放課後児童クラブ(学童保育所)の世界には残念な事業者があるようです。職員の労災申請手続きの助力を拒否する事業者、呆れます。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンのみで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 放課後児童クラブでの仕事は、こどもと体を使って遊ぶことが職員の主要な業務ですから、「けが」をすることはよくあります。それは仕方がないというか、当たり前のこと。仕事中のけがで何日も治療が必要なほど重いものであれば当然、労働災害として必要な手続きをすることになるでしょう。ところが、児童クラブの業界には、この労災の手続きを嫌がる事業者があります。それも、全国各地で児童クラブを営んでいる、この業界の中では大手ともいえる事業者に、です。法令に違反しますし、児童クラブ全体の社会からの評価を下げることですから、そんなバカなことはやめてください。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<こどもと遊んでいて骨折したのに>
 弊会には児童クラブで働いている人からいろいろな相談や問い合わせがありますが、先日届いたのは「児童クラブで仕事中、足を骨折してしばらく歩けなくなったのに、会社が労災申請に必要な手続きを拒否している。どうしたらいいか」ということでした。もちろん、その相談は、その内容や性質から弊会が対応できる範囲を超えていますので、まずは労働局や労働基準監督署に相談することと、必要なら弁護士に相談することをアドバイスしました。(ごくごく一般的な助言ですし、具体的に何かアクションを起こすものでもないので、毎月十数件届くこのような相談には全て無料で返事しています)

 念のため、「いつ」けがをしたのか相談主に確認したところ、「クラブでこどもと遊ぶ時間に転んだ」とのことでした。間違いなく、就業時間中であり、かつ、業務に従事しているときのけがです。これは、けがの発生時=災害発生時ににおいて、「業務遂行性」=事業主(会社)の支配下にある=ことにおいて間違いはありません。さらに、そのけが=災害が仕事中に発生しているので「業務起因性」があることも疑いはないでしょう。
 つまり、相談主のけが=災害は、業務との間に一定の因果関係=相当因果関係がある、といえるでしょう。業務の遂行性があり、業務起因性がある、これは業務災害として国に認められる可能性はほぼ間違いないと私には考えられます。

 そうです、労災というものは、会社が認めるのものはないですし、けがをした本人が判定するものでもありません。どういう状況でどういう結果になったのか等、いろいろと事情を説明する書類を国に提出して、国が判断するものです。労災保険は国が管掌しているのですから当然です。

 ですので、わたし(萩原)からすると、児童クラブの会社が、職員が仕事中にけがをして労災の手続きをするのを嫌がること自体が全く理解できないのですね。国が判断するんですよ。乱暴に言えば「労災になるかどうか、会社が判断できる問題じゃねえんだよ。会社は書類の作成に協力すりゃいいんだよ」ということです。メリット制? べらぼうに労災保険料が上がるわけじゃないんだから気にすんな、です。もし「それは労働者が勝手にやった結果で起きたことですし」等と「なにか思うことがある、会社にも言いたいことがある」なら、正規の手続きに助力していく中で、会社としての見解を国に伝えればよろしい。

 この相談主は数か月、歩行ができない状態になったとのことでした。それでは困りますよね。「ところでどうして、会社は協力してくれないんですか?」とわたしは尋ねました。

<「夏休み限定だから」はまったく理由にならない>
 「それがね、会社が言うには、あなたは夏休みだけの契約だからっていうんですよ。しかもそのクラブは夏休みだけ特別に増えたクラブなんです。会社は、夏休みが終わってもうあなたはうちの職員じゃないから労災申請にうちは一切協力できません、書類には一切の記載ができません、って返事なんですよ。それって正しいんですか?」

 運営支援ブログをわざわざ読んでいただけるほど児童クラブに興味関心がある人なら、夏休み期間中に、こどもを受け入れる特別の児童クラブが制度として認められるようになったことはご存じでしょう。いわゆる「サマー学童」ですね。また、既存の児童クラブでも夏休み期間中に臨時に「支援の単位」を増やすことも数年前から補助金対象となっています。そういうクラブ、増えているんですね。今回の相談は、そういった期間限定クラブでの業務災害の話でした。これは今後、サマー学童が盛んになると、問題になりかねない事例だと私は感じました。

 相談主への返答でも伝えたのですが、「夏休み限定であろうがどうだろうが、事業主(会社)と契約して働いて給料をもらっているなら労働者。業務を遂行しているときにその業務によってもたらされたけがなら、それは労災として認められる可能性は非常に高い」というのは、誰に聞いても当たり前です。そのけがが、よほど個別具体的に異例なことで起きたのでもないかぎり、労災になると認められる可能性は極めて高いでしょう。
 この相談では普通にこどもと遊んでいて転んでしまったようですが、決して不注意ではなく、あそびに欠かせない体の動作に伴う転倒です。まずもって国に申請してはねのけられる可能性は少ないでしょう。わたし自身もかつて児童クラブ運営法人の責任者でしたが、無期雇用だろうが数か月の有期雇用のアルバイトだろうが、転んでけがをした職員の労災申請手続きへの助力を拒んだことは一度たりともありません。それが当然だからですが、その当然は児童クラブの世界では実は当然ではない、というのが残念ながら現実です。

 繰り返しますが、国は待機児童解消のために夏季休業中の児童クラブ増設に躍起となっています。それがサマー学童ですし、休業期間中の支援の単位増に対する補助金制度です。当然、期間限定で働く職員は増えるでしょう。そして児童クラブにおける業務の内容は労働災害、業務災害が起きる可能性が高い業務です。体を使ったあそび、走ったりボールを蹴ったり投げたりする、激しい動作を伴うあそびをこどもと一緒に行うのは業務の一部ですから、その際に、けがをする可能性があるのです。
 こどもとあそぶという業務中にけがをした、それが夏休みなど休業期間中の臨時の児童クラブで数か月の期間限定の雇用契約で働いている労働者であったとき、今回の相談事例のようなことが起きてしまったら、それは労働者にとってすこぶる不利な事態に追い込まれます。秋からの本業に差しさわりが出る人だって出てくるでしょう。
 国、地方自治体は、このような残念な事態を起こさないよう、サマー学童や長期休業期間中の臨時的な児童クラブを盛んにさせようとするならば、児童クラブ事業者をしっかりと監督する必要があります。法令に定められたことを免れようとする悪徳な児童クラブ事業者には厳しく対応するべきです。補助金ビジネスをやっているような事業者が労災隠しをしたら、公募の参加資格を外せばいいんですよ。それが一番効きます。
 
 なお、労働災害に関する事業者(会社)の義務としては、労災申請に関して事業者は、必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない、と「労災保険法施行規則」(第23条2項)に定められています。また、事業主は、労働安全衛生法の定めに従って、労災が発生したときは労働基準監督署に報告せねばなりません。「死傷病報告書」の提出が義務となっています。これを行わない=労災隠し、は明らかな法令違反です。労災の申請手続きに協力しないということはこの私傷病報告もしないことですから、れっきとした犯罪行為である労災隠しに手を染めるということです。

 児童クラブの世界は、けがが大変多い。労災にならない、自分で湿布を張る、ばんそうこうを貼る程度の軽微なけがを含めれば日常茶飯事です。労災が多いことは恥ずべきことではありません。児童クラブの業務においては、避けようがないからです。しかし、労災申請に助力をしない事業者があることを、児童クラブに関係する人たちは恥じねばなりませんよ。なんで拒むんdねすかね。面倒くさいんですかね。ちなみに相談主を雇っている事業者は、とても事務手続きに手が回らないような零細規模ではありません。全国各地で児童クラブを運営しており、児童クラブ業界で言えば大きな会社です。それなのに、職員がけがをした、それも骨折という大けがなのに知らんぷりというのは、言語道断です。児童クラブはいまだにブラック事業者が幅を利かせているのは、残念すぎることです。

<以降の展開が気になります>
 相談主さんには「けがをした日時と状況、そしてその時に間違いなく児童クラブの会社に雇われていたということが証明できる書類を手元において、労働局なり労基署なりに相談してくださいね」と伝えました。相談主さんは、「そういうお役所があるんですね!」と言っていました。ここも大事ですよ。世の中には、労基署を知らない人っていないでしょ、って思う人が多いでしょう。そんなことは全くありません。あなたが「これは世間の常識」と思っているようなことを知らない、考えたこともない、ということは「当たり前」という認識を持ってください。なので私も、相談主が、労働問題の相談窓口があることを知らなかったことには驚きません。そんなものです。そうでなければそもそも弊会に相談してこないでしょう。ですから各種分野の専門家には「そんなことも知らない? 想像できない?」と思ったことをすぐに口にするようになってしまったのなら、それはもう、世間とは別世界に移ってしまったということを自覚したほうが良いと私は勧めます。思うだけならまあ仕方ないとしても。

 最後に「関係機関に相談してもダメなら弁護士さんですし、私にもまた連絡してください」と伝えました。連絡がこないことを願うばかりです。

(お知らせ)
<新着情報!>
 2025年6月から放課後児童クラブ(学童保育所)の新規設立と日本版DBS制度への対応に際してご相談者様、ご依頼者様からのニーズに万全対応を期すべく「イオリツ行政書士事務所」(佐久間彩子代表)と、業務上において連携することと致しました。
 弊会に寄せられた児童クラブ新規設立のご相談、ご要望に際しては、児童クラブ全般の説明や業務設定の支援を弊会にて行い、クラブ設立に関する具体的な相談や手続きにつきましては、イオリツ行政書士事務所にて対応となります。また、日本版DBS制度につきましては、弊会は事業者の労務関係面の対応助言や必要規程の整備を担当し、イオリツ行政書士事務所が制度の説明や、認定事業者を得るための具体的な手続きの説明や代行面を担当いたします。
 佐久間氏は、「日本一、学童保育に詳しい行政書士を目指す」として2025年度から事業を開始された気鋭の行政書士です。児童クラブに関しても豊富な知識を有しており、また実際に保護者運営系の児童クラブの利用者であり運営にも関わっておられるので、児童クラブに関する業務についてはまさに最適任です。
 児童クラブの新規設立や運営主体の変更の手続き、また日本版DBS制度の全般的な相談には、ぜひとも「イオリツ行政書士事務所」まで、お問い合わせいただけますと幸いです。
「イオリツ行政書士事務所」(https://office-iolite.com/
代表者:佐久間 彩子(さくま あやこ)
所在地:〒231-0048 神奈川県横浜市中区蓬莱町2-6-3 KOYO関内ビル406
 もちろん、イオリツ行政書士事務所は日本版DBS制度についてきめ細やかな事業者様のサポートが可能です。
・認定取得に向けた申請書類の整備/相談
・導入/管理体制の構築、運用のサポート
・職員/保護者向けの説明サポート
・制度や法令に関する最新情報の提供
・就業規則等の整備、労務関係面の対応助言(弊会も連携して対応いたします)
日本版DBS制度についてのご相談は、弊会並びにイオリツ行政書士事務所まで、ぜひご相談ください。(https://dbs.office-iolite.com/)

 弊会代表萩原ですが、必要な手続きを経て2025年9月1日付で、社会保険労務士として登録となります。埼玉県社会保険労務士会大宮支部となります。同日付で「あい和社会保険労務士事務所」を自宅にて開業いたします。詳細は後日、ブログに投稿いたします。同日以降は、社会保険労務士としての業務は「あい和社会保険労務士事務所」で、放課後児童クラブ(学童保育所)の個別具体的な運営支援については「あい和学童クラブ運営法人」で分離してお引き受けいたします。「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽に児童クラブについての講演、セミナー、アドバイス、メディア対応についてご依頼ください。
 ※新着情報はここまで。

〇弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない、あらゆる児童クラブを応援しています。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。
 さらに運営支援からの書籍第2弾として、放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を発売しました。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。もちろんフィクションですが、リアリティを越えたフィクションと、自信を持って送り出す作品です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いたハートフルな作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説です。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。
 この2冊で、放課後児童クラブの世界をかなり知ることができると運営支援は自負しています。いわゆる日本版DBS制度において、放課後児童クラブと関わりができるであろう弁護士や社会保険労務士、行政書士といった各士業の方々には、放課後児童クラブの世界を知るにはうってつけの書籍となっています。他の業種、業態とかなり異なる、ある意味で異質の業界である児童クラブについて知ることができる、運営支援からの2冊を士業の方々には、ぜひご活用ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也