近く衆院選になるかも。選挙では放課後児童クラブの具体的な問題点の解消を挙げているか、しっかり確認しよう。
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。自由民主党の総裁選と、立憲民主党の党首選の投票が迫ってきました。その後、11月には衆議院選挙がありそうだ、なんて言われていますね。いま、国政も地方選挙も、子育て支援をアピールしない有力候補者は存在しないぐらい、とにかくどの候補者も子育て支援は大事だと口ではいいます。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の具体的な問題点について、どう解決するのかしっかり示せる人に、立候補してほしいですね。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<放課後児童クラブは、選挙公約ではまだ地味な存在>
地方議会の議員選挙でも、首長選挙でも、国政選挙でも、ほぼすべての主要政党の候補者は、その公約、マニュフェストに、子育て支援を盛り込むことが当たり前になってきました。当落線上を争う程度かそれ以上の有力候補者で、子育て支援のことをまったく無視する候補者はいないのではないでしょうか。でも私の記憶の限りでは、1990年代では決してそんなことはなかったと覚えています。子育て支援を訴えるのは数少なかった女性候補者であったり特定の政党であったりした記憶があります。今のように、ほぼすべての候補者が子育て支援を大事にします!という時代になったのは、つい最近のことなんですよ。
子育て支援といっても大変その幅が広いので、それこそ赤ちゃんの時代から中高生まで、どの分野を具体的に考えているのか、判然としない場合もあります。また児童手当など経済的な支援を軸に訴えることを子育て支援とする候補者もいますし、そのことを訴える候補者が多いですね。子育て支援を大事に、というのは「私は清廉潔白な候補者です」なぐらい当たり前な事であって、子育て支援を大事にします、というアピールの具体的な内容について、有権者がしっかりと確認をしていく必要があります。そしてこれが一番大事なのですが、当選した後の行動において、選挙活動中に訴えていることを少しでも実行しているか、実行しようとしているかを確認することですね。
保育所や学校については「待機児童を出さない」とか「学校の統合化に反対します」とか、まあいろいろな公約を掲げる候補者は普通にいますが、こと、放課後児童クラブ、学童保育所については、せいぜいが「待機児童問題に取り組む」という程度ではないでしょうか。それでも、子育て支援の中では地味な存在である放課後児童クラブを取り上げることは、現時点では評価点にはなります。それぐらい、まだまだ候補者にとっては、放課後児童クラブに関する公約は改善が必要などいう認識をまだまだ持ち得ていないでしょうし、当選後に取り組みたい施策とは映らないのでしょうし、「票が稼げない分野」という印象なのでしょう。
しかし、放課後児童クラブは小学生の子育てをする保護者の3割は、何らかの形で関わっている社会インフラですから、まずは有権者の方に私は言いたい。「放課後児童クラブの事を取り上げている候補者を優先的に考えてみてはどうですか?」。そして立候補する側に言いたい。「放課後児童クラブは本当にいろいろな問題が山積みです。困っていながら解決の糸口が見つからず途方に暮れている保護者、職員が大勢いるのです。政治家としてその問題の解決に取り組んでくれませんか。その期待を集めれば当選できるかもしれませんよ」と。選挙は当選してナンボですから、児童クラブの問題解決に取り組みたいという候補者にはどの政党、団体でもいいので投票したい有力な選択肢の1つになるとすら私は思っています。ただし当選後、しっかりと公約に取り組むことが必要ですよ。
<あの政党だからよい、あの政党はダメ、というものではない>
国政では比例代表もありますから候補者というよりも政党で投票行動が決まる場面があります。よって支持する政党を選ぶことにもなるのですが、単純に、あの政党はずっと児童クラブ、学童保育を応援しているからヨシ、あの政党はダメ、という単純なものではないということです。もちろんこれは候補者個人にも当てはまりますが。
例えば、ずっと児童クラブを応援しています!という政党や候補者がいるとして、その勢力が応援している児童クラブの仕組みが、全国展開している企業の運営するクラブであったり、あるいは保護者に重い役務負担を強いる形のクラブであったりと、単に児童クラブを応援しているから大丈夫というものではないのです。まずは、児童クラブの事を触れているかが最初の「ふるい落とし」になりますし、もっと児童クラブの事に興味関心のある有権者であれば、その先、例えば放課後児童の過ごし方や居場所にどう具体的な提案を掲げているか、あるいは補助金のことについてその導入を働きかけることを約束しているかという点を、さらに投票する候補者や政党を選択する判断基準としていけばいいのだろうと私は考えています。
ところで国政レベルの動きを見てみます。国政レベルでは、制度のことと制度を実施するための費用、この2点で全体の内容が進んだり後退したりします。ここでは費用の移り変わりを見てみます。
年度 内閣総理大臣 放課後児童クラブへの国庫補助額
2011年度 菅直人(民主党)、9月2日より野田佳彦(民主党) 307億5,000万円
2012年度 野田佳彦(民主党)、12月26日より安倍晋三(自由民主党) 307億6,500万円
2013年度 安倍晋三(自由民主党) 315億7,600万円
2014年度 安倍晋三(自由民主党) 383億7,100万円
2015年度 安倍晋三(自由民主党) 575億円
2016年度 安倍晋三(自由民主党) 574億8,000万円
2017年度 安倍晋三(自由民主党) 725億3,000万円
2018年度 安倍晋三(自由民主党) 799億7,000万円
2019年度 安倍晋三(自由民主党) 887億7,000万円
2020年度 安倍晋三(自由民主党)、9月16日より菅義偉(自由民主党) 978億円
2021年度 菅義偉(自由民主党)、10月4日より岸田文雄(自由民主党) 1,092億円
2022年度 岸田文雄(自由民主党) 1,065億円
2023年度 岸田文雄(自由民主党) 1,205億円
2024年度 岸田文雄(自由民主党)→? 1,223億円(運営費のみ)
この推移を見てください。2015年度は一気に増えましたね。2017年度も増えました。2016年度、2022年度は前年を下回ったものの、児童クラブ運営費として国が用意した予算が増えていること、それも2015年度以降に増えていることに留意してください。その時代の政権与党は自民党と公明党です。政党うんぬんで、児童クラブを冷遇しているとか、取り合っていないという批判は私は違和感を覚えます。
この補助金の推移を考えるにおいては2点を忘れてはならないでしょう。1つは「制度が変わったので、その制度を支える予算の裏付けが必要となった」ということによる増額です。2015年度から子ども・子育て支援新制度に変わったことが影響したと私は考えています。よって、制度をより進化と充実させて変えることが必要であって、それには議員の力が大事であるのです。
もう1点は市場化です。これは功罪半々ですが、児童クラブの運営がどんどんと民営化、あるいは民営化から民営化であっても市場化、つまり営利を目的とした事業者にクラブ運営を委ねることが急激に進展したということです。それとどうして補助金の増額が関係するのかといえば、「予算を切り詰めていた公営よりも、どんな形態であれ民営化すれば自治体が出す予算は増額するのが一般的」であるからカネが必要であることと、「営利を目的とする事業者にクラブ運営を引き受けてもらうには、それなりのカネを準備しないと、やってくれないから」なのでしょう。何度も紹介している、児童クラブの運営に関する調査では、株式会社がふくまれるその他法人の年間の損益差額(純利益)が他を圧倒して多額であることを思い出してください。税金から成る補助金が児童クラブ運営の企業の利益に化けているということです。これは早急に規制するべきですが、一方において、過度に利益としなければ民営化には問題は無いというのが私の立場です。むしろ、非営利で運営している法人や団体に対して交付される補助金が少なすぎます。企業が運営するなら補助金をどんと出汁、地域に根付いた保護者やボランティアが運営する非営利の法人や団体には予算をケチる今の多くの自治体の姿勢が問題です。「一介の住民に過ぎない保護者やボランティアが多額の公金を扱うことはダメだ。ぎりぎりまで抑えなければ」という自治体や地方議会のゆがんだ認識を改めるためにも、選挙では、児童クラブの健全な事業継続と発展に理解のある候補者を有権者が選ばねばならないのですよ。
地方の議員選挙は政党というより個人のキャラクターや活動実績も投票行動の参考になりますが、選挙公報を有権者はしっかりと目を通しましょう。繰り返しますが、ずっと学童を応援しているからヨシ、ではないのです。また、前回の選挙では児童クラブ、学童を応援するとアピールしながらその後の任期では全く何もそのための活動していない議員はバツ、でいいのです。それを判断するには、有権者1人1人が、ちょっとでもいいので議員の活動に興味関心を持つことですね。
<既存の構造を打破、突破できそうな候補者を>
私が望む政治家は、次のようなことをしっかり考えてくれる方です。
国政なら、「放課後児童クラブの制度の強化拡充。特に設置の義務化。児童福祉施設への変更」。これが実現すれば必然的に国の予算が増えます。また、有資格者の配置は義務化となります。施設の設置が義務になれば有資格者配置が参酌基準では不適切になるからです。資格の強化の動きも連動するでしょう。単に児童クラブを充実します、国政に臨む政治家であるならば、待機児童解消のために努力します、では物足りない。放課後児童クラブの制度を充実させたい、という観点をぜひ掲げていただきたいのです。
地方政治なら、「待機児童の解消。その解消の手段としては単に施設の新設増設ではなく総合的な居場所の整備による」です。単に施設を増やせというのは簡単な理屈です。ですがこれまでの実態として、施設はなかなか増えません。ということは効果的な施策ではないのです。予算の限界があることを踏まえて、「早く」かつ「市区町村が無理なくできる予算の範囲」で、「効果的に」待機児童を解消する施策を訴えている候補者を選びたいし、そういう候補者に立候補していただきたい。
そして「大規模解消」を掲げているかどうかに注目したいですね。大規模解消というのは、すなわち、子どもにとって児童クラブが過ごすに値する環境であるかどうかを重視している、ということです。児童クラブの事業の中身を改善したいということですから、大規模解消を公約の1つに掲げている候補者は、ぜひとも当選していただきたい。
児童クラブの制度を形作るのは、まずは法律。法律は国会で審議され決められます。よって国会議員の中で1人でも多くの人が児童クラブの制度について問題意識を持っている人を国会に送り込むことこそ、大事です。地方自治においては二元代表制ですから、首長選挙、議員選挙、それぞれにおいて児童クラブの実務上の問題を解消する公約を掲げている人に当選していただきたいですし、そういう人がもしもいないなら、児童クラブの改善を掲げて立候補するような人もまた、増えてほしいです。いつだって時代を変えるのは1人1人の考えであり、選挙においては投票です。
いま、当選している議員のみなさんも、もっと放課後児童クラブについて問題意識を持ち、深め、子どもの育ちと子育て世帯の保護者が安心して暮らせる時代を作るために、必要なことに取り組むということを掲げ、実行してください。
選挙の季節です。児童クラブを変える大事な機会を有効に活用しましょう。
<おわりに:PR>
放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)