群馬県高崎市が放課後児童クラブ(学童保育所)職員の給与を増やす事業所に補助を出すとの報道。歓迎です。公開を!
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放課後児童クラブの運営について他地域とは明らかに異次元の取り組みをしている群馬県高崎市ですが、児童クラブ職員の給与を増額する事業所に市が独自の補助をするとの報道がありました。大歓迎です。運営支援はぜひともこの取り組みを大々的に公表することを強く期待します。他の自治体に波及してほしいからです。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
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<報道から>
上毛新聞電子版が2025年12月12日6時に配信した「「非常勤だと大半が最低賃金」 放課後児童クラブの支援員、給与増やせば補助します 群馬・高崎市が方針」の見出しの記事を一部(というか、ほとんどになりますが)引用します。
「群馬県高崎市は11日、支援員の給与を増額改定するクラブへの補助制度を来年度に新設する方針を発表した。常勤職員は年額12万円、非常勤職員は同3万円を引き上げる原資を補助する。支援員の人数が十分でないため、長期休みだけの利用を断ったり、高学年児童を受け入れなかったりするクラブがある状況の改善につなげる。支援員の給与改善のための補助を自治体単独で行うのは珍しいという。」
(ちょっとだけ言いたいのですが引用していない部分の記事に、「放課後児童クラブで子どもの面倒を見る支援員」という表現があります。まあ、確かに外形的には、大人がこどもの面倒を見ていると見えますので、一般的な受け止め方はそうなるのでしょうが、報道では正しい表現を望みたいですね。記事を書いた人は、学童の職員はこどもの面倒を見るのが仕事だと思っているのでしょう。これはちょっと残念です。)
高崎市の姿勢が事実ならとても素晴らしいです。常勤の児童クラブ職員であれば12万円、非常勤で3万円、給与を引き上げる「原資を補助」とあります。何が素晴らしいのか、それは児童クラブ職員個々の収入を増やすことだけではなく、引用した記事の後半部分にある、人手不足の解消につなげることを視野に入れていることです。
そうなのです。高崎市のこの方針を運営支援が高く評価するのは、高崎市の担当者は間違いなく、児童クラブの職員が足りないのは職員の所得が低いことで成り手がいないことを理解した上で、児童クラブを整備しても働く人がいなければどうしようもないことを分かっているので、人手不足の元凶である低賃金を改善しようという意志があると、わたくし萩原は想像したからです。
これを思うとですね、国や、一部の地方自治体が、放課後児童クラブの職員(放課後児童支援員)が足りないからといって、放課後児童支援員の配置を「参酌基準」(有資格者の配置について国は義務にはしませんが、市区町村で条例を作るときには考えてくださいね、とすること)としたり、放課後児童支援員の資格を得るための認定資格研修の受講を簡単にしようと議論したり、基礎資格の範囲を広げたりと、いろいろやっているようですが、どれもこれも的外れです。児童クラブで働いて、生活ができる、こどもをもうけて家族で安心して暮らせるだけの収入が得られる職業になれば、児童クラブで働く人が足りない、なんてことが一切なくなるんです。児童クラブは仕事の責任、仕事の量に見合うだけの報酬が得られないから人手不足なんです。それを解消するには、給料を増やすだけのこと。それを高崎市は、やろうとしているわけですから、こども家庭庁より、よっぽど「現場を分かっている」のです。
児童クラブで働く人の給料が、その仕事の意義、責任そして業務量に比べてあまりにも安すぎることは社会正義に反している、として運営支援のビジネスを始めたわたくし萩原です。そもそも新聞社勤めから児童クラブ運営法人に転職したのも、何としてでも児童クラブの雇用労働環境をできる範囲でいいので変えていきたいと覚悟したからでした。そんなわたくしですからこの度の報道はとてもうれしくなりました。有料記事ですのでほとんど記事は読めていないのですが、リード部分だけでもその記事が伝える意義深い内容が伝わってきました。
さらにもう1つ。支援員の給与を増額改定する事業者に対する補助であると報じられています。現状維持では対象外ということでしょう。市が、賃金改善の意欲がある事業者を応援するということも、すばらしい姿勢だと運営支援は評価します。
<なかなか珍しい>
放課後児童クラブに関する情報や動きは、なるべくキャッチしようとしていますが、この数年間、高崎市のように職員の賃金を具体的に改善する動きが報道で伝えられたことは、わたくしの記憶にありません。引用した報道記事に記載があるように、かなり珍しいことだと言えるでしょう。
(もっとも児童クラブの事業運営に関して他の分野で市区町村が単独に民営事業者に対して補助することは珍しいことではありません。家賃の補助が典型的です。単職員の賃金改善だけを目的にした市区町村独自の補助が珍しいということでしょう。なお埼玉県上尾市は、わたくしが以前にいたNPO法人の事務局職員1人あたり100万円を補助してくれていました。当初は上限2人でしたが何度も交渉して常勤職員1人に付き、と改善されました。こういった児童クラブのバックオフィスの職員への補助は全国的にも珍しいことです)
埼玉県は「学童保育のトップランナー」と関係者が自称してきましたがその1つの裏付けが、埼玉県単独の補助事業です。無くなる無くなると言われ続けているものですが、2025年度もまだ生き残って?いるようです。「埼玉県放課後児童健全育成事業費補助金交付要綱」9ページには「放課後児童健全育成事業(県単独事業)」とあり、「年間開所日数200日以上の放課後児童健全育成事業所 ア 民営運営費加算額(1支援の単位当たり年額) 1,304,000円 イ 障害児賠償責任保険料加算(1事業所当たり年額)障害児が1人以上加入している場合 10,000円」とあります。
いわゆる「県単」と呼んでいたものでして、これにはいくつかの条件や要件があり、政令市や中核市は除かれること(※これがあるので、わたくしは前任のNPO法人理事長だった時代、上尾市が中核市になってほしいという議員や地域の有力者の意見には反対していました)、「放課後児童支援員の配置については、児童数10~19人の場合に2人以上、児童数20~40人の場合に3人以上とする。」などの内容があります。つまり、小規模児童クラブでなければ職員3人以上の配置が必要だ、ということです。これこそ、現場クラブの人手不足解消に役立つ施策です。とはいえそれでも現実はまだまだ職員数は足りませんが、この補助のおかげで助かっている埼玉県内の民営児童クラブは多いのですから、さらに拡充されるといいですね。
<施策の意図と詳細をぜひとも公開してください>
高崎市のホームページを2025年12月15日朝(午前9時)に確認しましたが、報道された内容を裏付ける報道発表、ニュースリリースは見当たりませんでした。報道記事には「原資」とあるので、例えば常勤職員の年収を12万円引き上げた場合、当然ながら事業者負担となる社会保険料や子ども・子育て拠出金に相当する部分の補助があるのかどうか、わたくしは気になっているのですね。2026年度には「子ども・子育て支援金」の制度も始まりますが、こちらは企業ではなくて個人負担とはいえ、確実に少額であっても控除されるので、そういう部分の手当ても含んだ「原資の補助」なのかどうか、細かいところの制度設計が気になるのです。
ということで高崎市には、この児童クラブ職員への補助に関する施策について、ぜひとも、詳細を発表してほしいと期待します。非常勤職員の賃金を3万円引き上げるということですが、社会保険料との兼ね合いで「働き控え」を選択する非常勤職員もおそらく現れると想定する中で、それによる労働力不足への対応についてどのような想定をしているのかも、気になります。
「児童クラブの職員の所得状況を改善する。賃金を引き上げるため独自の単独補助をする!」と大々的に発表して他の市区町村を驚かせてほしいですし、「そうか、そういうことをすれば児童クラブの職員不足解消の一助になるか」と気づかせてほしい。そのためにも高崎市にはこの新施策の大々的な公表をしてほしいのですが、「そうはいっても、あれはどうするんだろう、これはどうするんだろう」という疑問や懸念についても「このように考えていますよ」と合わせて公表、説明していただければ、より一層、他の市区町村にとって参考となることでしょう。
保護者が主体となって運営する民営児童クラブに対して、高崎市が関与する形で非営利法人を用意し、その非営利法人に保護者運営の児童クラブの運営をゆだねることができる選択肢を提示した、という画期的な試みを軌道に乗せた高崎市です。今回の児童クラブ職員への賃金補助も画期的です。全国のお手本となりつつあるように運営支援には感じられます。ぜひとも今回の件も詳細に発表していただけることを期待します。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)



