日本版DBSに関する検討会(第2回)で出された、放課後児童クラブ(学童保育所)側が留意しておきたい実務上の課題を紹介②
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたらSNSに投稿してください! 口コミ、拡散だけが頼みです!
こども家庭庁は2025年5月26日に、「こども性暴力防止法施行準備検討会」(第2回)を開催し、その資料が同庁ホームページで公表されています。今後策定されるガイドラインの中身を左右すると考えられるため、検討会で出された内容を把握しておくことは極めて重要です。今回の検討会に関するものとして公表された資料の中で、放課後児童クラブの事業者が意識しておきたい点を、前日に続いて紹介します。前回は「性暴力等のおそれ」に関する事項でした。今回は雇用に関する事項となります。なお、いわゆる日本版DBSに関連する事項については必ずこども家庭庁が公表している資料を確認しておきましょう。当ブログではごく一部の情報しか紹介できていませんので、その点はくれぐれもご了承ください。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<「労働法制等を踏まえた留意点」の意味は必ず押さえておくべき>
今回の準備検討会では、「こども性暴力防止法の安全確保措置②(犯罪事実確認)」と、「こども性暴力防止法の安全確保措置③(防止措置)」、そして「こども性暴力防止法の情報管理措置」の3点がテーマとなっていました。今回の運営支援ブログでは、「こども性暴力防止法の安全確保措置③(防止措置)」の資料に記載されている「労働法制等を踏まえた留意点」を主に取り上げます。大事なことは、この資料15ページに記載されているように「対象事業者が、「おそれ」の内容に応じて防止措置として雇用管理上の措置を講じる場合は、労働法制等を踏まえたものとすることが必要」ということです。日本版DBSだからといって問答無用で社員や職員、スタッフを解雇するということはできないよ、採用を取り消すということはできないよ、ということです。労働法関係の法令の定めや、これまでに積み重ねられている労働関係事件判例から当然、外れることはない、ということです。このことは、児童クラブの現場において必要となるルールを定めたりこれまでのルールを変更したりする作業と、その後の具体的な事例への対応が、極めて難しくなることを意味しています。弁護士、社会保険労務士という法律家や労働関係の専門職に相談して取り組むことが必要となるでしょう。
<運営支援が重視するいくつかの論点を紹介>
「新規採用の場合の内定取消し」(資料16ページ目):犯罪事実確認の結果、新たに採用した人物が特定性犯罪事実該当者であったとき、児童クラブ事業者はどういう対応が考えられるでしょうか。まず、「応募してきた人物が、該当者であることを隠していた場合」、つまり犯歴の申告が無い場合は、「内定取消し事由としての「重大な経歴詐称」に該当するものと考えられる。」と示しています。犯歴は求人に応募してきた者に示されるので、求人応募者が隠していたことで採用に至っても、当然ながら事業者にはすぐにバレるので、その時点で内定取り消し、採用取り消しが可能であるということを示しています。おそらく、そのような方向になるでしょう。
問題は、「特定性犯罪前科の有無を事前に確認していない場合」です。資料には、「「重大な経歴詐称」には該当せず、犯歴のみをもって直ちに内定取消しを行うことの合理性・相当性が認められるとは考えにくい(別業務での採用の可能性なども検討した上で、採用困難な場合に、内定取消しを検討することになると考えられる)。」と記されています。これはつまり、児童クラブ事業者が、求人に応募してきた者の犯歴の有無を事前に確認しなかった場合は、犯歴があることが分かった場合でもそれだけを理由に直ちに採用を取り消す、内定を取り消すということは難しいよ、ということです。こどもと接しない業務に就けることなどを考える「ワンクッションを置け」ということです。児童クラブの現場は、こどもと接しない業務がほとんど存在しないので、直ちに採用を取り消す、内定を取り消すということが必要となるでしょうがそうであっても「直ちに内定取り消しの合理性、相当性は認められないだろう」ということです。これは、実務上、かなりややこしい。結論は採用できないということで変わりなくても、そこに至るまでの種々のコストがのしかかってくる可能性があるということです。
資料には、事業者の対応として考えられる方策がいくつか掲載されていますので転載します。
(事業者の対応)
①内定通知書、就業規則等に、内定取消し事由や試用期間の解約事由として「重大な経歴詐称」等を定めて説明しておく
②採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科がないことを明示する
③履歴書、採用面接、内定時の誓約書等を通して、特定性犯罪歴の有無を書面等で明示的に確認する
ことが求められる。(転載ここまで)
→ここに記載されていることは、児童クラブ事業者であれば絶対的に必要な対応策だと運営支援は考えます。内定通知書や労働条件通知書、もちろん就業規則にも、内定取り消し、契約の取り消しの根拠として、特定性犯罪前科の犯歴を隠していたという「重大な経歴詐称」を明記することが欠かせない、ということです。当然、求人の応募には、特定性犯罪前科の犯歴が無いこと、を明記しなければならないということです。そして、「事業者は、特定性犯罪歴があるかどうかを書面で必ず確認すること、その確認をする根拠を組織内のルール、就業規則等で規定しておく」ということが必要です。
児童クラブの事業者は、同趣旨の内容を今から行っていくことが必要です。まだ日本版DBS制度は始まっていないのでこの制度に関してどうのこうのとは求人広告、採用条件には記載できませんが、単純に、こども性暴力防止法で特定性犯罪と提示されている罪に関してまだ罪が消滅していない方は採用できない、ということを示しておけば良いでしょう。すでに雇用している人には、日本版DBS制度が始まったら対応するとして、新規採用する人に対しては今のうちから条件を付けておきましょう。いったん雇ってしまったら、解雇するとか配置転換をするというのは、実はとても難しい、労使トラブルにすぐ発展して訴訟に発展するかのうせいがある、ということを踏まえると、今のうちからやれることはやっておこう、ということです。
制度に見合った就業規則の作成や変更、内定通知書、労働条件通知書の作成や変更については、弁護士と社会保険労務士が専門職として担当できます。
「現職者の解雇」(資料17ページ目):資料には「(採用過程において特定性犯罪前科の有無を確認している等の事情がない限り)一般的に、犯歴のみをもって直ちに解雇することは難しいと考えられる。」とあります。個別の事案で個々の事情をもって、解雇に合理性があるか、解雇に必要性があるかどうかを、判断されるということになります。簡単に言えば、採用過程における重大な経歴詐称や、その業務の性質と、対象者の経歴の性質との関係を踏まえて解雇が妥当かどうかの判断がなされる、ということです。
労働者は歴史的経緯を踏まえその地位や身分を手厚く守られています。よって「本来は」簡単にクビ、解雇されることはないのです。ないのですが、現実問題として、平然とクラブ職員をすぐにクビにする、解雇するという、とてつもなくどうしようもなく最悪の経営者が存在しています。ですので、運営支援が心配するのは、気に入らない職員がいる、あるいは何らかの事情で気に入らなくなった職員が現れた場合に、最悪のクズ経営者が、こどもや保護者からの訴えをでっていあげたり拡大解釈したりして「お前は今すぐクビだ」と宣告して平然としている事態が増える可能性があることです。特に事業規模が小さい、零細規模の児童クラブで経営者、運営責任者が我が物顔で振舞っている児童クラブで働いている人は、この点、自分の仕事と生活を守るための備えを考えておく必要があると、運営支援は考えます。
資料には事業者の対応として次のことが挙げられているので、転載します。
① 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪前科がないことを明示する
② 履歴書、採用面接、内定時の誓約書等を通して、特定性犯罪歴の有無を書面等で明示的に確認する
③ ①②を行っていない現職者については、施行・認定までに特定性犯罪歴が判明した場合は、対象業務に従事させることができないことを周知・伝達する
④犯罪事実確認により、特定性犯罪前科があった者について、①②を行っていない場合は、まずは配置転換を検討することが求められる
※仮に、配置転換の措置を講じることを十分に検討したが、事業所の規模や業務内容から、法に基づく防止措置を履行するためには解雇以外の選択肢が取り得ないという事情の下で普通解雇を行い、当該普通解雇の有効性が司法の場で争われる場合、個別の事案毎に具体的な事実関係に基づいて客観的合理性・社会的相当性の観点から判断されることとなるが、この判断において、当該事情は普通解雇の有効性を基礎づける一要素として考慮されうる。(転載ここまで。なお太字は当ブログが修飾しました)
→世の中には「絶対に大丈夫」ということはないので、児童クラブ事業者であればもれなく、すでに働いている人に対して日本版DBS制度による解雇についてもルール化しておくことが必要です。上記の①と②は分かりやすいですね。③は日本版DBS制度に盛り込まれる内容ですが、何度も書いているように、児童クラブには、こどもがまったく存在しない対象業務というものが、他の事業をやっている事業者でない限り、基本的にありません。世の中にたくさんある児童クラブ運営事業者は、児童クラブの運営だけを行っているのでこどもに関わらない業務が無いのです。ですので、①と②をしっかりやっていないと③は自宅待機させるしかなく、その分も給料を支払うことになります。ですから、「もう今のうちに①と②の内容はやっておきましょう」ということです。
そして④です。①と②をやっていない場合は、特定性犯罪歴があることが判明したとしても、それを事由に直ちに解雇することが難しいので、「まずは配置転換」を考えようということです。これも何度も言っているように、児童クラブの専業事業者であれば事実上不可能です。直ちに解雇せざるを得ない。結局は認められる可能性が高いのでしょうが、仮に裁判になったらそれだけで児童クラブの小さな事業者は事業の継続ができるかどうかの瀬戸際に追い込まれます。決して安易に考えてはいけません。「だって特定性犯罪歴があるんでしょ、だからすぐに解雇できるでしょう」とは考えないでください。しっかりと事前の準備をしておけ、ということです。
「※」印以降の文章に注目してください。「事業所の規模や業務内容から、法に基づく防止措置を履行するためには解雇以外の選択肢が取り得ないという事情の下で普通解雇を行い」とありますね。まさに事業規模の小さな児童クラブ運営事業者が当てはまります。配置転換ができない場合、特定性犯罪歴該当者には辞めてもらうしかない場合、その者に現に性暴力を行っているなどの事情が無ければ、普通解雇という道が現実的に唯一の事業者側が取りうる対応となるでしょう。場合によっては「確かに数年前、1回だけ罪を犯したことがある。でもその後は改心してまじめに業務に取り組んできたのに、解雇されるのは納得がいかない」として裁判で争われることも可能性として大いにあるでしょう。その場合、児童クラブ事業者が用意している各種のルールに、日本版DBS制度による対応について細かく規定し、それを周知している場合であって、日本版DBS制度が始まったら特定性犯罪歴がある人はこどもと関わる仕事には就けませんから制度が始まるまでに事業者に申し出てくださいね、ということを職員に呼びかけていても、その呼びかけに応じなかった場合は、普通解雇に処したときに事業者側に有利な事情となる可能性がある、ということです。逆に言えば、事業者側が事前の対応をしなかった場合は日本版DBS制度が始まったからと言って特定性犯罪歴がある人をすぐに解雇できると思わないでくださいよ、という趣旨のことを記しています。
「在籍する児童等やその保護者から、児童対象性暴力等の被害の申出があった場合」(資料18ページ目):これには「労働者保護の観点からは、事実があることを前提とした懲戒等の処分や、確定的な配置転換等の簡単には修復できない対応をとることはあってはならない」と記されています。つまり、事実関係の調査や認定を行う前に、拙速な対応をしてはならないことを示しています。事実が存在しない可能性だってあるからです。
これもとても重大で難問です。「児童クラブ事業者が、迅速に、かつしっかりとした調査を行う姿勢を持っているか」「児童クラブ側ができる限り事実を解明しようという本気で調査を行うことが、能力的にできるか」、そして「ろくでもない児童クラブ経営者が悪意を持って気に入らない職員を追い出すことに悪用しないか。また、臭いものにふた、のように、少しでも被害の申し出があったことに過剰に反応して直ちに職員をクビにしてしまうのではないか」という疑問が、運営支援にはあります。それだけ、誠実に運営しようという児童クラブ事業者ばかりではない現実を知っているからです。
資料では、事業者の対応として、「必要な事実確認ができるまでの間の暫定的な措置として、被害が疑われる児童等との接触を防止するための対応(自宅待機命令等)を行った上で、速やかに事実確認を行い、確認結果に基づく適切な対応を行う」と記載されています。その通りなのですが、いわゆる「(法令やルールにのっとった)組織運営」に不慣れな児童クラブ事業者が多いので、この簡単な対応策が実現できるかどうかが運営支援には不安です。私(萩原)は、児童クラブの世界は「ゲマインシャフト(共同体」的な性質が色濃く、「ゲゼルシャフト(機能体)」的な組織の体質が苦手である、とみています。「こどもを真ん中に職員と保護者が手を取り合っていきましょう」「こどもが大事ということを共有して、職員同士の連携を大事にしていきましょう」というのは、人と人同士が「理念」「目標」を絆としてつながっていく共同体のカタチです。まさにNPOはその形の法人化であるわけですが。ところが現実の組織運営、児童クラブも収入を得て健全育成事業を役務(サービス)としてこどもと保護者に継続して提供している「事業(ビジネス)」ですから、ルールや決まりに従って組織が動いていくことが必要、つまり機能体である必要があるのです。ところが、法令やルールにのっとった組織運営が児童クラブ、とりわけ地域に根差した育成支援を大事に大事にしていきたいと思っている人たちには、どうもしっくりこない。勢い、人間同士の信頼関係を基本にした組織運営がなされていくのですね。
コンプライアンスが重視ということなのですが、「法令順守」がすべてにおいて基本であることがどうにも理解されていない傾向が色濃いのが児童クラブの世界ということです。
「調査等の結果、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断される場合」(資料18ページ目):この場合、こどもへ性加害をした社員、職員、スタッフに、児童クラブ事業者は何らかの処分を下すことになるでしょう。最も重い処分は懲戒解雇であり、次いで普通解雇(諭旨解雇も含む)、出勤停止や減給ということになっていくでしょう。資料にも明記されていますが、使用者(経営側のこと)が従業員、労働者に懲戒処分を行うには「しっかりと事由が規定されていること。ルール化されていること、それがすべての職員やスタッフが知っていること」が大前提です。就業規則(もしくは就業規則の一部となる「懲戒規程」のような独立したルール)に、「これこれこういう場合は、こういう処分にするよ」と、事前にルール化されていなければ処分はできない、しかもそのルールが職員たちに知られていることが必要、ということです。
「懲戒処分は、懲戒種別と懲戒事由を就業規則に定め、その就業規則を周知している場合に行うことができる。裁判例では、懲戒処分としての解雇について、行為内容、事業内容、その者が従事する業務の性質なども踏まえて許容されない場合に、社会通念上の相当性を認め、有効と判断している事例がある。」と資料で記されています。では事業者の対応ですが、これはまさに、超超重要ポイントです。資料ではこう記されています。
「懲戒事由として、就業規則に「刑罰法規に該当する行為を行ったと認められる場合」、「こども性暴力防止法上の「児童対象性暴力等」に該当する行為を行った場合」、「企業秩序を乱した場合」等を定め、従事者に対して予め周知・説明しておく。また、服務規律等を定めた文書(就業規則等)において、①本法に基づく防止措置の対象となる「児童対象性暴力等」の範囲、②教育や保育を提供する場においてこれらの行為を行うことは本法の趣旨や規定に反する行為であり厳格な懲戒処分の対象になりうることを予め周知・伝達する。」
→これはつまり、就業規則等を必ず修正して日本版DBS制度に対応する決まりごとを盛り込みなさい、ということであって、かつ、職員の服務に関して別に規定を設けている場合は、その服務に関する規定もちゃんと変更しておき、いずれもすべての職員にしっかりと伝えておきなさい、ということです。就業規則は労働者への周知が大前提で、周知が不完全だったがために使用者側の処分が違法とされたという裁判所の判断は珍しくありません。ただ就業規則を作った、本部のパソコンにデータで保存されている、では効力を発揮しません。日本版DBS制度に対応した就業規則類の変更や、その運用の方法について、児童クラブ事業者が弁護士や社会保険労務士に相談する必要性が、まさにここにあるのです。
※日本版DBS制度には関係ありませんが、児童クラブにおける職員の雇用について私が重要問題と考えていることに、「アホな事業者による安易な解雇」と並んで、いやそれ以上に「職員の意思による退職がとても難しい」ことがあります。児童クラブ業界は慢性的な職員不足ですから職員を雇っている側は職員になるべく退職してほしくない。それがゆえに、退職の引き留めとか、難癖をつけて退職を認めないということが横行しています。特に「こどもを裏切るのか」「こどものことを思うと悲しくないのか?」として、こどもとの関わりを理由にして引き留める、つまり「やりがい搾取」を平然と行う、程度の低すぎる児童クラブ事業者が問題なのです。低賃金で休みも休憩もろくに与えない程度の低い児童クラブ事業者からどんどん職員が辞めていけば、そのような程度の低い事業者はいずれ事業が続けられずに廃業したり倒産したりするでしょう。それでいいんです。そして有能な職員が、まともな児童クラブ事業者にどんどん移っていけば、まともな児童クラブ事業者が安定して事業を続けられることになりその規模も拡大できるので、結果的に業界全体の質の向上につながるはずだと、運営支援は考えています。このことは、改めてブログのテーマとして取り上げますし、私(萩原)の「がくどう」小説シリーズでいずれ描かれることでしょう。
「調査等の結果、児童対象性暴力等には該当しないが不適切な行為が行われたと合理的に判断される場合」(資料19ページ目):明確に「アウト!」ではない場合ですから、どういう処分が適切なのかの判断がより難しくなります。このことも踏まえた社内、組織内のルール作りが必要となるでしょう。資料には、「法令上禁止されていない行為などの場合、処分が社会通念上の相当性を有するか否かはより厳格に判断される傾向にある。一方、裁判例では、非違行為を理由とした指導や命令に従わず、繰り返し同様の不適切行為を行うなどの悪質な業務命令違反がある場合に、それを理由として行われる懲戒処分について、有効と判断した事例がある。」とあります。これは、不適切な行為だからといってすぐにクビにはできないし、例えば減給や出勤停止といった厳しい懲戒処分を下そうにも安易に判断できなませんよ、ということです。ただ、何度も何度も注意や指導、業務命令を出しているのに職員側が従わず不適切な行為を繰り返した場合には、懲戒処分が有効となることもありますよ、ということです。「一発アウト!」は認められないと思ってくださいね、ということです。
資料には事業者の対応として、「不適切行為が初回かつ比較的軽微なものであるような場合は、まずは、当該行為を繰り返さないように指導を行い、注意深くその後の経過観察を行う等、段階的な対応を行うことも考えられる。」とあります。その通りなのですが、児童クラブの世界に色濃く残る、「こどもに不適切な行為をした職員を、その人格も含めてすべて信じない、拒否する、受け入れないという流れに一気に傾く傾向」が、運営支援には不安です。資料が示していることは、改善を目指して事業者側が対応しましょうということですが、児童クラブの世界の「こどもに関する極度の潔癖性」から、「注意や指導をすっ飛ばして直ちにやめさせてくれないと、一緒に働く側としては気持ち悪くてやってられない」という意識を持つ職員がきっと多いだろうということであり、職員のモチベーション維持に悪影響が出るだろうなという懸念です。この点もまた、児童クラブ職員たちに対する教育研修が必要でしょう。
資料20ページ目には、上記のことを簡潔にまとめた表が掲載されていますので、児童クラブにおいて働いている人、運営に関わっている人たちは、必ず目を通しておきましょう。また21ページ目には、特に事業者側に求められる対応が列記されていますので、児童クラブを運営する側は必読です。一言で言えば「採用取り消しや解雇などの懲戒処分が必要となる事態に備えて、事業者内部のルールに、しっかりと事前に定めておいて周知させておきなさい」ということです。
今回はここまで。なお、こども家庭庁における検討会資料があるページのURLを張り付けておきますが、いまだにこのブログの仕組みに自信がないのでたどりつけなかったらごめんなさい。(https://www.cfa.go.jp/councils/koseibo-jumbi/d4cfb3a5)
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弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
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(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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