放課後児童クラブ(学童保育所)を利用する人、職員へのヒント。「児童クラブのトリセツ」シリーズ19は「学童で支払うお金」です。いろいろありますよ。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 放課後児童クラブのちょっとした知識を運営支援流に説明する「トリセツ」シリーズ。晩秋から初冬にかけては来年度の児童クラブ新規入所申し込みの時期ですね。きっと多くの「児童クラブビギナーズ」が気になるのが、「学童で支払うお金はどんなものがあるの? いくらぐらい?」でしょう。トリセツで児童クラブで必要な「お金」について説明しましょう。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<その82:放課後児童クラブで必要なお金:利用料>
 何はともあれ、利用料です。地域や運営事業者によって「保育料」「保護者負担金」「育成料」など、いろいろな呼び方があります。全国どこでも「保育料」ではありません。児童クラブは日本全国あちこちで、独自に発展してきた経緯がありますから地域ごとに内容がかなり違いますし、同じ市区町村にあってもクラブを運営する会社や団体が違うだけで中身がかなり違うことだってあります。
 さて利用料は、「児童クラブの運営に使われる」お金です。クラブ運営事業者にとって重要な収入です。運営にかかる費用は人件費が最も多いもので、他には光熱水費や賃貸物件の場合には家賃がかかります。「販売費及び一般管理費」いわゆる販管費に該当しますが、児童クラブの特徴として「広告宣伝費」の必要はほとんどありません。モノを売る企業は宣伝をしないとモノの存在が世間に伝わりませんので売れ行きに直結しますが、自治体から委託されたり指定管理者となっていたりする児童クラブは黙っていても毎年毎年、新規入所希望者が自らやってきますから宣伝する必要がありません。一方、児童クラブの補助金が交付されていない児童クラブや、「放課後児童健全育成事業」ではない、いわゆる「民間学童保育所」では、広告宣伝にお金をかけて入所者を集める必要があります。
 一般管理費に当たる管理部門も、小さな児童クラブではそもそも設置されていないことがありますし、運営本部や事務局機能はかなり大きな規模の児童クラブ運営事業者がようやく設けることができるぐらいで、規模もさほど大きくありません。運営するクラブ数が50前後になってようやく専従の役員や事務職員が数人雇える程度です。
 月額利用料の額もまたさまざまです。大まかに額ごとの特徴を紹介します。
無料~2,000円未満=かなり少ないです。国の調査(令和6年度の実施状況)では、25,054クラブのうち、たった305クラブ(1.2%)しかありません。無料となるともっと少ないです。無料とするのは、市区町村が「子育て支援」を強くアピールして人口減を食い止める目的と考えられます。児童クラブ運営事業者の収入が減りますが、自治体が一般予算から足りない分を出すことになります。
2,000円~4,000円未満=国の調査では4,139クラブ、全体の16.5%です。公営クラブに多い額でしょう。
4,000円~6,000円未満=国の調査では6,956クラブ、全体の27.8%で、最も多くなっています。公営クラブも、また公設民営クラブでも以前は公営クラブだった事業者には、この金額が多いと想像できます。
6,000円~8,000円未満=国の調査では4,863クラブ、19.4%で、2番目に多い金額です。
8,000円~10,000円未満=国の調査では4,127クラブ、16.5%で、それなりに多い金額です。この金額になりますと、通常は別途必要となる「おやつ代」や、延長料金を入れると月額15,000円前後になってきます。
10,000円~12,000円未満=国の調査では2,048クラブ、8.2%です。この金額を徴収する事業者は多くが非営利法人でしょう。職員の雇用を重視する運営ではどうしてもこの水準の金額が必要となってきます。

 利用料は、月ごとに設定している地域や運営事業者もごく普通にあります。一般的なのは、長期休業期間中と重なる月の利用料が高くなる場合です。8月のみ高くなるケースもあれば、春休み、夏休み、冬休みがかぶる月の利用料が細かく設定されているケースもあります。通常は3,000円でも8月のみ6,000円と倍額になることも普通にあります。

 児童クラブの分かりにくさは、地域によって利用料の金額が大きく異なることです。利用料が異なる要素としては次のようなものがあります。
・公営か、民営か。(なお民営だから必ず利用料が高いとは、いえません)
・自治体がどれだけ児童クラブの運営費にお金を出してくれるか。補助金だけでなく自治体独自の補助が影響する。
・運営経費がどれぐらい必要か。開設時間が長い、開所日が多いとなれば、それだけ経費が必要となる。
・職員の雇用形態。無期雇用か、有期雇用かで、必要な人件費が相当異なってくる。
・雇用する職員数。職員数が多ければそれだけ人件費が必要となるので徴収額も増える。
・期間限定入所(夏休みだけ利用)の場合。短期間の人員確保などコスト高になる要因ばかりなので当然に割高となる。

 一般的な傾向としては、公営クラブは利用料が低めです。「公営なのに高い」となれば住民からお叱りの声をいただくことになりますし、開設時間が短かったり開所日数が少なければ経費がかかりません。一番は人件費です。公営は「会計年度任用職員」が圧倒的に多く人件費が抑えられています。 しかし公営でも、午後7時まで開所しているとか、日曜日や祝日、年末年始以外は開所しているとなれば利用料が1万円近くに及ぶこともあります。
 民営クラブは必ず利用料が高いのか、といえばそうでもありません。公営クラブを民営化した場合は意図的に利用料を抑えている場合があります。徐々に利用料を引き上げていくことが多いでしょう。保護者会や運営委員会による民営クラブは、「利用者=利用料を支払う側」である保護者が「事業の運営責任者」でもあるので、「自分たちの経済的負担が増える利用料引き上げ」には慎重になりがちです。一方で、「利用する立場と運営する立場が非常に近接している」ので、職員がなかなか集まらないとか定着しない場合の危機感を容易に理解できるので「給料を上げるために利用料、保育料を上げよう」という方針変更が行いやすい点もあります。
 利用料が相対的に高くなるのは、職員の雇用を重視する運営形態です。保護者会由来の非営利法人が典型的です。職員をできるだけ無期雇用として賞与も退職金も用意する、となれば利用者からもそれなりの収入を得ないと職員を雇えません。なぜ無期雇用とするのかといえば、「育成支援の継続性」を重視するからです。こどもたちと長期にわたって関わっていくためには単年度の有期雇用ではなく無期雇用として職員にはずっと働いてもらいたいから、なのです。この育成支援を重視する運営事業者は、「常勤職員の複数配置」も重視してきましたが、これが人件費の増大を招いて運営を圧迫していました。国が2024年度から常勤職員2人配置の補助金を制度化したことは、だいぶ遅かったですが、丁寧な育成支援を考える事業者には朗報となりました。

 利用料に関しては、多くの地域で「減免制度」があります。生活保護を受けている世帯や、就学援助の対象となっている世帯については全額や半額が免除されることが多いです。また、ひとり親の世帯や、「きょうだい減免」として、2人目は半額、3人目は全額免除という地域もあります。減免は申請しないと適用されないことがありますから、対象となるかどうかは、必ず児童クラブ側や市区町村に問い合わせてください。
 「日ごとの減額」が利用料では問題となります。わたくし萩原も実務に就いていた時、「休んだ日にち分、利用料を減額してほしい」という要望を数えきれないほど受けたことがあります。新型コロナ流行期には、登所しなかった分だけ利用料を減額してくれないかという、非常に強い申出を保護者から何度も受けました。特別な場合は別として、欠席した日の利用料を減額する制度を採用している地域はほとんどありません。ゼロではないですがごく少数です。理由は、利用料は「事業全体の運営経費に充てるため」です。ある世帯が休んでも児童クラブは他のこどもが利用しているので開所していますし、職員を雇用しています。職員の配置は、児童クラブに登録しているこどもの人数を参考にして雇用しています。こどもが休んだからといって月給で働く職員の給料を減らすことはできません。(登所人数が少ないことを見越して、時給で働くパートやアルバイトのシフトを変更することはあります)。電気代も人数によって大きな変化はありません。種々の理由で、利用日数に応じて利用料を減額する制度を設けていない事業者、地域がほとんどです。ただ、月の途中で入所を認めている場合において、利用料もそれに応じて変更している事業者や地域はあります。

 なお、以上は「国から補助金を受けている」児童クラブです。補助金を受けない形態の民間学童保育所は、学習塾と同じで、利用者からの月謝、利用料が収入のほとんどを占めますので、利用料は5万円前後が普通。オプションとして送迎や夕食提供を含めると8万円を超えることもあります。こうした民間学童保育所は、多くが週ごとに利用料金を設定しています。週3日利用の1週間で4万円、週5日利用する週は6万円、という具合です。また、これは許されないことですが放課後児童健全育成事業を行って自治体に届け出ているのに、補助金を交付されていない運営事業者があります。これは公正に欠きます。自治体は改めるべきです。

 最後に、国は児童クラブの運営経費について、その半分を利用者が負担することを方向性として示しています。利用料の引き上げに踏み切る自治体は必ずといっていいほどこの方向性を根拠として示します。この方向性はもう止めるべきだと運営支援は考えます。「次元の異なる少子化対策」が高市政権でも引き継がれているかどうか不明ですが、児童クラブは働きながら子育てするために必要な社会インフラですから、その利用料については格段の配慮が必要です。利用者の2分の1負担の方向性は取りやめるべきです。市区町村の負担も同様に減らして児童クラブの整備に自治体がもっと取り組めるようにするべきでしょう。

<その83:おやつ代>
 おやつ代は「実費負担分」の位置付けとなっていることが圧倒的です。よって利用料の減免制度があっても、おやつ代は減免対象外となることも多いです。額も様々で、日額50円や日額100円の場合があれば、月額1,000円や2,000円ということもあります。おやつを出さない児童クラブもありますが、その場合は当然、おやつ代は不要です。なお、利用料が1万円以上の児童クラブ運営事業者では、おやつ代が利用料に含まれていることも珍しくありませんので、児童クラブの料金が高い、安いを考えるにあたっては、「純粋な利用料」で比較する際に、利用料が高い方の児童クラブの利用料におやつ代が含まれていると正確な比較にはならないことに注意が必要です。
 おやつは、業者から購入することが多いですが「手作り」おやつを児童クラブの目玉としていることもあります。児童クラブのおやつ専門業者もありますし、宅配スーパーや生協の利用もあります。手作りの場合は、児童クラブの職員が近隣の店で食材を購入します。
 おおよそ、費用で言えば、「手作り<既製品」といえます。手作りの場合は、その時々に安い食材をまとめて購入して調理し、おやつとして提供できます。しかし人件費はかかります。購入の場合は、職員が店に買い物に行くか、配達してもらう場合がありますが、配達の場合は業務量としては少ないですが、配送料が上乗せになるので割高になります。また、購入に当たっては個数制限があると、40~50人以上のこどもに提供するには困ることもあります。

 おやつ代は、昨今の物価上昇の直撃を受けています。おやつとして提供する品数を減らさざるをえなかったり安い値段のおやつに切り替えざるを得なかったりと、児童クラブ職員を悩ましています。「無添加無着色で、国産のお菓子を出してください」と保護者から要望を受けることも珍しくないですが、そのようなおやつは、得てして割高です。出したくても提供できないこともあります。
 食物アレルギーの関係で、こどもに児童クラブで提供するおやつをだせない場合は、おやつ代を徴収しないか、いったん徴収しても返金することになります。その場合、保護者が事前に、こどもが食べられるおやつを用意して児童クラブに届けることになります。

 国の調査では、おやつ代を含む実費負担分の金額ごとによる集計もされています。実費徴収なしが全体の36%で案外と多いです。おやつを持参する形態のクラブもそれなりにあります。次いで2,000円から2,500円未満の区分が全体の19.1%となっています。

<その84:延長利用料>
 児童クラブによっては、「午後5時まで」「午後6時まで」と時間帯によって利用料を定めている事業者があり、それは決して珍しいことではありません。例えば午後6時までは基本利用料で、それ以降は延長利用料が必要、というパターンです。延長利用料は当然ながら運営経費を加味して設定されていると想定されます。延長利用料を設けずに、午後7時までの利用に対して利用料を設定している児童クラブ事業者もごく普通にあります。こうした料金制度の違いもまた、児童クラブの全体的な理解を妨げているものになっています。本当に、地域が違えば料金制度は、まったくバラバラに違います。よって「児童クラブは、得てして、こういうものだ」という統一的な見解を児童クラブに関しては得ることが極めて難しいのです。
 注意が必要なのは、「延長利用料の見落とし」です。児童クラブの説明書(得てして、大量の文字がずらーっと並んでいる)の一部だけ、あるいはさっと目を通しただけで、「うちの地域の学童は、とても料金が安い!」と喜んでいたら、それは実は午後5時までの基本的な利用料だけで、午後6時まで利用ではプラス2,000円、午後7時まではプラス3,000円という料金形態になっていることがある、ということです。基本利用料3,000円で「思っていたより安い」と安心していたら、実はほぼ連日午後7時近くまで児童クラブを利用する生活状況で、毎月の利用料は6,000円だった、というパターンです。6,000円にしてもそれで1か月、こどもが安全安心に過ごせる場所を利用できるならリーズナブルな料金ともわたくしには思えますが、料金が高い安いはあくまで個人的な感覚ですからね。3,000円で済むと思ったら倍額の6,000円だったとなると、腑に落ちない人もいるでしょう。しっかりと、入所の手引きや入所の案内書、説明書は、目を通してくださいね。 

<その85:時間外料金>
 これは、児童クラブの閉所時刻を過ぎてなお、こどもの引き取りに間に合わなかった場合に課されることが多い料金です。運営経費に充てることになりますが、「閉所時刻を過ぎての迎えを忌避させるため」に設定されることもあります。この時間外料金そのものの設定をしていない児童クラブ事業者もあります。
 時間外料金は、トラブルになりがちです。午後7時までにこどもの迎えに来られた場合は問題はありませんが、午後7時1分だった場合、「1分ぐらい大目に見てよ!」という保護者は必ずいます。規則は規則なので、規則通りに対応する児童クラブ職員や運営事業者がほとんどですが、万が一、「うん、じゃあ今回だけ」と職員が「温情」を出してしまったらどうなるでしょう。必ずこうなるとは言えませんが、得てして、「実はこの前、1分遅れたんだけど、〇〇先生が見逃してくれたの!」と保護者が他の学童保護者の友だちに話そうものなら、もう大変です。その友だちが少しお迎えに遅れたら「だって先生、〇〇さんには温情をかけたってそうですよね。だったらわたしにも」となります。そしてそのクラブの規律は崩壊していくのです。
 児童クラブの職員側としても、保護者とは円滑な関係を築いていたいのです。時間外料金の請求を見逃して、などと職員の気持ちを逆手に取るような働きかけは保護者がしてはならないと運営支援はきつく申し上げておきます。
 仮に、多くの保護者が迎えに間に合わず、時間外料金の請求が頻発しているのであれば、それは事業者側が設定している閉所時刻がその地域で子育て支援を受ける保護者の生活状況と適合していないことになりますから、閉所時刻を後ろにずらすことを、行政や事業者に求めていくべきでしょう。

 この時間外料金の設定も案外と難しく、ごく普通に支払える額、つまり遅れた時間に「そのぐらいの追加費用なら、まあ遅れてもいいや」と保護者に思われてしまう額ですと、閉所時刻を守ろうという意識が保護者に薄れてしまいます。かといって「ペナルティ」の性質を強く帯びさせると、こんどは「そんな高額、とても支払えない」となって、該当する保護者の納付拒否、つまり未納を招いてしまいます。
 10分単位で数百円が落としどころでしょうが、ペナルティ的な時間外料金では15分1,000円単位ということもあるでしょう。

 なお、こどもの迎えの遅れが不可抗力による場合の取り扱いは、運営事業者が配慮するべきだろうと運営支援は考えるものです。公共交通機関の遅れは当然に、強烈な雷雨がお迎え時間帯に起きたなど天候の急変や地震などによる急な迎えの要請においても、適用は柔軟に取り扱うべきでしょう。これもまた、「車を利用して通勤している保護者の、道路渋滞や車の故障によるお迎え遅れ」の取り扱いがとても厄介な問題です。事業者が決めた基準で対応すればいいだけのことですが、「電車が事故で遅れたら時間外料金は免除なのに、道路が事故でふさがっていて遠回りをした、渋滞になった、それでお迎えが遅れても時間外料金を支払うんですか? 納得いきません!」という保護者さんは必ずいることでしょう。どういう取り扱いをするにしろ、新たに児童クラブを利用することとなった保護者には、特に丁寧にしつこく「うちは、こういうルールです」ということを説明することが欠かせません。

<その86:保護者会費(父母会費)>
 児童クラブを保護者たちが運営する形態はかなり減っていますが、それでも国の調査では、公設民営の児童クラブの1割が保護者会又は運営委員会による運営です。保護者が運営に関わる児童クラブでは、ほぼ確実に保護者会(父母会)があります。また、公営クラブでも、保護者運営を由来とする非営利法人クラブや、場合によっては株式会社が運営するクラブでも、保護者会があることもあります。保護者会があると、たいていは、保護者会費の徴収があります。これは利用料に含まれませんので、注意が必要です。保護者会については強制加入の問題もありますが今回は取り上げません。保護者会が必要となる理由は運営支援の解釈では3通りです。
「保護者会や運営委員会運営の場合は、保護者会が運営の責任を負う運営主体そのものなので、設置は当然に必要」
「公営クラブやルーツが保護者運営だった法人が運営する児童クラブの場合は、児童クラブ運営業務の一部を担っている(代行している)ために保護者会を必要としている」
「保護者の親睦や交流を図るため、イベントの実施をするために保護者会を設けている」
 それぞれに必要性が異なるというのが運営支援の解釈です。

 保護者会費の料金設定は千差万別です。1か月数百円が多いでしょうが月額1,000円、年間で12,000円のクラブもあるでしょう。料金設定はイベントの実施回数や規模にもよります。保護者会費で児童クラブ施設の改修や必要な物品の購入もしていれば当然に料金は高くなります。一方で、年に数回程度の会合で意見交流をするための保護者会であれば、その時のお茶菓子代ぐらいでしょうからさほど高い額にはならないでしょう。
 保護者会費を巡るトラブルとしては、途中退会の場合の返金があります。保護者会費を年度初めに一括、または半年分を納付した後で児童クラブを途中で退所、退会する場合の取り扱いです。昔ながらの児童クラブでは年度途中の退会を想定していないことから返金に関する規定がなかったり、保護者会の運営に支障が出ることを恐れることから返金を認めないという規定があったりします。これには注意が必要です。児童クラブを途中で退会して保護者会に参加しない、保護者会活動による利益を受けることもないのに、前納した保護者会費が在籍していない期間(月数)においても返金されないことは、運営支援の立場からすると、問題があるとします。消費者契約法や民法との関係でも決して「問題なし」とは言えないでしょう。法律家ではないので詳しい解説はできませんが、途中退会による保護者会費返金トラブルはなかなか表に出ないですがあちこちで今も昔もずっとくすぶっている問題であるのは、弊会に寄せられる相談の程度からしても、間違いはないところでしょう。
 保護者会費も当然、明朗な会計をもって管理されねばなりません。

<その87:(傷害)保険料>
 児童クラブに入所しているこどもたちに掛ける保険です。放課後児童クラブ運営指針には、児童クラブ事業者が必ず損害賠償保険に加入すること、という記述があり、それにつづいて「傷害保険等に加入することも必要」とあります。傷害保険に加入するのはだれか、という明確な記述はありませんが、児童クラブに入っているこどもたちを指すものと理解できます。この保険料のことです。これはほとんどの地域、運営事業者では、保護者側が支払う実費負担分に含まれています。ごく一部の自治体で、この保険料を行政が負担している地域があります。
 児童クラブは、こどもが集団生活する場所ですし、何より、あそびを重ねて成長する場所です。遊びにはスリルがつきもので、けがも当たり前にあります。けがが全くない児童クラブは、こどもに自由な活動をほぼ許していないのでは、と疑いを持った方がいいほど、ありえないことです。鬼ごっこをして足をくじく、ドッジボールで指を痛める、サッカーでボールが顔に当たる、工作でカッターで指を切る、などなどがあります。こうした児童クラブでの活動中における、けがの治療代金に充てるための保険です。

 なお、通常は、小学校から児童クラブの敷地に入るまでは、小学校で加入している保険を利用します。しかしこれは自治体によって取り扱いが異なる場合もありえるので、児童クラブの登所時にけがした場合には留意が必要です。また、児童クラブでけがをして病院やクリニックに行ったときに、「学童でけがをした」と窓口で告げたところ「学校でけがをした」と勘違いされるケースもありがちです。いまはこどもの医療費が無料となっている地域も多いので、治療にかかったはずの費用がさらに保険で得られるとなると保護者にはうれしいことかもしれません。

 児童クラブの入所にあたって保険料支払いを求められた場合、原則として拒否はできないものと考えてください。「うちはけがしてもいいです」と個々の事情で左右されません。

<その88:昼食代>
 最近、児童クラブで昼食を提供する事業者が急増しています。国の調査では令和6年度で43%のクラブが昼食提供をしていました。12月下旬に公表される令和7年度の国の調査結果で昼食提供しているクラブが50%を超えるかどうかが、運営支援は注目しています。
 この昼食料金の支払いが必要となります。料金はこれもまた様々ですが、昼食提供の主流である「弁当の配達」では1食500円台が、ごく普通にあります。配達のコストと、こども向けの特別なメニューや調理がある場合も考えると値段が高くなる理由も分かりますが、運営支援としては昼食代に行政が補助をしてせめて1食300円前後に収めるべきでしょう。また所得に応じた応能負担の設定を徹底してよいとも考えます。昼食代の納付は保護者が弁当を注文するときに同時に行うことが多いようです。愛知県津島市のように、職員が手作りで「給食」を用意するケースもあります。1食250円(2025年度)で質の高い給食を出すよう、職員はとても頑張っていますが、やりくりは厳しいのが実情です。児童福祉の観点から公費による補助が必要です。高い昼食料金の設定は、経済的な事情で弁当を頼めない世帯に何ら利益になりません。本来ならそのような世帯にこそ昼食を届けて生きるために必要なカロリーをこどもに届けるべきですから、児童クラブの昼食については自治体の補助が望まれます。

<その89:その他の費用>
・入会金=児童クラブの運営事業者がNPO法人の場合によくあります。NPO法人は会員制度がありますが、児童クラブの利用者を会員とする場合に、NPO法人に入会するということが必要となります。その際の費用です。NPO法人運営でなくても、児童クラブそのものを1つの会として、利用する保護者に入会金の支払いを求めることもあるようです。保護者会の入会金などが該当します。入会金は原則、途中退所でも返金はされません。金額は千差万別です。一度支払えば、いったん退所してその後に再入所する際は不要となることが多いでしょう。
・活動費=こどもが児童クラブの外に出かけた際の費用は実費負担として保護者が支払うことになるか、別途収めている保護者会費を充てることが多いです。電車やバス、タクシーの運賃です。映画を見たり博物館や動物園の見学をしたり、ボウリングやスケートをしたりする活動については、利用料から充当することが多いでしょうが、高額な場合は一部、保護者が負担することもあるでしょう。
・飲み会=今はもうそういう時代ではないのでしょうが、わたくしが現役の学童保護者だった時代(2000年代後半から2010年代前半)は、学童で大勢の学童パパ学童ママと知り合ってそれこそよく飲み会にこぞって参加していました。そうして仲良くなって学童運営を盛り上げていったものです。そういうことが苦手や嫌いな人も当然にいます。普段の生活ではそう知り合えない業界や立場の人と知り合うことができる、いわば「人間関係の渋谷スクランブル交差点」が児童クラブです。人間関係がおっくうとか、他人に干渉されたくないとか、子育ての情報はネットで拾えば十分だからと孤立化しがちな今の時代の子育てファミリーには、なかなかなじめないことは承知ですが、つい泥沼にはまりがちな「孤育て」とならない仕組みが、児童クラブにあります。せっかくの数年間ですから、学童仲間と交流することを前向きに考えてほしいと運営支援は期待しています。そのつながりが、「ひどい学童運営」にモノ申せるパワーになるかもしれませんよ。

 児童クラブで支払う費用については、様々な必要性で設定されています。利用を考えている児童クラブで出している説明書や、自治体のホームページを確認するなどして、毎月の必要額を、月ごとに事前にチェックしておくことをお勧めします。

※「トリセツ」シリーズは不定期に掲載しています。
第15回は2025年8月9日掲載でした。
<その61:なかなか職員の採用ができません。求人の応募がありません。どうすればいい?>
<その62:来てほしくない人が応募してくると大変面倒です。うまい手はありませんか>
<その63:児童クラブの仕事に向いている人が募集してくるような、巧い募集の文言はありますか?>
<その64:採用で、決して行ってはいけないことがありますか?>
<その65:採用に関して法令的に欠かせないことを教えてください>
第16回は2025年8月23日掲載でした。
<その66:ギュウギュウ詰めで困った!>
<その67:児童クラブに入れなくて困った!>
<その68:児童クラブで働いてくれる人が足りなくて困った!>
<その69:親が児童クラブに無理やり行かせるので困った!>
<その70:児童クラブの利用を始めた親なんですが、もっと忙しくなって困った!>
第17回は2025年9月20日掲載でした。
<その71:そもそも児童クラブの公立とか民間って何?>
<その72:公営、民営の区別を押さえておこう>
<その73:公立学童とは? 民間学童とは?>
<その74:利用料が高くなる原因は?>
<その75:公設公営、公設民営、民設民営、民間学童保育所、それぞれの特徴>
第18回は2025年10月24日掲載でした。
<その76:児童クラブ職員側から保護者へは「普段からこまめな声掛け」をしよう>
<その77:児童クラブ職員側から保護者へは「こどもが、どんな小さなことでも進歩、前に進んだことがあれば、褒めて伝える」こと。>
<その78:トラブルや困ったことこそ、「事実」を「すぐに」そして「丁寧に」>
<その79:児童クラブの保護者から職員には、「保護者ができる限り質問して!」が理想です>
<その80:児童クラブの保護者から職員には、「お願いですから、小さなことでも評価してあげて」がさらなる理想です>
<その81:児童クラブの保護者さんには「みんなが過ごす場」という意識を持ってください>

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也