに劣らぬように、真剣にこどもと関わります。わたくしが驚いたのは、夏休みのキャンプのとき、突発的な事情で数時間、別のクラブのこどもたちを取りまとめることになったベテラン支援員です。キャンプ場というリスクのある場所ながら、実に見事にこどもたちの集団をまとめ、こどもたちを楽しませつつ、時間を見つけてはいろいろなこどもに声をかけて会話をしていた様子を目の当たりにしました。「プロだわ!」と脱帽の思いでした。たった数時間でも、単にこどもの見張りでも見守りでもなく、こどもの能動的、主体的な活動を最大限保障するためにこどもと関わっていくその姿勢があれば、こども誰でも『学童』制度が仮にできたとしても、問題なくこどもと関われるでしょう。そういう優れた児童クラブ職員がきっと全国には大勢いるはずです。問題を起こす、犯罪をしでかす不届きものはごくごく一部です。
児童クラブでこどもが過ごす時間と機会は、こどもの育ちに有益である「はず」なのです。単に、親と一緒に過ごす時間の方が、こどもの育ちにとって勝っているとは、まったく言えません。児童クラブは、保護者や、周りの関係機関ー学校や、児童相談所などもーが判断して「この子には児童クラブの育成支援が必要だ」と判断する限り、親が働いていようがいまいが、こどもが利用できる「こどもの過ごす居場所」として位置付けられるべきです。「放課後児童健全育成事業」から「児童健全育成事業」になることです。児童館ではないか、と指摘が入りそうですね。確かに児童館にうんと近寄るでしょう。第一、児童館は理想的なこどもの居場所です。わたくしが考える理想的な児童クラブの将来像は、「保護者が、自分の子育てを支えることを期待できるためにこどもの定常的な居場所が必要だと考えている場合に、利用できる施設であること」です。ですから、事前に入所の関門を設けておくことは必要でしょうが、一時利用について大幅にその要件を緩和することです。家庭と子育てにおいて情報状況を共有し、「一緒に」こどもの育ちを考えていく仕組みがある施設です。この点において自由来館の児童館とは若干異なるでしょう。ただ児童館と、わたくしの考える将来的な児童クラブはともに連携して地域のこどもの育ちを把握していくことは必要だと考えます。
ただし、必要があるこどもが将来的に理想と考える児童クラブで常に過ごすことでこども自身に利益があるかどうかは、質の高い児童クラブ運営が実施できている児童クラブであれば実現ができる、という条件は付くでしょう。単に預かり機能だけに特化した児童クラブでは、まあ、預かることはできるでしょう。「あれダメ、これダメ」でこどもを動かさねば、徹底的にこどもの行動をその場の大人が管理し、こどもの行動を許可制にでもすれば、まず大けがはしませんから。その場はこどもにとって監獄以上の最悪の場であることは間違いないですね。問題はそういう「こどもにとって監獄以上の最悪の場」であろうがなかろうが、多くの大人や社会はそういうこどもの気持ち、感情に、とんと無神経であり興味を持っていない、関心を向けないということにあります。
児童クラブの世界は、もっともっと育成支援の重要性を外の社会にアピールする、伝える、周知に力を尽くすことが必要です。もちろん、すでに児童クラブを利用している保護者に「やっぱり児童クラブがあってよかった」と確信してもらうことが第一歩です。そのような保護者からの口コミはなんといっても最高のPR手段ですから。
そして児童クラブ側もいい加減、指導員という誤解を招く名称の使用を自制するべきです。指導という言葉の響きがもたらす印象は「学童はこどもを預かる場所」という「預かる」と同じく、「誰でもできる。たやすい内容。一方的な関係性」を一般社会に誤認させます。それがもう長年積み重なっているのがまさに今です。未だにメディアが「こどもを預かる学童保育」として多くの記事を書いて報じていることを、真剣に児童クラブの世界が反省しなければなりません。それができないからこそ、今の児童クラブ職員の苦境があり、現実的に預かり機能だけを重視する広域展開事業者ー広域展開事業者が得意とするプログラム制度は、単に育成支援の技量のない職員でもマニュアル通りに従事させるための手段に過ぎないーの跋扈をもたらしたのだと、わたくし萩原は考えます。
親は買い物前にこどもを迎えに来て当たり前。それがこどもまんなか。そんな声が保育側から上がること自体、今の日本社会の保育や児童クラブは「預かることが本質だ」という錯誤に陥った状態であることの現れです。保育の世界も児童クラブの育成支援の世界も、もっともっと自らの専門性の強化を図りつつ、社会にもっともっと知ってもらわねばなりません。わたくしも「独自のたたかい」-新聞業界の用語では『選挙の時にまったく当選の見込みがない候補者の選挙活動』のことを指しますーをこれからも続けます。
児童クラブを利用している保護者さん、買い物を済ませてこどもを迎えに行ったっていいんですよ。できることなら「保護者在宅の時は児童クラブを利用できないという決まりなんですが、おかしくないですか?」と自治体に指摘して議論をわき起こし、最終的にルールを変えさせましょう。それができるのは保護者が最も効果的な立場にあるのです。そしてもし役所からあれこれ言われたら「運営支援の人がそうブログで主張していましたよ」と言い返してくださいませ。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
New!☆
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。
出生までの戸籍・識別符号収集の注意点と自治体に求める支援
こちらをぜひご覧ください。「こどもを守る弁護士チャンネル」の特別版「出生までの戸籍・識別符号収集の注意点と自治体に求める支援」の動画URLです。弁護士で、自ら放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士による詳細な解説です。
「第6回子ども性暴力防止法緊急LIVE」は2026年8月12日21時半から、「災害時のこども支援とこども性暴力防止法」が登校されました。話し手は 鈴木愛子弁護士、聴き手は野田隼人弁護士です。
第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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※こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+
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放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
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わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年7月29日に公開されました。「子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。(子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))
2026年5月29日には「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事が公開配信中です。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事も公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
