こどもの迎えに間に合わない! 放課後児童クラブ(学童保育所)の「延長料金」の形態は様々。しかも対応がとても難しいのですよ。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
おもしろい切り口の報道がありました。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)を利用している親が、電車の遅延で迎えの時間に間に合わなかった場合の延長料金(時間外利用料金)を取り上げた記事です。ヤフーニュースに配信されています。わたし(萩原)はそのヤフーニュースにコメントをしましたが、あのスペースではとても書ききれないほどいろいろな事情が詰まっている話ですので、運営支援ブログでみっちり取り上げます。。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<報道から>
話題の記事は、ヤフーニュースに2025年9月5日11時1分に配信された、集英社オンラインの「「電車遅延で延長料金はツラい」学童クラブの送迎に悩む共働きの親たち…異例の対応をする自治体と東京都に聞いた利用料の実態」との見出しの記事です。記事を簡単にまとめますと、児童クラブの迎えの時間に間に合わず延長料金を支払うことがあり、それが保護者の経済的負担となっている実態がある中で、東京都武蔵野市は電車の遅延証明書があれば延長料金の支払いを求めていないことを紹介。記事の起承転結の「結」の部分は東京都が2025年度から始めた新たな認証クラブ制度(19時までは基本的に開所を求めている)の紹介、となっています。
児童クラブの利用をすると、大小さまざまな問題や、ちょっとした疑問にぶつかります。この記事が取り上げた延長料金もその問題や疑問の1つでしょう。しかも、この延長料金の取り扱いについて、「これが唯一の正しい解決法」というものが存在しないのですから。
記事では、東京都の担当者の見解が示されていますが、それも無数にある見解の1つに過ぎません。確かに、国の考え方として児童クラブの運営経費は利用者(保護者)と国・自治体が折半、ということが示されていますが、あくまで「こういう方向性でお願いね」という程度です。それとて、自治体の考え方を縛る、とりわけ保護者負担金(利用料)引き上げの理由として使われることばかりですので、運営支援はこの方向性には大反対です。
児童クラブの迎えの時間に間に合わなかった場合に生じる追加の経費(人件費、光熱水費)をだれがどう負担するか、それは設置主体、運営主体が、利用者の意向を十分に把握したうえで設定すれば良い、と運営支援は考えます。その結果として、「遅延証明書があれば延長料金は請求しない」という結論になっても、「いかなる場合でも指定の時刻を過ぎたら延長料金は請求する」という結論になっても、それはそれで当然のことです。国が強制力を持って「こうするべきだ」と示さない以上、そうなるでしょう。もちろん、市区町村が定める条例や条例施行規則などでその区域内だけには強制力を持つルールが定められたら、それはその通りにするべきでしょうが、それとて市区町村つまり児童クラブの事業主体の判断であることには、変わりはありませんね。
<わたしの体験>
記事では、武蔵野市の対応は異例であるかのように紹介されています。「電車の遅延について、遅延証明書がある場合でも延長料金を請求しているかどうか」の調査はないでしょうし、全国の児童クラブを設置している自治体のうち遅延証明書があれば延長料金を請求していない自治体の数がどれだけあるか、調べようがないので、正確には「武蔵野市は異例」であるとは断言しにくいでしょう。
少なくとも、私がかつて運営に関わっていた時代の上尾市では、電車とバスの公共交通機関の遅延については遅延証明書があれば延長料金を請求しない、というルールを定めていました。今もそのルールが生きていれば武蔵野市に加えて上尾市も仲間となります。また、私の見聞の範囲では、遅延証明書があれば延長料金を請求しないという児童クラブは、珍しくありませんでした。
ただ先に書いたように、全国的な調査があるかどうかすら分かりませんし調査の結果、どれだけの自治体が遅延証明書があれば延長料金を請求しないとしているのかその数も割合も公表されていないので、異例なのかどうかすら実は分からないのは確かです。
さてこの「迎えの時間に間に合わなかった場合の遅延料金」は、現実に運営に関わる立場ではとても悩ましい問題であると断言できます。ズバリ言えば、保護者とのトラブルに発展することが多い問題だからです。例えば、こういうことです。
「親が働くために必要だから児童クラブを利用しているのに、残業でこどもの迎えの時刻に間に合うかどうかぎりぎりになっているときに限って、「安全確認を行います」などで電車が数分。止まってしまったために閉所時刻を過ぎてしまって、それで延長(遅延)料金を請求されるなんて、おかしい!」というお怒り(クレーム)。
「たった2分、3分じゃないの! いつも学童にはお世話になって感謝していますよ。だからいろいろなことに協力していますよね! 先生にはいつも感謝していますよ。それをなに、恩を仇で返すっていうのですか!!」というお怒り(クレーム)。
ヤフーニュースへのコメントは200を越えていましたので、まあまあ、世間の興味を引いたテーマだったのでしょう。その匿名コメントの圧倒的多数は「当然、延長料金を支払うべき。勤務時間が長くなった職員への賃金を支払うには、迎えに間に合わなかった保護者から徴収する延長料金を充てるんだから」というものです。私はそれを見て、正直なところ、「実際に直接、延長料金を請求されることのない立場だったら、そりゃそういう正論を堂々と言えるだろうよ」と苦笑いしました。もちろん、ルールはルールでルールの効力や正当性を疑うことなく、1分や2分の遅延であっても、遅延の理由がどんなに不可抗力であっても、ルールに従って請求された延長料気を支払う利用者(保護者)の方が、調査はしなくても多数を占めることは、私には確信できます。多くの人たちは「利用するクラブのルールがそうなっているのだったら、仕方がない。というかルールは守って当然」と、思ってくださっています。
ですが、10人の利用者がいれば、そのうち1~2人は、決してそんなことはない。先のクレームの例のように「たった数分だけじゃない!」と、悪しき表現をすれば「ごねる」人は、「絶対に!」います。ヤフーニュースの閲覧者のコメントだけみると「おお、分かってくれる人ばかりでうれしい!」となりがちですが、現実の運営に向き合ってきた立場からすると「人間ってね、いざ、自分がその立場になると、それまで述べてきた良識や物分かりの良さなんて、どっかに吹き飛んでしまうんだよ」と、しみじみ玄米茶でも飲みたい気分になります。
とまあ、早くお前の体験を具体的に示せ、と読者様のイライラも募っているころですので1つ紹介します。私が児童クラブを運営するNPOのトップになって、この延長料金の問題をなんとかしようと会議体で検討しました。というか、ずっと検討のテーマの1つになっていたのを引き継いだわけですが、最も重要な論点は「車を利用する人の遅延の場合をどうするか」でした。先に記したように、公共交通機関の遅延では証明書があれば延長料金(1分を超えると15分まで1,000円、その後は15分刻みで1,000円。かなりの高額です。理由は後述)は請求しないとなっていましたが、通勤等に車を利用する人の場合、道路渋滞や道路工事や事故による迂回を余儀なくされての、迎えの遅延については免除制度がありませんでした。上尾もけっこうの車社会ですから、車を利用する児童クラブ保護者からのお叱り、お怒り、クレームはさほど珍しくありませんでした。
ですので、「車も同様に免除制度ができるかどうか」を検討することとしたのです。
結論は、出ませんでした。わたし自身は、「突発的な渋滞や迂回で遅延を余儀なくされた場合は免除してもよいのでは」という意見を出しましたが他の参加者の賛同は得られませんでした。(この点、感心してくださいね。私は団体のトップでしたが、施策を決めるときは合議制を大事にしていたということなんですから)
賛同しなかった方々の主張は「道路渋滞が本当にあったかの証明ができない。どの道を通るかは保護者が自由に決められるものであって普段から渋滞しやすい、工事が多い道であればその道を通らないという事前の判断ができるので、迎えに間に合わないという危険性を自分の努力で減らすことができるから」というものがほとんどだったように記憶しています。
まあ、電車とバスに比べれば、自由度が高いというか、自分の判断で帰路を組み立てられるのは自家用車の利用の最もありがたい利点です。わたしは今でも「自家用車利用の場合でもやむをえない事情の場合は延長料金を免除したほうがよい」という立場ですが、「ではそのやむをえない事情はだれがどのように判断するのですか。どういう事情であればやむをえないと決められるのですか」という反対意見については、明確な基準で返せません。その点で有効な反論が私にはできないことは、認めざるを得ません。
「それはさあ、利用者のことを信頼しているからだよ。道路渋滞でどうしようもなかった、ってことってあるじゃない。それをクラブの保護者が申し立てて、そのどうしようもない事情を証明できますか?って、そこまでしないんでいいんじゃない? 電車やバスだったら運行者がいるから証明書が入手できるから利用するだけで」と、話したこともあります。
すると「では、電車やバスでも遅延証明書の提出を不要にしないと、公平を欠きますよ」と反論されたことも覚えています。うーん。それもそうだなあと、妙に納得したことも覚えています。
そんなこんなで、結局のところ、電車とバスの利用者はその運行の乱れが原因で迎えの時刻に間に合わなかった場合は、遅延証明書の提出で延長利用料請求はしないが、車での通勤等利用者は何が何でも遅れは延長利用料請求対象となる、ことに変わりはありませんでした。
なお、15分刻みで1,000円の延長料金は、これは私の全国市区町村データーベースで行ってきた作業での印象としてもかなりの高額です。これは延長利用料ではなくて、遅延に対するペナルティー(懲罰)の意味を主体としているからです。それは入所説明の際には特にしっかりと説明していた点でした。決してだましうちではなくて、事前に説明は何度もしていて実施していることでした。延長利用料が高額になってしまうので、時間内のお迎えに積極的に協力してくださいね、という趣旨での料金設定でした。特に行政からも指導を受けたことはありません。
<延長利用料金の問題の根本に手を付けるべきだ>
この点では、集英社オンラインの記事の後段に紹介されている、東京都認証クラブが実はその回答の1つを示しています。記事ではそこを強調してはいないので、もったいないですね。
さてここで延長利用料と事業運営について私の見解を示します。延長利用料について全国の児童クラブを眺めてきた私には、2つの形態があると指摘します。1つは、世帯が児童クラブを利用する時間帯を事前に指定し、その利用時間帯を超えた場合に延長利用料を請求するものです。全国でかなりの数のクラブが、利用時間帯を数パターン設定しており、例えば午後5時まで、午後6時まで、午後6時30分まで、というぐあいで、その利用時間帯に応じて保護者負担金(利用料)の金額に差を設定しています。午後6時までは月額3,000円ですが午後7時までは月額5,000円、といった具合です。このような場合、午後6時までの利用申請なのに恒常的に午後6時30分ごろまでクラブを利用されていては、支払った料金以上のサービスを不当に得ていることになりますから、延長利用料を請求するのは当然です。ただ、1回や数回の時間オーバーでも請求しているかどうか、それは分かりません。ぜひ実態を教えてほしいですね。そしてもう1つは、利用時間帯を設けておらず最終の閉所時刻までを設定している場合の、延長利用料です。この場合は先の例の、最長の利用時間帯に設定されている延長利用料も同次元になりますね。
上記2つの場合にしても、徴収した延長利用料金は、児童クラブの運営経費として使われます。職員人件費、光熱水費です。特に、最終の利用時間帯を超える、閉所時刻を超える場合の延長利用料金は、職員の勤務がおよそ時間外勤務になる可能性が高まるので、所定外労働に対する賃金の原資確保の点でも重要となります。児童クラブの場合、クラブの閉所時刻やせいぜいプラス10分程度が、職員の退勤時刻と設定されていることが極めて多いので、閉所時刻に間に合わない迎え=職員の時間外労働の発生、ということを招きやすいのです。その時間外労働がいわゆる法定内残業で収まるのか、あるいは割増賃金支払いが必要となる法外残業となるのかは事業者次第ですが、いずれにせよ予定している賃金以上の資金を事業者は用意せねばなりません。
よって時間外の延長料金は必要なのですが、理屈はその通りですが実務を長年やってきたわたくしとしては、「そんな細かいことは気にしませんでした」という思いがします。もっともそれは予算規模が7億円、8億円と児童クラブとしてはやや大きな事業者だったので、数百、数千円単位の「誤差」は気にならないということだとも言えます。1つの支援の単位だけの事業者であれば予算規模が2,000万円前後とすると、数千円の単位であっても予算管理、予実管理は重要となってきますからね。
ただこれは申し上げておきたいのは、児童クラブの運営は、まずもって大変厳しい資金繰りであることは言うまでもない(わたしですら何度も銀行に頭を下げてつなぎ融資をお願いしてばかりでした)ですが、保護者の迎えの遅延は「必ず当たり前に起こりうる事態」としてその事態に対処するだけの予算を最初から確保しておけ、ということです。イロハのイです。ヤフーニュースの書き込みには「迎えに間に合わない親を待つために残業した職員に当然、残業代は支払うので延長料金を請求するのは当然だ」というものであふれていますが、それは正しく言えば「親に延長料金を請求しようがしまいが、職員を雇用している事業者は、職員が行った労働に対して賃金を支払う義務がある」ということです。もっといえば「延長利用料などを充てにせず、通常予測される範囲での時間外割増賃金支払いに必要な予算ぐらい当然に確保しておけ!」ということです。とはいえ、ヤフーニュースのコメント欄にあふれた「延長料金を請求するのは残業代確保のために当然」という意識そのものは、とてもありがたいものです。
なお、これもヤフーニュースのコメント書き込みに「延長料金を請求しないなら自治体が職員の残業代分のお金を用意するべきだ」という内容もいくつかありましたが、それについては完全に同意です。というか、残業代に限らず、運営費補助を出すことは当然、遠距離通勤者が多い地域には時間外利用のことも多いことを考えた施策を自治体は考えるべきです。
その問いに対する1つの明快な回答例が、東京都認証学童クラブによる児童受入時間の延長です。都の認証基準によると、「開所時間」について3点、挙げています。「・平日午後7時まで ・授業の休業日は午前8時から午後7時まで
・午前8時より前や午後7時を超えた開所に努めること」です。午後6時台に閉所するクラブが多い中では、なんというか「やっとですか」という思いはありますが、午後7時を超えた開所に努めることと努力目標を挙げた意味は大きいと運営支援は考えます。
クラブの閉所時刻が遅くなればなるほど、不意の迎え遅れによる延長料金請求の事態は減ります。閉所時刻が遅れればそれだけ運営経費は増えますが、それは利用料にある程度反映することになります。もっとも運営支援としては、児童クラブにおける児童受入時間が長くなった分は補助金の増額で対応するべきであって現在の開所時間延長に対する補助金単価を倍ぐらいにして対応するべきだ、という考えです。児童クラブは「児童福祉」です。もっとそこにカネを国や自治体は投じるべきです。東京都はそこも考えて認証学童クラブの補助金を上乗せしていることは評価します。
(こどもがクラブで過ごす時間が長くなるので反対! という声はいつだって上がります。そりゃね、子育て世帯が午後6時ごろまでにすべてこどもを迎えに行けるぐらいの短時間勤務が常識になればそりゃそうでしょう。でも現実は違う。現実に対応することを放棄してはなりません。あくまで現実に、子育てに困っている世帯を助ける社会インフラとしての児童クラブであれば、午後7時ごろまでの迎えがなんとか精一杯な子育て世帯の保護者を支える仕組みとして進化するべきである、というのが運営支援の立場です。こどもがかわいそう? かわいそうと思わせないように支援、援助するのが児童クラブの役割ですから自らの役割を棚に上げないように。そうやって児童クラブが親子ともどもにつらい局面を支えつつ、その間に、育児者短時間勤務制度が当たり前になるようにぜひ、こども家庭庁が産業界と厚生労働省に働きかけて実現することを期待します。もちろんそうであっても専門技能職等に求められる労働時間を支えるために児童クラブの長時間児童受入自体は整えておく必要がありますよ)
つまりは、「こどもの迎え遅れによる延長料金請求は現場でトラブルになりやすい問題。10人のうち1、2人でもクレームや抗議がくるとそれだけ現場の意欲は萎えるし、実務上も余計な時間コストを取られて不効率。だったら、午後7時や午後7時30分まで児童受入時間を延ばして対応するべきだ」というのが、運営支援のスタンスです。必要な資金は原則、補助金など公の援助で対応するべきであって、保護者から徴収する料金だけを充てにしないこと。児童クラブ事業者はいかなる自由であろうと時間外労働に対する賃金は必ず支払うこと、です。延長利用の問題の根本を解決するには、児童受入時間の延長こそ必要です。(わたしはあえて「開所時間」とは表記しません。児童クラブの開所時間はこどもが登所していない時間帯からすでに始まっている=職員の勤務が必要な時間帯すべてを開所時間とするべき、という考え方をもっています。よって、こどもを児童クラブにて受け入れる時間を児童受入時間と表記し、開所時間と区別しているのが、運営支援の考え方です)
<延長利用料金の請求に関する運営支援の方策>
最後に、延長利用料金の徴収の点で運営支援の考察を紹介します。
・一切、請求しない案=利用者のモラル崩壊を招く恐れがあるので好ましくない。仮にこの策を採用する場合は基本の利用料金を高めに設定する必要がある。
・その都度請求する案=その場で直ちに現金支払いか、あるいはキャッシュレス決済にするか、いずれにしてもクラブの現場の現金管理能力が必要。また、現場でトラブルになりやすい。「支払ってください」「持ち合わせがありません」というやりとりが面倒で、現場職員の独自の判断で「じゃあ、今回はいいです」ともなりがち。よって好ましくない。
・後日の支払いを求めることを明確に通知する、もしくは書面等を交付する案=おそらく現在の主流。保護者が迎えに来た時刻をタイムカードやクラブ内の決められた時計を利用して職員と保護者が同時に確認し、延長料金支払いを求めることが記載された時間外利用表に保護者がサインする、あるいは所定の用紙を交付して後日の料金支払いを請求する、という形態。保護者とのトラブルは比較的起きにくいが、「文句を言う人は、どんなことでも文句を言う」ので、職員のコミュニケーションスキルが重要となる。
請求について
・その場での支払い=上記にあるようにトラブルになりやすい。キャッシュレス決済にしようがしまいが変わらない。
・後日、保護者が何らかの手段で支払い=最も多いのが未払い。うっかりなのか意図的なのかで分かれるが、支払期限までに延長利用料金が振り込まれなかった又は支払いがなかった場合、請求書を児童クラブ(運営)側が保護者に渡すことになる。意図的に支払わない保護者(=延長利用料金請求を不服を思っている保護者)は、絶対に支払うことをせず利用を続け退所後は当然ながら支払いに応じない。ただしそういうひとは「それほど」多くはない(絶対に少人数でごくわずかである、とまでは言わない)。この場合の法的措置に投じるコストの方が多くなるため結果的にクラブ事業者が負債をかぶる(損金処理)ことになる。(しかしですね、企業経営においてはそういう損金、雑損処理はどうしても生ずるものという割り切りも必要)
・利用料金に一定額の延長利用料金相当分を含んでおき、年度に1回又は退所時に精算する=滅多にないが、とりっぱぐれはない。
・延長利用料金を次の保護者負担金(利用料、保育料等)に上乗せして引き落とす又は請求する=利用者が個々に支払う場合なら良いが、引き落としの場合、毎月の口座引き落とし額の設定を児童クラブ運営側が行うことになり、事務処理上のミス、失敗が高まるリスクがある。また保護者側も、保護者負担金程度の額しか引き落とし口座に入金していない場合、延長料金上乗せ分を失念すると「残高不足」で引き落としができない事故になる。よって運営側には手間=時間的コストがかかるうえに引き落とし不能のリスクも生じる。
・チケット制=10分いくら、15分いくら、というチケットを販売し、残業や道路渋滞などで迎えが遅れる可能性がある家庭に事前に購入してもらっておく。迎えに遅れたらそのチケットをクラブで受け取る。(もちろんその場で購入してもらってもよいが)。退所する場合は未使用のチケット分は返金処理をする。
徴収業務
・児童クラブ事業者が行う=そうするべきです。事業つまり提供するサービスに関わる問題ですから事業の責任主体である事業運営者が行うべきです。
・保護者(会)=保護者会運営以外でも、公営クラブや保護者運営由来の法人でも、保護者(会)の徴収事務を代行させることがあります。避けるべきです。延長料金請求業務はれっきとした業務の1つですから、この業務を行うことに業務上の責任が生じることになります。不測の事態を考えると、徴収業務は事業を行う側で処理するべきです。
・職員=事業を行う側の立場に属しているので一番、手っ取り早いのですが、職員の中には延長料金徴収を忌避する向きが多いでしょう。「わたしたち、こどもの保育をしたいのであって、そういう運営の仕事はしたくありません!」と(意味不明の)主張する職員は、案外います。言わなくても本音ではそう思っている人は多いです。もっともそれは、最初の教育研修で何とかなります。幸か不幸か「児童クラブの職員の仕事は、こうだ!」という「常識」がまったく世間にあふれていないので、「遅延した保護者に対する請求業務も児童クラブ職員の仕事です」と説明すれば「ああ、そうなんだ」ということで済むことも多いです。
以上、ざっと紹介しました。運営支援としては「延長問題が生じないようできる限り児童受入時間はのばすべし。延長料金の請求と徴収はチケット制とし、チケットの管理は運営本部で行う」ことをお勧めします。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)