<社労士ブログミニ・19>高市総理の所信表明演説、放課後児童クラブ(学童保育所)は出てきませんでした。残念!

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする社労士「あい和社会保険労務士事務所」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 高市早苗首相が2025年10月24日、第219回国会で所信表明演説を行いました。残念ながら放課後児童クラブ、学童保育(所)という単語は出てきませんでした。それどころか、少子化対策についてもほとんど言及が無かったのが、運営支援にはとても残念です。今回のミニ版では、わたくし萩原が気になる点を紹介します。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<こどものことへの言及は?>
 首相官邸のホームページに所信表明演説の全文が掲載されています。放課後児童クラブや少子化への対応に直接関連する部分を探してみましたが、児童クラブには言及がありませんでした。少子化については以下のように言及がありました。
「8 健康医療安全保障」の部分。
「人口減少・少子高齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担の在り方について、国民的議論が必要です。超党派かつ有識者も交えた国民会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論してまいります。野党の皆様にも御参加いただき、共に議論を進めてまいりましょう。」
「9 地方と暮らしを守る」の部分。
「(人口政策・外国人対策)
 日本の最大の問題は人口減少であるとの認識に立ち、子供・子育て政策を含む人口減少対策を検討していく体制を構築します。」

 わたくしが見た限り、上記のみです。これはいかがなものでしょうか。ちなみに、2人前の総理となる岸田文雄氏の場合、第205回国会における所信表明演説(2021年10月8日)では、次のように学童保育に言及していました。
「保育の受け皿整備、幼保小連携の強化、学童保育制度の拡充や利用環境の整備など、子育て支援を促進します。こども目線での行政の在り方を検討し、実現していきます。」
 また、石破茂氏の場合、第214回国会における所信表明演説(2024年10月4日)で、学童保育という文言はなかったものの、「三 日本を守る」という章の中に「少子化対策」の章を設けて、「子育て世帯の意見に十分に耳を傾け、今の子育て世帯に続く若者が増えるような子育て支援に全力を挙げます。こども未来戦略を着実に実施するとともに、社会の意識改革を含め、短時間勤務の活用や生活時間・睡眠時間を確保する勤務間インターバル制度の導入促進など、働き方改革を強力に推し進めます。さらに、少子化の原因を分析し、子育て世帯に寄り添った適切な対策を実施します。」などと、かなりの文言を使っていました。

 それに比べると、高市首相の、少子化対策、また「こどもまんなか社会の実現」に関する意欲は、さほど優先順位が高くないのかなと、危惧する次第です。

 所信表明演説は、限られたボリュームの中で、是が非でも重要視したいと新たな総理が考えている最重要点に関する意向を現すものだとすれば、内政外交にあまりにも多くの重要事項がありますから、児童クラブという局所的なことに言及がないのは、百歩譲ってまあ仕方がないとしましょう。だからこそ学童保育に言及した岸田氏は異例だともいえます。高市首相は自民党総裁選で候補者のうちたった1人だけ、学童保育という語句を使っていただけに、このたびの所信表明演説ではちょっと期待したのですが、残念です。というか、少子化について近年の総理では格段に言及が少ないのが不安です。

<児童クラブに関連することは?>
 それでは児童クラブや児童福祉、少子化対策に関連するようなことへの言及はどうでしょう。
「「強い経済」を構築するため、「責任ある積極財政」の考え方の下、戦略的に財政出動を行います。これにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指します。」
 →ぜひとも、児童クラブの補助金にも積極的な考えを取り入れて大幅に増やしていただきたいですね。それによって児童クラブの仕事に従事する者の所得が増え、消費マインドが改善します!

「物価上昇を上回る賃上げが必要ですが、それを事業者に丸投げしてしまっては、事業者の経営が苦しくなるだけです。継続的に賃上げできる環境を整えることこそが、政府の役割です。」
 →ぜひとも、児童クラブの事業者が継続的に賃上げできる環境を整えてください。

「国民の皆様のいのちを守り、安心して必要なサービスを受けていただくためにも、赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなしです。診療報酬・介護報酬については、賃上げ・物価高を適切に反映させていきますが、報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しします。」
 →医療機関や介護施設への対応方針は素晴らしいですね。それをぜひとも児童福祉の世界にも波及させていただきたい!

「国・地方自治体から民間への請負契約単価を、物価上昇等を踏まえて適切に見直します。」
 →児童クラブにも多い複数年契約や複数年の指定管理期間における費用の総額も最低限、物価上昇等に対応した単価見直しが必要です。これもぜひ推し進めていただきたい!

「また、若者や女性を含めて、地方に住み続けられるようにします。そのためには、質の高い教育を始め、必要な行政サービスを受けられるようにする必要があります。」
 →地方の社会機能を維持するには、働きながら子育てできる環境を支える社会インフラたる放課後児童クラブの安定した運営が欠かせません。必要な行政サービスです。しっかり予算を投じてください!

 それにしても本当に少子化対策や、こどもの権利、子育て世帯への配慮に関する言及が少ないのは、いったいどうしたことでしょう。高市首相が大事にする国家安全保障は、そもそも少子化によって大いにその基盤が揺らいでいます。自衛隊員の不足にますます拍車がかかりますよ。ドローンだ誘導兵器だといっても、結局は人数がいなければ国土も平和も守れませんよ。
 高市首相の政治の師である安部晋三氏は第2次政権のとき、子ども・子育て支援新制度が始まったときと重なっていましたが、児童クラブへの補助金を着実に増額していました。ぜひとも高市首相も師にならって同じような施策を実行していただきたいと強く期待します。

<とても気になる報道が>
 最後に、わたくしがとても気になる報道がありました。テレ朝NEWSが2025年10月24日14時50分に配信した「高市政権「新しい資本主義」廃止へ 岸田元総理に伝える」との見出しの記事です。一部を引用して紹介します。
「高市政権は、岸田政権から続いてきた成長と分配の好循環の実現を目指す「新しい資本主義」の看板を下ろす方針を固め、岸田元総理大臣に伝えたことが分かりました。」
「「新しい資本主義」は岸田政権の肝いりとして、賃上げやスタートアップ投資に取り組んできたものです。 石破政権でも継承され、今年、最低賃金が全都道府県で初めて1000円を超えるなど、一定の成果を上げてきました。ただ、高市総理は、総裁選の期間中には「賃上げするのは国ではなくて企業だ」と述べるなど、政府が旗を振る賃上げ政策に疑問を示してきました。」(引用ここまで)

 放課後児童クラブの世界は、多くの地域で最低賃金並みか最低賃金よりちょっと上乗せした程度の賃金額が設定されています。近年の急激な最低賃金額の引き上げで、運営に苦慮する児童クラブ事業者も多いのは事実ですが、それは補助金の機動的な見直しや交付がないことによる弊害であって、最低賃金レベルの給与で良いと、不当に世間に認識されている児童クラブの世界においては、最低賃金が順調に上がっていくことこそ、児童クラブ職員の現状の収入額を増やす、効果的な施策であります。

 そもそも、児童クラブの収入はほとんどが補助金です。賃上げを事業者が行いたくても補助金額が増えねばどうしようもありません。児童クラブのように、得られる補助金の額によって従事者の賃金を決めざるを得ない、いわば公定価格の世界において賃上げするのは企業や事業者ではなくて、「国」なのです。

 運営支援は引き続き、最低賃金の大幅な引き上げが続くことを求めます。そうしないと、本当に児童クラブで働いてくれる人がどんどん消えますよ。いまだってまったく足りていないんですから。児童クラブのような、小さな世界のこと、発言力が弱い業界のことも、見捨てないで大事にする政権であってほしいと、わたくし萩原は強く期待するものです。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也