許しがたい放課後児童クラブ(学童保育所)でのこどもへの性犯罪。そんなに犯行をされていても気づかない組織って?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
神奈川県相模原市内の放課後児童クラブ施設の職員が起こしたとされるわいせつ事案について、当運営支援ブログは2025年7月31日に取り上げました。その後、初公判で被告は起訴内容を認めましたが、なんと5回目の逮捕となっていました。このことは、多くの深刻な問題を放課後児童クラブの世界に投げかけている(それなのにほとんど深刻とは受け止められていない)と運営支援は考えます。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<初公判と5回目の逮捕>
この事案について運営支援ブログは「こどもの首を絞めた? 相模原の放課後児童クラブ(学童保育所)施設でこどもへの性暴力事案の報道。あまりにひどすぎる事案。」のタイトルでブログ記事を投稿しました。ブログの中で報道記事の引用として伝えたのは、民間の学童保育の35歳の元職員が2024年11月から2025年1月までの間に、当時小学4年生の男子児童にわいせつな行為をした、という内容でした。
初公判で被告は起訴内容を認めたと、神奈川新聞が2025年10月28日5時30分配信の記事で報じています。記事の見出しは「相模原の学童施設で男児にわいせつ 元職員の男、初公判で起訴内容認める」でした。不同意わいせつの罪を認めたということです。
初公判の前ですが、神奈川新聞は元職員の再逮捕の記事を報じていました。10月21日9時30分配信の記事で、見出しは「相模原の学童施設内で男児にわいせつ行為 容疑で元職員の男を再逮捕」です。2024年7月から8月の間にわいせつな行為をしたという内容でした。
なんと、さらに逮捕がありました。神奈川新聞が11月4時17時40分に配信した、「相模原の学童施設で男児にわいせつ疑い 元職員の男を5回目の逮捕」との見出しの記事があります。有料記事なのでごく一部しか無料で読めませんが、2023年2月に、当時小学3年生の男子児童にわいせつな行為をした、という内容です。初公判がすでに行われましたので、おそらくは、この5回目の逮捕と、10月21日配信の記事で報じられた再逮捕の容疑についてもいずれ追起訴されることになるのでしょう。
インターネット検索では2回目と3回目の逮捕の記事は確認できませんでした。しかし、5回も逮捕されたというのは、元職員が相当な期間、複数のこどもに対して性加害を行っていたという、極めて深刻な事態が元職員の勤務先の施設において行われていたということであり、それがどれほど異様で悲惨であるのかについて、もっと社会全体が目を向けるべきだろうとわたくし萩原は考えるものです。
<あまりに深刻なのに何故、気が付かなったか>
当然、犯行をした者が罪を問われるべきです。どんな状況でも罪を犯してはなりません。結果的に情状酌量で大きな減刑があるとしてもそれはまた別の話。この相模原の事案で元職員がどのような環境にあったのかどうか知る由はありませんが、こどもにわいせつな行為をしてはならないのは当然です。
その上で運営支援がどうしても強く訴えたいのは、運営事業者の、こどもへの深刻な虐待行為について何故気が付かなかったのかという強い疑念です。少なくとも2023年の夏から2025年1月までの間に、5回の逮捕がされるほどこどもへの性加害が複数回、複数のこどもを対象に行われていたことについて、「同僚職員を含む運営事業者は、元職員の犯行に一切気が付かなかったのか」という疑問と、「こどもの人権を必ず守るという教育研修をどの程度まで行っていたのか」「人権侵害を含む非違行為について運営事業者はその行為の抑止と、行為がなされた場合の早期発見に対してどの程度、体制を整えていたのか」という疑問があることです。
もっとはっきりいえば、「施設内で行われる犯罪行為、非違行為について抑止と早期発見に、運営事業者はまったく無関心だったのか?」という疑問がわく、ということです。
報道の範囲内でしか状況を知りえないので、何とも言えません。実は定期的に教育研修を行っていたにもかかわらず、巧妙に監視や確認の体制をすり抜けてこどもへわいせつな行為をしていたのかもしれません。ですが、5回も逮捕されるというのはそれだけの深刻な虐待行為が繰り返されていたということです。
「事業者内の誰もが、元職員の所作やふるまい、言動などから疑問や不審な点を感じなかったのか?」
「こどもから定期的に意見や思いを聞き取ることをしていなかったのか?」
「こどもに、嫌なことは嫌だと言っていいんだよということを事業者は丁寧に何度も伝えて、こどもから進んで困りごとや被害について職員や保護者に打ち明けられるような雰囲気を醸成していなかったのか?」
繰り返しますが、個人の動機で行われた犯行ですので罪に問われるべきはこの元職員です。しかし、この被告を雇用していた事業者は、当然ながら、事業がしっかりと行われるように配慮する義務を負っています。施設内で犯罪行為が行われないように環境を整えたり早期発見できる機器を設置したり、職員たちが他の職員の行動に関して不審な点があると気づくような意識を育てるような教育研修を実施したりと、事業者としてなすべきことがあるはずです。広く言えば危機管理ですが、職員による犯罪行為に関するリスクマネジメントを事業者は真剣に考えていたのかどうかが、運営支援として強く問うていきたいのです。
この5回目の逮捕は何を伝えるか。事業者の対応の不備をうかがわせること。そしてもう1つ、児童クラブで行われる性暴力は、かようにしつようで気づかれにくい、極めて深刻な事案であるということです。発覚したときには、長期にわたって複数のこども(それが同僚職員である場合も当然あるでしょう)が、耐えがたい苦痛と人権侵害を受けていたということが判明するという、悲劇的な結果になりやすいのです。
ですから運営支援は「早期発見行動」の重要性を訴えています。職員同士が人間関係に基づく信頼関係とは別に「業務上、または法令上、許されない行為をしてはいないか、または許されない行為をしている可能性があるかどうかを常に意識して確認、判断する」ということです。事業者は、防犯カメラや死角を無くす施設配置、また「こどもと2人だけで部屋にこもらない」というような行動規範を策定し全職員に守らせるなどの態勢を整えることです。児童クラブにて行われる犯罪行為はとりわけ性暴力を筆頭に、なかなか気づかれにくいのです。児童クラブの世界においては、職員同士の人間関係が横のつながりでも、あるいは上司部下という縦のつながりでも、結局は職員は職員を信頼することを前提にして業務に取り組むという普遍的な人間関係が前提として存在しているからです。「指導員同士が手を取り合って」という児童クラブ業界が大好きなスローガンに示されています。
<報道も、もっと深刻視するべきです>
5回目の逮捕、それも2023年2月ごろの被疑事実というのであれば、よほど確実な証拠があったのでしょうか。こどもの記憶は無理もないですがなかなか確実ではありません。まさか被疑者の自白だけで逮捕したわけでもあるまい(とはいえ、この点はまだまだ何とも言えない分野ですが)。おぞましいことですが、被疑者が犯罪行為を映像で記録していたとか詳細なメモを残していたとか、まあ何か、逮捕できるだけの容疑があったのでしょう。
(ここで念のために補足。フィクションの世界では、人が犯罪行為を行ったら逮捕となりますし世間一般の会話でも「悪いことをしたら逮捕」という流れになりますが、逮捕はあくまでも例外。逃亡や犯罪の証拠をなくそうとする可能性があるときに限られます。先に逮捕があって特別な場合は逮捕なしでの捜査、ではなくてその逆ですからね。なお再逮捕についても誤解が一部あるようです。逮捕されて釈放されてまた逮捕、というケースはごくたまにありますがほとんどの場合は逮捕されて身柄を拘束できる期間の最終日にまた逮捕、ということを繰り返すものです。さらに言えば、本当に狙っている事件の捜査とはまったく違う、通常なら逮捕すらしないような罪の軽い犯罪行為で逮捕され身柄を拘束され続ける=いわゆる別件逮捕=ということもあり、人権上問題とされています。身柄を拘束されたまま起訴されてしまうと、その期間中に何度も逮捕できることにもなります。もちろん、まったく別の犯罪行為がある場合に限ります)
デジタルタトゥーという言葉があります。どんな人物でも基本的人権はあります。罪を犯して刑に服して罪を償った人の再起、再出発を、インターネットでは延々と残る「〇〇はこれで逮捕された」という情報は再出発を妨げるものです。(被害者側の厳しい感情は当然に理解します。わたくしだって身内がひどい犯罪行為を受けたら絶対に許しません。許しませんが、法治国家に生きる者として、憲法や法令には従います。どんな人にも基本的人権があることは理解します。)
わたくしが訴えたいのは、放課後児童クラブでは性犯罪を含む犯罪行為、非違行為はなかなか表面化しにくいことをもっと世間に伝えるよう、報道機関は丁寧に報道を続けてほしいということです。デジタルタトゥーのこともあるので実名報道するかどうかは報道機関の判断に任せるとしても一定の配慮は必要でしょう。ある程度の期間が過ぎたら匿名に記述を変える、ということもあっても良いでしょう。
ただ、児童クラブや保育所、放課後等デイサービスといったこどもへの援助、支援をする施設におけるとりわけ性犯罪については、捜査機関から報道機関に報道発表があったらできる限り必ず記事を世間に向けて出してほしいのですね。「紙」や「テレビのニュース」は、紙面のスペースや放映時間に限りがありますから、こどもが過ごす施設における犯罪行為の全てを報道することは不可能です。しかしインターネットでのニュース配信、記事掲載は、文字だけのテキスト情報ならばサーバーの容量をほとんど使うこともないでしょう。
「児童クラブでは、これほどまでに問題が起きていたのか」を世間に知ってもらうことになります。それは保護者はじめ社会から「不祥事はもう起こさないでしょうね?」という監視や注意の意識を呼び起こし、いい加減な児童クラブ運営事業者に厳しい視線を向けることにもなります。
インターネットに配信した記事は報道機関によって異なるようですが早ければ数か月程度で「消される」(=配信の停止)があるようですが、被告や被疑者の個人名が特定されないような配慮があるならば、別段、そんなに短期間で消さなくたっていいではないですか。そもそも個人のブログに記事を引用されてしまっては永遠に残ることにもなりますが。有料であれば相当以前の記事でも検索できるようにとすればよろしい。
<行政や議会も対応を>
放課後児童クラブは市町村事業ですから当然に市町村は、性犯罪であるかどうかに関わらず、法令に反する事案があった児童クラブについて、その事業者名と事案の内容は公表し、行った処分についても公表することが必要です。それも短期間で掲載を終了してはダメです。市町村がやるからには都道府県も、そしてこども家庭庁も、年に1度でいいので児童クラブでの法令違反についてとりまとめて公表し、再発防止を強く促すべきでしょう。特定の個人名は示す必要はありませんが事業者名は公表するべきです。それが保護者会であろうが、個人事業であろうが、事業において事業の責任を負う立場の組織、団体の名称は公表するべきです。税金からなる補助金を交付されているなら当然です。「保護者会や運営委員会では、クラブが特定されては困る」というのであれば、事案を起こさぬよう徹底的に努力するべきですし、そもそも事業を営むということはそういうものである、という理解こそ最初に必要で、そのような理解を持てないのであれば事業の運営を止めるべきです。児童クラブは、税金や、利用者からお金を受け取って、そのお金で人を雇ってこどもの健全育成を行う「事業」つまりビジネスです。ビジネスをするのであれば覚悟は必要です。「こどもを受け入れるという、とても大切で崇高な行為を行っているから、大目にみてほしい」というのは、運営支援に言わせれば「事業者として失格。直ちに退場しなさい」というだけです。
例えば以前、車いすのこどもの児童クラブ入所を根拠もなく断った事業者がありました。民営のクラブで理事長による不適切な行動が原因とうかがわれる行為でこどもが心的外傷後ストレス障害に苦しんでいるという事案がありました。確かに刑事事件としての立件はされていません。しかし確実に、こどもや保護者が非常に苦しんだ事案です。そういうことも含めて、報道機関はもっと積極的に児童クラブの「実態」の取材をしてほしいですし、しつこく報道していただきたい。何より行政機関は、「こどもを守る。子育て世帯を支える。そのために重要な社会インフラの児童クラブ」という認識のもと、より健全な事業運営を児童クラブ事業者が行うように、「いざとなったら社会に公表する」ことをもって、事業者に向き合ってほしいです。その行政機関の作為不作為もまた問題になりますが、それこそ報道機関の出番ですし、議会が果たせることがあるでしょう。
何度も他者への性加害を繰り返す者への治療更生プログラムの充実を訴えることもまた、報道機関や議会の仕事です。ただ取り締まるだけ、排除するだけでは、その者はこの広い社会のどこまでまた同じ性加害を繰り返すことがありえます。(いわゆる日本版DBSにおいても、前科のある者をしっかり排除できれば良し、という風潮になりつつあるようで心配です。社会全体として考えた場合、行き場のなくなった者の自暴自棄による恐ろしい事案を防ぐための努力が追い付いていないと懸念します。そんなの自業自得と片づけてはなりません。家族が、自分自身が、いつなんどき、「無敵の人」から被害に遭うことがありえるのですよ)
残念ながら、今の児童クラブの世界は、あまりにも複雑すぎてその全容はつかめきれません。地域ごとにそれぞれの児童クラブのやり方、流儀がありすぎます。情報公開も不徹底です。その混とんとしたカオス状態、もっといえば「ちみもうりょう(魑魅魍魎)」の世界ゆえ、こどもや同僚職員、また保護者が悲しみに暮れる、ひどく傷つけられる事態がひそかに進行していることが大いにあります。そんな児童クラブの世界で良いわけはありません。もっと社会の多くの目が向けられるように、まずは自らがどんどん情報や実態を公開し、報道機関や行政も事あるごとに世間に向けて事実を公表するようにしていくべきだと、運営支援は強く求めるものです。多くの人の目が向けば、おのずと、しっかりしていくものですから。知られていないから、見られていないから、あるいは見ようとしても見られないから、不祥事やひどい事態がいつまでたっても繰り返されるのです。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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New! ※当運営支援ブログにも時々登場する、名古屋の弁護士、鈴木愛子氏による「子どもが行きたい学童保育」(高文研)が発売されました。放課後児童クラブのあり方とその価値、本質が、具体的な事例に基づいて紹介されています。放課後児童クラブ、学童保育に関わるすべての方に読んでいただきたい、素晴らしい本です。とりわけ行政パーソンや議員の方々には必読と、わたくし萩原は断言します。この運営支援ブログを探してたどり着いた方々は、多かれ少なかれ児童クラブに興味関心がある方でしょう。であれば、「子どもが行きたい学童保育」をぜひ、お求めください。本には、児童クラブに詳しい専門家の間宮静香氏、安部芳絵氏のこれまた的確な解説も併せて収録されています。本当に「どえりゃー学童本」が誕生しました!
(https://amzn.asia/d/3QWpbvI)
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