敬老の日。放課後児童クラブ(学童保育所)で頑張りたいシニアの皆さんに理解していただきたいことの、お願いです。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン (https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。ぜひ手に取ってみてください! お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 本日(2025年9月15日)は敬老の日です。ハッピーマンデーで第3月曜日が敬老の日となってからもう20年以上過ぎるようですが、昭和生まれには「敬老の日は9月15日、体育の日は10月10日だろ!」という感覚がこびりついています。そうなんです、人生もベテランになると、過去の常識がいつまでも意識にこびりつきやすいもの。今回はシニア層のみなさまに、これから児童クラブで働くことになる際の留意点をお伝えします。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<シニア層が児童クラブを支える存在>
 児童クラブだけではありませんが、今の日本は、人口の多くが高齢者世代に入っています。内閣府の「令和6年版高齢社会白書」から引用します。
「我が国の総人口は、令和6年10月1日現在、1億2,435万人となっている。65歳以上人口は、3,623万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も29.1%となった。」
「65歳以上人口のうち、「65~74歳人口」は1,615万人(男性773万人、女性842万人)で総人口に占める割合は13.0%となっている。また、「75歳以上人口」は2,008万人(男性799万人、女性1,209万人)で、総人口に占める割合は16.1%であり、65~74歳人口を上回っている。」

 つまり日本の人口の13%が65~74歳で、16%が75歳以上。65歳以上の人口は合わせて29%。日本人の10人のうち3人が65歳以上なんですね。そりゃ、あらゆる職場で65歳以上のシニア層がバリバリと活躍してもらわねば、社会が回らないのも当然です。まして、常に人手不足の児童クラブですから、シニア層の活躍が本当に必要です。数はそう多くは無いですが、シルバー人材センターが児童クラブを運営している地域もあります。

 実際に、働いているシニア層は増えています。「令和6年版高齢社会白書」には、次のように記載されています。「令和5年の労働力人口は、6,925万人であった。労働力人口のうち65~69歳の者は394万人、70歳以上の者は537万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.4%と長期的には上昇傾向にある。また、令和5年の労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)を見ると、65~69歳では53.5%、70~74歳では34.5%となっており、いずれも上昇傾向である。75歳以上は11.5%と
なり、平成27年以降上昇している。」
 何やら難しいですが、簡単にいえば、60歳代後半の人で働ける人は半分がすでに働いていて、70歳台前半は10人のうち3人が働いていますよ、75歳以上でも10人に1人は働いていますよ、ということです。

 働く理由は様々でしょう。少しでも収入を増やして生活にもっと余裕を持たせたい人もいれば、年金や生活費の足しにしないと暮らせない人もいるでしょうし、経済的には何ら問題はないけれども社会貢献をしたい、社会活動につながっていたいという人もいるでしょう。

 年金受給者の就業意欲を促進するであろう施策が実施されることを紹介します。厚生年金を受け取っている人が働いている場合、勤務先からの給料が一定限度を超えると、超えた分の厚生年金が半額になるという制度があります。これを「在職老齢年金制度」というのですが、この「半額になる」水準が2026年度から、かなり引き上げられることになりました。とても難しい制度ですが、厚生年金を受給している世代の方はしっかりと理解しておきましょう。
 今までは「50万円」がその水準でした。勤務先から受け取る給料の額(※この額は、賞与をもらっている場合はその賞与を12等分した額が上乗せされます)と厚生年金の額(※基礎年金つまり国民年金は含まれません)の合計が50万円を超えた場合、厚生年金のうち超えた分の額が半額となってしまうのです。例えば、勤め先から45万円の報酬を得ていて、厚生年金だけで10万円をもらっている場合は、合計で55万円です。50万円から5万円、超えていますね。その5万円の半額となる2万5000円が支給停止となってしまうという制度です。

 これが、2026年度から緩和されて、半額となるラインが62万円になります。2026年度に一気に62万円になりそうな雰囲気です。これはどういうことかといえば、厚生年金が満額もらえなくなることを恐れて働き控えしているシニア層も、気にせずどんどん勤務時間を増やせる、ということです。およそシニア層は時給制で働いているでしょうから、勤務シフトで勤務時間をどんどん増やせますよ、ということです。

 誤解を招くことを恐れずにあえて書きます。この制度に影響を受けるのは、厚生年金を受け取りながら働いている勤務先から受け取る報酬が多い人だけではなく、厚生年金の受給額がそもそも多い人も含まれます。厚生年金の受給額が多い人というのは、それだけ、高い報酬で長年働いていた人が真っ先に思い浮かびます。組織において高い地位で責任のある立場で働いていた人がそうなりやすいでしょう。そういう人は、ごく少数において「私は大企業の部長だった!」とやたら虚勢を張るつまらない人もいますが、多くは知的で冷静で視野が広く、進取の気概に富む方です。そういう人こそ児童クラブで活躍してほしいのです。ですからこの、在職老齢年金制度の見直しで、年齢が高くても柔軟な思考を持っている方にぜひ、児童クラブでもっと働いてほしいと、運営支援は期待します。 

<児童クラブで働きたい、働こうかなと思っているシニア層へ、おねがい>
1 今の時代の子育てと、シニア層のあなたがこどもだったこと、そしてあなたが子育てをしていたころとは、まったく違うことを理解して児童クラブの求人に応募しましょう。
 →常識も、社会の共通観念も、時代と共に変わります。かつてはあちこちで喫煙が許されていましたが今では法令の規制もあり、社会一般の観念もあり、喫煙こそ例外的な行為として場所が限定されています。子育ても同じ。あなたがこどものころは、悪ふざけをしたら大人に1発2発、ガツンと殴られる場合がありましたよね。(当時も実はそうだったのですが)今ではそんなことをしたら、児童虐待でアウトです。そういうことが当たり前だと思っているなら、児童クラブの求人には応募しないでくださいね。他の働き口は沢山あります。

2 「私は自分のこどもも、孫の面倒も見ている。だから児童クラブの仕事はきっと大丈夫」と思わないでください。そう思う人は、児童クラブの求人応募はやめましょう。
 →自分のこども、まして孫と、第三者のこどもとはそもそも人間同士の関係性が違います。自分の子育てが、児童クラブにおける大勢の子育てと共通することがきっと多いだろうという考えは、捨ててください。子育ては大変だったなあ、というその思いにさして違いはないとしても、自分のこどもには、こういう場合はこうしてやるとうまくいった、というのは今の時代の児童クラブのこどもたちには通用しないという前提を当たり前だと理解できるのであれば、ぜひ、児童クラブに応募してくださいね。

3 自分の娘や息子、孫娘と同じような年齢の若い職員の指示をすんなり受け入れられる自信がある人が、児童クラブの求人に応募してください。
 →全員がシニア層で運営しているクラブもあるでしょうが、民営クラブの場合は若い世代を積極的に採用しています。20代や30代のクラブ職員でも、例えば新卒採用で、キャリアを5年以上積めばクラブの責任者になっていることも珍しくありません。となると、シニア層からすれば自分のこどもよりもはるかに年下、場合によっては孫に近い年齢の職員が管理職の立場としてクラブの責任者を務めている場合だってあります。これからはうんと増えていくでしょう。こういうとき、「なんだこの小娘は」とか「小僧がいっちょまえに」と思うような人は、絶対に、そう絶対に、児童クラブでの仕事は向いていません。というか、どの職場でも無理です。たとえあなたが以前、大企業の管理職で年収が数千万円あったとしても、「いま」の時点であなたは非常勤の職員であれば、「クラブ主任」「施設長」等、クラブ運営の責任を負う立場の若い職員の「部下」です。部下の指示や考えに従えない人は、児童クラブには不要です。児童クラブは大勢のこどもの生命身体を確実に護らねばならない場所ですから、そこで、指揮命令系統に素直に従えない人物が入り込むと、管理運営体制にゆらぎが生じ、大きな事故やけがを招く要因をつくります。過去がどんなに立場が偉い人でも、「いま」部下なら上司、上長の指示を素直に「はい、分かりました」と言えなければ、児童クラブでは不要の人材ですよ。

4 児童クラブは体力勝負の仕事があります。児童クラブ側がもし、「いま必要な人材は、こどもと体を使って遊べるスタッフ」と思っているなら、体力や外遊びに自信がない場合は、他のクラブを探しましょう。
 →マッチングの問題でもありますね。児童クラブの仕事は、体を使って遊ぶ仕事の時間が長いです。サッカーや鬼ごっこなど、体を使って遊ぶたくさんの遊びに、ある程度はこどもと一緒になって遊ぶ、あるいは加わることが求められます。それができる人材を求めている児童クラブは多いでしょう。そういう、体力があって体の動作に問題が無い職員を募集しているときに、「足腰が弱くてあまり動けないんですが」という求人応募者は、ちょっと困ってしまいます。まして、「体を使った遊びは大丈夫ですか?」と採用側の児童クラブが念を押して確認したのに「大丈夫です」と本当の状況を隠して(偽って)求人に応募でもされたら、採用側は本当に困ってしまいます。私も過去に困ったことがあります。うそはよくない。素直に「外で長い時間過ごすのはちょっと無理です」と申告しましょう。探せば、「外での活動は求めません。クラブ内で掃除や片づけ、時にはこどもたちと将棋でもしてくれれば十分です」という児童クラブだって、あるかもしれませんよ。

5 遅刻は厳禁。しょっちゅう、体調を崩すようでも困りますよ。
 →寝坊グセ、さぼり癖、また、体調をよく崩す人は、児童クラブではない仕事を探してください。児童クラブは「人の配置」がとても重要な業態です。人の配置によって、事業が実施されている、されていないと判断される可能性があるのです。出勤してくれないと、事業の遂行に重大な影響を及ぼす可能性もあります。例えば、その地域の条例によって「支援員1人と補助員1人」の最低2人だけで職員配置の基準を満たす地域にある児童クラブで、たまたま、あなたがその「補助員1人」に該当する場合に、「ああ、ちょっと今日はかったるいから休むか!」といって急に児童クラブの仕事を休んだ場合、事業者はとんでもない大変なことになります。急遽、代わりの人を探して配置しないと、児童クラブを開所したことにならないからです。シニア層が配置基準に直結する「支援員1人」に該当するケースはそうそうないでしょうが、それでも保育士の資格や教員免許を持っているシニア層が多いでしょうし、事業者側の都合で放課後児童支援員の認定資格を取得させられることもあるでしょう。それはそれで、補助金の増額につながることがあるので大切です。あとは言わずもがな、遅刻は絶対にダメ。それは、人間として若い衆に示しが付きませんよ。むしろ、年齢的に早起きが得意の人が多いでしょう。であれば、夏休みや土曜日、開校記念日などの「朝から児童クラブを開所する日」の勤務において、なかなか遠慮しがちな「朝一番の勤務」を積極的に申し出ましょう。朝7時や7時30分に児童クラブに出勤する勤務を引き受けるのです。これを積極的に引き受けると、職場や事業主からの信頼度が格段にアップしますよ。時給だってぐんぐん上がるかもしれませんよ。早朝から出勤し、お昼前に退勤すれば午後をのんびりと過ごせます。

6 こどもたち(職員にも)に「かつての日本(のこども)」を伝えてほしい。歴史を大切に考える意識を持った人に、児童クラブに働いてほしい。
 →わたし(萩原)が個人的に憂慮しているのは「記憶の断絶」です。ネット文明が大いに栄えていますが、「人の口から、表情とともに」過去の様子はこうだった、こういうことが実際にあったという記憶の伝承がネット社会になって軽視されたり薄れていったりしているのではないかと思うことがあります。ネットを調べれば何でも出てくると思っている人が多いので、直接、当事者に会って話を聞く、ということが、他者とのコミュニケーションに慣れない世代の増加とあいまって、言葉だけでなく感情を交えた過去の事実の伝承が途切れがちになっていると私は不安を覚えます。児童クラブに求められる事業ではまったくありませんが、今のシニア層がこども時代を過ごした高度経済成長期のこどもの様子、放課後の様子、地域の様子などを、私は積極的に今のこどもたちに伝えてほしいと強く望みます。当時、大いにはやった「あそび」の再現。メンコでしょうか、相撲でしょうか、今のシニア層がこども時代に夢中になった遊びをぜひ、いまのこどもたちに、職員たちに伝えてほしい。そう願います。あわせて、暮らしぶりや、自然の様子なども、伝えていってほしいと願います。

 7 「話しかけられやすい」雰囲気をまとってくださいね。自分からも積極的に同僚に話しかけましょう。もちろん、こども、保護者には当然です。
 →児童クラブの仕事は、こどもを預かるという仕事ではありませんよ。外形的には確かに、こどもを預かります。預かりますが、仕事の中身まで「こどもの預かり」ではありませんからね。そのことを説明してくれない児童クラブ事業者だったら、むしろあなたから別の児童クラブに就労先を変えたほうが良いですよ。それぐらい大事なことです。こどもが児童クラブで育っていく、その育ちを支えていくのが、児童クラブで働くことになるあなたの仕事です。具体的な手法やその事業者の理念は事業者から説明を受けてください。大事なこととして、こどもの育ちを支える仕事には、その仕事に従事する職員のコミュニケーション能力が必要だということです。人が、人と、関わって成り立つ仕事ですから、その関わり=コミュニケーションが苦手なら、児童クラブの仕事は無理です。他の仕事を探しましょう。ただ誤解されがちなのは、児童クラブに必要なコミュニケーションって、「おしゃべり」ではないですからね。シニア層は男女問わず、やたらおしゃべりな人が時たまいます。必要ないのに延々と若い職員(特に女性相手)に話しかけてくる男性シニア職員、それ、ダメです。若い職員に関心を向けるより目の前のこどもに関心を向けてください。事業者は、職員服務規程を整備して業務中の私語を慎む規定を用意しておきましょう。それが度を超すと管理職が注意を行える規定にして、その注意もあまりにも受けた回数が多いと懲戒処分を課すことができるようにすればいいのです。職員や保護者からの相談を受けやすくなるような「頼れる人生の大先輩」と思われるまでになれるよう、頑張りましょう。

 児童クラブは、元気なシニア層を待っていますよ。ぜひ、いままで培った経験や能力を児童クラブで発揮してください。児童クラブ事業者側も、年齢だけで一概に判断するのではなくて個々の人物の能力で判断するように考え方を変えましょう。そしてシニア層受け入れに必要な業務上のマニュアル類を作成しましょう。
 
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也