民間委託した放課後児童クラブ(学童保育所)の悲惨な現実。市区町村の管理責任はどうなっている? 民間委託は丸投げとは違う! 下
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたらSNSに投稿してください! 口コミ、拡散だけが頼みです!
民間委託の放課後児童クラブで働いている職員から、弊会に悲惨な実態を伝えるメールが届きました。それがいかにひどいものであるかを昨日(2025年6月3日)の運営支援ブログで紹介しました。SNSでは「氷山の一角」「うちのクラブかと思った」という書き込みがありました。それはとても重大で深刻なことを伝えています。分かりますよね。氷山の一角だとしたら、あまりにひどい児童クラブがもっともっとたくさん存在するということですし、「うちのクラブかと思った」というのはそのクラブが極めてひどい状態にある、ということです。いいですか、氷山であるならそんな氷山はもう打ち砕かねばなりません。溶けるのを待っていられない。本日は、運営支援ブログが考える、民間委託における児童クラブ事業の「健全育成」の方策を提言します。市区町村で児童クラブを担当する人にぜひ届いてほしい。あなたたちが選んだ事業者が、実はどのように児童クラブを運営しているか、しっかり調べてください。こどもの権利がないがしろにされ育成支援を真剣に考えている職員はどんどん追い込まれていく。税金は現場の事業に使われずただ企業が丸儲けするだけの実態を正してください。今のままで、いいんですか?
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<再掲載します。届いた報告>
前日のブログに掲載した、民間委託クラブの無残な実態をこちらに伝えてきたメールから、私(萩原)が問題だと考えた個所を抽出した内容を再掲載します。それを踏まえて以下、大至急、国や行政、社会に求めたいことを記します。
(私がこれは問題だと感じた点)
・常勤クラスの職員が他の職員、補助員にパワーハラスメントを行っている。
・その常勤クラスの職員を含む複数の児童クラブ職員による、こどもへの不適切な行為がある。
・パワハラ行為やこどもへの不適切な行為を事業者に通報しても無視されたこと。
・後期高齢者世代(75歳以上)の常勤クラスの支援員の育成支援業務があまりにも程度が低く、児童クラブ全体が荒れていること。育成支援の質が極めて低レベルであること
・あまりにも資質に欠ける常勤クラス職員の行動、言動がある。例えば「いすに座ったまま動かない常勤職員がいる」。避難訓練の際は「こどもより自分(職員)が先に逃げるようにしてくれ」と周囲に指示してはばからないこと。
・こどもが起こしたトラブルに対して状況を説明されなかった保護者が児童クラブの「職員」に対して厳しく対応した際にも常勤クラスの支援員や事業者が保護者に対して全く説明などの対応を行わなかったこと。結果的に保護者に誠実に対応しようとした職員が一方的に非を責められた。
・保護者との対応トラブルにおいて対処の指示を求めて何度もメール等で事業者に報告するも、全て無視されたこと。
・運営事業者が児童クラブに来る際、こどもや育成支援業務に対して何ら関心を持っていないこと。
・提示された労働契約に記載されている賃金を下回る額でしか給与が支払われていない状態にあること。
・こどもに対する育成支援における、非合理的な業務上の指示。例えば、こどもが職員のプライベートゾーンを触ってきても、何ら注意や指導をしてはならないとする、常識を欠いた事業者の指示が行われていること。
・業務上において職員が負った、治療を要する負傷に対して労災保険制度の適用を事業者が認めないこと。
・業務上における諸問題に対して、職員が他の機関等に相談することを禁じていること。なお事業者は職員からの相談は無視する。
・児童クラブの備品のトイレットペーパーなどを無断で持ち帰る職員がいること。その改善を求めても事業者は無視すること。
・無記名の保護者アンケートに対して、事業者は筆跡を調べて提出者を特定していること。
・十分な運営費用が契約によって支給されているはずにもかかわらず、育成支援に必要な教材が不足していること。児童クラブに必須の折り紙や、白い紙など購入されず、心ある一部の職員が自腹で購入して使っていること。しかもその行為に事業者から「勝手なことをするな」と厳しく責められていること。
(再掲載ここまで)
<民間委託児童クラブに対して必要なこと:制度として管理監督を義務付けよ。通報制度を確立せよ>
最も問題と私が思うのは民間委託が事実上の「丸投げ」となっており、それが平然と横行していることです。このたび届いた無残な運営の内容を平然と放置している受託事業者ですが、委託側の自治体は、これも前日のブログに示したように、文言としては自らの責任を掲げています。再掲載しますと、「自治体が事業実施の責任者 ※民営化ではなく、民間委託(公設民営)」です。つまり、自治体は児童クラブの責任者であるということを認めています。
しかし、実際に責任者としてふさわしい行動を行っているかと言えば実態は全く違うのです。これは単に、民間委託に対して不安を持つ住民に対してその不安を和らげるために使った「方便」としか考えられません。
方便で済ませられることが不可能なように、市区町村は委託ないし指定管理者として運営を任せた事業者を定期的に調べることを義務付けることが必要です。その根拠となる法令を国が特別法で制定するべきです。業務委託契約や指定管理者制度で児童クラブの運営を任せるとしたらそれは原則的に放課後児童健全育成事業の補助金が交付されることになりますから、補助金を受ける側の事業内容(=補助金をどう使っているか)を、管理監督する立場であって当然です。そもそも、数年に一度は市区町村内部の監査制度の下で、受託事業者や指定管理者の事業内容のチェックを行っているでしょう。
その管理監督の仕組みをさらに強化するのです。市区町村は、受託事業者が契約書や仕様書に記載された通りの児童クラブの事業内容を行っているか、そして労働法制はもちろん種々の法令に背く行動を行っていないかどうかを、必ず調べねばならない、と制度化するだけの簡単な話です。
管理監督した結果は、すべて公開するべきです。自治体のHPで公開するのがいいでしょう。
市区町村が調べて公表を求めたい事業内容は次の通り。
「1つの支援の単位ごとに、事業者が雇用している各職員の勤続年数(採用年月日)、基本給又は基本時給、週の所定労働日数と週の所定労働時間、保有する資格。職員の採用や退職などによる変動があればその都度、調査して公表」
「1つの支援の単位ごとに、登録児童数、利用児童数、専有面積の広さ」
「1つの支援の単位ごとの収入と支出」(これは年1回、決算情報でよい)
そんなに難しいことではありません。児童クラブの事業は、「人(支援員、補助員)」が、「人(こども、保護者)」を支える人的ケア労働です。「人」が何より大事であって、予算の大半を人に使うことになっているのですから、人に関する情報を公開するべきです。
市区町村が児童クラブ事業者を管理監督することに対して、都道府県の役割を強化するべきです。放課後児童クラブは、子ども・子育て支援新制度になって国と市区町村の関係になったと言われますが、結局は何も変わらず、指定市を除けば市区町村は結局のところ都道府県の意向が重要です。市区町村がしっかりと事業者を管理監督し、情報を公開しているかどうかを都道府県が市区町村を指導する、という制度を明確に構築していただきたい。
児童クラブの現場職員からの苦情や告発の受け入れも都道府県が制度として確立していただきたい。現場の多くの職員が「市役所、役場の人に話しても何も変わらない」と、あきらめています。そりゃそうです。市役所や役場が結局は選んだ事業者が、あまりよろしくないことをしているとなれば、「そんな事業者を選んだ責任はどうなるんだ?」と議会や住民から批判を受けることを、とにかく行政執行部は嫌がり、恐れるのです。現場からの苦情や通報を無視することは朝飯前です。よって、基礎自治体ではなくて広域自治体の業務としていただきたい。
<民間委託児童クラブに対して必要なこと:強制力がある公契約条例の制定を強く指導せよ>
児童クラブの運営、事業の質の内容に関する諸問題は、基本的に「事業者の経営スタイル」の問題です。こどもファーストとか、こどもまんなかという概念とは全く別の次元であって、単に経営上の問題であり、それは最終的に法令順守(コンプライアンス)の問題です。実は倫理、哲学の問題でもあるのですが、「児童クラブ事業は補助金収入が大半なので企業経営者はそれを踏まえて、確保する利益は控えめにしなさい」と説いたところで意味がありません。社会正義や企業倫理などあえて重視しないスタイルを徹底して貫かなければ、補助金で利益を「がっちり」稼ぐビジネスなんて手を出しません。
経営スタイルのうち、重要なのは予算つまりカネの使い方です。人が資本の事業が児童クラブですから、人に対してどれだけ予算を使うかによって、事業の質が決まるのです。それは従事する人数であり、社会人として支援員として資質のある良質の人材を確保できるかどうかによって左右されるのです。つまりは、「人件費」の額がどれだけであるかによって事業の質が決まると言っていいでしょう。必要以上に事業者が利益を計上することで事業経営に使える経費の額が減ることは、直ちに人件費の削減、抑制を意味します。労働集約型の典型的な産業である児童クラブは人件費が総経費の8割前後に達します。人件費を減らすことで事業者は利益を確保するのが、補助金ビジネスの中核です。
これは、職員に支給する給与の額の下限を決めることである程度の修正ができます。業務委託による受託事業者、指定管理者は、公の事業を行うことを任されている立場ですから、公契約条例で、公の事業に従事する者の賃金を規制すればいいのです。公契約条例の賃金条項で、児童クラブの職員(常勤も、非常勤も)の賃金、具体的には時給額の下限を決めるだけです。その下限額を地域における最低賃金よりプラス数百円上回る額に定めれば、社会人として資質の低い人材を無理して雇うこともなくなります。重要なのは「基本給」だけで判断することです。大変に程度の低い児童クラブ事業者が現にやっている「その他の手当てを含めて計算して時給換算額が最低賃金を上回る」というのは、ダメです。
また、3~5年間の契約期間、指定管理期間については、物価上昇や最低賃金額の上昇がはなはだしいので、締結時の金額を年度ごとに変更する「賃金スライド制度」も必要です。期間の2年目から適用することです。必要な人件費が毎年確保されることで、人件費を切り詰めて程度の低い人材を雇わざるを得ない局面を減らすことができます。
<民間委託児童クラブに対して必要なこと:受託者や指定管理者を決めるプロセスを見直せ>
程度の低い、児童クラブ事業より金儲けに熱心な事業者が、どうしてあちこちの自治体で選ばれるのか。それは当然で、公募プロポーザルにしろ指定管理者選定にしろ、事業者を選ぶ又は事業者の候補を選ぶ場合は「提出された資料と、プレゼンテーションでの説明」のみが選考の材料となるからです。それはある意味当然で、ある種の証拠主義ともいえるでしょう。それはそれで公正さを保つために必要です。
つまり、どの事業者を選ぶかを決める際に使う資料に、見直しが必要だということです。これもまた、国がルール化して、「公募プロポーザルや指定管理者の選定の際に提出を求める資料には、こういうものが含まれること」ということを通達で示せばよいのです。
私(萩原)が考える、事業者選定の際に応募者に提出を求めるべき資料は次のようなものがあります。
「近隣地域における他の児童クラブ運営における職員の雇用状況の提出。常勤職員数の人数、非常勤職員数の人数と、本来必要とする職員数。また各職員の雇用契約の期間」
「近隣地域における他の児童クラブ運営における従事している各職員への賃金支給状況」
「近隣地域における他の児童クラブ運営における1つの支援の単位ごとの予算支出状況。支出における利益計上分の割合と額」
(地域に根差した児童クラブが公募や選定に応募した場合はすでに運営しているその地域の児童クラブにおける状況を提出)
この3つだけでも、事業者がどのような方針で児童クラブを運営しているかが見て取れます。最低賃金レベルの職員をぎりぎりの少人数で運営している、またはほぼ必要な職員数を満たしていないとあれば、本来必要な分を超える額を利益として計上していることが容易に想像できます。人が足りなければ時給や基本給を引き上げて人を集めるのが正常な市場の動きですが、それをせずに、最低賃金レベルでも働くことを良しとする人材がやってくるまで待っているのが、補助金ビジネス事業者の原理です。結果的に、「避難のときは、こどもより自分を先に逃がせ」と平然と言ってのける程度の低い人材が集まり、そういう人材しか残らない、定着しないのです。これでは、児童クラブの事業の質が向上するはずはありません。
応募する事業者、とりわけ全国で数十、数百の児童クラブを運営している児童クラブ事業者は、すでに公募プロポーザルや指定管理者選定委員会に提出するプレゼンテーション資料の「出来栄え」については完璧に仕上がっています。現状において市区町村が提出を求めている資料では、いくらでも「お化粧」ができるのです。そうではなくて「事実に基づくデータ」の提出を市区町村は求めてください。そのデータは、児童クラブの事業の質を支える「児童クラブの職員に投下するカネ」にまつわるデータが最重要です。職員を何人雇わねば円滑な事業運営ができないところで何人雇っているか、個々の職員にはどれだけの人件費つまり賃金を支払っているか、働いている職員の年齢やキャリアはどうか、ということの提出を必ず求めるべきです。
市区町村はもう見て見ぬふりは止めましょう。民間企業のノウハウで職員不足を解消、と民間委託する市区町村はいつもその点を利点として主張しています。実際、その民間委託で職員不足は解消されていますか? 民間委託にした自治体、あるいは今までとは違う事業者に運営を任せるとした自治体で、新たに児童クラブを運営することとしている事業者が、ずっと求人広告を出しているのに気づいていないのですか? 「そうはいっても、今は売り手市場で採用が難しい。決して事業者だけの責任ではない」というのであれば、受託者や指定管理の候補事業者を選定する際の採点において、他の地域で多数の児童クラブを運営している事業者が高い点数を確保するのか合理的な説明ができません。どの事業者であっても採用が難しいのであれば、少なくとも得点は横並びになるはずですね。いやむしろ、最低賃金レベルでしか募集しないであろうことがミエミエの事業者であれば低い点数になるはずですよ。
民間委託だから、民間に任せれば職員不足が解消できる、というのは現時点において全く説得力がありません。お役所が嘘をつくのは止めていただきたい。
<民間委託児童クラブに対して必要なこと:働いている者が毅然と改善を求めよ。それが無理ならどんどん辞めよ>
ひどい運営をしている児童クラブがそんなに多いなら、なぜどんどん明らかにならないのか。実際は、それほど問題になるような児童クラブは多くないのではないか。
そう思われる方はとても多いでしょう。それはごく一部において正しいと私も感じます。そのごく一部というのは、「問題である、問題でない」という認識において差がある、ということです。つまり、「児童クラブ職員がいつもこどもを怒鳴りつけていても、それが正しい躾だと思っている職員しか存在しない児童クラブであれば、こどもを怒鳴りつける行為を問題視する人がいないので、結果的に、問題は存在しない状況となっている」ということです。
ひどい事業内容を延々と続けている事業者は、最低賃金レベルにとどまる給与の面を最大要因として、児童の健全育成に興味も関心もない人物を雇っていること、そしてまともに教育研修をしないでいること、例えばビデオを延々と視聴させておしまい、ということで済ませており、とてもこどもの育成支援において業務を遂行できない人ばかりが従事していることが多いからです。事業者の運営方針に疑念を抱かない人ばかりが従事しているということです。
私(萩原)に、広域展開事業者の問題を教えてくれる従事者の方が、こういう話を私にしました。「働いている人が全員、死んだ魚の目のようなの。こどもを見ていないの」。こどもを育成支援の対象として見ることはせず、「命令によって従わせ意のままに動かせるようにすることが目標。そのほうが手間がかからないから」と信じ込んでいる職員が従事している、ということです。
これはつまり、事業者の方針に異を唱える人は自分から退職を選んだり、あるいは事業者から嫌がらせを受けてそれを苦にして辞める、ということが延々と繰り返されてきた結果なのです。
ですので、ひどい事業内容を平然と続ける児童クラブから異議が出ないのはある意味において現状は期待できません。もし今も、ひどい事業を平然として行う児童クラブの事業者(これは企業であろうが非営利であろうが保護者運営であろうが、どれも同じです!)の中で踏みとどまって、なんとかこどものため、保護者のため、職員のために改善を求めて生きたいと思っているなら「覚悟を決めて」立ち上がりましょう。誰かが改善を求めて覚悟を決めて行動しなければ、構造的な問題は何も変わりません。返り討ちにある可能性が高いです。自身が心身を病んでしまうことも当然あるでしょう。しかし、誰かが動かねば何も変わりません。情報を社会一般に公開する、保護者に働きかけて改善を求めて公然と反旗を翻すなど、いろいろあるでしょう。
もしそれが無理なら、「こんなひどい事業者はつぶれてしまえ」と、どんどん辞めましょう。夏休み前の2週間で退職を申し入れるのは効果的ですね。就業規則に1か月前だ2か月前だと書いてあっても最終的には法律上は2週間前に契約解除の申し入れが認めらています。7月になったら退職を申し入れれば良い。「こどもがかわいそう。こどもをほったらかしにできない」と思うでしょうが、それこそ、児童クラブの質の改善より利益計上に熱心な事業者が悪用する「やりがい搾取」なのです。「こどものことが大事ならすぐに辞められないよね?」とささやくのは、単なるやりがい搾取です。ひどい事業内容、質の低い育成支援を継続している児童クラブ事業者が存在し続けるほうが、より社会にとって害悪です。その害悪の事業者に勤め続けることでその存在に力を貸す、協力する必要はありません。児童クラブの事業者はあちこちで人手不足ですからすぐに転職先が見つかりますよ。
<民間委託児童クラブに対して必要なこと:保護者の無関心こそラスボス>
法令などでいくら児童クラブ事業者に「適切な運営の実施」を強制させても、それは必ず抜け道、抜け穴があるものです。では、児童クラブ事業者に適切な運営を求めるのに最も効果的なものは何か。それはいつの時代でもどんな運営の形態であっても、児童クラブで過ごす「こども」の意見であり、こどもの保護者の意見や要望です。
現実の世界では、こどもに何らかの権利侵害がなされた場合はその異変に気付いた保護者が、児童クラブの事業者や設置主体である市区町村に対して、保護者ならびに児童クラブ利用上の契約者としての当然の権利の行使として、児童クラブ事業者や市区町村に改善を求めたり、現状の調査を求めたり、あるいは補償を求めたりすることになります。(こどもの声は当然、最も重要なことですが、程度の低い事業者や、児童クラブの管理について責任を軽視している市区町村は、こどもの訴えや声を聞いても無視しますし、そもそもこどもの意見や本音を聞こうともしません。現実的には、自分のこどもから話を聞いた、状況を打ち明けられた保護者が、親として行動することになります。もちろん、放課後児童クラブ運営指針も改正されたことですし、今後は当然、こどもの意見表明を確実に事業の質の点検に活かせる仕組みを構築することが求められるでしょう。)
問題は、圧倒的に多くの保護者が、児童クラブで行われている物事について無関心であることです。「こどもを預けられれば良い」ということだけで満足し、「児童クラブには、こどもを預かってくれるだけでよい。それ以上のことは関わりたくない」と思っている保護者ばかりでは、児童クラブに対する最強のチェック機能を有する保護者による事業運営の点検、確認、監視が機能しないので、児童クラブ事業者は安心するのです。
「児童クラブで、こどもをしっかり厳しく、しつけてくれればよい」
「大人の言うことを聞かないこどもには、一発二発は殴ってもはたいてもよい」
「とにかく宿題させ終わらせてくれれば後は何も文句はありません」
こういうことしか考えない保護者ばかりの児童クラブでは、児童クラブの内部でどんなひどいことが行われていても、保護者によるチェック機能が働かないので、いつまでもひどい児童クラブのままです。しかも最悪なことに、本当にあった例ですが、「親には絶対に話してはダメだ」と利用児童に指示していた児童クラブ職員だって存在していたのですし、今もきっといるでしょう。こどもはそれでも、自分の居場所となる場所のセンセイですから言いつけを守るのですね。こどもの気持ちを悪用した、本当にひどい行為が現になされていたかと思うと残念でなりません。
ひどい児童クラブの改善を促すには、保護者の意見、要求が最も効果的です。直接に改善を求めるのも、議員を通じて改善を働きかけるのもいいでしょう。当たり前ですが、ひどい児童クラブに勤めていて事業内容の改善を願う職員は保護者と連携するべきです。どうしても使用者に対して弱い労働者の立場ですから、なかなか雇い主に対して文句や要求を突きつけにくい。であればそこは信頼できる保護者を改善に向かって動いてくれる同士として、その保護者に動いてもらうことになります。実のところ、児童クラブの歴史はそうしてわずかづつですが進歩改善してきた面があります。今も十分に必要な作業です。
保護者の「そうか、それはダメなことだったのか!」という気付きを保護者にもたらすには、職員との情報共有以外にも、マスメディアによる活動が期待できます。保護者1人1人の声を社会全体の声に変えることができるのは、メディアの力です。つまり、児童クラブのひどい実態があるとして、何が問題なのか、どうしてダメなのか、実際にこんなひどい事実が存在している、ということを保護者にも、メディアにも、正しく知ってもらう必要があるということです。
児童クラブなんて単にこどもが過ごせればいいんだ、そこでどうこどもが過ごそうが、数時間ぐらいならどうにでもなるでしょ。だいたい、こどもなんて我慢させておきゃいいのよ。こどもを預かるだけの場所にこちらは毎月毎月、高い利用料を払いたいくないわ。
そういう児童クラブへの保護者の無関心こそ、児童クラブの質の改善を妨げる最も最強最悪のラスボスです。そういう意識が広まれば広まるほど、補助金ビジネスは容易に、うんとやりやすくなります。だって保護者からあれこれリクエストが来なければ、やりたい放題だから。結果的に、税金をどんどん利益にして濡れ手に粟の事業者がニンマリするだけで、そこで働くまともな人はいずれ心身がボロボロになって辞めてしまう。(あるいは、まだなんとか、現場にはまともな職員が多いので現場クラブは正常に機能しているけれども、上の方(事業者の経営幹部)がバカだから間に立つ児童クラブの主任や施設長クラスの職員が非常に重いストレスにさらされて健康を害してしまう、ということがあるのです。)
保護者には、児童クラブの本当の役割とは何かを理解してもらわねばなりません。それは1人1人の児童クラブ職員や運営事業者や市区町村、業界団体の努力が必要です。また、広く国民に対しても児童クラブの目的、社会インフラとしての重要性を認識してもらわねばなりません。児童クラブに対する多くの利用者やこの社会が抱く誤解が存在し続ける限り、児童クラブの世界の環境を改善するように働く流れは決して生まれません。
つらい活動ですが、児童クラブの中にいる人たちが決意をもって動かねばなりません。それはきっとできるはずです。私もお手伝いします。
<PR>※お時間のある時に、目を通していただければ幸いです。
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)