「日本版DBS」制度の「中間とりまとめ素案」が国から提示されました。放課後児童クラブ(学童保育所)の業界は、準備を急ごう。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 盗撮事案の報道が相次いでいますが、2025年6月30日に、こども家庭庁は「こども性暴力防止法施行準備検討会」の第4回会合を開き、そこで「中間とりまとめ素案」を示しました。来年(2026年)12月から実施される、いわゆる日本版DBSに向け、着々と新制度の骨格が整いつつあります。児童クラブの世界は必然的にこの制度に向き合わねばなりません。認定を目指す、目指さない、いずれにしても対応や準備を進めなければなりませんよ。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<報道での紹介内容を横断的に見る>
 国は、こども性暴力防止法による、いわゆる「日本版DBS」の実施に向けて、具体的な制度の内容を作り上げている最中です。今回、国から提出された「中間とりまとめ素案」は、これまでの準備検討会で検討されてきた内容をまとめたものです。そもそも、この中間とりまとめ素案というものは、どういうものなのか。この素案の4ページ目にこう書かれています。
「本素案は、このような議論を踏まえた施行事項の対応案をまとめたものであり、今後、こどもの意見聴取や事業者等からのヒアリングを踏まえ、秋には、制度の骨格を示すものとして、中間とりまとめとしてまとめることを予定している。」
「その後、中間とりまとめを基に検討を進め、年内目途に、内閣府令等の下位法令を定めるとともに、ガイドライン等を策定していくことを予定している。」
 これから夏の間に、国はこどもと関係団体から意見を聞いて、秋に「中間とりまとめ」として公表します。その中間とりまとめをベースにして、日本版DBS制度によって従うこと、守らねばならないことを記したガイドラインを国は作って公表する、という流れとなります。ですので、この中間とりまとめ素案の内容に目を通しておくことは、児童クラブの業界団体のとりまとめ役の立場の人は当然のこと、児童クラブ事業を手掛けている立場の人(事業者の役員クラス)であれば、目を通しておかねばなりません。

 さてこのたびの素案とりまとめに関してメディアの報道を紹介します。これまでの準備検討会の議論の積み重ねが多く、目玉となる目新しい内容が急に飛び出したものではないので、取材した記者また報道機関それぞれの視点、つまり興味関心があると思ったことが記事の内容に反映されているので、それはそれで面白いですね。これらを横断的に知ることで、取材されている事象全体の輪郭がつかめるようになります。(ですので昔から新聞やテレビのニュースはできる限り多くの発信元を見て比べるべきだ、と言われているのです。1つのメディアだけの情報では、得られる知識や見解が偏るのです)

NHK(2025年7月1日5時38分配信):記事の見出し 「日本版DBS」うその申告で内定取り消しなどガイドライン素案
 (記事の引用)「制度運用のガイドラインを策定するための検討会が30日開かれ、こども家庭庁は、性犯罪の前科がある人への対応など、ガイドラインの素案を示しました。」「本人が性犯罪の前科がないと申告したのに、その後に犯罪歴があったことが分かった場合は、「重大な経歴詐称」に該当するとして、内定の取り消しができるとしています。」(引用ここまで)
※私(萩原)の視点:意訳して「ガイドライン策定のための検討会」としていてそれはそれで分かりやすい。虚偽申告による解雇や契約取り消しに焦点を当てた記事。例えば盗撮をして逮捕・起訴され有罪判決を受け刑が確定した教員や保育士などは、後に日本版DBS対象となった施設で働こうとして求人に応募したものの盗撮という犯罪歴を隠して採用された場合、後ほどその犯罪歴が知られることになったときは、内定取り消しになるよ、という話です。とまあ、日本版DBS制度とは関係なく、重大な経歴詐称については、今でも内定取り消しや解雇の有力な条件になりますけれどね。その点、大学卒業と一般に公表して活動してきたものの実は除籍だったことがバレた市長は民間ならクビになってもおかしくないですよ。自分自身が大学を卒業したのかしなかったのかすら記憶していない人が市長という要職を務められるとは理解に苦しみますし、卒業していないことを知っていながら卒業したふりを演じてきてバレたらのらりくらり言い訳する人が、市民や市職員の信頼を得られるはずがない、そんなことも分からない人が市民の代表として活動できると思っているとしたら、どれだけ市民をバカにしているのかという話ですね。話がズレましたが、ほとほとあきれた話です。

 TBSテレビ(2025年6月30日16時58分配信):記事の見出し 性犯罪歴確認する「日本版DBS」導入に向けたとりまとめ案 有識者検討会で示される こども性暴力防止法 こども家庭庁
 (記事の引用)「きょう開かれた有識者検討会で、こども家庭庁は、これまでの議論を踏まえたとりまとめに向けた案を示しました。」「学校や児童福祉施設、国の認定を受けた民間の学習塾などは性犯罪歴の確認が義務づけられていますが、今回示された案では、ベビーシッターや家庭教師などの個人事業主についても、マッチング事業者から委託を受けていれば、対象となる方針です。」(引用ここまで)

 読売新聞オンライン(2025年6月30日19時46分配信):記事の見出し 子どもへの性暴力の未然防止、防犯カメラの活用「有効」…日本版DBS運用へ素案を大筋了承
 (記事の引用)「来年12月に予定されている「こども性暴力防止法」の施行に向け、同法の運用指針を議論しているこども家庭庁の検討会は30日、防犯カメラの活用が盗撮などの性暴力の未然防止に有効だとの考えを示した中間とりまとめ素案を大筋で了承した。」(引用ここまで)
 ※私の視点:この記事ですが、読売新聞オンラインのHPにはハッシュタグ「許すな わいせつ教育」が付けられています。盗撮事案が相次ぐことを踏まえて、カメラ活用が有効だとする記事です。ただこれまでの準備検討会の議論で、カメラの活用が取りざたされたのは主に「いとま特例」(犯罪歴の確認が間に合わないので、確認が終わるまでその者を暫定的に働かせることができる特例)の議論に関してだったと記憶しています。また、児童対象性暴力等が行われる「おそれ」の判断プロセスとして監視カメラの記録映像が判断に使えるだろうというものでした。日本版DBS制度全体にカメラ活用が有効だ、という議論ではなくて局所的なものだったと記憶しています。ただもちろん、監視カメラは有効であるので整備は急ぐべきでしょう。補助金も準備してほしいですね。

 朝日新聞(2025年6月30日18時28分配信):記事の見出し こども食堂も「日本版DBS」対象に 要件満たせば、年内に指針
 (記事の引用)「芸能事務所やこども食堂も、一定の要件を満たせば国の認定を受けることで対象となる。」(引用ここまで)
 ※私の視点:芸能事務所やこども食堂も日本版DBSの対象となる可能性に注目した記事です。これは準備検討会の第1回(4月21日)の資料ですでに示されていた内容でした。その時の資料に「事業の中で「児童等に対する技芸又は知識の教授」を行っている場合(例:こども食堂における学習支援、芸能事務所におけるダンス指導等)には、認定対象として認めるものとする。」と記載されていました。よって、6月30日の会合で新たに出されたというような、取り立てて目新しいものではありません。

 共同通信(ヤフーニュースに2025年6月30日19時31分配信):記事の見出し 子の安全へ防犯カメラ有効 性暴力防止、こども庁
 (記事の引用)「こども家庭庁は30日、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する「日本版DBS」の指針策定に向けた有識者検討会で、面談室など児童と1対1になる場所には性暴力防止へ防犯カメラの設置が有効との認識を示した。」(引用ここまで)
 ※産経新聞社は共同通信記事を掲載しています。毎日新聞の記事はインターネット配信では確認できていません。

 時事通信社(ヤフーニュースに2025年6月30日18時40分配信):記事の見出し 「盗撮も対象」周知強化へ 日本版DBS、教員の事件受け こども家庭庁
(記事の引用)「小学校の教員が女子児童の盗撮画像などを共有していた事件を受け、委員からは対策強化を求める意見が続出。盗撮もDBSの対象となることを十分に周知し、教員向けの研修内容などに反映させる方針を確認した。」(引用ここまで)
 ※私の視点:盗撮は、日本版DBSの制度対象となる「特定性犯罪」に含まれます。(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律・性的姿態等撮影(2条)・性的影像記録提供等(3条)・性的影像記録保管(4条)・性的姿態等影像送信(5条)・性的姿態等影像記録(6条))。こども性暴力防止法に規定された、いわば大前提の話ですので当然といえば当然なのですが、あまりにも盗撮教員の事件がショッキングだったのでしょう。

 主なメディアの報道を紹介しました。各社の記事、注目点がバラバラであったことが良く分かりますね。それはある意味当然で、これまでの準備検討会の「とりまとめ」の会合だったので、そのとりまとめの会合で急に新たな論点が浮上したら、それはそれで困るわけです。新たな論点が急浮上したらそれこそニュースの柱になるので各社ともそこに焦点を当てた記事になるでしょうが、今回のように注目点がバラバラであったということは、ある意味、順調に準備検討会が進行して、それまでの議論を国が積み重ねることに成功した、といえるでしょう。

<児童クラブ側は当然に準備を進めよう>
 着々と、日本版DBSの制度が固められつつあります。児童クラブ側は準備対応を進めておかねばなりません。次のことを取り組んでいく必要があります。
・そもそも、認定事業者となることを目指すのか、目指さないのか。目指さないとした場合、事業の継続に重大な影響は生じないのか。事業者自身だけでなく、民設民営クラブであっても事業内容について行政から業務委託契約を受けている場合、その委託契約の将来の締結について影響が出ることがあるのかどうか、絶対に調べて確認しておかねばなりません。また、利用者たる保護者の意見を集める必要もあります。保護者が日本版DBS制度の認定事業者となることを望んでいるのに事業者側が事務作業の煩雑さや職員のプライバシーに敏感となって認定事業者となることを選ばらない場合、トラブルになる可能性があります。

・放課後子供教室も制度対象であることを理解する。放課後児童健全育成事業に類する事業としては、社会教育法第5条第2項に規定する地域学校協働活動のうち、放課後子供教室、地域未来塾等として行われているものがあると記されています。(中間とりまとめ素案17ページ) 
 放課後子供教室と連携型または校内交流型で、児童クラブが放課後子供教室と一緒に事業を行うことがごく普通になってきています。児童クラブ側は、放課後子供教室側に、しっかりと日本版DBS制度が順守されているかどうか気にしておくことが大事です。当然、事業者は放課後子供教室を開催する担当部署(だいたいは教育委員会)に制度対象に関して確認をしておくことが求められます。放課後子供教室のスタッフが「いとま特例」の場合はこどもとの関わり方において制限が必要となる可能性があるからです。

・制度の対象者をしっかりと把握することです。放課後児童クラブについては「事業所の管理者・従事者のうち児童の遊び・生活の支援に関する業務を行うもの」と示されています。(中間とりまとめ素案23ページ)。また「育成支援の周辺業務を行う職員」は対象とならないと明示されています。(中間とりまとめ素案34ページ)
 この、周辺業務を行う職員が対象とならないとするのは、この準備検討会のメンバーに児童クラブのことをよく知っている人がいないのかなと私には思える内容です。育成支援の周辺業務のみを行う職員を確保できる児童クラブ事業者はそうそうありませんからね。本部機能、事務局機能を有している児童クラブ事業者の場合、本部や事務局にてのみ作業に従事する者は対象外となるということですが、一方、児童クラブの世界によくあることですが、午前中は本部勤務、午後は現場勤務だったり、あるいは普段は本部勤務であっても人手不足や欠員対応で現場勤務に入る場合は当然に、制度の対象者、つまり犯罪歴確認が必要となる、ということです。ここで問題なのは、児童クラブの場合、本部や事務局機能といっても、まったくこどもと関わらないということが想定できない場合もあるということです。所外活動において引率薬で参加したり、日時が限定されていても現場クラブ巡回、巡視の際にこどもと関わることもあります。法の趣旨を超えることになるかもしれませんが、万が一の場合を考えて本部や事務局の従事者にも犯罪歴確認を求めることができるのかどうかも検討が必要でしょう。事業者側が「このものは現場でこどもと関わる業務に就く」とすれば制度の対象に含むことができるでしょうから。

・制度の対応責任者を決めるための議論を始めてください。中間とりまとめ素案49ページに記載されている内容を紹介します。
「対象業務従事者の犯罪事実確認を期限までに適切に行うため、必要に応じて、事務計画の作成(例 年間スケジュールの作成)、執行体制の構築(例 責任者、担当者等の決定)等を行うこと」
 この制度は、これから採用しようとする人の犯罪歴を確認したり、すでに働いている人の犯罪歴を確認するために戸籍情報を集めたりと、極めて高度なプライバシー情報を取り扱わねばならない制度です。責任者、担当者を決めねばなりません。

・制度を支える組織内規定、ルールの制定に取り掛かってください。同49ページの記載内容を紹介します。
「予定どおりに犯罪事実確認を行うことができない場合を想定して、必要な対応を事前に行っておくこと(例 戸籍提出への協力が得られない場合を想定して、対象業務従事者への事前同意、就業規則等の整備等を行っておく) 等」「対象業務従事者が行うべき事項(申請アカウントの作成、戸籍等の提出、研修受講等)及びそれが行われなかった場合の対応等」

・「児童対象性暴力等対処規程」を必ず作成することになります。(中間とりまとめ素案50ページ)
「法第20条第1項第4号においては、認定を受けようとする民間教育保育等事業者は、次の①から③までに掲げる措置を定めた児童対象性暴力等対処規程を作成し、かつその内容が内閣府令で定める基準に適合するものであることを求めている。① 防止措置② 児童対象性暴力等の調査③ 児童対象性暴力等を受けた児童等の保護・支援」
 これは後ほど国からお手本となるガイドラインが示されます。具体的な作成はそこからとなりますが、作成をどうやって行うのかは最低でも事業者内で議論しておきましょう。外部の専門家(弁護士や行政書士)に相談や依頼するにも予算が必要ですから、予算を確保しておくのも必要な準備の1つです。国への届出方法がオンラインで一般の事業者には難しくなりそうですので、そのような届出法に慣れた外部の専門家に丸ごと頼むのも、一つの有効な方策でしょう。また、認定を得た事項の変更があったときにもオンラインで申請するようです。行政官庁へのオンライン提出を児童クラブ事業者独自でこなすことはなかなか大変です。それも含めて、外部の専門家と顧問契約を結んでおくことも検討しておく必要があるでしょう。

・児童クラブの運営事業者に保護者や地域の人々が加わっている場合、これから役員に就く方には、個人的な書類を提出してもらう必要があることを承諾してもらって、役員になっていただくことになります。中間とりまとめ素案65ページの表に「役員の氏名、略歴等を示す書類(第5号)」と明示されました。略歴ですから履歴書のようなものですが、そういうことを提出するのを嫌がる保護者も少なからずいます。そういう人が役員でいると日本版DBSの認定事業者になれない可能性もあります。つまり、個人情報を外部に出すことを了承してくれる保護者や地域の人しか、役員に選んではならない、ということです。

・日本版DBSの制度の骨格である、「安全確保措置」の内容についてきめる必要があります。安全確保措置は中間とりまとめ素案85ページに示されています。「ア 早期把握 イ 相談 ウ 調査 エ 保護・支援 オ 研修」です。児童クラブが含まれる認定事業者も構築せねばならない措置です。
 例えば、早期把握については素案87ページに記されています。「ア 児童等に対する日常観察 イ 発達段階や特性に応じた児童等に対する定期的な面談・アンケート ウ (児童等に関する異変を把握した場合の)事業者内部での適切な報告」の3点ですが、これをどれほど多くの児童クラブ事業者が現在、すでに実施できているでしょうか。日常観察すらままならない、というか「ただ見ている」だけで「観察」はしていない職員が多いのではなかろうか。早期把握から研修にいたる5項目について、中間とりまとめ素案にすべて示されています。
 安全確保措置については日本版DBSの制度の背骨ですから、徹底的に児童クラブ事業者内で議論してください。

・労働契約、雇用契約に関する書式を確実に整えることが必要です。日本版DBS制度においては、事業者と労働者との間で交わされる契約書面の提出が義務となります。中間とりまとめ素案130ページに明示されています。申請において添付するべき書類と定められている者です。
「新規採用(民間)  内定通知書の写し (「やむを得ない事情」により従事開始後に確認する場合)内定通知書の写し、雇用契約書又は労働条件通知書の写し」
「現職者(民間) 雇用契約書又は労働条件通知書の写し」
 議論の段階で「これだけで十分でしょう」と絞られたものが内定通知書だったり雇用契約書又は労働条件通知書なんですが、それすら満足に作成して働くものに交付している児童クラブ事業者は、断言しますが、極めて少ないはずです。「雇用契約書? 見たこともない」と言っていた支援員、指導員に数えきれないぐらい遭遇しました。まずはここから整えなければ、とても児童クラブは認定事業者になぞなれません。この点は社会保険労務士に相談してください。
 なお、本人確認書類として欠かせない戸籍情報ですが、中間とりまとめ素案133ページに示されています。オンライン提出とかマイナンバーカードを端末にかざして取得とかいろいろ記されています。こちらについては大変に機敏な内容です。外部の専門家(弁護士、行政書士等)に相談して学んでいくことをお勧めします。私(萩原)もお手上げです。なおこの戸籍情報、氏名に変更がある場合は書類の省略が不可となっています。婚姻等で氏名が変更した場合はどうなるのでしょう。放課後児童支援員認定資格研修も戸籍情報の提出が必要で婚姻で姓が変わった人は本籍地まで戸籍を取りに行っていましたが、同じようなことなのでしょうかね。このあたり、制度上の便利さを阻害する要因を少しでも減らすために実務上の点でも、夫婦別姓制度の必要性が如実に示されていると私は考えるものです。(本来は人権、人格権の尊重、個人の尊厳の保持という面で必要な制度でしょうけれども)

・児童性暴力等が行われる「おそれ」に関しての判断プロセスは、児童クラブの実務上、極めて重要な分野です。先日、鹿児島県内のシルバー人材センターが運営する児童クラブでカメラをこどもが見つけて職員に知らせたのに職員が取り合わなかった、その結果、盗撮被害はその後1か月も続いたという、心底あきれるひどい事案がありました。まさにこの分野の話です。中間とりまとめ素案153ページに記載があります。
「法第5条による早期把握措置(面談等)又は相談のほか、保護者からの相談、内部通報等により、児童対象性暴力等又は不適切な行為の疑いが生じた場合、いかに些細な情報であったとしても、真摯に受け止め、迅速に事実確認に移ることが重要と考えられる。」
 先の鹿児島県内の児童クラブでは、真摯に受け止めず迅速な確認を怠ったことから被害が拡大したものです。児童クラブの世界は、権利を守るという視点に基づく情報の判断と取り扱いに遅れが見られます。これは、研修で徹底的に学んでください。
 さらに素案には「在籍する児童等本人又はその保護者から、特定の対象業務従事者による児童対象性暴力等の被害の申告があった場合には、性暴力の被害が引き続き発生している可能性があり、また、被害がすぐに他の児童等も含めて拡大する可能性があるため、事実確認と並行して、一時的な接触回避策としての防止措置を講じる必要があると考えられる(なお、加害が疑われる者が起訴された場合には、起訴休職とすることも考えられる(就業規則に定めがある場合に限る))。」と記載があります。職員の就業を制限する可能性を踏まえ、組織内の就業規則類の改正が必要です。就業規則が無い児童クラブ事業者は作成する必要があります。

・さらに「おそれ」の判断プロセスにおいて、素案154ページに「監視カメラ等の記録、SNS上でのやりとり等の客観的な証拠の収集」が挙げられています。監視カメラの整備に取り組む必要があります。職員のSNSを児童クラブ事業者が確認するには服務規程等、就業規則類にて事前に定めておく必要があります。これもまた、今すぐにでも事業者内で議論を始めて取り掛かる必要があります。
 「おそれ」の判断プロセスによる性暴力等の認定にいたるまでには、こどもに対する極めて大きな負荷が問題です。素案にも丁寧に記されていますが臨床心理士、公認心理師、弁護士等の相談が可能な専門家、専門機関との連携が極めて重要です。この体制構築は時間がかかります。今すぐ取り掛かるべきです。

・児童対象性暴力等が行われる「おそれ」に応じた防止措置の内容は、中間とりまとめ素案159ページ以降に示されています。調査対象者が特定性犯罪事実該当者だった場合には、新規採用の場合は内定取消し等、現職者の場合は対象業務以外への配置転換等を行うことなどが記されています。いずれも児童クラブ事業者がそれを実行する根拠となる就業規則類をしっかりと制定して運用していることが大前提となります。ただ制定しただけではダメで、それが職員、スタッフの間に周知されていなければ効力を発揮しません。ここもまた児童クラブ事業者の弱点です。即座に対応しましょう。

・ 特定性犯罪前科の有無を事前に確認することなく新人を採用した場合、どうなるでしょうか。中間とりまとめ素案161ページにあります。素案では、「「重大な経歴詐称」には該当せず、犯歴のみをもって直ちに内定取消しを行うことの合理性・相当性が認められるとは考えにくい」とあります。つまり採用する側がしっかりとルールを定めて人材採用プロセスを行うことが重要なのです。事業者の対応として素案は3点を例示しています。
① 内定通知書、就業規則等に、内定取消し事由や試用期間の解約事由として「重大な経歴詐称」等を定めて説明しておく
② 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科がないことを明示する
③ 履歴書、採用面接、内定時の誓約書等を通して、特定性犯罪歴の有無を書面等で明示的に確認する
これらを児童クラブ側が確実に行わねばなりません。なお、制度の実施が来年12月ですから、今のうちに職員採用については、この特定性犯罪前科の有無について採用条件に明示しておくことが必要です。これについては「今すぐ」行う必要があります。

・現職者(すでに働いている人)の解雇が考えられる制度ですが、実務上、最も頭を抱える分野の1つでしょう。いずれ裁判沙汰にもなりそうな分野ですから、児童クラブ事業者は、弁護士や社会保険労務士と相談して、必要な社内ルールの構築に乗り出してください。中間とりまとめ素案162ページ以降です。「(採用過程において特定性犯罪前科の有無を確認している等の事情がない限り)一般的に、犯歴のみをもって直ちに解雇することは難しいと考えられる」とあります。しかし、児童クラブの世界は、「こどもの支援、援助に関わる業務に従事する者に対する極度の潔癖性を求める性向」から、特定性犯罪の前歴が判明しても社内ルールの不備で解雇ができないとなったとき、他の職員が「あの人を辞めさせないなら、こちらが辞めます。組織が信頼できませんし、前科のある信頼できない人と一緒に仕事はできません」ぐらいの流れに容易になる傾向が多分にあります。
「仮に、配置転換等の措置を講じることを十分に検討したが、事業所の規模や業務内容から、法に基づく防止措置を履行するためには解雇以外の選択肢が取り得ないという事情の下で普通解雇を行い、当該普通解雇の有効性が司法の場で争われる場合、・事業者に児童対象性暴力等の防止等の責務があることを明らかにし、そのために必要な措置を講じることにより児童等の心身の健全な発達に寄与することを立法の趣旨とする、この法に基づく防止措置として行ったものであるという前提の下では、・当該事情があったと認められる場合に、当該事情は普通解雇の有効性の判断に当たって重要な要素として考慮されうるが、・最終的には司法の場において、個別の事案毎に具体的な事実関係に基づいて客観的合理性・社会的相当性の観点から判断されることとなる。」と素案にあります。まさに児童クラブは解雇以外の選択肢がない職場ですから、普通解雇の有効性をめぐって訴訟リスクを抱えることになるでしょう。この点は、冷静に認識しておく必要があります。

・調査の結果、特定性犯罪に該当するようなことはなかったが、不適切な行為があったとする場合です。これもまた児童クラブの世界では難しい局面です。先に記した児童クラブ特有の、職員に極度の潔癖性、つまり常識として必要とされる以上の高い倫理観を求める性向においては、不適切な行為であってその後の改善が可能であるとしても「あの人はこどもに不適切な行為をしたので、一緒に仕事できません」と就業を拒否するような職員が洗われても不思議ではありません。または仕事は内心、嫌々ながら続けるとしても「あんな不適切な行為をした人を雇い続けている組織が信頼できない」と雇用主側に不信を抱くことは、これはあるでしょう。
 中間とりまとめ素案164ページの「不適切行為が初回かつ比較的軽微なものであるような場合は、まずは、当該行為を繰り返さないように指導を行い、注意深くその後の経過観察を行う等、段階的な対応を行うことも考えられる。」という点が合理的な対応であることを、児童クラブ事業者は職員に徹底して理解させねばなりません。もちろん、不適切な行為をした者が事業者の指導や注意を無視して繰り返す場合は、より厳しい対応に進むのは当然です。

・児童クラブ事業者が弱い「社内・組織内で定めて置く労働関係のルール」ですが、中間とりまとめ素案166ページが参考となります。この内容を念頭に準備を進めておくことが欠かせないでしょう。「事業者が、犯罪事実確認や防止措置に係るトラブル防止のためにあらかじめ行うべき主な事項は、次のようなものが考えられる。」としてその内容が列記されています。全部を紹介することはとてもできませんが、就業規則において事前に定めておくべき内容として「こども性暴力防止法上の「児童対象性暴力等」に該当する行為を行ったとき」「児童対象性暴力等につながる不適切な行為を行ったとき」が挙げられています。当然、不適切な行為の内容についても明示しておく必要があります。

・情報管理措置の徹底。これは、中間とりまとめ素案184ページ以降に示されています。高度なプライバシー情報を取り扱う制度ですから、厳重かつ徹底した情報管理措置が必要です。素案では「① 犯罪事実確認記録等の適正な管理② 目的外利用・第三者提供の禁止③ 漏えい等の重大事態のこども家庭庁への報告④ 犯罪事実確認記録等の廃棄・消去⑤ 監督等」が挙げられています。
 素案192ページには「情報管理措置は、各事業者において、必要な措置が盛り込まれた情報管理規程を策定するとともに、これに規定した措置を適切に遵守することをもって満たすものとすること。」と記されています。情報管理規程の策定が欠かせません。その規程に盛り込まれるべき内容は、「① 基本的事項② 組織的情報管理措置③ 人的情報管理措置④ 物理的情報管理措置⑤ 技術的情報管理措置」が明示されています。この規程の策定は高度な内容を理解した上での策定が必要です。外部の専門家(弁護士、行政書士等)に相談することが必要となってくるでしょう。

 児童クラブ事業者に直接、関わってくる事項の中で、絶対に欠かせないところのみ、ざっと紹介しました。素案の内容がおそらくそのまま日本版DBS制度の骨格に反映されると予想できますので、この素案の内容をしっかりと理解することが、児童クラブ事業を営む立場にある者の責務と心得てください。業界団体や、大規模な児童クラブ事業者においては、この素案の内容を、児童クラブ事業者や、事業の中核となっている立場の者に理解させるための研修や勉強会を開催していくことも大切です。

 弊会もまた、引き続き日本版DBS制度への取り組みを進めてまいります。制度の概要や重要ポイントの解説などに関して、ぜひ児童クラブ関係者からのご相談をお待ちしております。弊会そして弊会と連携しているイオリツ行政書士事務所はじめ各士業の皆様と連携して、日本版DBS制度導入のサポート、フォロー、支援を行ってまいりますので、お気軽にご相談ください。

(お知らせ)
<新着情報!> 2025年6月から放課後児童クラブ(学童保育所)の新規設立と日本版DBS制度への対応に際してご相談者様、ご依頼者様からのニーズに万全対応を期すべく「イオリツ行政書士事務所」(佐久間彩子代表)と、業務上において連携することと致しました。
 弊会に寄せられた児童クラブ新規設立のご相談、ご要望に際しては、児童クラブ全般の説明や業務設定の支援を弊会にて行い、クラブ設立に関する具体的な相談や手続きにつきましては、イオリツ行政書士事務所にて対応となります。また、日本版DBS制度につきましては、弊会は事業者の労務関係面の対応助言や必要規程の整備を担当し、イオリツ行政書士事務所が制度の説明や、認定事業者を得るための具体的な手続きの説明や代行面を担当いたします。
 佐久間氏は、「日本一、学童保育に詳しい行政書士を目指す」として2025年度から事業を開始された気鋭の行政書士です。児童クラブに関しても豊富な知識を有しており、また実際に保護者運営系の児童クラブの利用者であり運営にも関わっておられるので、児童クラブに関する業務についてはまさに最適任です。
 児童クラブの新規設立や運営主体の変更の手続き、また日本版DBS制度の全般的な相談には、ぜひとも「イオリツ行政書士事務所」まで、お問い合わせいただけますと幸いです。
「イオリツ行政書士事務所」(https://office-iolite.com/
代表者:佐久間 彩子(さくま あやこ)
所在地:〒231-0048 神奈川県横浜市中区蓬莱町2-6-3 KOYO関内ビル406
 もちろん、イオリツ行政書士事務所は日本版DBS制度についてきめ細やかな事業者様のサポートが可能です。
・認定取得に向けた申請書類の整備/相談
・導入/管理体制の構築、運用のサポート
・職員/保護者向けの説明サポート
・制度や法令に関する最新情報の提供
・就業規則等の整備、労務関係面の対応助言(弊会も連携して対応いたします)
日本版DBS制度についてのご相談は、弊会並びにイオリツ行政書士事務所まで、ぜひご相談ください。(https://dbs.office-iolite.com/)

※新着情報はここまで。「お得情報」が下にあります!

〇弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない、あらゆる児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイス、メディア対応が可能です。ぜひご連絡ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。
 さらに運営支援からの書籍第2弾として、放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を発売しました。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。もちろんフィクションですが、リアリティを越えたフィクションと、自信を持って送り出す作品です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いたハートフルな作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説です。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。
 この2冊で、放課後児童クラブの世界をかなり知ることができると運営支援は自負しています。いわゆる日本版DBS制度において、放課後児童クラブと関わりができるであろう弁護士や社会保険労務士、行政書士といった各士業の方々には、放課後児童クラブの世界を知るにはうってつけの書籍となっています。他の業種、業態とかなり異なる、ある意味で異質の業界である児童クラブについて知ることができる、運営支援からの2冊を士業の方々には、ぜひご活用ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
☆(お得情報!)
放課後児童クラブのエアコン機器の点検と清掃を考えている方に朗報です。弊会をバックアップしてくれている、埼玉県上尾市の「SVシステム株式会社」(埼玉県上尾市の電気・空調設備施工管理会社|点検・修理・メンテナンス|SVシステム株式会社)が、「児童クラブ限定」で、格安にエアコン機器の点検と清掃を承ります。埼玉県や上尾市に比較的近い地域であれば県外でもお伺いできます。見積はもちろん無料です。技術者のスキルは超一流。私が以前、児童クラブ運営事業者だったときからの長いお付き合いです。弊会お問い合わせメールで連絡先をお送りいただければSVシステム社に転送いたします。直接のご連絡も、もちろん大丈夫です。夏前にぜひ、エアコンの点検を!

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)