気になる2つのニュースをチェック。放課後児童クラブ(学童保育所)は、やっぱり「預かり場」と思われがちですか。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
放課後児童クラブに関するニュースを見かけました。1つは、児童クラブに関して保護者の半数近くが勉強と安心の両立を求めているという調査結果です。もう1つは、シルバー人材センターが児童クラブの運営に貢献している、というものです。運営支援がこの2つのニュースを読み解きます。まず本日は、勉強と安心の両立を求めているという調査結果を取り上げます。
(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<4割の保護者が勉強と安心の両立を希望>
ICT教育ニュースが2025年12月5日にウェブで公開した「保護者の4割以上が学童保育に「勉強」と「安心」の両立を要望 =NEXERとHokally調べ=」という記事があります。この記事の基になるデータを掲載しているプレスリリースがPR Timesで公表されています。紹介に関しては、この情報の引用元が「株式会社NEXERとHokally(ホーカリー)」である旨の記載」と「Hokally(ホーカリー)(https://www.buscatch.com/gakudo/)」の紹介をしてください、とあります。株式会社NEXERとHokally(ホーカリー)というのもが良く分からなかったのですが、プレスリリースによると、株式会社NEXERはインターネットリサーチ等を行っている企業で、Hokally(ホーカリー)は「運営会社がVISH株式会社(ヴィッシュ株式会社)」です。児童クラブの関係者であれば「児童の入退室管理のICTシステムを手掛けているところか」と聞き覚えがあるかもしれませんね。
さて調査結果は次の通りです。「学童保育を利用しているもしくは過去に利用していた」と回答した全国の男女100名を対象に「学童保育に求めたいこと」についてのアンケート、です。7つの質問があります。
質問1:学童保育利用時の保護者の勤務形態を教えてください。→共働き(フルタイム)74.0%、パートタイム13.0%となり、続いて「片親家庭」10.0%となっています。わたくし萩原は、この「片親」という表記にたまげました。「いまどき、まだ片親って言葉を使ってるんか!」です。わたくしの知る限り児童クラブの運営も現場も「片親」という表現はしません。「ひとり親」です。片親という表現は、ちょっと前に「片親パン」という侮蔑的な表現が話題になったように、はっきりいって配慮が欠けます。この単語を使っているということは児童クラブの本当の現場をこの2社は知らないんだろうな、ということをわたくしは確信します。
質問2:学童保育全体の満足度を教えてください。→やや満足49.0%、とても満足37.0%、やや不満11.0%、とても不満3.0%
質問3:その理由を教えてください。→プレスリリースに、とても満足、やや満足などそれぞれのカテゴリーに関する理由が紹介されています。
「質問2」で、「満足」と「不満」の選択肢が無いとしたら不思議ですね。やや満足・不満、満足又は不満、とても満足・不満、という6つの選択肢が必要ではないのでしょうか。何か理由があるんでしょうかね。さて不満側は合計で14ポイントあります。これを高いとみるか、低いとみるか。わたくしとしては、まあこのあたり「そんなものかな」と感じます。アンケートに応じた100人はそれぞれ違う児童クラブに巡り合ったのだろうと想定すると、「ひどいクラブだった」と思った人は約15%ということであれば、そんなものかなぁ、と感じるのです。可もなく不可もなしというクラブがほとんどで、「こりゃひどいわ」と思うクラブはまあ、そんなにないのでしょう。しかもこういうアンケートに応じる人自体が、児童クラブに対してそれなりに興味関心もある方であろうと想像できるからです。興味も関心もなければ、児童クラブの良しあしにも興味関心が向かず、こういうアンケートに答えようにもできないからです。
質問4:学童での安全管理(出欠確認・送迎・体調管理)に不安はありますか?→ない78.0%、ある22.0%
質問5:どのような不安があるか教えてください。→いくつか紹介すると、「子どもの安全を第一に考える制度が整っていないから」「熊が出た時が心配」「滑り台から落ちて頭を打ち、その後吐いたにもかかわらず親に連絡なしだった」「一人ひとりを完全に把握しているようには思えない。バイト感覚の指導者が多く不安はつきない」
「質問4」の、不安がある22.0%は、軽視してよい割合ではありません。こどもの安全を絶対的に守るのが児童クラブです。世の中に「絶対こうなる。こうならない」というのはありえないのですが、それでもこどもの安全は絶対的に守る覚悟が求められるのが児童クラブです。22%は5人に1人が不安を感じているということ。それは高すぎます。数パーセントに抑えられねばなりませんよ。
さてこの「質問5」で明かされている理由は非常に問題です。「こどもの安全を第一に考えるように整っていない」と保護者が感じるのであれば、運営に確実に問題があります。クマの脅威に対する安全確保が整っていないという不安は、対応の遅れを想像させます。そして、滑り台から落ちて頭を打って吐いたにもかかわらず保護者に連絡が無いという児童クラブは完全に児童クラブ運営の資格がありません。バイト感覚の指導者(?)が多いのも、わたくしには「まあ、そうかもね」と否定できません。
これですね、サンプル数が100しかないとか、どういう属性の保護者かどうか分からないという根源的な疑念はあるとしても、「たった100の調査で、児童クラブではありえない、頭部打撲による吐き気の対応ミスとか、こどもの状況を把握していると思えない軽い責任感で従事する職員がいるという保護者の感想が出てきてしまった」というのは、児童クラブの質の低さを暗示していると捉えねばなりませんよ。
頭を打って吐いたのに保護者に連絡しない児童クラブって何? そんな事業者に、こどもを委ねてはなりませんよ。ひどすぎますね。
質問6:学童に通うことで、子どもにどんな変化があったか教えてください。(例:友達が増えた/自立した/疲れている様子が多い など)→これも保護者の感想がいくつか紹介されていますので、プレスリリースを見て確認してみてください。わたくしが気になったのは「自らコミュニケーションを取るようになった」「友達とのコミュニケーション能力がついた」「違う学年の友達ができた」あたりですね。他人との関係性を構築できるようになる、それも異なる学年のこどもと知り合い、友達になることができたということは、将来、社会に出るにあたってとても大切な経験であり能力です。児童クラブは「非認知能力」が育っていくところです。人間が社会に出てから「それとなく、うまく」社会人として生活できるには、他者との関係性を構築できるか、つまり他人とコミュニケーションが取れるかどうかにかかっています。児童クラブでこの点を「鍛えて」おくことは、将来、きっと役立つとわたくしは考えます。
質問7:今後、学童に期待することとして当てはまるものをすべて選んでください。→宿題・学習支援の充実44.0%、児童の安全対策の強化40.0%、延長時間の拡充35.0%、ICT(アプリ・LINEなど)での連絡の簡素化22.0%、行事・体験活動の拡大20.0%、食事・おやつの質向上19.0%、送迎支援(スクールバスなど)13.0%、保護者向け情報発信・見学機会11.0%。
宿題・学習支援の充実が4割超と高いですね。これはまあそうでしょう。わたくしも実務者時代、保護者からの要望で最も強かったのは児童クラブ開所時間の前倒しでしたが「学童でもっと勉強させてほしい」という要望もかなり根強かったです。全般的に利便性向上への要望が根強いことと合わせて、「すぐに、目に見える利益や成果を求める」という今の時代の保護者の希望が浮き彫りになっていると、わたくしは感じました。
<意識のずれ>
ただですね、この「宿題」と「学習支援」は、分けて考えるべきです。
放課後児童クラブは、放課後児童健全育成事業を行っている場所であり、その事業そのものでもあります。放課後児童健全育成事業とは、こどもに「適切な遊びと生活の場」を準備して、そこで大人から適切な援助、支援を受けてこどもが自分自身の力で、あそびを通じて、集団生活を通じて、成長していくことを国家として提供するものです。その事業の主体は市町村です。民間にもやってもらうことができるものです。
さて、児童クラブはこどもの生活の場ですから、家庭における生活時間の過ごし方のいくつかを児童クラブで行うことになります、宿題は、小学校から「やってきなさい」と指示されるものですから、通常は宿題を仕上げることになりますが、家庭で宿題をする時間が無い場合は、児童クラブである程度済ませておくことは大切なことです。全部済ませるのか、ほとんどの程度までか、それは児童クラブがそれぞれの保護者(会)と相談して程度を決めればいいでしょう。「まったく宿題をさせない」という児童クラブは、ほとんどないだろうと運営支援は予想します。ただ「やる、やらないはこどもの判断に任せる」という児童クラブは、きっとあるでしょう。
まあつまり、児童クラブで宿題をすることは「ありえる。むしろ当たり前」ということを言いたいのです。
学習支援は宿題とは全く性質が異なります。学力の進歩向上か、あるいは遅れている学力の引き上げかはいろいろあるでしょうが、学校で指示される宿題とは根本的に異なり、結局は保護者の意向によってその必要性が左右されるものです。保護者それぞれが任意で判断するものです。もっと勉強時間を確保して学力を伸ばしたいのであれば、費用を用意して学習塾に通わせることが通例です。児童クラブは、本質的に、そこまでの役割を当然に期待されていないのです。
ここのところにおいて児童クラブ側と保護者(とそして世間)との間に意識のずれ、があるとわたくし萩原は痛感します。
保護者(そして世間)=もっと児童クラブでこどもが勉強してほしい。学力をつけて成績を上げてほしい。だって児童クラブでこどもは、ただ遊んで過ごすだけじゃない。そんな時間があるならもっと勉強させてほしい。
児童クラブ側=児童クラブは「適切な遊び及び生活の場」ですから宿題はともかく、個人の学力伸長については個々のご家庭でご対応ください。遊びは、こどもが大人に育つために会得しておくべき種々の能力を獲得するための極めて重要な手段であり方法です。遊びの時間はしっかり確保します。
<あえて言おう。勉強の時間も用意できる態勢を取ろう>
児童クラブは単に遊んでいる場所、無駄に時間を過ごしている場所という理解や、遊びは楽しいだろうし大事な時間だろうけれど同じように勉強も大事だから、と多くの保護者が思うのは無理はないとわたくしは考えます。放課後児童健全育成事業の中身なんて知られていません。これはもっと知られるように児童クラブ側がもっと努力しなければならないのですが。
このことは「遊び」に対する理解の違いにあるのでしょう。遊びが成長に大事だとする児童クラブと、遊びは余暇を過ごすためであって勉強をし終わって空いた時間があればそこで遊べばいいじゃないと思う多くの保護者(そして世間)の理解の、ずれであり違いです。いわば「遊びが目的」である児童クラブと、「こどもを安全に預かることが目的。時間の使い方を勉強優先にしてほしい」と考えがちである多くの保護者(そして世間)、という構図になるのではないでしょうか。
遊びは本質的に人間の成長に欠かせない行動なのですよ、ということをもっと広く知ってもらう努力が、児童クラブ側に欠かせないでしょう。
さてそれはそれとしてですね、運営支援は、こどもの学力向上についても児童クラブ側はもっと留意するべきだと訴えたいのです。2点です。1つは「多様な過ごし方を準備する時代にしなければならない」ということです。これは、こどもの放課後や夏休みの時間の過ごし方についてもっと多様な過ごし方を用意するべきだという考え方です。遊び重視の伝統的な児童クラブでの過ごし方だけではなく、希望に応じて勉強したいこどもにはその時間と手段を用意する必要があるでしょう、ということです。その費用は受益者負担にはなるでしょうが、世帯の所得に応じた減免措置は必要でしょう。こどもの多種多様な過ごし方を用意するのは社会の責任です。ですから児童クラブだけではなく、児童館や放課後子供教室、こども食堂、小規模なこどもの居場所、ファミリー・サポート・センター利用による自宅での過ごし方など、いろいろな過ごし方をこども(と子育て世帯)が選択できるような環境を社会が整えるべきです。とはいえ、なかなか一朝一夕に多種多様な過ごし方を準備できることは難しいので、児童クラブの中でも、違った時間の過ごし方を選べるように児童クラブ側も努力するべきでしょう。そのための費用は国や自治体も援助するべきでしょう。
そしてもう1つは、学習機会の提供です。とりわけ、ヤングケアラーや、種々の事情で児童クラブからの帰宅後は教科書やノートを開く家庭環境にないこどもに、最低限、宿題の機会を児童クラブでしっかりと確保することが、子育て支援、とりわけ貧困状態かまたはそれに近い状態の子育て世帯の学習企画確保として有効である、ということです。もっと勉強、学習をしたい、学びたいというこどもが、種々の事情で家庭ではそのような機会を得られないとしたならば、児童クラブでその機会を用意することはこどもの利益になります。貧困対策としての学習の機会は、夏休みなど給食が無い期間において懸念される食事提供の機会と合わせて、今後の時代の児童クラブに、わたくしは必要であると考えるのです。
むろん、現状の児童クラブが学習機会の提供に振り向ける余力は、なかなかありません。特に重要なのは職員配置数の少なさです。こどもの勉強に職員が付き添うとなると、ほかのこどもへ関わる機会や時間が確保できなくなります。児童クラブで個別のこどもの援助、支援にかかりきりになると他のこどもへの援助、支援が手薄になってそこで問題が生じてしまうのです。ですから今の児童クラブはこどもにつきっきりで勉強を教えることは、したくてもできないのですね。ですから、児童クラブで、もっと丁寧にこどもの学習機会の確保をめざすには、結局は予算を拡大して職員数を増やすことと、ホームラーニングで「画面の向こうのインストラクターや先生」から教えを受ける学習形態を採用することが欠かせません。通信環境の整備も必要ですね。
児童クラブは、単にこどもを預かるだけではないと児童クラブ側はよく口にします。わたくしもです。しかし、もっと先の、こどもの人生を考えて何が利益になるか、こどもの支えになるのかを総合的に考える姿勢は、ややもすると十分ではなかったのではないでしょうか。こどもの福祉を総合的に考える機能と役割を児童クラブに持つことが必要であると運営支援は訴えます。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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