1年後に迫る「日本版DBS制度」。放課後児童クラブ(学童保育所)の世界は激変必至。メディアはぜひ伝えてほしい。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 2026年12月25日から、こども性暴力防止法が施行されます。そしてこの法律が定めるところによって、いわゆる「日本版DBS制度」がスタートします。こどもに関わる業界に大変革を迫る新制度です。マスメディア、報道機関はおそらく1年前のタイミングで日本版DBS制度について報道することがあるでしょう。その特集記事では多角的にこの制度を取り上げていただきたいと運営支援は期待します。とりわけ、こどもに関わる業界の中では目立たない存在である、放課後児童クラブの世界がこの制度でどのような影響を受けるのかについて、ぜひとも取り上げていただきたいと願っております。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<日本版DBS制度>
 こども性暴力防止法は、ごく簡単にいえば、「こどもに関わる施設と、その施設で従事する人に対して、こどもへの性暴力を起こさないようにする仕組みを義務付ける」というものです。こどもへの性犯罪防止ということですが、大きく分けると「事業者が、業務に従事する者に対してしっかりした研修を実施してこどもへの性暴力を抑止する」という点と、「事業者が、業務に従事する人が過去に特定の性犯罪を起こして有罪となったかどうかを把握したり、そのような人を雇用しなかったりすることによって、原則としてこどもと関わる仕事に従事させないようにする」ということです。
 こどもに関わる施設というのは児童クラブもそうですが、学校、保育所、幼稚園や認定こども園、放課後等デイサービス、学習塾、スポーツクラブなど、いろいろな業界があります。そのうち、この制度が義務となる施設と、事業者が希望して認定を受けることでこの制度を受けいれることができる任意の施設があります。学校や保育所は義務で、児童クラブや学習塾、スポーツクラブは任意となっています。

 今も頻繁にこどもに対する性犯罪が報道されています。どの犯罪も等しく起こってはならないのですが、こどもへの性犯罪は、こどもを苦しめ、こどもの人権を踏みにじる、あってはならない犯罪です。大人が支配する関係の下で、なかなか気づかれないまま長期間にわたって犯罪行為が続くこともあって、こどもをとても苦しめる許しがたい犯罪です。そのように感じる人がごく普通に大勢おられることでしょう。この日本版DBS制度は、そうしたこどもへの許しがたい性犯罪を防ぐ制度として期待され、法律は国会で全会一致で可決成立しました。「日本版DBS制度で、こどもへの性犯罪はきっと大きく減少するだろう。食い止められるだろう」と期待している人も大勢おられるとわたくし萩原は考えています。わたくしも、この制度の目指すところに賛成です。なんにせよ、「こどもを性犯罪から守る」ことは大事です。
 ただ、どんなことでもそうですが、絶対的にどんなことでも受け入れるという態度、すなわち思考停止は、思わぬ落とし穴に落ちることがあります。こと、「こどもを守る」という万人が賛成することに関しては、「こどものため」という理念が「錦の御旗」となってしまいがちで、「では、こどもを守るという制度は全ての点において問題はないし、問題があっても受け入れるべきだ」という意識に同調を迫られることもあると、わたくしは考えます。

 制度というものはなんにせよ、すべての分野において完璧、完全であることはなかなかありません。主目的を達成するために、「その他の小さな分野」は我慢や妥協を強いられることもあります。全体として社会の利益になるのであれば、ごく一部の不利益が受ける不都合は受け入れてください、ということです。制度というものは得てしてそういうものだと考えると、この日本版DBS制度に関してわたくしが思うのは、こどもと関わる分野の中でなかなかその重要性や制度の仕組みが社会に伝わり切れていない、あるいは表面的な理解に留まっている児童クラブという分野が、「こどもを守るために作られた日本版DBS制度」の中では、厳しい状況に置かれる可能性が高い、ということがいよいよ明白になってきた、というものです。

 それは、現時点で想定されている仕組みをもってこの制度を正しく受け入れようとするならば、事業者が負うコストがかなりのものになると想定されるからです。求められる業務量が膨大であるので、当然、それにかける時間はかかりますし、業務量と時間がそれに応じて必要ということは金銭的なコストがかかるということです。ここで「こどものことだから、コストについてとやかく言うな。最優先でコストを費やせ。それができない事業者は、こどもに関わる事業を手掛ける資格が無い」と切り捨てるのが、わたくしに言わせれば思考停止です。誰だって部外者であれば気楽に言えます。最低賃金が払えない会社はつぶれてしまえ、という論調がまさにそうです。払いたくても自らの工夫ではどうにもならない業種や業態もある中で、対応できないなら退場しろ、倒産は当然だと言うのは、無責任すぎる意見です。
 この日本版DBS制度でいえば、「こどもに関わる業種や業態に関わらず、事業者の規模が大きい、つまり人的資源も財務基盤もしっかりしている事業者であれば対応できる制度であって、そうではない事業者にとっては対応することが難しい」ということになります。これはつまり、こどもに関わる業種や業態、それが学校や保育所や児童クラブや学習塾に関わらず、事業者が大きければ大きいほど対応が可能となることであって、こどもに関わる業種や業界の市場の寡占化を強力に推進する影響を及ぼす、ということがいえるでしょう。公立の学校は自治体が設置しています。自治体が倒産して消えることはありません(行政機関が人手不足で困っているのは事実でしょう)。保育所をたくさん運営している社会福祉法人も、そうそう潰れやしないでしょう。大都市圏で数十もの教室を運営している大きな学習塾会社も、全国で数百、1000以上の児童クラブを運営する広域展開事業者も、余裕でこの制度に対応できるでしょう。つまり日本版DBS制度は、そのような規模の事業者を想定して作られている制度だとも言えるでしょう。会社に法務や労務や総務を担当する部門があって、つまりバックオフィス機能が当たり前に整っている企業、会社がこどもに関わる事業を手掛けている「はず」という想定のもとで練られている制度だといえるでしょう。

 一方で、保護者が運営していたり、保護者が作り上げた非営利法人が運営していたりという形態がとても多い児童クラブの世界は、まだ十数社しかない広域展開事業者を除けば寡占化の対極にあります。小さな小さな無数の事業者で成り立っているのが児童クラブの世界です。本部事務所機能を備えている事業者が少数派です。現状を世間に伝える発信力も無い。だからこそ、世間になかなか実態が知られていないのです。そして日本版DBS制度は、その児童クラブの世界の中で、対応できる事業者が限られているという点で、市場の寡占化を進行させるということになるでしょう。

 具体的に、児童クラブに関してこの日本版DBS制度がどのような影響を及ぼしそうなのか、懸念点はどこにあるのかについては、この制度に詳しい弁護士で、児童クラブの運営にも携わった経験がある鈴木愛子氏のブログをぜひご覧ください。法律家の視点と児童クラブの立場の視点、この双方向の視点で具体的に種々の課題や問題を鋭く指摘しています。(弁護士aikoの法律自習室) 

<ただでさえ厳しい人手不足が致命的になるのでは>
 児童クラブの世界は、この運営支援ブログで数えきれないほど書いているように人手が足りません。もうずっと大昔からそうです。どれだけ人手不足なのか、一度、スマホやパソコンで、「学童 求人」と検索してみてください。以後ずっと、スマホやパソコンの画面に出てくる広告が、児童クラブの求人広告で埋め尽くされますよ。慢性的な人手不足は、給料が安いこと、その給料の額に釣り合わないほど多い業務量や、求められる責任の重さ、家事やこども、配偶者の帰宅時間と重なる就労時間という、種々の不利な点からもたらされています。とりわけやっぱり、給料が安いことですね。そもそもわたくし萩原は、児童クラブの職員のその職責に見合った賃金を社会がしっかりと出すという意識を根付かせたくて、この運営支援の活動を旗揚げしたのですからね。
 また、今も大手の広域展開事業者がバンバンと求人広告を打っていてわたくしは怒りを覚えているんですが「こどもを見守る仕事です」とか「こどもを見守る簡単な仕事です」というセールス、キャッチコピーで、児童クラブで働く人を募集していることが、児童クラブが求める本当の仕事と、気楽に働きたい人が考えて求人広告のキャッチコピーで受ける印象で思い描く「気楽な仕事」との深刻なギャップ、ズレが、なかなか児童クラブで働く人が長続きしない原因だとわたくしは考えています。短期や週1~2日程度の非正規就業はまあ当然にあるとしても「こどもを見守るだけの簡単な仕事」で応募してくる人が、ハードな児童クラブの仕事で続くわけがない。
 しかしそれは、「そうでもしないと、とても求人広告を見て応募してくれる人がいないから」の裏返しでもあるわけです。本来そこは、時給や月給額の高さでカバーしたいのですが、そもそも最低賃金並みですからね。こどもと遊ぶだけの簡単な仕事とでもPRしなければ、応募してくれる人が現れないということです。
(だからこそ国はもっと児童クラブで働く人の賃金水準を真剣に考えなさいとわたくしは申し上げ続けています)

 とはいえ、世の中には「給料は低くても、こどもを支える仕事がしたいから」という人もいます。ありがたいですね。また、夏休みや春休みなどの小学校が休みの間だけ、働いてくれる人材も貴重です。学生アルバイトや、小学校の給食の調理員や学級補助員の方が長期休業期間中だけ児童クラブでアルバイトしてくれると、現場はとてもありがたいのです。

 日本版DBS制度は、新たに児童クラブで働いてもいいよ、という人に大きな関門として立ちはだかる可能性が極めて高いと、わたくしは考えます。それは、この制度を受け入れることにした児童クラブ(=認定事業者となった企業や法人、団体が運営する児童クラブ)で働こうと考えた人にとって、過去にもちろん特定の性犯罪の前科がない人でも、「戸籍情報の入手、提出」という、とても手間ひまがかかる作業が必要となるからです。夏休みの間、数回だけアルバイトとして働くことを考える人でも、週に1回だけ児童クラブで働いていいいかなと考えている人でも、等しく変わりありません。
 「こどもと遊ぶだけの気楽な仕事か。なら働いてみようか」と、気軽に気楽に働こうと考える人にも、同じです。

 「えっ、戸籍を取って提出するの? そのお金も自前で? そんな面倒くさいことは嫌だね。倉庫で仕分け作業でも、スーパーのレジや品出しでいいかな。コンビニやファストフードでいいかな」と判断する人が必ずや続出するでしょう。
 こども家庭庁が示している中間とりまとめにも、「戸籍・除籍については、表中の電算化戸籍・除籍、イメージ除籍のほか、地方自治体の電算化対応状況等により、紙により管理されている戸籍・除籍が一部存在する。この場合には、地方自治体窓口で紙媒体による戸籍・除籍を入手し、こども家庭庁に提出することが必要となる。」とあります。すべての人が紙管理の戸籍であることはないでしょうが、紙で戸籍を取り寄せる、手に入れる必要がある人は必ずでてきます。そもそも、マイナンバーカードを利用してデータで戸籍情報をこども家庭庁に提出する、という手間ひまを、最低賃金程度の時給の児童クラブで働くために、問題としないかどうかは、わたくしには何とも言えません。いや言い切りましょう。「いちいち戸籍情報を手に入れて国に提出するぐらいなら、そんなのが不要なバイトやパートを選ぶ人が続出する」と。
 また、言いにくいことですが、こういう、うがった見方すら可能性として成り立つのではないでしょうか。「そんな手間ひまを問題としないで児童クラブ(や、他のこどもと関わる仕事)であえて働くことを熱望する人は、将来の仕事のためとか強い使命感があるのでしょうが、本当にそうなのか?」ということです。高いハードルを越えてきてもなお、こどもに近づきたいという考えを抱く人、汚らわしい言い方をすれば「こどもへの異常な接近思考の純度が高い人は、そんなハードルはものともしない」ということです。

 この戸籍に関わる処理の期間ですが、中間とりまとめでは「日本国籍の場合:標準処理期間=2週間から1か月」と示されています。最短でも2週間かかるというのでは、児童クラブの場合、とても痛いです。なかなかアルバイトが決まらない、夏休み直前に「学童のバイトでもしてみようか」と決めてくれる学生やフリーターがいるなかで、「では戸籍情報処理で2週間」となったら、もうお盆休みが見えてきてしまいます。冬休みなんて北日本でなければ、終わってしまいます。急に職員が辞めることも珍しくない児童クラブ業界で、急に補充の人員が必要となっても、なかなか求人応募者が少ないのにさらに2週間もかかるのでは、その間の児童クラブ運営がとても回りません。そういうハードな期間が積み重なると、辞めずにいてくれる職員も疲弊してしまい、「仕事がきつすぎます。休みも取れません。なので私も辞めます」となってしまう可能性があるのです。

 手間ひまだけの問題ではありません。こと、究極の個人情報である戸籍の情報を国に提出するわけですが、そのこと自体への忌避感もまた無視できません。

<どのように対応できるか>
 児童クラブは、波動的な労働力を必要とする業態です。夏休み、冬休みや春休みはいうに及ばず、土曜日も、労働力確保に悩ましいのです。児童クラブの事業者は得てして人件費の予算が少ないので、雇う職員数つまり現場に配置する職員の人数が少ないのが通例です。しかし当然ながら休日はしっかり付与しなければなりません。正規職員、正規スタッフ、常勤職員スタッフが休みの日にその穴埋めとなる頼りとなる非常勤のパート、アルバイトが必要です。常勤も非常勤も足りない児童クラブで、さらに就労のハードルを日本版DBS制度は高く上げるわけですから、日本版DBS制度時代の児童クラブは、職員の確保に必ずや苦労します。

「それは認定事業者になった場合の話ですよね。では、認定事業者にならなければいいのでは?」という指摘はごもっとも。それは、あす以降に取り上げます。認定事業者にならない児童クラブはそもそも先行きが危うい、ということです。

 日本版DBS制度は、組織運営業務に人手を割けない零細規模の児童クラブにはとても過酷な制度です。鈴木弁護士が繰り返し指摘していますが、こどもを性犯罪から守る理念は崇高としてもその理念のために作られた制度に従うために必要なコストが、児童クラブを運営するに必要な能力や資源を超過してしまう懸念がとても大きいのです。結果として、こどもの居場所である社会インフラたる児童クラブの存立そのものが脅かされてしまう恐れがあります。こと、こどもの安全安心な居場所であってこどもの健全な成長を支えることで保護者の社会経済活動の継続を可能とする社会インフラが、その存立が難しくなったとしたら、結果として社会への損害となる恐れがあるのです。
 しかし、この制度は社会全体においてこどもを守るシステムとして、1年後には施行されます。児童クラブという、こどもと関わる業界では目立たない業種で、その中でも事業規模がとても小さい、保護者運営や、地域に根差した児童クラブ運営事業者のようなニッチなニッチな存在のことまでとてもきめ細かなフォローができない制度でもあります。
 規模が大きい広域展開事業者であれば、対応はできるでしょう。事業費として得られる予算の2割程度を事業者の純利益として計上しているのであれば、それを減らして人件費に回して従事者の賃金単価を上げれば、「それぐらいもらえるなら、戸籍の入手ぐらい、まあやってもいいかな」という求人応募者が増えるかもしれません。ただ、そもそも事業者の純利益などまったく計上していない小さな非営利法人や保護者運営系の児童クラブ事業者は、持っているコストを全て人件費に全振りしているので、賃金の上げようもありません。かといって、「児童クラブにはダメすぎる制度だから!」と怒っているだけでは、1年後から、本当に苦境に陥ることは明白です。まして、ただ単に指をくわえて見ているようでは、日本版DBS制度時代において必ずや事業が立ち行かなくなるでしょう。児童クラブを頼りにしている人の期待に応じられなくなりますよ。

 では規模の小さな児童クラブが日本版DBS制度時代において、どのように労働力を、職員を確保するのか。これといった決め手は残念ながらありませんが、次のようなことを地道に続けるほかないでしょう。
1 「戸籍に関わる作業の手間ひまを受け入れてまで働いてくれることを選んだ人を、逃さない」。短期のアルバイト希望でも、夏休みだけの雇用契約期間としないで、その年度いっぱいは雇用契約期間として、月に1回でも就労してもらいましょう。離職してしまうと、また最初からやり直しです。高校生や大学生のアルバイト希望者が、マイナンバーを使ってささっと戸籍関係の手続きをしてくれたなら、夏休みだけとか春休みだけにしないで、通年の契約をしておくことです。

2 「丁寧な説明をして、不安感を軽減させる。手間ひまへの忌避感を軽減させる」。日本版DBS制度もそうですが、現実的に新たな社会の制度や仕組みについて知っている一般の人はさほど多くありません。もっといえば、知らない人の方が圧倒的に多いでしょう。先日、わたくしは民設民営児童クラブの職員さんへの研修講師を引き受けましたが、受講者の方に「日本版DBS制度について聞いたことがある人はいますか?」と尋ねました。圧倒的多数の人が「知らない。聞いたことが無い」でした。今のスマホやパソコンで得るネット情報は、自分が興味関心のある情報をどんどんネットの向こう側が広告やニュースで表示してきますが、興味も関心もないことはさっぱり表示しませんし、情報として提示してきません。国の制度や法律について興味関心がない人の方がほとんどでしょう。ですから日本版DBS制度について、実は児童クラブで業務に就いている人ですら、よく知らないのが現実です。まして、戸籍うんぬんのことを知らずに応募してくるパートやアルバイト希望の人の方が圧倒的に多いと想定し、事業者側は、とても丁寧なガイドブック、手引きを作って、「こうすればこうできますから、大丈夫ですよ」と、分かりやすく求人応募者に示すことが欠かせません。そういう手引き、資料はなかなか事業者が独自に作れないでしょうし、いずれ国もそういう資料を作成するでしょうが、もっと思いきり分かりやすい内容の、入職手続き資料が必ずや求められるようになるでしょう。この点においては、手続きに詳しい行政書士がビジネスとして手掛けていける範疇ではないかとわたくしは考えます。

3 「確かに戸籍の手間ひまはあるけれど、それと比べても児童クラブの仕事が魅力的でありやってみたいと思う人を増やす広報戦略」。何が面倒くさいから嫌で、何が面倒でもやってみようと人それぞれが思うのは、結局のところ、相対的なものです。もともと児童クラブは、給料が安くてもこどもの成長を支えその成長が実感できたときの喜びを何物にも代えがたいとして従事している人ばかりです。もちろん本音はもっと給料をもらいたい、時給を上げてほしい、あるいは決められた時間内で目標の収入額に達成したい、というものでしょう。給料がちょっとばかり安くても、こどもたちを支えられるならという「やりがい」に依存した業種業態です。これが行き過ぎて「やりがい搾取」となっているのが問題ではあるのですが。このやりがい、つまり児童クラブでの仕事の価値を、もっと丁寧にしっかりとアピールして、「戸籍を手に入れるの? なんて面倒な。でも児童クラブで働いてみたい」という人を、求人応募者100人のうち01人でも2人でも確保することです。何もしなければ、手間ひまと比較して誰も求人に応募しない、あるいは辞退する人ばかりで0人ですが、「児童クラブには、こんな魅力があります!」と丁寧で正しいアピールを積み重ねて、0人を1人、2人とする努力が、今以上に求められるでしょう。

4「今まで以上に人脈、縁を頼っていく」。児童クラブにかつて在籍していたこどもが成長して児童クラブで働きたいとか、児童クラブにこどもを通わせていた保護者とか、定年退職や早期退職した教職員で献身的に頑張っている児童クラブ職員を見てきてとても評価していたのでそこで働いてみようと思った人とか、とにかく、児童クラブに縁があった人であれば、児童クラブのために頑張りたい、恩返ししたいという動機があるでしょう。そういう動機はとても強いものです。決して利益を求める動機を否定するものではありませんが、利益より恩情、感謝という動機はとても頼もしいものです。であれば、面倒な手続きも乗り越えてくれるでしょう。児童クラブ側はもっと縁に頼った求人を展開する必要があるでしょう。児童クラブ側には得てして、以前に保護者として対応してきた人がこちらの世界に入ってくることを敬遠する向きがありがちですが、そんなことを言っている場合ではございませんのよ。

5 「過酷な制度を乗り切るために必要な人的資源、財務基盤を整えるために、事業者の規模を大きくする。同じような理念の児童クラブ事業者と合併、合流、合体する」。運営支援は、これが一番効果的な手法だと考えます。今まで1団体1クラブ、予算3000万円で運営していて専従の事務作業担当者は0人、つまり保護者や職員が無償で兼業で事務処理している児童クラブ運営事業者があったとしても、それが10団体まとめれば予算は3億円になります。予算5000万円で運営している児童クラブ運営事業者が10集まれば5億円になります。専従の事務処理担当者だって置けるようになります。スケールメリットは、融通が利くカネを生みだしてくれるのです。そうすれば、日本版DBS制度導入に伴う種々の事務作業や手続き、情報の管理や研修実施においても事業者独自で組み立てられることができるようになります。職員の賃金水準も、事業者の利益確保を至上命題としていなければ上げることができます。この点、営利団体であろうが非営利団体であろうが関係なく、非営利団体であっていくつも児童クラブを運営している事業者であっても実は利益確保だけに熱心である、という組織は残念ながら現実にあります。わたくし個人では、営利法人ならまだ分かります。株式会社が利益を求めない方が異例だからです。しかし非営利法人の看板を掲げて実は事業者の利益確保だけに夢中であるという団体は、誠に残念極まりないですね。ともあれ、地域に根差した児童クラブ運営事業者は日本版DBS制度時代を乗り切るために、人手不足の深刻な影響を最小限に留めるために早急に合併、合体して大きくなってください。地域や県境を越えたって何ら問題ありません。

 日本版DBS制度のもとで、児童クラブで働きたいと思った人にはどういう手順が必要か、また児童クラブ側が認定事業者になるにはどういうことを考えていかねばならないのかといった手続きに関しては、継続的に日本版DBS制度に関する情報を発信している特定行政書士の戸田大介氏のnoteをご覧ください。(https://note.com/firm_parrot4575

 次回も、日本版DBS制度の施行1年前を迎える児童クラブについて投稿する予定です。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也