学童保育所の保護者会には、どのような担当が最低限必要ですか?

 学童保育所(そのほとんどが「放課後児童クラブ」です)に保護者会がある場合、まずは「本当に保護者会そのものが必要?」「保護者会に入りたい人だけで活動ができないもの?」という、設置の合理的根拠や、任意性の確保をまずは検討してみていただきたいのですが、現に、全員加入形式の保護者会がある、もしくは市区町村の決まりによって保護者会の設置が義務づけられている場合、ではどのような担当の役員、係が必要なのかという話になります。

 役職、担当には次のようなものがあるでしょう。
・会長(または代表)。つまりトップです。会長に就く人を複数人おく場合があるようですが、夫婦2人の共同代表以外は、複数人の会長は避けたほうが無難です。「1人で不安だから」「責任が重すぎるから分担したい」という考えで複数の会長を置く例がありますが、トップは何人いてもトップです。トップが1人いても5人いても、同じです。5人のトップがいるから責任が5分の1になることはありません。業務の量が5分の1になることがあっても、責任はトップであれば同じです。複数のトップは無意味です。

・副会長(または会長補佐)。トップを支える人です。理想を言えば、以前の会長経験者や、実際の本職の部分で管理職を務めている保護者が適任です。どんな小さな組織であれ、保護者の数が10人台の小さな保護者会、父母会であれ、トップはなにかと困ります。悩みを抱えます。その困りごと、悩み事に対して一緒に取り組む立場です。副会長の良しあしで、トップの負担が決まります。

・会計責任者。保護者会でお金を扱う場合は必須です。保護者会は通常、任意団体ですがお金を扱うようになると、単なる保護者の集団とは性格が違った存在になります。社会的に、そのまとまり、集団は、それなりに意味を成す集団として扱われることになります。トップを頂点とする階層的な構造が組織にあり、お金も取り扱うとなれば、その集団は、ほぼほぼ、通常の法人と同じ扱いを受けることになります。いわゆる権利能力なき社団、というものです。お金を扱う保護者会がまっとうな運営をするためには、その会計作業に一点の曇りがあってはなりません。その組織が正しく存在していることを主張できなくなります。よって会計責任者は重要です。会長と同じぐらい重要です。できれば実生活で企業の経理会計を行っている人や簿記資格を持っている人に就いていただきたい。

・書記(議事録作成)。記録は重要です。後年、保護者が参考とすることができるだけの記録をしっかりと作成し、保存すること。後の時代に伝えることも含めて書記の役割は重要です。保護者会では議事の進行役を務めるか、進行役の隣にいて、もれなく発言の要旨を記録していきます。ICレコーダーであとで聞き返せばよい、というのはなかなか面倒です。音声を記録して文字変換もできる時代ですが、それはそれとしてデータで残せばいいので、その場で意見や発言の要旨を記録しておくことで足ります。そのために「ちょっとまって、今の意見、もう1回話してくれる?」という権限を会議の場で存分に発揮できるようにしておくことが欠かせません。会議の進行においては会長よりも権限を発揮できるようにしましょう。

・監事。これはもう、極めて大事です。保護者会の監事というと、会長経験者の「おつかれさま」ポストのイメージがありますが、保護者会費を扱う保護者会であれば、お金の不正使用の可能性を考えると保護者会の事業の管理監督が必要です。それを担うのが監事です。万が一、不正な出来ことがあれば、それは不正を見抜けなかった監事の責任です。論理的に物事を考えられる人、誰にも堂々とモノを言える性格の人がいたら適任です。もちろん、数字(お金の動き)にそれなりの理解がなければだめですし。「業務監査」といって、通常の保護者会や役員会にもれなく出席して、保護者やクラブに損害が与えられる物事が決められることがないようしっかりと目を光らせることが、なおのこと重要です。人選はしっかりとしましょう。

・広報担当。案外と見過ごされがちですが、保護者会がどうして必要かといえば、「重要な情報を、クラブの利用者である保護者各位に伝えること」がその本質です。例えば大事な物事を決める会議を何月何日に、どこで、何時から開く。こういう情報を確実に伝える責任者です。会長が兼務することが多いでしょうがぜひ広報担当者を置きましょう。児童クラブの職員や運営事業者、学校との連絡を担ってもらうことが良いでしょう。副会長が兼務することでもOKです。

・苦情受付担当者。困りごと、どうしても納得ができないこと、文句を言いたいこと、たくさんの言いたいことが保護者それぞれにあります。それらを取りまとめる窓口です。決まった書式、文面において、決まった方式で提出してもらうことを徹底しましょう。受けた苦情は、役員メンバーで組織する役員会で処理しましょう。最終的に、苦情解決担当者が返答、回答します。それは会長や副会長でもよいでしょう。

・行事担当者。仮に保護者会で様々な行事を企画し、その実行も含めておこなう場合、行事ごとに係や委員会、チームを設けることがあるでしょう。それら、必要に応じて設置される行事やイベントの担当係を取りまとめる方です。数年、クラブに在籍している保護者がふさわしいでしょう。過去の経験から、行事やイベントごとに助言、アドバイスを送ることが任務です。

 上記の他、地域に応じて、また行政からの委任事項として、「時間外料金・おやつ代の集金係」や「地域行事の参加」、連絡協議会など業界団体への参加要員など、いろいろな役員や係があるでしょう。大事なことは「それ、本当に必要な役職?」という見直しを常に行う意識を保護者会全体で共有しておくことです。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)