<運営支援ブログミニ・24>日本版DBS制度で恐れること。放課後児童クラブ(学童保育)世界には可能性がある。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
今回はミニ版。放課後児童クラブ(学童保育所)は、いわゆる日本版DBS制度は任意となっていますが、実際には多くの児童クラブ事業者は認定を受けてこの制度に従うことになるでしょう。認定を受ける一連の動きを「入口」としたら、わたくし萩原は「出口」がずっと心配です。その心配を増幅する事件が起きたので、さらに心配が増しています。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<こういうことは、皆無ではないと思わされた事件>
気になった事件とは、強制執行の際に起きた殺人事件です。大きく報道されました。ヤフーニュースに2026年1月16日20時08分に配信された読売新聞オンラインの、「執行官ら2人死傷、容疑者の男は家賃60万円滞納…「コロナ禍以降は仕事に就いていなかった」」の見出しの記事を一部引用します。
「東京都杉並区で部屋の強制執行に訪れた2人が住人に刺されて死傷した事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された職業不詳の男(40)が家賃約60万円を滞納していたことがわかった。調べに「コロナ禍以降、仕事に就いていなかった」と話しているといい、警視庁は生活苦で自暴自棄になったとみている。」
(引用ここまで)
圧倒的多くの人は、あるいはわたくし以外の人は「なんてひどい。仕事に就かず生活苦になったのも自分の責任じゃないか。それを自暴自棄になって正当な職務に就いている人を襲うなんて。個人の責任だ」と感じた事件なのでしょう。ただわたくしは、日本版DBS制度が広まった児童クラブの世界において、もしやこのようなことが起こりうるのではないかと、強い不安感を覚えるのです。たった1件でも、このようなことが起きたらそれは取り返しがつかないことになると不安で仕方がありません。
<どういうことが起こりうる?>
わたくしの不安はこれまで何度も記してきたように、児童クラブの世界で働いていた職員の中で、過去に日本版DBS制度の対象となる特定性犯罪の前科があることで職場を事実上、追われることになる人はまず皆無ではないだろう、そしてそういう人たちの中で、「いままで一生懸命まじめにやってきたのに、仕事を辞めざるを得なくなるなんて、納得がいかない!」と不満や怒りを募らせ、それを他者への攻撃に向けてしまうという、恐ろしい事態が起こりうるのではないのかという、不安です。杞憂であればいいのですが、わずかでも、誰かが被害を受ける可能性があることには警鐘を鳴らしたいですし、取り組みが必要だと訴えたい。
恐ろしい事態、「万が一の事態」とは、こういうことです。
<202X年、日本のどこかの児童クラブ。クラブ運営事業者は日本版DBS制度の適用を受ける認定事業者となった。現職者(すでに働いている人)は1年以内に犯罪事実の確認を行うことになった。その結果、十数年前に無資格から任用資格を経て放課後児童支援員となり、今では施設長として1クラブの運営を担ってきたベテラン職員は、過去の前科から「おそれ」があるとして、こどもと接する今の職場では勤務をさせらないと運営事業者が判断した。しかし児童クラブ運営だけが事業であるこの事業者には、こどもと接することが無い職場はなかった。そこで運営事業者はこのベテラン職員を自宅待機とさせ、何度も面談し、退職勧奨を続けた。事業者内部では、日本版DBS制度の認定事業者になって急に職場を外されたベテラン職員に対して「たぶん、過去になんかやらかした人だったのよ」といううわさが広まった。児童クラブの仕事で再出発をとして十数年、まじめに勤務してきたこのベテラン職員には、もう年齢的に別の業界、別の仕事を新たに覚える自信はなかった。「残念ですが、もうあなたには戻れる職場はないのです。そういう制度だから、事業者としても手の打ちようがないのです」と言われたベテラン職員は、前途を悲観した。以前の職場に、私物を引き取りにこどもの登所前の時間に足を運んだが、かつて一緒に泣き笑いの時間を共にした同僚や部下の職員たちは冷たい視線を投げるだけで誰も話しかけてこなかった。むしろ、「あなたと同じ空間にいることすら耐え難い。汚らわしい」といわんばかりの対応をされた。施設を出ていくときも誰一人、声をかけてこなかった。「もうだめだ。この先、どうやって生きていくのか何も見えない。何もかもおしまいだ」。数日後、ベテラン職員は「何もかもぶち壊してやる」と、凶器を手に職場に向かった。。。>
「そんなくだらないC級ドラマのような展開なんて、起きないでしょう。だいたい、過去に自分が犯した罪のことで受ける不利益なのだから、それは個人が背負うべきですよ」と切って捨てるのは簡単です。それですべてを片づけて良いのならそれが楽です。しかし、「万が一の事態」を恐れるのは、必要なことです。ましてこどもたち、保護者たちを支えている、こどもと保護者そして地域社会から頼りにされている社会インフラたる児童クラブという場所において、「万が一のこと」が起きて、万が一の事態に巻き込まれてしまうのがこどもや保護者、同僚の職員だとしたら、それはわたくしは何としても防ぎたい。取り返しのつかないことは、起こらぬように防ぎたい。
<再出発を支える社会の仕組みを同時に整えねばならないはず>
しかし、そういう万が一の事態を起こさないような動き、施策が見えてこないのが、わたくしにはとても不安です。これは日本版DBS制度に限ったことではなく、罪を犯して刑に服して刑務所から出た人の再出発を支えること自体が、日本においては保護司が代表的ですが個人の崇高な志に頼る部分も大きいこともあってなかなか厳しい。そのあたりは、政府広報オンラインの「再犯を防止して安全・安心な社会へ」をご覧ください。特に「4 社会復帰に向けた出所・出院後の指導や支援」「5 再犯防止のため、あなたにできること」の部分です。(再犯を防止して安全・安心な社会へ | 政府広報オンライン)
一文を抜粋しますと「近年、刑法犯により検挙された者の約半数が再犯者であるという状況が続いています。そのため、新たな被害者を生まない安全・安心な社会を実現するためには、再犯や再非行を防止することが重要です。」とあります。
放課後児童クラブにおいて、日本版DBS制度によって事実上、就業制限の対象となって今までの職を続けられなくなる人はもちろん犯罪者ではありません。だからこそ再出発を考える機運が乏しいとわたくしには見えます。間違いなく、この制度を受け入れた児童クラブ事業者において職を続けられなくなる人がきっとでてきる。それらの人に対しての再出発、再就職の支援が必要だとわたくしは言いたいのです。
児童クラブが実のところ、あまり社会に認識されてはいませんが、罪を犯した人の再出発の場として機能しやすい性質を持っていたからです。日本版DBS制度において「民間教育保育等事業者」とされる児童クラブや学習塾での「教育保育等従事者」にはおおむね、そのような傾向を持っていると私は考えています。とりわけ児童クラブは歴史上ずっと慢性的な人手不足ですから、フルタイムでバリバリ働いてくれる人は大歓迎です。よほど面接等で非常識なことをしなければ採用されます。無資格であってもいずれ任用資格として放課後児童支援員の資格を得られます。教員や保育士であった人も、免状や保育士証をコピーして提出すれば「基礎資格持ち」として優遇すらされます。資格や免許が実は取り消されていたとしても児童クラブ側で確認などほとんどしてこなかった実情もあります。あえて乱暴な言葉を使えば児童クラブはすねに傷ある人が「もぐりこみ易い職場」だと言えたでしょう。
再出発の場として機能してきた児童クラブは、こと、特定性犯罪については事実上、その再出発の場とはならなくなりました。それはもちろん歓迎すべきことですし、かつて自分自身も事業主としてこどもへの性犯罪に直面した経験を踏まえてわたくしも支持します。これから新たに雇う人をわざわざ特定性犯罪の前科がある人から雇うことはないでしょう。入り口はそれでいい。いま喫緊の問題は「出口」です。「日本版DBS制度によってこれから職場を追われる人」に対する施策をしっかり整えなければ万が一の事態が起きるかもしれない、という「おそれ」をわたくしは強く訴えたいのです。制度の認定事業者になったことによって、あるいは認定事業者になる前に自発的に児童クラブの職場を去る人に対して、再就職先の支援やリスキリングなど、再出発を丁寧に支える仕組みがあれば、職を去る元児童クラブ職員が自暴自棄にならずに気持ちを切り替えられることにつながります。たった1件、先の執行官を襲った事件のようなことが起きてまさかこどもが巻き込まれるようなことにでもなれば、悔やんでも悔やみきれません。そんな将来を招かないようにすることこそ、社会にとって必要な行動です。だいたい、真面目な人がブチ切れて「無敵の人」になったらどうしますか。それをわたくしに強く印象付けたのがこの執行官への事件だったのです。
報道機関や議員、政治家の皆様には「日本版DBS制度によって職を変えざるを得ない人たちへのフォローの仕組みが必要だ」と大きく声を挙げていただきたい。自己責任論を振りかざして「そんなことはできない」では良心がない。報道による喚起で沸き起こる世論の意向や政治家の行動がなければ現実に仕組みを整える立場の行政だって動けないでしょう。
いま日本版DBS制度については、入り口のところで徐々に制度対応をスムーズにできるように行政書士の諸先生方を中心に気運が盛り上がりつつあるようです。児童クラブの多くの事業者は日本版DBS制度についてまだ知らないか、知っていても不安が先に立っています。「どうなるのだろう」と。事業者側の戸惑いや不安に寄り添いながら手続き面を中心にしっかりとしたサポート(もちろん、ビジネスとして)が専門職の方々によってなされることを大いに期待しています。一方で、仕事や労働の専門家である社会保険労務士や、法律家である弁護士には、働くことについての面でのフォロー、サポートや、こどもを守る仕組みを活かしながら事業者や労働者を支え、守ることに全力を挙げて向き合ってほしいと願っています。それは事業者内部のこと、例えば就業規則や「児童対象性暴力等対処規程」等規則規程類の作成、あるいは研修体系の整備指導で完結するのではなくて、制度によって職を追われた人たちのフォローの必要性を訴えることを含めてです。
わたくしは児童クラブを支えたいとして事業を立ち上げたものですから、日本版DBS制度によって児童クラブで起こりうる様々な難問に向き合って、現場の人たちや事業者を支えていきたいと考えています。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
