放課後児童クラブ(学童保育所)の新規入所、継続入所の手続き、大丈夫ですか? 「就労証明書」は早めに用意を!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
全国あちこちの地域で、放課後児童クラブの(新規・継続)入所手続きが真っ盛りです。一部ではすでに申請を締め切った地域があるかもしれません。新規入所も継続入所も手続きにはいろいろな書類を用意して提出する必要があります。とりわけ、作成するが勤務先等になる「就労証明書」については早め早めに動いて用意をしておきましょう!
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<就労証明書とは>
放課後児童クラブは、入所・利用の要件として、こどもが放課後(下校後)や夏休み等の長期休業期間中において、保護者がこどもの監護ができないことを挙げている場合がほとんどです。人口が少ない地域や政策的に児童クラブの利用を推進している地域もありますが、ごく少数です。つまり保護者が留守なので、こどもに留守番をさせないために児童クラブで過ごして生活してもらうというために児童クラブがあるのですから、保護者が留守である理由を証明するための証拠が必要となります。
保護者の留守の理由が「就労」つまり働いている、という場合に、ほとんどの市区町村で、児童クラブ入所・利用の申請の際に保護者が提出を求められるのが、この「就労証明書」という書類です。働いているということの証明ですから、「雇われて働いている」保護者さんは、勤め先の会社や団体に記入をしてもらうことになります。個人事業主や自営の場合は自分で自分の証明をすることになりますね。つまり「保護者本人が、事業を営んでいることの証明」を、就労証明書に加えて別途、書類を用意して提出することになる場合がほとんどです。そのような場合ですが、例えば東京都練馬区の令和8年度入所申請の場合には次のような書類をそろえるよう示されています。
(公的な書類の例)
・直近の確定申告書(会社経営等の場合は法人税の確定申告書)の写し
「第1表」「第2表」を提出(法人税の確定申告書の場合は「別表1」)。
・現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書
証明日が直近3か月以内のもの
・営業許可書の写し
申請日時点で許可の効力の期間が切れていないもの。
(引用以上)
保護者が働いているという証明書類が就労証明書です。そしてその作成は、個人事業主であれば自分で書き入れますが、会社や団体に雇われて働いている場合は、その勤め先(の中の人)に記入してもらうことが必要です。個人事業主であれば自分で好きな時間に記入ができますが、別途、保護者自身が仕事をしていることを証明する書類も用意しなければなりません。
<つまり、就労証明書は「時間がかかる」>
おわかりいただけますでしょうか、つまり就労証明書は用意をするのに、時間がかかるのです。お勤め先の状況によって、就労証明書が出来上がる時間がどのくらいかかるのか、それはもう千差万別です。早ければ数日で勤め先(の中の人)が仕上げてくれるでしょうし、例えば勤め先が全国展開の企業の地方の営業所などの場合では就労証明書は本社・本部の人事部が作成するので郵送のやり取りで時間がすごいかかり、半月以上も時間がかかる、ということもありえます。
個人事業主だって、仕事の合間に法務局に行って必要な履歴事項全部証明書を入手するなど、案外と時間がかかるものです。
児童クラブをこれから利用しようと準備を進めている人、また利用しようと考えている新規入所の保護者さんへ、運営支援は大きな声で伝えたい。「就労証明書は最優先で準備しよう!」、と。継続入所の場合は就労証明書の入手手続きを経験したことがあるでしょうから、どのくらいの時間が出来上がるまでにかかるのか覚えておられるでしょうか。ただ、以前に1週間かからずに完成したとしても、次に就労証明書の作成を勤務先に頼んだとて、同じように短期間で仕上げてくれるとは限りません。継続入所の人も、「就労証明書だけは真っ先に準備しよう」と、伝えたい。
<勤めている、働いているだけの証明ではありません>
重要なのは保護者の連絡先です。児童クラブの事業者によっては別途、「連絡先カード」等の作成提出を保護者に指示しているでしょうが、就労証明書に記載されている勤め先の連絡先は、万が一の場合の児童クラブ側からの連絡を入れる先として、重要な資料となります。
時々あるのが、「クラブに登所したこどもが体調を崩した。保護者から示された連絡先に電話をしたが、その保護者は何カ月も前に退職しましたよ、と言われてしまった。そこで就労証明書を確認した」というパターンです。
児童クラブの事業者によっては、クラブを利用する保護者が、どのエリアに通勤しているかを把握するための内々の資料とすることもあります。クラブ利用の保護者の通勤時間を把握することで、児童クラブの適切な開所時刻、閉所時刻の設定が可能となります。逆に、多くの保護者が児童クラブの開所時刻と閉所時刻に対して不満や苦情を申し立てているのであれば、そのクラブの事業者は、クラブを利用する保護者の勤務先エリアを把握していないことにもなります。
<就労証明書は標準的な様式に切り替わってきた>
児童クラブそのものが、その土地土地で独自に進化発展を遂げてきた歴史がありますから、利用する保護者が提出する書類の書式も、児童クラブの運営事業者ごとに異なっていた、と言っても良いでしょう。ガラパゴスそのものが児童クラブですから。
しかし国は2023年度から、児童クラブ側に提出する就労証明書に関して、保育所で利用する書式にならった標準的な様式を利用するように周知を重ねています。(就労証明書(標準的な様式))
先に引用した東京都練馬区でも、区のホームページに記載されている就労証明書は、国が提示している標準的な様式にほぼ沿った書式となっています。また、さいたま市においても市のHPで提示している就労証明書は、国の標準的な様式となっています。
こうして、多くの自治体の児童クラブにおいて、保護者が提出する必要がある書類が統一されていくことはとても重要で意義深いものです。保護者側においても企業側においてもメリットがあります。保護者にしてみれば、見慣れた書類となりますし、就労証明書への記入をする企業や団体側にしてみれば、保育所も含めてこども関連施設を利用したいとする従業員やスタッフたちが提出する書類ごとに書式が異なっていると、その作成業務に時間的なコストがかかりますから、統一された書式になれば業務が効率化できます。
児童クラブごとに個々に知りたい、把握したい状況もあるでしょう。それは別途、保護者個人に書き入れてもらう書類を用意すればよいでしょう。少なくとも、「就労状態にある」ことの証明においては、国が示した標準的な様式の書式があれば十分です。
児童クラブの入所手続きにおいては、電子申請、オンライン申請が可能な自治体が急速に増えています。わたくし萩原がのんびりとやっている「市区町村データーベース」ですが、1巡目でチェックした自治体が2巡目でチェックすると電子申請を取り入れている、ということもあります。電子申請は、申請そのものはすぐにできますが、その申請において提出する就労証明書が整っていなければ、電子申請ができません。入所申請を受け付けている自治体や児童クラブ事業者においては、「書類に不備がある場合は受付できません」としていることが多いです。
<これから多くの手続きをすることになる保護者さんへ。手続きは自己責任ですよ>
わたくしも児童クラブ運営事業者の側にいて、10年以上も新規入所、継続入所の申請手続きに従事してきました。事業者の経営と運営の最高責任者として提出された書類をすべて目を通したものです。(入所申請をしてきた家庭に、児童の名前と入所先クラブ名を記した入所許可証を作成して法人印を押印していましたから)。新規にしろ、継続にしろ、書類の提出期限ぎりぎりになったときに「就労証明書がまだできていません。間に合っていません」とか「就労証明書の作成ですか? 勤め先に依頼していません」とか、あるいは「就労証明書って何ですか? そもそもどうやって作成するのか分かりません」と、ごくごく当たり前に言われたことが何度もあります。ごく少ないですが「そういう書類って必要なんですか? 出す必要ありますか?」と言われたときは面食らったものです。あるいは期限を過ぎて入所申請してきて「就労証明書はまだです」と手続きに来た保護者に言われると、がっくりとしたものです。まさに_| ̄|○ですよ。
ええとですね、児童クラブの入所なんて、こどものその先の人生における、必要書類の提出における締め切り期限の厳格さにおいては、まだまだ序の口ですよ。とりわけ、高校や大学などの受験の申請や、合格したあとの入学手続き、あるいは就職活動のエントリーの期限など、どうやっても保護者側の事情で変更など、絶対にできません。公共交通機関の遅れだってダメなこともあります。
児童クラブの窓口や市区町村の窓口で「受理してくれたっていいじゃないですか!」と、大声で怒鳴り散らしても、ダメなものはダメです。規則は公正を期すために設けているので、窓口で怒鳴れば規則を曲げて対応するなんて、そんな期待はやめてくださいね。そしてそのような親の様子を見ている、こどもの顔を見てください。
万が一、何らかの事情で就労証明書がまだできていない場合には、提出する前に必ず相談してみてください。それでもダメと言われることが多いでしょうが、相談もなくいきなり窓口に来て「書類を受け取るのがあなたたちの仕事でしょう! 学童に入れなかったことで、この子に何かあっても責任は取れるんですか!」と、怒鳴り散らすよりよっぽど有意義です。責任は入所申請を規定通りに受け付けなかった児童クラブや市区町村にはなくて、保護者にあるのです。
なお、2026年12月からはカスタマーハラスメント対応が事業者の義務となります。あまりにも限度を超えた、社会通念上からみても許容できないような、執拗で悪質な顧客からの要求について事業者は対応することが義務となるのです。事業者は従業員職員スタッフを護るためにも、そのようなおよそ許しがたい無理やりな要求については今までよりも、職員を護るために理不尽な要求を繰り返す人物に対して今まで以上に厳しい対応をすることが十分に予想されますので、「怒鳴っていけばそのうち相手も折れて入所申請書類を受け付けてくれるだろう」という甘い期待は、捨ててください。
就労証明書の準備には時間がかかるということを、児童クラブの利用を考えている保護者のみなさんは必ず、覚えておいてください。また、もしお友達の保護者さんで、いろいろと手続きが遅れがち、あるいは忘れがちな知り合いがいるなら、ぜひとも「就労証明書は用意した?」と、声をかけてあげてください。何度も何度も窓口で怒鳴られてきた、そして悲しそうなこどもの顔を見てきた、わたくしからのお願いです。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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New! ※当運営支援ブログにも時々登場する、名古屋の弁護士、鈴木愛子氏による「子どもが行きたい学童保育」(高文研)が発売されました。放課後児童クラブのあり方とその価値、本質が、具体的な事例に基づいて紹介されています。放課後児童クラブ、学童保育に関わるすべての方に読んでいただきたい、素晴らしい本です。とりわけ行政パーソンや議員の方々には必読と、わたくし萩原は断言します。この運営支援ブログを探してたどり着いた方々は、多かれ少なかれ児童クラブに興味関心がある方でしょう。であれば、「子どもが行きたい学童保育」をぜひ、お求めください。本には、児童クラブに詳しい専門家の間宮静香氏、安部芳絵氏のこれまた的確な解説も併せて収録されています。本当に「どえりゃー学童本」が誕生しました!
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)


