日本版DBS制度に関して国が就業規則の追加変更のモデル案を示しました。放課後児童クラブ(学童保育所)も対応を!

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! 「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く成長ストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 こども性暴力防止法による、いわゆる「日本版DBS制度」(2026年12月25日スタート)に関する、国の「こども性暴力防止法施行準備検討会」第8回がこのほど開催されました。この準備検討会の資料は、こども家庭庁のウェブサイトで入手できます。今回の会議では「支配性、継続性及び閉鎖性」というわたくし萩原的には興味津々のテーマがありましたが、運営支援ブログとしては、同制度の認定を目指す放課後児童クラブにおいては避けられない「就業規則類の変更」に関して、国が具体的な追加変更のモデル案を作成し、資料に掲載されていますのでそちらを紹介します。新たに人を採用する際の求人票についてもモデル案を提示しています。日本版DBS制度を受け入れるためにはもう今の時点で就業規則類の変更や、求人スタイルの変更が必要だ、ということです。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

※今回の運営支援ブログの内容は「就業規則」に関する内容です。就業規則については新規作成や内容の変更も含め、その取り扱いは難しい制度となっています。日本版DBS制度に取り組みたい児童クラブ事業者さんは、基本的に社会保険労務士や弁護士に相談して、日本版DBS制度に対応できる就業規則になるよう取り組んでほしいと運営支援は考えます。就業規則の改正や変更を専門家に依頼すれば費用が必要となりますが、それだけ「重要で難しい」ということです。
<おさらい>
 就業規則について簡単に説明します。厚生労働省兵庫労働局のウェブサイトに分かりやすい説明がありましたので、一部引用します。(就業規則
<職場において、使用者と労働者との間で、あらかじめ労働時間や賃金などの職場の労働条件や服務規律などをはっきりと決め、労働者に明確に周知しておくことが必要です。就業規則は、これらのことを文書にして具体的に定めたもののことです。>
<労働基準法では、パートタイマー等を含め常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、その事業場を所轄する労働基準監督署長に届け出ることを義務付けています。なお、労働者10人未満の事業場でも、就業規則を作成整備することが望まれます。>

 放課後児童クラブはとても小さい事業者も多いので、就業規則を作っていない事業者もあるでしょう。保護者会運営で働いている職員が最大でも5、6人という、1つの独立したクラブであるという場合です。とはいえ、上記の引用した説明からも、働き方のルールを定める就業規則は作成した方が良いです。また、保護者会運営の児童クラブで正規(常勤)職員が2人、週に1~5日、定期的に勤務シフトに入っている非常勤のパート、アルバイトが8人いるクラブでは「常時10人以上」になりますから、就業規則の作成が義務となります。
 職員の働き方を決めておく大事なルールです。日本版DBS制度をするしないに関わらず、児童クラブの事業者は保護者会や運営委員会など任意団体であっても、1クラブ1法人の小さな事業者であっても、ぜひとも就業規則は作っておきましょう。就業規則がないクラブで、仮に仕事に関してトラブルや問題があったら、それは労働基準法などの法律に従って解決、対応することになります。

 就業規則に関してはネット検索すれば厚生労働省の「モデル就業規則」をはじめとして、すでに出来上がった「ひな形」も多数入手できます。それらを利用するのももちろん良いのですが、就業規則というものは「その事業者、その会社にとって、目指すべき職員労働者の働き方」を決めるものですから、どの事業者も必ずや持っているであろう、それぞれの目指すべき雇用労働条件、雇用労働環境を反映させた「オリジナルの就業規則」を用意することがベストです。それには社労士や弁護士の専門家に依頼することが(お金はかかりますが)確実です。

 そして就業規則は、すぐに作れたり変更できたりするものではありません。いろいろな段階を経なければできません。変更したい場合の流れをごく簡単に示すと次の通りです。
「就業規則のどの部分を変更、追加や削除をしたいのかを把握する。その変更等で働く側はどのような働き方となり、事業者にどのような状況をもたらすことになり、事業者が目指す目的が確実に実現できるかどうかを、経営側がしっかり確認する」

「事業者側が就業規則の具体的な変更、改正作業に取り掛かる」

「雇っているすべての職員、労働者の過半数の信任を受けた代表者を決める。また、すべての職員を対象に、就業規則の変更について説明会をし、理解を得ることに努める。過半数の職員、労働者が加入している労働組合があればその労働組合の理解を得ることに努める」

「事業者が変更となった就業規則を決定する」
(※就業規則の変更に関して、職員側の同意や許可は絶対に必要ではありません。事業者側の案に職員側が賛成しなくても変更は可能です。ですが、児童クラブは事業者側と職員側(労働者側)の「距離感」が近いですし、何より、職員が安心して日々の業務に取り組めるためのルールですから、できる限り、働いている職員の理解、合意を得る努力をしましょう)

「就業規則変更届を作成する」(社労士に任せるのが安心です。社労士なら条件が整えば電子申請もできます)

「就業規則変更届と、変更した就業規則と、職員の意見書を、管轄の労働基準監督署に届け出る。正副つまり2部作成します。この意見書とは、職員の過半数代表者か、過半数の職員が加入する労働組合の代表者の意見を聴取した内容の書面のこと。」(なお、意見書の内容が「変更内容に同意できない」という結論であっても、届出は受理されます)

「事業者は、変更となった新たな就業規則について、その内容を公開し、すべての職員にしっかり説明する。いつでもその就業規則を職員が見られるようにしておく。」(これを「周知」といいます。就業規則を作ったり変更したりしても、この周知が不完全ですと、就業規則の効力は否定されることが裁判所によって示されていますから、とても大事なプロセスです)

 以上のことから、就業規則の変更はとても多くの順序を踏まえて行われる作業です。時間がかかるのです。児童クラブの場合、職員への変更内容の説明や変更した就業規則の周知をしようにも、職員が大勢集まれる機会はなかなか持てません。就業規則の変更案の作成にしても、例えば保護者(OBも含む)が集まって運営方針を決めている保護者運営系の児童クラブであれば、それが法人化されている事業者であっても、役員が集まれる機会が月1回、それも夜の数時間の会議時間しか取れないとなれば、変更案の協議検討でも数か月は必要です。
 よって、就業規則を丁寧に変更していく作業は、少なくても数か月、場合によっては半年は平気でかかってしまうことがあります。運営支援が、日本版DBS制度に対応しようとする児童クラブの就業規則変更を直ちにとりかかるように呼び掛けているのは、このことも踏まえています。

<なぜ、国はまだ制度が始まっていないのに就業規則モデル案を出したのか>
 この問いに関する答えは簡単です。「もう実質的に、日本版DBS制度がスタートしているから」です。どういうことでしょう。日本版DBS制度は2026年12月25日スタートです。まだ始まっていませんね。しかし、この制度は、児童クラブで働いている人に、仮に、特定の性犯罪の前科があることが判明した場合、勤務先を変更したり異動したりする必要が生じます。出勤を控えてもらうかもしれません。なるべくあっては困るのですがどうしようもない場合には解雇せざるをえないかもしれません。それらの方策を事業者が考えて実施するには、就業規則にルールが定められていないと、実施できないからです。
 また、制度が始まる前に児童クラブで職員を採用することもあるでしょう。なにせ、慢性的な職員不足の業界、業種です。新卒採用もあるでしょうが、年度内の中途採用はいつでもやっている業界です。新たに職員を採用する際に、特定の性犯罪の前科があることが分かっていれば採用をしないことができます。それについても事業者がルールを定めておいて、仮に内定を出した後に特定の性犯罪の前科があることが判明したので内定を取り消したいと思った場合、事業者がそのことを定めたルールをもっていなければどうしようもありません。求人に応募する人に、過去の特定の性犯罪の前科について事業者が確認することも、ルールで定めていれば可能ですが、定めていなければできません。

 ということで、日本版DBS制度において、職員の就業や配置に関して影響が出る可能性のある人を採用しないとか、特定の性犯罪の前科があることが分かったら配置転換などをうちの事業者は行いますよ、ということを定めておいてから新たな職員を採用した方が、後々、深刻な法的トラブルに巻き込まれる可能性を減らせますよ、という観点で、国は日本版DBS制度に対応する部分に関してモデルとなる就業規則の一部追加の案を公表したのです。
 職員の求人と新規採用は今も継続的に行われていることですから、日本版DBS制度の認定を目指す児童クラブにおいては、すでにもう、この制度は実質的に始まっているともいえるのです。

 市区町村から放課後児童健全育成事業の業務委託を受けて受託者として委託料を受け取っている、指定管理者となっている、または放課後児童健全育成事業を行っていることで市区町村から事業補助金を受け取っている児童クラブ事業者は、国が示した追加モデル案を利用する、あるいは自分のクラブの運営状況をより反映させた追加モデル案に修正するなどして、速やかに、就業規則に盛り込むことがとても大切です。
(現時点で日本版DBS制度を目指さないとしている児童クラブでも、国の示したモデル案を取り入れた就業規則にしておくことをお勧めします。それは、こどもへの性暴力のリスクを少しでも減らせる方策になるからです)

 ちなみに国が公表している、周知を呼び掛ける資料には次のように記載されています。
「特に、性犯罪前科が確認されるなど、性暴力のおそれがあると判断される従事者については、配置転換等の雇用管理上の措置が必要になるため、制度開始後のトラブル防止の観点から、
・就業規則等を整備して従事者に周知しておくこと
・採用選考の際に、誓約書等により性犯罪前科の有無を確認しておくこと
等の対応を、制度開始前のいまから事前に行っておくことが重要です。」
「いまから着手が必要なこと
就業規則の整備等(就業規則等を整備して従事者に周知すること、採用選考時に性犯罪前科を確認することなどが必要です。)
従事者への周知(制度開始に伴い、従事者が対応すべき事項(性犯罪前科の確認、研修受講等)の周知をお願いします。)」
「こども性暴力防止法に基づき、犯罪事実確認・防止措置を講じるに当たり、従事者とのトラブルを防ぐため、事前の準備が必要となります。
・犯罪事実確認の結果、性犯罪前科が確認されるなど、性暴力のおそれがあると判断される従事者については、防止措置として、雇用管理上の措置が必要となります。
・雇用管理上の措置として、具体的には、従事者の配置転換や業務範囲の限定、内定取消し、懲戒処分などが想定されます。
・制度開始後のトラブル防止の観点から、制度開始前のいまから、就業規則等の整備や従事者への事前の確認・伝達等を事前に行っておくことが重要です。」

 このように、国は何度も事前の対応を呼び掛けています。なおこども家庭庁は、2025年9月30日付で、都道府県と指定市に、この制度の周知依頼を市区町村にするよう通知しています。市区町村は速やかに、委託先や指定管理者、補助先の児童クラブ事業者に対して、日本版DBS制度への対応、取り組みが必要だと促してください。制度について不安があるようでしたら日本版DBS制度に取り組んでいる弁護士、社労士、行政書士を招いて説明の講師を担ってもらうのも良いでしょう。

<モデル案はこうなっている>
 以下、追加モデル案の一部を引用して紹介します。難しい書き方になっています。なかなか分かりづらいところがあるかもしれません。日ごろから給与計算や社会保険の手続きでお世話になっている社労士や、日本版DBS制度に対応しているとしている弁護士、社労士を検索して、まずは相談してみてください。全文はこども家庭庁のHPからDLできる資料に掲載されています。後の方のページにあります。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a4e23221-e7f1-4bd9-9acc-121ff3f17d93/0998702a/20251009councils-koseibo-jumbi-a4e23221-17.pdf
(以下、モデル案の抜粋)※モデル案は教育関係を対象にしているようですから児童クラブに当てはめるには部分的に修正が必要でしょう。
<対象業務従事者の範囲>(規定の参考例:認定事業者等向け)
(教育保育等従事者)
第○条 当法人の職員のうち、次の各号に掲げる者は学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第 69 号。以下「こども性暴力防止法」という。)第2条第6項に規定する教育保育等従事者に該当するものとする。ただし、第四号及び第五号に掲げる者については、業務を通して児童等と接する機会のない者を除く。
一 教室長
二 事務部長
三 講師
四 事務員
五 警備員

<児童対象性暴力等及び不適切な行為の禁止>※長いので一部のみ掲載です。国の資料に「服務規律等を定めた文書(就業規則等)において、①こども性暴力防止法に基づく防止措置の対象となる児童対象性暴力等やそれにつながる不適切な行為の範囲、②教育、保育等を提供する場においてこれらの行為を行うことは本法の趣旨や規定に反する行為であり厳格な懲戒処分の対象になり得ることを定め、従事者に周知・伝達することが適当です。」とあります。
(児童対象性暴力等及び不適切な行為の禁止)
第○条 職員は、こども性暴力防止法第2条第2項に規定する児童対象性暴力等として次に掲げる行為をしてはならない。
一 児童等(こども性暴力防止法第2条第1項に規定するものをいう。以下同じ。)に性交等(刑法(明治 40 年法律第 45 号)第 177 条(不同意性交等)に規定する性交等をいう。以下この号において同じ。)をすること又は児童等をして性交等をさせること(同法第 177 条(不同意性交等)の罪に当たる行為、児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)第 34 条第1項第6号の淫行罪に当たる行為及び条例により禁止される性交等に当たる行為を含み、児童等から暴行又は脅迫を受けて当該児童等に性交等をした場合及び児童等の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情がある場合を除く。)
二 児童等にわいせつな行為をすること又はわいせつな行為をさせること(刑法第 176 条(不同意わいせつ)の罪に当たる行為、児童福祉法第 34 条第1項第6号の淫行罪に当たる行為及び条例により禁止されるわいせつな行為に当たる行為を含み、前号に掲げるものを除く。)
(省略)
2 職員は、前項に規定する児童対象性暴力等につながり得る不適切な行為として次に掲げる行為をしてはならない。
一 児童等と私的な連絡先(SNSアカウントを含む。)を交換し、私的なやり取りを行うこと
二 私的に児童等と事業所外で会うこと
(各事業者ごとに詳細に定めることになります)
X(最後の号) その他前各号に準ずる児童対象性暴力等につながり得る不適切な行為
3 職員は、前二項に掲げる行為を行い、又は当該行為を理由として逮捕若しくは起訴された場合は、法人に速やかに報告しなければならない。

<犯罪事実確認の手続に応じる義務>※国の資料に、「犯罪事実確認を確実に履行するため、服務規律等を定めた文書(就業規則等)において、従事者はこども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続等に対応しなければならないことを定め、従事者に周知・伝達することが適当です。従事者が当該規定に違反した場合、懲戒事由に定める就業規則違反や業務命令違反等に該当することになります。」とあります。
(犯罪事実確認の手続に応じる義務)
第○条 職員は、法人の指示に従い、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続等に対応しなければならない。

<試用期間の解約事由>※国の資料に「犯罪事実確認の結果、従事者に特定性犯罪前科があることが確認された場合など、防止措置として、従事者の配置転換や業務範囲の限定、内定取消しや試用期間中の解約、普通解雇、懲戒処分など雇用管理上の措置が必要です。」とあります。
(試用期間)
第○条 職員として新たに採用した者については、就労開始日から○か月間を試用期間とする。
〇 採用時までの申告事項が事実と異なり、学歴、職歴、資格、犯罪歴その他の重要な経歴の詐称があると認められた場合その他職員として不適格であると認めた場合は、試用期間中に解雇することがある。

<懲戒事由>※実務上は最も難解な部分です。労使トラブル、訴訟にもなりやすいところです。国の資料には長めの注釈があり、「最高裁判例において、使用者が労働者に対し、懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則において、懲戒事由及び懲戒種別を定め、その就業規則を労働者に周知する必要があるとされています(省略)。したがって、就業規則に定めのない懲戒種別や懲戒事由による懲戒処分はできません。
○こども性暴力防止法に基づく防止措置として懲戒処分を行うに当たり、その有効性を巡るトラブルを防ぐため、就業規則に、懲戒事由として次に掲げる内容を定め、従事者に周知することが適当です。
①「刑罰法規の各規定に違反する行為が認められた場合」、「企業秩序を乱した場合」等の一般的な刑罰法規違反・企業秩序義務違反
②「正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかったとき」等の一般的な業務命令違反
③「こども性暴力防止法上の『児童対象性暴力等』に該当する行為を行ったとき」、「児童対象性暴力等につながる不適切な行為を行ったとき」
④重要な経歴の詐称
(懲戒の事由)
第○条 職員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、【けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職又は懲戒解雇(注:就業規則の別条に定める懲戒の種類を列挙)】とする。
○ 法人内の秩序又は風紀を乱したとき。
○ 本規則その他法人の定める規程に違反したとき。
○ 業務上の指示・命令に従わなかったとき。
○ こども性暴力防止法に規定する児童対象性暴力等に該当する行為又はそれにつながる不適切な行為を行ったとき。
○学歴、職歴、資格、犯罪歴等の重要な経歴を詐称して雇用されたとき。
○ 刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行ったとき。
○その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

<求人においても、日本版DBS制度対応に切り替えよう>
 国は資料で次のように記載しています。
「採用選考に際しては、雇用管理上の措置の有効性を巡るトラブルを防ぐため、
①内定通知書等に内定取消事由として、就業規則に試用期間中の解約事由や懲戒事由等として、それぞれ「重要な経歴の詐称」等を定めて周知しておく
②採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科がないこと等を明示する
③誓約書、履歴書等を通して、特定性犯罪前科の有無等を書面等で明示的に確認する
ことで、「重要な経歴の詐称」を理由とする雇用管理上の措置の適法性が確保されるような対応を行うことが適当です。上述の事項に対応した上で、求職者に特定性犯罪前科の有無を事前に確認した結果、本人から特定性犯罪前科がない旨の申告があったものの、実際には特定性犯罪前科があった場合、内定取消事由や懲戒事由等としての「重要な経歴の詐称」に該当するものと考えられます。」
「認定を受けた民間教育保育等事業者(認定事業者等)についても、犯罪事実確認の結果、従事者に特定性犯罪前科があることが確認された場合などは、防止措置として、従事者の配置転換や業務範囲の限定、内定取消しや試用期間中の解約、普通解雇、懲戒処分など雇用管理上の措置が必要であるところ、「重要な経歴の詐称」を理由とする雇用管理上の措置を行うに当たっては、それに先立つ採用選考過程において、同措置の適法性が確保されるような対応をしておくことが適当です。」
「民間教育保育等事業者のうち、こども性暴力防止法に基づく認定申請を予定している事業者については、同申請を行うことを予定している旨を記載するとともに、「募集要項・求人票(例)―学校設置者等(保育所)の場合」の「特記事項」欄と同様の記載を入れることが適当です。」

 要は「トラブルになりそうな方を採用しないために、このようにしてください」ということです。

「特記事項」には次のような記載がモデルとして提示されています。
「・当社は、認可外保育事業について、令和8年 12 月 25 日までに施行予定の学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第 69 号。以下「こども
性暴力防止法」といいます。)に基づく認定申請を行う予定です。
・当社が認定を受けた場合、本業務へ従事するに当たっては、こども性暴力防止法に基づき、特定性犯罪の前科の有無を確認するための犯罪事実確認が必要となります。
・特定性犯罪の前科がある場合(特定性犯罪事実該当者の場合)は、こども性暴力防止法に基づき、本業務に従事させないこと等の措置を講じる必要があるため、当社の採用条件の一つとして、特定性犯罪の前科がないことを求めることとしています。
・このため、予め、採用選考過程において、誓約書や履歴書等により、特定性犯罪の前科の有無を確認いたします。
※「特定性犯罪」、「特定性犯罪事実該当者」の内容は別紙参照条文をご参照ください。」
(別紙参照条文もダウンロードできる資料に含まれています)

<誓約書も>
 国は資料で「誓約書を通して、特定性犯罪前科の有無等を書面等で明示的に確認することが適当です。」としています。要は、「書面で過去の前科を確かに確認しましたよね。前科があることに気づかなかったのは会社の責任ではなくて、そちらの行為の責任ですよね」という念押しですね。
「私は、貴法人の採用選考に際し、以下の事項を誓約いたします。
1. 私は、裏面記載の、令和8年 12 月 25 日までに施行予定の学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第 69 号)第2条第8項に規定する特定性犯罪事実該当者ではありません。
※ なお、本誓約書署名時に同法第2条第7項第6号が委任する政令が制定されていない場合であっても、青少年健全育成条例や迷惑防止条例等の条例における同号イからニに定める行為に対する罰則について、前科がないこと(当該前科に係る特定性犯罪事実該当者に該当しないこと)を、本誓約書をもって誓約いたします。
2. 採用選考の過程で提出する書類及び申告する内容はすべて事実であり、事実と異なる申告は一切いたしません。」

<内定通知書にも!>
 国は資料で「内定取消事由として「重要な経歴の詐称」及び「犯罪事実確認に必要な手続等に対応しないとき」を明示することが適当です。なお、内定取消事由は、内定後に提出させる誓約書に記載することとしても差し支えありません。」としています。
(記載の参考例)
「 内定取消事由
① (他の事由
②(他の事由)
○ 学歴、職歴、資格、犯罪歴その他の重要な経歴の詐称があるとき。
○ 法人から対応を指示された学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第 69 号)に基づく犯罪事実確認に必要な手続等に対応しないとき。
○ 犯罪その他社会的に不相当な行為を行い従業員として不適格と法人が判断したとき。
○ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき。」

 ここに記したのは、ごく一部です。それほど、日本版DBS制度への対応は膨大な知識と作業が必要となります。「書類を揃えて申請すればいいんでしょ?」ではとても済まないのが、この日本版DBS制度への対応です。そのことをぜひ、市区町村は区域内の児童クラブに丁寧に伝えて、この制度に対応するかどうかも含めて、児童クラブ側の取り組み対応を促してほしいと運営支援は希望します。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也