<運営支援ブログミニ・16>こども家庭庁の令和8年度予算概算要求が公表されました。これ、すごいですよね? 誰か説明して!
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
本日(2025年9月4日)は、わたくし萩原の所用のためミニ版です。こども家庭庁が公表した来年度(令和8年度)の予算概算要求の、放課後児童クラブに関する部分の紹介です。額がものすごい増えているように見えますが、どういうことでしょう、ぜひこれは「放課後行財政学」の雑木林琢磨氏に解説をお願いしたいところです。あわせて、SNSで盛んに広められる「こども家庭庁不要論」がどれほどバカげているかを付け加えます。とりわけ、この運営支援ブログに初めてたどり着いた方には特に、こども家庭庁は無駄!というSNSの書き込みを見たら「バカじゃねーの」と無視できるようになっていただきたいと期待します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<額がものすごく増えているんですけれど、からくりは?>
こども家庭庁のホームページに「放課後児童対策・こども・子育て支援関連予算の概要」と題したページがあり、そこに資料が掲載されています。https://www.cfa.go.jp/policies/kosodateshien/budget
「令和8年度放課後児童対策・こども・子育て支援関連予算概算要求の概要(PDF/3.5MB)」がありますので、ぜひクリックしてみてください。
そこに、放課後児童クラブの受け皿整備等の推進として、令和8年度概算要求額が「2,769億円の内数+事項要求」とあります。事項要求とは簡単に言えば「後ほどの財政当局との交渉次第で積み増しされる額」ということです。なお、前年度予算額(令和7年度、つまり今の年度)として「2,618億円の内数」とあります。これは、令和8年度の予算の要求は、今年度より151億円多く要求している、ということになります。内数ですので、まるまるその額がゲットできる、ということではないのですが、まあ、前年より151億円、こども家庭庁としては放課後児童クラブの補助金を増やしたいという意向とのことで間違いないのでしょう。
増えることはとてもありがたいことです。
実は私もよくわからない点があります。放課後児童クラブの基本的な補助金として「運営費」と呼ばれるものがあります。令和8年度概算要求の資料には「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブの運営費)」として2,061億円の内数+事項要求、とあります。また「(2,013億円の内数)」との表記があり、この丸ガッコの中の数値は令和7年度の予算を示しています。ということは今年度の運営費は2,013億円だったの? と、ふと思ったのです。
こども家庭庁は律義に令和7年度の予算についても同じような資料を掲載していますから、見てみました。令和7年度の予算概算要求の金額(つまりこれは令和6年度中に作成されたプラン)は、「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブの運営費) 1,209億円+事項要求 (1,223億円)」とあります。丸ガッコの中は令和6年度の予算実績です。令和7年度は前年度より予算が減ったので私もこの運営支援ブログで取り上げた記憶があります。
令和7年度はつまり事項要求でどどんと上乗せがあって、2,013億円になったのでしょうか? こども家庭庁の令和7年度予算案を確認しますと、放課後児童健全育成事業の運営費は、前年度より49億円少ない1,174億円と記載されています。
それが結果的に2,013億円になって、さらに来年度令和8年度に向けての概算要求では2,061億円となったのですから、運営費そのものは48億円増えた、という計算になります。151億円は放課後児童健全育成事業全体の増加分で、うち最も重要な運営費は48億円上乗せで財務当局に要求している、ということになるのでしょう。
151億円の増加分のうち、91億円を占めているのが「放課後居場所緊急対策事業(保育対策総合支援事業費補助金)」と、「小規模多機能・放課後児童支援事業(保育対策総合支援事業費補助金)」、「放課後児童クラブ巡回アドバイザーの配置」、「放課後児童クラブの人材確保支援」です。前の2つは、待機児童解消のための施策、後の2つは児童クラブ事業の質を維持するための事業で、いずれも大事な事業です。ここの額が多めに増やされたということは、国は、何が何でも待機児童を早く減らしたいという強い意向を示している、ということだと私は受け取りました。
願わくば概算要求通りに、事項要求でさらなる上乗せがあればと大いに期待します。
欲を申せば、「職員が足りない」という、児童クラブの世界を長年苦しめている大原因の抜本的な解決に、もっと本気を出せますよね?と私は言いたい。それはつまり、運営費の「次元の異なる」大増額です。職員が足りないのは2つの面があって1つは人数不足、もう1つは「人材」つまり育成支援の趣旨を理解した優れた職員の不足です。運営費は職員の給与に使われる補助金ですから、ここを、次元の異なる大増額をすれば、児童クラブで働く人をもっと雇用でき、現場に配置できるようになります。そうすれば、施設を増やして入所するこどもの数を増やしても、対応できるのです。まして、令和8年度下期以降から始まる、いわゆる日本版DBS制度では、職員の確保を巡って現場が大混乱になる可能性もあります。いい人材を早めに確保するにも、日本版DBS制度に必要な事務作業や外注作業に必要な職員を確保するためのお金を児童クラブ事業者が手にする必要があります。
長袖をください、ではないですが、人を雇うお金をください。
ついでに申せば、補助金を増やして児童クラブ事業者が受け取るお金が増えても、それがしっかりと働く人に届く、あるいはこどもが使う遊具や教材に使われるようになるために、「児童クラブのお金の使われ方」に、一定のルールを設けることも同時に求められます。ずばり言えば、「増えた補助金がそのまま補助金ビジネスで児童クラブを運営している企業団体の養分になっては困る」ということです。必要なところに必要なだけ、増えたお金を使ってそれでも余るようならそれはどうぞ利益として計上してください。必要なところをケチって増やさずに剰余分だけ増すような補助金ビジネス事業者の懐だけが潤うような現在の仕組みのままでは困りますよ、ということです。
<こども家庭庁は必要ですから>
SNSではこども家庭庁不要論が大人気です。こども家庭庁の7兆円を超える予算を全国民に分配すればよほど少子化対策に、子育て家庭の家計が助かるという論というか、たんなる「あおり」です。こども家庭庁を無くしてその予算を国民に配れば1人10万円になる、と投稿している輩もいます。そしてそれがいつも大人気なんですね。
誰しも分かりやすい意見や、扇動には気をひかれます。魅力的に映ります。SNSで深い考察を求めるというのも、なかなか難しいですし、JR神田駅やJR新橋駅付近の居酒屋で、いい具合に酒が入ったサラリーマンが酔った勢いで「うちの社長はバカだ、政治家はバカばっかりだ」と叫ぶと周りが「そうだそうだ!」と加勢する、そんなようなものです。深く考えることなどせずに、目に入った文言、聞こえてきた扇動に「そうだそうだ!」となっているのが、今のSNS上の、こども家庭庁廃止論です。
でも、居酒屋の放談なら数秒後には消えてなくなりますが、SNSの投稿はそうはいかない。残るんです。繰り返し人の目に触れます。いつしかそれを信じる人が増えていきます。人が受け入れやすい、願いたいことであればあるほど。手元に10万円が入ってきますよと言われればそりゃ私萩原だってうれしいですよ。ですから、SNSのデマ、扇動は、放置してはいけません。
こども家庭庁を無くしたら、児童手当がなくなります。育児休業している労働者の所得補償が無くなります。保育所も、そして児童クラブも、補助金がないので利用する人の月謝、利用料もしくは住んでいる自治体が住民税で得る財源から費用を出すことになります。
児童クラブだけでいえば、補助金をもらわずに運営しているクラブが現にあって、そういう施設はこども1人あたり利用料が5万円前後も必要となります。兄弟で入れば8万円とか10万円の世界です。月額ですよ。
こども家庭庁をなくして国民1人あたり10万円配ったところで、児童クラブを利用していれば、5万円が12か月分で60万円必要です。さしひき50万円を家計から出すことになります。それ、お得ですか? 保育所だって同じことですよ。保育所はもっとお金がかかります。こども家庭庁を無くしたカネで国民が豊かになるなんて、これっぽっちの正しさも無い、単なる悪質な大デマです。絶対に信じないでください。
もちろん、こども家庭庁ももっと必要なことにさらに努力を向けてほしいと思うことはあります。ただし、少子化が一向に食い止められないじゃないかというのは、それはこども家庭庁の責任ではありません。社会全体の問題です。こどもが長い時間、施設で過ごすことで本当にこどもまんなか社会なのか?と私も疑問には思いますが、それはこの国の社会経済活動の根本を変えていかねばならないことです。むろん、こども家庭庁には、こどもまんなかを掲げた以上、こどもを育てている期間の保護者の就労と所得補償のあり方について、積極的に論を起こしていただきたい。こどもが朝7時に学校で過ごす必要がなくなるような子育て世帯の働き方改革が実現するように頑張っていただきたい。(それでも、専門性のある職業に就いている方の、早朝や深夜のこどもの過ごし方の保障について社会は受け皿を用意する必要はあるでしょう)
こども家庭庁は、とりあえず、放課後児童クラブの予算を増やす要求をしてくれたのでありがとうです。できれば大増額に向けて今後も期待を惜しみません。そして、SNS上の、実にくだらないこども家庭庁不要論のような「陰謀論」に、1人でも騙されることがないよう、運営支援も微力ながら声を上げていきます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)