月曜日。「仕事、行きたくないな」と辛い気持ちになっている、放課後児童クラブで働く人へ。まず読んでみて。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。4月採用の新人の支援員さんは、3週間を過ぎて迎える月曜日ですが、気分はどうですか? もし、「もう仕事が辛くて嫌だ」と辛く、暗い気分になっているならとりあえず読んでみてください。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<仕事が辛い。それは「仕事そのものか」、「仕事を構成する部分なのか」を見分けよう>
 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)で仕事を初めて3週間。春休みの、朝から夜までの超時間勤務の日々で体力を消耗しきった新人職員さんも多かったでしょう。春休みのときは、何も考えずただただ子どもたちを向き合おうと必死だったことでしょう。新学期が始まり、研修もそろそろ本格的に始まっているころでしょうか。このころになると、入職したてのころには見えなかったこと、それは嫌なことも含めて、いろいろと見えてきて、「うわ、こんなこととは思わなかった」と驚いたり、がっかりしたりしていることも、あるでしょう。それどころか「この仕事、絶対に無理。私にはできない」と思い込み始めている人も、いることでしょう。

 「この仕事は無理」どころか「クラブに出勤したくない」と思っている人へ。無理は、しなくていいのです。体の異変はありますか?胃が痛い、下痢をする、吐き気がする、頭痛がする、それらはすべて、あなたの身体があなたの理性に明確に「もう無理だよ!」と信号を発しているのです。理性、思考ではともすれば抑え込む、あえて気が付かないふりをする状態に対して、心の奥底が身体に指示して、異変を起こさせるのです。それが、胃痛だったり下痢だったり吐き気、頭痛だったりという症状です。

 もう、そのような状態になっているなら、あなたがするべきは治療です。治療とは、あなたが遠ざけたいと思っていることから離れること。仕事が原因なら、仕事と距離を置くことです。それは退職という選択も当然、入ります。入職して早々に退職だなんて、考えたくもないかもしれません。ですが、体が明確に拒絶反応を出しているなら、まずは自分の身体を守らなければなりませんよ。社会人として何十年も生きなければなりません。体が健康でなければ、何十年も働いて過ごすことができなくなりますから、最優先するべきは「自分の体の健康」です。

 もちろん、仕事全部ではなく「あの人が苦手」「あの雰囲気さえなければ」という、職場や勤め先において、部分的なものを、自分がどうしても受け入れられないということだってあるでしょう。そうであれば、その部分に対する問題が解決されれば、仕事を続けられる可能性がぐんと高まりますよね。そのときは、職場、勤務先の、しかるべき窓口に相談しましょう。小さな職場で、先輩職員しかいない状態であれば、親や仲間に相談しましょう。勤め先に、なんか頼りになりそうなパートの人はいませんか?正規職員ではない、権限はないでしょうが、人生の先輩であるパート職員に悩みを聞いてもらうことも、いいことですよ。先輩には話せないことも、人生の先輩としてパートの職員さんは、案外とうまく受け止めてくれるものです。

 「もう、仕事全体が嫌だ。自分には絶対無理」ということなのか。
 「あの先輩の顔を見るのが嫌だ。クラブの雰囲気が辛い。でも研修や子どもたちと過ごすのはとても頑張れる」
 この判断は重要です。「児童クラブで働くことそのものが辛いのか」なのか「自分の境遇そのものが辛いのか」を、冷静に判断することが大事です。そのためにも、なるべく身近にいる人に観察して判断をしてもらうことは良いことです。もちろん、心療内科などで専門医に話を聞いてもらって判断していただくことは非常に有益です。ぜひお勧めします。(その際は、必ず職場に伝えること。運営本部や事務局でいいですから伝えましょう。その後における人事、労務に関する手続きに影響する可能性があるからです)

 昔、私が新社会人になった1990年代初めのころまでは、わずかでも「仕事はどんなにつらくてもやり遂げる。転職なんてもってのほか」という意識がありました。「三日、三月、三年(みっか、みつき、さんねん)」という言葉がありましてね、「どんなに辛くて嫌な仕事でも、三日はやってみろ。三日間過ごせたら、つぎは3か月だ。3か月、頑張ってやれることができたら、3年はやれるぞ」という意味です。石の上にも三年というのが、半ば従うべき意識として社会全体にも植え付けられていたころでもありました。

 もうそんな時代ではありません。「適応障害」という身体に重大な影響を及ぼす状態が的確に判断できる時代です。まして、うつ病になるまで追い込まれることは絶対に避けましょう。

<児童クラブの仕事は、とても難しいのです。なぜなら「人」が相手だから>
 そんなことはないと思いますが「子ども相手の仕事だから、自分は子どもが好きだから、きっとうまくやれるだろう」というぐらいの考えで働き始めた人であったとしたら、実のところ、「児童クラブの仕事はありとあらゆる仕事の中でも最難関に近いほどの難しさ」という隠された高い壁にぶち当たり始めたところかもしれません。
 児童クラブの仕事は極めて難しいのは何故なのか。それは、「人」が相手だからです。機械だったらボタンを押せば決められたとおりに動きます。計算なら、間違いなくデータを入力さえすれば計算機やパソコンが間違いなく計算してくれます。
 でも、児童クラブで関わる「子ども」と「保護者」、「学校や地域の人」、そして「同僚、同じ職場で働くパートやアルバイト」、それらすべて人間です。あなたの思うように動くことは絶対にありません。あなたが、「あの人はいい人だ」と思っても、その、あの人が、あなたのことを気に入っているとは限りません。むしろ嫌いに思っているかもしれませんし、実はよくあることです。
 しかも大事なこと、つまり子どもへの関わり方ー育成支援の手法や基本的な理解、価値観ーが、あなたと完全に一致することは、まずありません。当然ですよ。人間、「十人十色」といいます。100人の人間がいれば、100通りの考え方や価値観があります。完全に一致することは絶対ありません。
 人と関わる仕事は、本当に難しい仕事です。つまり「他者とのコミュニケーション労働」ということですが、これほど、神経を、メンタルをすり減らす仕事はありません。しかも児童クラブでは、何十人ものこども、その親、会社の人たち、そして同僚、クラブの職員仲間と、コミュニケーション能力をフル活用します。人との関りにまったく苦痛を感じない人でなければ、とても務まらない仕事です。
 子どもは当たり前ですがまだまだコミュニケーション能力が未発達です。死ね、うっせぇ、それってあなたの感想ですよね、なんて他者をずかずかと傷つけることばを楽しんで使うことだってあります。それが子どもだからです。そんな子どもたちの成長をどうやって支える?難しい仕事です。また、特に「距離感が近い」同じ職場の人との関係は、いったんこじれると最悪の状況になります。児童クラブは保育所などよりもっとはるかに「人間関係が濃い」職場です。「少人数かつ濃密な人間関係の職場」は、「とても過ごしやすいか」「非常に居心地が悪く苦痛でしかない」の、どちらかに偏りがちなのです。
 だから、児童クラブの仕事はとても難易度が高いのです。

 誰しもが、自分の思うような、自分の理想通りなようなことを、起きてほしいと思いつつも、決してそのようなことにはならない。だから、やむなく「妥協」したり「我慢」したり、考えをすり合わせて「調整」をするのです。まだ新人職員の立場であるなら、その調整の機会を与えられないことが多いものです。あなたが働く組織から「こうしましょう」「こうしてください」といろいろと言われて、それに従っていくうち、「ああ、これはできないかも」と、なっている可能性もありますね。

 とても難しい仕事を選んだのです。30年勤めても楽勝になる仕事ではありません。なので、「仕事そのものが向いていない」というのではなく、「この部分が自分にはとてもできそうにない」という技術的な悩み、手法や手段が分からないことの悩みであれば、心配ご無用なのですよ。それは遠慮なく、先輩や研修担当の係の人に質問しましょう。
児童クラブの仕事は「このボタンを押せば、こう動く」という解決法がない仕事なのです。エラーコードが表示されてマニュアルを見て処理できる業務ではありません。時間をかけて、自分なりに、または研修を重ねることで、「その状況に見合った」解決策を導き出せるだけの能力を自身の中に積み重ねていくことで、技術的な悩みは解消できる日が「来るかもしれません」。そのぐらい、難しい仕事です。裏返してみれば「そうか、誰しも実は悩んでいるんだな」と思える仕事です。
(でもその代わり、児童クラブの仕事はとても素晴らしい喜びや感動を得られる仕事でもあります。関わった子どもたちの成長をつぶさに感じ取れることは何物にも代えがたい感動です)

<具体的に、こうしてみよう>
・仕事に行こうとしても、体がついていけない。涙が出てしまう。吐き気がしてしまうほどの状態であれば、会社・職場にありのままを告げてください。自分で言えなければ親でもいいのです。「何も言わない」のだけは、やめましょう。雇う側も、あなたに何が起こったのかを知りたいのです。知ることで、必要な対応を取ることができます。特別に休暇を与えるのか、信頼できるメンタルクリニックを紹介できるのか、配置転換を検討するのか、いろいろな手段を取ることができます。
(もし、いろいろな手段を検討することなく「休んでもらっちゃ困る」しか言わないような会社、組織であれば、とっとと辞めてしまって正解。児童クラブは全国どこにでもあって、どこでも職員募集をしていると思って間違いないので、すぐに再就職先が見つかりますから)

 基本的には、「時間をかけて傷ついた心を回復させる」ことと「組織、職場が、あなたに対するより適切な職員研修や教育の在り方について考える」ことが同時並行で進んでいきます。そのためにも、時間が必要なのです。入職してそうそうに仕事を休職するなんてみっともない、なんて思う必要はありません。今の時代、よくあることです。

 「仕事はやりたい。ただ、どうしてもこのことは自分には辛い」ということは、会社や組織と一緒になって解決に向き合うことになります。ただ1つだけ、言わせてください。「その職場に長くいる人、その地位に就いている人であるからこそ、見えたり分かったりする物事が、世の中にある」ということです。あなたがまだ気づかない、見えていないことが、職場の先輩や上司には見えていることかもしれません。「自分の立場を最優先して当然。でも、自分でない人は、いったいどう考えているのか」という「相対的な思考」(わたしは「複眼的思考」と呼んでいます)も働かせてください。それは子どもたちを支援するときに欠かせない技法でもありますから。

<おわりに>
 今の時代は「頑張れ」と言わないことが正解のようですね。辛い心を追い詰めてしますから。でも私は、「この仕事をやり遂げたい!放課後児童支援員の仕事が好きだから」という人には遠慮なく「頑張れ!」と言います。何百回でも言います。頑張れば、今はできないこと、分からないことも、できるようになったり分かるようになったり「するかも」しれません。絶対にクリアできるとは言えません。人間相手の仕事ですから絶対はないから。絶対はないから、安心してもいいんですよ。
 そして、「仕事に行こうとすると涙が出る。足が動かない。起きれない。胃が痛い。食べ物が食べられない」という人には「うん、無理しないで。別の仕事を探そうよ」と言います。仕事で、健康を損ねることはないです。仕事はいくらでもあります。児童クラブの仕事が好きなら、通勤範囲に必ず雇ってくれるクラブがあるはずです。心配しないで大丈夫ですから。会社にありのままを話しましょう。その結果、退職になるか、あるいは配置換えになって再挑戦するかどうか、いろいろな展開があると思います。とにかく、会社と相談して決めていきましょう。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の発展を願い、種々の提言を行っています。そして個々の事業者、市区町村における放課後児童クラブの事業運営をサポートします。子育て支援と放課後児童クラブの運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営に加わることでの実務的な支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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