<運営支援ブログ・ミニその7> がくどう思い出話 その2。「台風は、しんどかった」

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたらSNSに投稿してください! 口コミ、拡散だけが頼みです!
 わたくし(萩原)が、過去を勝手に懐かしむ「思い出話」その2回目(1回目は2024年5月25日付)です。夏が近づくと、児童クラブ関係者も保護者も気が気でないのが「台風」。児童クラブは閉所するの、開いてくれるの? 休めるの、それとも出勤しなきゃいけないの? と、立場によってハラハラドキドキはそれぞれ。今回は、私が関わった台風の思い出を振り返ります。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<今では考えられないけれど>
 まだ私自身も、児童クラブの運営についてほとんど知ることが無かった、学童利用者ビギナーの時代のお話。台風が接近しました。小学校も、朝から臨時休校になりました。それはとてもよくあること。そして足早に台風が通り過ぎ、お昼前に早々と台風一過の青空が広がりました。これもまた、よくあること。
 小学校は当然、臨時休校のまま。しかし、大人の世界、つまり会社というのは「たいしたことがなかった台風」とは「単なる雨模様」と同じで、「当然、社員スタッフは出勤しなさい」となります。

 となると、「学童が開いてくれないと困ります!」と保護者から要望が殺到するのも当然でした。しかし、小学校が臨時休校となっていたので、児童クラブ職員もまた仕事が休みになっていました。さあ、どうする? どうなる?

 当時はまだまだ保護者に個々の児童クラブの運営について裁量が残されていた(というか、運営のいろいろな規定が緩やか過ぎて、ある意味、何でもやろうと思えばやれた時代)ので、保護者会会長だった私は「分かりました。学童を開けます」として、学童を開所したのです。職員はいません。施設のカギは会長だから持っていました。まだ子ども子育て支援新制度になる前の時代の話、放課後児童支援員という資格も存在しない時代の話です。

 続々とこどもを連れて出勤に向かう保護者たち。数時間たって、クラブの正規職員が「休日返上?」で出勤してくれました。そして私はクラブ詰めの役割を終えて、自身も出勤のため会社に向かいましたとさ。あの時の、澄み切った青空は今でもよく覚えています。今では考えられないですね、保護者が勝手に児童クラブを開所してしまうなんて。

<それから数年後。またも台風一過>
 2014年10月上旬にやってきた台風。この年の8月から、私は新聞社を退職して地元の児童クラブ運営法人の事務局に転職しました。2012年から代表理事を務めていたので組織の最高責任者が実際に勤める様になって、組織経営上の不安定要素はかなり減り、安定した事業運営が加速し始めたことを実感していた時代でした。

 さてこのときの台風もまた、朝から市内全ての小学校が臨時休校になりました。では児童クラブも臨時閉所ですね、とはしなかったのですね。私が代表になって、自身の体験(まさに、先に記したこと)をもとに、「小学校が臨時休校になっても実際、親の仕事がそのままある人が多い。だから児童クラブは原則、開所する」としたのです。ですので、この日は学校は休み、でも児童クラブは朝から開所という、保護者の利便性を考慮した態勢でした。

 私は午前中からあちこちの児童クラブを巡回しましたが、クラブに登所しているこどもの数は、とても少なかったですね。このときに、社会の微妙な変化が始まっていたのかもしれないと、今になって思います。「台風が来たときは、無理して出勤させないでください」という呼びかけは今は当たり前になされていますが、少なくとも2010年代前半にはありませんでした。「早めの帰宅を心がけてください」というのは、ありましたが。台風の時は、それがたとえ空振りの予報であっても、命を守るために無理して出勤しないこと、それは本当に正しいことだと私は思いますが、実際に仕事をせざるをえない人が多い限り、児童クラブは開所しなければならないと、思っていました。今もこの点は、エッセンシャルワーカーのご家庭のお子さんのことを考えると、利用者の限定はあってもいいけれども全部の児童クラブが閉所する必要はないとは、思っています。

 さてこの日の巡回では、数か所のクラブの施設で雨漏りが確認できました。地元の児童クラブはなかなか施設が更新されないので、雨漏りが結構多かったんですね。あれから10年、そうした古い施設はまだまだ残っています。大丈夫かなあ。

<恐ろしい台風でした。命が危なかったかも>
 最後の思い出は2019年10月12日に上陸した台風です。この台風は東日本に甚大な被害をもたらした台風で、「令和元年東日本台風」という命名がされています。いいですか、気象庁(つまり政府)が、台風(そして地震)に固有名詞を付けるのは、ひどい被害を及ぼした場合に限定されています。この時の台風は固有名詞が付けられただけに、とても恐ろしい台風でした。

 朝から恐ろしい豪雨。この日は土曜日で、もともと小学校は休みでした。地元児童クラブは朝から開所です。ただ、恐ろしい台風になるのは前日からすでに予想できたので、すべての保護者世帯に「あすの学童利用は原則として控えてください。どうしても仕事がある方だけ利用できますが、昼頃には閉所となることが想定されるので各自対応をお願いします」と伝えておりました。よって、当日、利用した世帯はそれこそ医療関係者や公共インフラ関係者、スーパーマーケット勤務の方ぐらいで、ごく少数でした。

 数少ない登所児童もほぼすべての保護者が豪雨の中で午前中に迎えに来て、登所児童0人となったクラブから順次、臨時閉所として職員はすぐに帰宅させました。ずっと気がかりだったのは、上尾市内には豪雨の際にすぐに溢水(いっすい)する河川があることと、その河川のそばに立地しているクラブがあることでした。そしてそのクラブのこどもの保護者が、お昼を過ぎても迎えに来なかったのです。当然、その家庭の保護者の勤め先は児童クラブ事業者ですから把握しています。やきもきしながら、こどもの迎えを待ちました。事務局も私1人を残して他の人は(もともと出勤する人を絞っていましたが)退勤させました。最後まで残った、川の近くのクラブには、万が一の浸水被害に備えて、重要な物は高い位置に移すなどの措置を命じて保護者の無化を待ちました。その待っている時間がとても長く感じたことを覚えています。
 そして午後1時ごろ、保護者さんがお迎えに来ました。すべてのこどもが降所完了。ほっとしました。そのクラブの職員にも帰り支度を指示していたのですぐに退勤させました。これで、児童クラブの組織で働いているのは私1人。台風襲来といえども土曜日なので市の職員の姿もありませんでした(事務所は市役所別館内に入居しているのです)。
 緊急の際の対応や連絡網を改めて役員に指示をして、私も事務所を出ました。車を運転し、溢水が予想される川沿いの児童クラブ数か所を点検して回りました。仮に水位が上がったときに流されそうな遊具で、まだ片付いていなかったものを片付けながらいくつかの児童クラブを回っていきました。ものすごい豪雨でした。川はもう溢水の半歩手前。川沿いの道路はすでに排水ができない「内水氾濫」状態になりつつあって、ミニバンタイプの私の車の車の底の高さ、つまりタイヤの直径の半分ほどまで水位が上がっていました。ハンドルがとられそうになるほどでした。
 緊張しつつ最後の児童クラブの点検を終えて改めて川沿いの道路に出てみると、十数分ほど前よりさらに水位が上がっていました。「ああ、こりゃまずい、危険だ」と心臓がどきどきしたのを今でもまじまじと覚えています。すぐにその道から離れ、近所のコンビニに行ってみましたが、ちょうど臨時閉店する作業中でした。「これは明日、きっと泥まみれの建物の掃除だなあ。まあ、人的被害をださないで済みそうなのは良かった」と、私も午後4時近くに帰宅しました。

 その後、各地で大きな被害をもたらしたことが報道で伝えられました。県内でも浸水した児童クラブがあったと聞きました。こちらは翌日昼前に事務所に行き、理事の有志で手分けして児童クラブの建物内外を点検して回りました。大きな被害が出なかったことに心底、ほっとしました。

 今思えば、いろいろ無茶をしました。決して真似はしないでくださいね。してはなりません。ただこれは経営者、指揮官として完全にダメなことで単なるヒロイズム(英雄主義)ですが、「学童のためなら命は惜しくない」とまで思っていたのは事実ですし、実は今もまったく変わっていません。だめですねぇ。何より、家族にずっと迷惑をかけっぱなしですからね。ごめんなさい。

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 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

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 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)