放課後児童クラブ(学童保育)で、気になる報道や話題をピックアップ。岡崎市の件や、こども家庭庁のことなど。

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に関しては、数年前よりもメディアで伝えられる、報道されることが増えてきた気がします。もっとも、不祥事の報道が増えているのは残念ですが。今回は、メディアで伝えられた中で、私が注視していることや気になったことをいくつか紹介します。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<岡崎市の民設児童クラブがピンチ!>
 インターネットで目にして驚きました。愛知県岡崎市の放課後児童クラブのうち、民設民営の3事業者に対して、岡崎市から唐突に補助金の廃止や減額が示されたということです。また、送迎支援の補助金の交付の要件を縮小するようです。詳細はインターネットで署名活動が展開されているので、そのページをごらんください。「岡崎市放課後児童健全育成事業費補助金の 廃止・減額撤回を求める緊急要望書」として実施されています。2025年1月18日午前10時時点で、469の賛同が集まっています。

 その署名活動のページに、丁寧に説明が記載されています。一部を引用して紹介します。
「2024 年11月下旬から12月上旬にかけて、岡崎市こども部こども育成課から各事業者に2025年度の岡崎市放課後児童健全育成事業費補助金(以下,補助金)の廃止・減額が唐突に示されました。」
「廃止・減額の理由は明確ではなく」
「2024年度と比較して、2025年度に廃止・減額となる事業と金額は、3事業者合わせて、21,906,000円」
「放課後児童健全育成事業(常勤放課後児童支援員を2名以上配置した場合)は(中略)岡崎市は、これを廃止すると示されました」
「放課後児童クラブ育成支援体制強化事業は(中略)岡崎市は、これを減額(半額)すると示されました」
「学童保育所の運営は、保護者からの保育料と岡崎市からの補助金で成り立っています。補助金の性質上、単年度主義ですので余剰金はありません。つまり、補助金が大幅に減額されるということは、保育料の大幅な値上げもしくは人件費の大幅な削減で対策するしか術がありません。そうならないよう、緊急に要望した次第です。」
(引用紹介は以上)

 大変残念な事態ですね。私が気になる点があります。列記します。
(1)岡崎市は公設民営の放課後児童クラブとして広域展開事業者(事業者としては、株式会社トライグループ)による児童育成センターが多数あります。そちらの事業者にも、同様の補助金の取りやめや減額を示しているのでしょうか。
(2)そもそも、取りやめや減額をせざるを得ない合理的な理由があるのでしょうか。それは民設3事業者に説明されたのでしょうか。
(3)取りやめとなる常勤職員2人配置の補助金は令和6年度から始まったばかりの補助金ですが、年度当初においては、それを適用するとして民設3事業者に説明していたのでしょうか。
(4)令和6年の放課後児童クラブ実施状況(こども家庭庁まとめ)によると岡崎市は児童クラブのいわゆる待機児童数が153人とワースト30内に入るほど状況が悪化している中で、民設事業者の事業運営にダメージを与える施策を、なぜわざわざ行うのでしょうか。市の財政状況が厳しいとはいえ、優先順位として放課後児童クラブの整備は相当程度、上位に位置されるものと判断できないのはどうしてでしょう。

 放課後児童クラブの施策、とりわけ待機児童の解消や子どもの居場所の整備に関しては前年度から「放課後児童対策パッケージ」として国は方針を示しています。そのパッケージの最新版でも、国は、常勤職員の定着のための補助金を自治体が活用することを求めています。パッケージ2025の2ページに、こう記されています。
「自治体において、補助事業を十分に活用できていない状況が見られる。国ではこれまで、待機児童縮減に向け、職員の処遇改善、職員配置に係る運営費補助、ICT 化の支援等、累次の事業を行ってきたところだが、自治体において必ずしもこうした事業の活用方法が理解されておらず、結果として補助事業の活用に至っていない例が散見される。このため、国が個別自治体の状況を詳細に把握した上で、活用できる補助メニューを案内する等の取組を更に進める必要がある。」
 つまり、自治体がもっと補助を活用しなさいと国はおかんむりなのですよ。岡崎市は、この国の意向に正反対の立場をとるようですが、どうしてでしょう。

 ぜひ、マスメディアはこの問題を取材して、岡崎市側、事業者側双方の立場、主張を報道してください。双方の主張を並べることで、どちらの主張に合理性があるかが判別できるというものです。報道する価値が多いにあるものです。

<必要な施設だと思いますよ。でもそれは、放課後児童クラブなの?>
 秋田県にある国際教養大学のキャンパス内に放課後児童クラブが開設されるようです。新聞、民放テレビ、NHKがこぞって報じていました。
 NHKの記事では、次のように伝えられました。「国際教養大学 来年度からキャンパス内に学童保育開所へ」(秋田 NEWS WEB 1月11日14時25分配信)
「国際教養大学は子育て世帯を支援し、地域の子どもたちにグローバルな教育を提供しようと新たに学校帰りの小学生を預かる学童保育施設を来年度から開くことになりました。」
「施設は来年度から秋田市雄和のキャンパス内に設置され、最大で30人の子どもたちを受け入れる予定で、大学の教員による英語やプログラミングなどの教育や、留学生が関わる異文化理解のためのプログラムなどが特徴だということです。また、県内外の企業とも連携して、多様な教育プログラムを提供していきたいとしています。」
(引用ここまで)

 秋田テレビも「グローバルな学びと遊びの場を提供 国際教養大学、4月に「放課後児童クラブ」開所 秋田」という見出しの記事を1月15日にネット配信しています。一部引用します。
「放課後児童クラブ「AIU Kids」は、4月に国際教養大学のキャンパス内に設けられ、小学生を対象に最大30人を受け入れます。日曜を除き午後1時から午後7時まで利用でき、教員・学生・県内企業と連携しながら児童に様々な体験プログラムを提供します。」
(引用ここまで)

 子どもの居場所が増えることは、とても素晴らしいことだと私も歓迎です。100人の子どもがいれば、100通りの過ごし方の希望がある。100通りの過ごし方を全部実現させることは残念ながらできないとしても、なるべく多くの子どもたちが自分の過ごしたい放課後や学校の休みの時間の過ごし方を選べ、そして過ごせるような社会であってほしい。今回、国際教養大学のキャンパス内に開設されるというこの施設は、自主的に学んだり活動したり知的好奇心が旺盛な子どもにとって、とても魅力的でしょう。

 一方で、私はあえて申し上げますが、現在の放課後児童健全育成事業の定義に、この施設は該当するのでしょうか、と。遊び及び生活の場としての放課後児童クラブであると説明することは、もはや困難であると指摘したい。「だからダメだ」ということを言いたいのではありません。現在の定義に基づく放課後児童健全育成事業ではありませんよね?と言いたいのです。つまり、放課後児童クラブではないでしょうと言いたい。「学習支援型児童体験施設」とでも呼ぶべき施設でしょう。
 しっかりと定義を再構築し、それぞれの事業に応じた補助金を設定して交付すればいいのです。従来型の、遊びや子どもたちの主体的な活動を中心とする児童クラブも必要ですし、秋田に出来るような知的好奇心を発展させる施設も必要です。それぞれをそれぞれの事業目的に応じて定義を再構築してほしいというのが私の願いです。

 メディアもね、「それって、放課後児童クラブなんですか?」って、取材したときに感じてほしいですよ。もっと勉強してください、放課後児童クラブのことを。

<こども家庭庁バッシングがひどすぎる>
 相変わらず、SNSでは、こども家庭庁叩きが横行しています。さらに過激に度合いを深めています。まったくもって、嘆かわしい事態です。バッシングの内容としては、おそよ5兆円のこども家庭庁の予算を国民に配ればいいじゃないか、というものが多いですね。
 これに関して、三原じゅん子大臣が旧ツイッター(X)に1月16日、「『男女共同参画に関する予算』に関して色々と誤解があるようなので。」として投稿を行っていました。内閣府男女共同参画局がポストした内容をリポストする形で、こども家庭庁として計上している予算の成り立ちを紹介した内容となっています。

 いつの時代もどの状況も、政治家や政府は正当な批判だけでなく愚痴や罵りの対象にもなります。そんなものにいちいち取り合う必要はないと政府や政治家は思っているのでしょうが、SNSが選挙結果を左右すると言われる時代に、「ネットの書き込みなんて便所の落書きだ」と、まともに取り合わない姿勢は、致命的な事態を招きかねないものであるという認識であるべきです。
 つまり、こども家庭庁の予算なんて無駄だ、とネットに投稿して悦に入っている人たちには、「では、こういう部分が無くなってもいいのですか?」と、マジレスすればよろしい。
(なお、SNSに見られるそうした政府批判、とりわけ、こども家庭庁叩きの投稿は、同調者を集めやすいのでインプレッション数を稼ぎやすいのだろうと私は見ています。つまりインプ稼ぎですね。投稿者は、まともにこども家庭庁の予算の内訳について理解しているとは到底思えないのです。児童手当も育児で仕事を休んだ人への給付も保育所や児童クラブの運営費用など全部が不要だ、と言っているのと同義ですからね。まったく理解をしない、あるいはしようとしない知的責任を放棄した空虚な脳みその持ち主であると私はみなしています)

 ただ、こども家庭庁のこれまでの振る舞いが、そうした空虚な根拠のない批判に同調する人を大勢集めてしまっていることは指摘させてほしい。本当に困っている児童福祉の現場が「それは助かります!」という行動や姿勢を見せてくれたことは、私は残念ながらほとんどなかったと感じています。保育所や児童クラブを視察したところで、「ああ、また、施設が立派に整ったお上品な場所に行っている」と見抜いているのですよ。そういう行動は、現場を理解しようと寄り添う姿勢どころか「またしても国や政治家は、うわべだけ見て、仕事をしているポーズに夢中だ」という批判的な感情を逆に増長させてしまうのです。「こども誰でも通園制度」にしても、保育現場の厳しい労働環境への配慮をあまり見せることなく施策を進めてしまっている感があります。

 児童福祉も裾野がそれなりに広いですが、「人材」が最も大事なことは間違いありません。すぐれて労働集約的な事業ですから、最初も最後も「人」なのです。人にどう投資できるか、人をどう大事にできるか、育てられるかが大事。その点への配慮があまり感じられないのですね。施設や制度を取り仕切る立場の「ブローカー」とまではいいませんが、そうした仕組みを上から描いている人や組織が潤うような施策ばかり目立つ気がします。

 ぜひ、全国に無数ある、職員が足りなくて疲弊している保育所を大臣は見に行ってください。ぜひ、子どもが登所する前の放課後児童クラブに大臣は足を運んでください。そこで、子どもの受け入れのために児童クラブの職員がどういう仕事をしているか、見てください。そうして多くの現場職員や運営に従事する人たちの共感を得られてこそ、SNSに投稿された無意味な投稿について「こいつ、何も知らないでバカじゃねーの」というリプがたくさん付けられるでしょう。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「がくどう、序」とタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)