令和7(2025)年の放課後児童クラブ実施状況の内容を順次、確認していきましょう① 待機児童が減りました!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
毎年12月下旬に、国(こども家庭庁)から、放課後児童クラブの実施状況が公表されます。2025年もしっかり公表されました。この実施状況というのは、その年の5月1日時点の情報を調査し、公表するものです。これから数回に分けて内容を紹介していきます。今回は全体の概要と、ぜひ強調したい点をピックアップして紹介します。次回以降は年末年始をはさんで翌月にわたって投稿していきます。ご了承ください。
※年末年始の運営支援ブログ更新について:12月28日は「短縮版」(週刊要旨)と生活ネタ(ビーフシチューの予定)。29日は実施状況の投稿予定ですが休載の可能性があります。30日はブログ投稿をお休みします。31日は年末のごあいさつのみ、投稿します。1月1日は年始のごあいさつのみ、投稿します。1月2日と3日は投稿をお休みします。1月4日は「短縮版」(週刊要旨)と生活ネタ(内容未定)を投稿予定です。1月5日は実施状況の投稿予定ですが、状況により変更の可能性があります。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<実施状況とは>
国(こども家庭庁、同庁設置前は厚生労働省)が毎年公表する、放課後児童クラブの種々の状況を調査して報告するものです。「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」というタイトルです。令和7年のURLを貼り付けておきます。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/69799c33-85cb-44f6-8c70-08ed3a292ab5/c253a682/20251222_policies_kosodateshien_houkago-jidou_80.pdf。
登録児童数や支援の単位数など様々な項目の調査結果が公表されています。令和7年版は58項目にわたって調査結果が掲載されています。なお令和2年版では56項目でした。わたくし萩原の愛読資料でもあります。非常に有益なデータばかりですからどんどん活用しましょう。令和7年版は、児童クラブの数において前回6年版に掲載されていた「クラブ数減少の大きな要因は、昨年度まで支援の単位数をクラブ数として報告し
ていた自治体があり、当該自治体がその是正を図ったため。」という表記が消えています。先日は佐賀市が待機児童の認識について誤った見解を基に国に報告していたことが明らかになりましたが、放課後児童クラブに関しては「支援の単位」という数え方と「クラブ数(施設数)」の数え方がごちゃ混ぜになっていた市区町村があったようで、クラブ数と支援の単位数のデータには疑義が残ったままの状態になっています。その他にも、市区町村ごとの解釈が種々の場面において異なっている可能性があります。放課後児童クラブのあいまいな制度設計はそろそろ全面的に見直すべきでしょう。
<令和7年版のポイント>
では令和7年版の実施状況の概要、ポイントを紹介していきます。実施状況に書いてあることをただ書き直して紹介しつつ、過去のデータを付け加えているだけです。
1 児童クラブに通うこどもは、過去最高の人数です! 小学生1年生の2人に1人が児童クラブを利用しています!
児童クラブに通っているこどもの人数=登録児童数が過去最高の人数になり、記録をまたも更新しました。児童クラブを利用しているこどもは157万645人(1,570,645 人)で、これは前年(令和6年)の151万9952人よりも、5万693人増えました。なお、令和2年は131万1008人で、このときも過去最高を更新していました。26万人ほど増えたということになりますね。
児童クラブに登録している学年別の人数を紹介しましょう。
小学1年生 令和7年 456,418 (29.1%) 令和6年 453,642 (29.8%) 令和2年 414,050 (31.6%)
小学2年生 令和7年 422,493 (26.9%) 令和6年 411,145 (27.0%) 令和2年 361,607 (27.6%)
小学3年生 令和7年 338,356 (21.5%) 令和6年 331,228 (21.8%) 令和2年 278,695 (21.3%)
小学4年生 令和7年 198,714 (12.7%) 令和6年 183,998 (12.1%) 令和2年 148,941 (11.4%)
小学5年生 令和7年 102,111 (6.5%) 令和6年 91,997 (6.1%) 令和2年 71,370 (5.4%)
小学6年生 令和7年 52,553 (3.3%) 令和6年 47,942 (3.2%) 令和2年 36,345 (2.8%)
計 1,570,645 (100.0%) 1,519,952 (100.0%) 1,311,008 (100.0%)
前年の令和6年と比べると、わずかですが高学年の割合が増えています。令和2年と比べるともっと明瞭に高学年の利用ニーズが増えている傾向にあることが確認できるでしょう。
さて、放課後行財政学を提唱している雑木林琢磨氏が、この放課後児童クラブの登録者数と、全国の小学校等の児童数データを基に、小学生のうち児童クラブを利用している人数の割合を計算して公表しました。雑木林氏からデータ利用の許可を得ましたので、以下にて紹介します。雑木林氏、ありがとうございました。そろそろ本名で活動されてもいいのではないでしょうか、というのは余計なお世話ですね。なお小学生には、義務教育学校に通う児童を含みます。
公立小学校・義務教育学校の児童数/放課後児童健全育成事業登録児童数/登録率
小学1年生 887,460/456,418/51.42%
小学2年生 923,644/422,493/45.74%
小学3年生 951,915/338,356/35.54%
低学年 2,763,019/1,217,267/44.05%
小学4年生 987,369/198,714/20.12%
小学5年生 995,990/102,111/10.25%
小学6年生 1,006,370/52,553/5.22%
高学年 2,989,729/353,378/11.81%
全学年 5,752,748/1,570,645/27.30%
小学1年生では2人に1人以上が、放課後児童クラブを利用しているということです。これを社会インフラと呼ばずして何と呼びますか。2年生にしても2人に1人近くが児童クラブに通っているのです。1~3年生では、10人のうち4人以上が児童クラブに登録しているのですよ。それほどまでに児童クラブは必要とされているのです。
高学年になるともちろん登録の割合は大きく減りますが、それでも4年生の20パーセントというのはかなり高い数値です。しかも待機児童数を考えると利用ニーズはもっともっとある学年です。
小学生全体では27.3%ですから、4人に1人が児童クラブに通っているといえるのです。児童クラブには、その整備充実に、もっと税金、公のお金が投下されて内容の拡充を急ぐべきなのです。児童福祉でも、もはや児童クラブはニッチな世界ではないのです。重要なポジションを占める児童福祉の重点施策です。
2 児童クラブの数も増えました。支援の単位は過去最高です!
支援の単位の数は3万9424と、令和6年より1302も増えました。増えた利用者数(こどもの登録人数)と比べてみましょう。1つの支援の単位は「おおむね40人」であることが厚生労働省令によって求められています。増加した1302支援の単位数に40人を乗じると、5万2080人となります。この1年間で5万693人の登録人数が増えたのですから、支援の単位数の増加分と、ほぼほぼ釣り合っています。数値上では、増えた支援の単位数に相当するだけのこどもの登録人数が増えたことになりますね。量的な整備が着実に進んでいるといえるでしょう。
なお、改めて支援の単位について。児童クラブの数を数える場合に、2つのモノサシが必要です。1つは、「支援の単位」という数え方です。実際にクラブ内で過ごすこどもの集団、まとまりのことです。2015年度から導入された考え方、数え方です。そしてもう1つは、児童クラブがある施設そのものの数です。クラブ数と考えておおむね大丈夫なのですが、必ずしもそうではありません。1つの大きな施設に、複数のこどもの集団があるとき「1施設に複数の支援の単位」があることになり、この場合、その複数の支援の単位を「クラス」と呼んで区分することもあります。この場合は、1つの施設に複数のクラス=複数の支援の単位、となります。実はこの区別の仕方に関して勘違い、捉え違いが市区町村にあったので、支援の単位数や施設数のデータを過去と単純に比較することに、若干の疑義が生じてしまうのですね。
3 待機児童の人数は減りました!
令和7年の待機児童(=児童クラブを利用したくてもできなかったこどもの人数)は減りました。待機児童数は1万6330人で、令和6年の1万7686人よりも、1万6330人の減少となりました。
(学年別内訳)
小学1年生: 1,966 人【前年比 243 人減】
小学2年生: 1,805 人【前年比 311 人減】
小学3年生: 3,305 人【前年比 574 人減】
小学4年生: 5,589 人【前年比 118 人減】
小学5年生: 2,644 人【前年比 112 人減】
小学6年生: 1,021 人【前年比 2 人増】
学年別でみますと、小学4年生の待機児童数は依然として人数が多く、前年と比べての減少人数も少ないですね。これが「小4の壁」です。待機児童については改めて投稿しますが、この小4の壁は、多くの地域で、低学年の入所を優先するために結果的に小学4年生の入所希望者が弾かれてしまうことから発生します。5年生、6年生になると、児童クラブの利用を考えない、又はあきらめるのでそもそも入所申請手続きをする子育て世帯が減りますから、待機児童も結果的に減ることになります。低学年の待機児童数が減っているのは、とりもなおさず、量的な整備が進んでいるからでしょう。ただしその量的な整備は低学年の利用ニーズに応じることで精いっぱいで、高学年の利用ニーズには応じられていないことが想像できます。つまり「まだまだ児童クラブは足りない!」のです。
なお令和2年の待機児童数は1万5995人で、前年の令和元年より2266人減っていました。令和2年は2020年5月1日時点の調査結果ですが、新型コロナウイルス流行による小学校臨時休校の影響があります。
令和7年の待機児童ですが、東京都(3,360 人)、埼玉県(1,681 人)、兵庫県(1,464 人)、千葉県(1,106人)、神奈川県(1,067 人)で全体の約5割を占めていると、実施状況に記載があります。
4 待機児童が多い市区町村は?
1 東京都杉並区 481人(令和6年は371人で順位5)
2 兵庫県宝塚市 329人(令和6年は314人で順位6)
3 兵庫県尼崎市 323人(令和6年は269人で順位8)
4 千葉県市川市 283人(令和6年は205人で順位17)
5 東京都中央区 275人(令和6年は226人で順位12)
6 神奈川県茅ヶ崎市 257人(令和6年は200人で順位19)
7 兵庫県姫路市 255人(令和6年は225人で順位13)
8 神奈川県藤沢市 254人(令和6年は174人で順位22)
9 東京都目黒区 246人(令和6年は214人で順位16)
10 埼玉県所沢市 227人(令和6年は392人で順位2)
11 東京都葛飾区 227人(令和6年は383人で順位4)
12 東京都立川市 219人(令和6年は242人で順位9)
13 兵庫県西宮市 218人=小学3年生まで受入(令和6年は174人で順位23)
14 埼玉県朝霞市 209人(令和6年は197人で順位20)
15 埼玉県越谷市 208人(令和6年は395人で順位1)
16 埼玉県さいたま市 197人(令和6年は288人で順位7)
17 大阪府東大阪市 197人(令和6年は136人で順位33)
18 静岡県浜松市 189人(令和6年は202人で順位18)
19 東京都足立区 179人(令和6年は388人で順位3)
20 宮崎県宮崎市 175人(令和6年は173人で順位24)
令和6年に待機児童数がとても多かった自治体が順位を下げています。つまり事態が改善に向かっています。一方で、そこそこ待機児童数が多かった自治体が押し上げられる格好で順位としては悪化していますね。
5 株式会社が運営する公設の児童クラブが依然としてどんどん増えています!
数値を紹介する前に、重要な点を説明します。
児童クラブの運営を考えるときは、「設置主体」(施設を設置して、放課後児童健全育成事業を実施したいと考えている立場)と、「運営主体」(児童クラブの施設を使って、放課後児童健全育成事業を運営している立場)で考えることが必要です。そして、放課後児童健全育成事業は市町村の事業(民間も行うことができますが)あって、本来は市区町村が行う放課後児童健全育成事業を民間(企業や法人、保護者会や運営委員会など)に委ねることもできます。民間に任せる手法としては「業務委託」があり、「指定管理者制度」で運営をさせることもできます。また、民間が自分たちで行う放課後児童健全育成事業に対して市区町村がお金を渡して補助することもできます。
設置主体が市区町村等の地方公共団体のときは「公立」や「公設」と呼び、民間の場合は「民立」や「民設」と呼びます。運営主体も同様で、地方公共団体が運営する児童クラブは「公営」、民間の場合は「民営」となります。このため、「公立(公設)公営」と「公立(公設)民営」、そして「民立(民設)民営」の3つの組み合わせで、児童クラブは運営されています。(民立公営は、ありません)
いま、放課後児童クラブを運営することで市区町村から補助金を受け取り、その補助金の一部を収益として計上することで事業の柱とする民間事業者が増えています。それを運営支援ブログでは「広域展開事業者」と呼んでいます。株式会社が多いですが非営利法人にも広域展開事業者は珍しくありません。児童クラブの運営を任されることで得た利益をがっちりいただく、つまり補助金ビジネスです。この補助金ビジネス、放課後児童健全育成事業のアウトソーシングですが、「公の事業を代わりに行うことで」利益を得る仕組みです。広域展開事業者に多い株式会社は公立(公設)クラブの運営をすることで利益を得る、ということです。その、公立(公設)クラブを運営する株式会社が、ものすごい勢いで増えている、ということが実施状況の調査結果から浮き彫りになっているのです。では、数字を見ていきましょう。
公立民営クラブは13,543、すべてのクラブ全体で25,928クラブあるうちの52.2%を占めていますが、その中で株式会社のクラブは4,299あり、全体の16.6%を占めています。令和6年より745クラブ増えました。2番目に多いのは社会福祉法人運営のクラブで3,126、全体の12.1%です。3番目に多いのは運営委員会・保護者会運営のクラブで2,362、全体の9.1%でした。児童クラブ運営でよくイメージされるNPO法人は1,681クラブで全体の6.5%となっています。なお公立公営クラブは5,800クラブで全体の22.4%。前年より376クラブも減りました。民立民営クラブは6,585あって全体の25.4%です。民立民営クラブのうち、株式会社運営のクラブは664クラブ、全体で2.6%しかありません。いかに株式会社が、公立(公設)クラブの運営を手掛けることをビジネスとしているかが一目瞭然でしょう。これがすなわち「児童クラブの市場化」ということです。(もっとも非営利法人で全国各地のクラブを運営する団体もまたどんどん増えています。児童クラブは、やり方次第で「儲かる」商売になったのです)
では令和2年の、公立民営の株式会社児童クラブの数はどれほどだったか。2,109、全体で26,625クラブあるうちの7.9%でした。令和7年は令和2年と比べて倍増しました。一方、公立公営クラブは8,103クラブ、全体の30.4%でした。2,300クラブほど減少しました。公営クラブの減少分をほぼほぼ株式会社が引き受けているといえるでしょう。これがすなわち児童クラブのアウトソーシングの進行であり、補助金ビジネスの拡大でもあるのですね。
さて、もっともっと紹介しなければならないデータがたくさんありますが、今回はこれまでとし、今後も順次、紹介していきます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆
「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
☆
New! いわゆる日本版DBS制度を専門分野の1つとして事業者の取り組みを支えたいと事業活動を始めた新進気鋭の行政書士さんをご紹介します。「行政書士窪田法務事務所」の窪田洋之さんです。なんと、事務所がわたくしと同じ町内でして、わたくしの自宅から徒歩5分程度に事務所を構えられておられるという奇跡的なご縁です。窪田さんは、日本版DBS制度の認定支援とIT・AI活用サポートを中心に、幅広く事業所の活動を支えていくとのことです。「子どもを守り、あなあたの事業も守る。」と名刺に記載されていて、とても心強いです。ぜひ、ご相談されてみてはいかがでしょうか。お問い合わせは「日本版DBS導入支援センター | 行政書士窪田法務事務所」へどうぞ。
☆
(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
