放課後児童クラブ(学童保育所)に関する最近の報道内容について。運営支援が考えたことをお伝えします。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。この1~2週間内に報道された、放課後児童クラブに関する話題をチェックします。例年、この時期は、放課後児童クラブの待機児童や小1の壁、の報道が多いのですが、今シーズンはいろいろな話題が報じられていますね。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

※リング切れはご容赦ください。
<エリート層が考えるエリート学童>
 東洋経済オンラインが2025年3月23日11時に配信した記事です。見出しは、「「学童」には”質の高い学び”を提供できる可能性がある!開成高・東大卒・BCG出身の安野貴博が考える”STEAM活動”の大切さ」という記事です。
(「学童」には”質の高い学び”を提供できる可能性がある!開成高・東大卒・BCG出身の安野貴博が考える”STEAM活動”の大切さ)

 記事を一部引用します。
 「いまの学童クラブは、学校が終わってから親が帰ってくるまでの数時間、友だちやスタッフと遊びながら過ごす場所です。需要の高まりとともに数は増えたものの、中身はほとんどアップデートされていません。しかしそこには、教育的な面で活用できる大きなポテンシャルがあります。」
「各地の学童クラブや児童館など、子どもの放課後施設でSTEAM活動に触れられる学びの場をつくる、というのが私のアイデアです。STEAMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの分野のこと。ハード(3Dプリンター、PC、タブレット等)とソフト(コンテンツ、スタッフ)の両面を整備し、児童生徒がテクノロジーに接する機会をつくるのです。」

 まず私は、児童クラブはいろいろな形が、内容が、あっていいとする立場です。そもそも、放課後児童の居場所は放課後児童クラブに限られるはずもないと、考えています。自宅で過ごしたい子ども、学習塾やスポーツクラブでみっちり才能を磨き、伸ばす子どもがいたってまったく問題ないとする立場です。児童クラブに対してあれこれ私が言っているのは、「いま存在している児童クラブの仕組みがあいまい。保護者が運営責任を負うのは法的な面で問題がある。児童クラブで働いている人たちの雇用条件がひどすぎる」ということを直したいからです。

 ですので、この記事にあるような学童が存在することも別に異議がありませんし、賛成です。きっと、そのような児童クラブで満足に過ごせる子どもが、いるでしょう。

 気になるのはたった1つ。放課後児童クラブの本来のそもそもの位置づけを認識しているのかどうか、ということだけです。文章から私が想像するのは、安野氏が児童クラブで子どもが過ごす時間を有効活用できていないと感じているだろう、ということです。この場合の有効活用とは、知識を増やし、好奇心を刺激する時間を子どもに過ごしてもらうこと、です。
 放課後児童クラブという制度の建て付けが、子どもが社会に出たときに困らないような大人となるように育っていく場所(それこそつまり時間限定ですが、家庭の代替的機能)を整備して機能させる仕組みです。子どもはそこで非認知能力を自然と身につけていきます。安野氏の提唱する学童は、認知能力を存分に伸ばす場所、として機能するでしょう。それはそれでよいでしょう。希望者はぜひとも、そのようなエリート学童で存分に自己の能力を伸長させてください。社会を実際に大きく動かす原動力はエリート層の充実です。
 ただ、エリート学童は「放課後児童健全育成事業」ではないことと、非認知能力をじっくりと伸ばす児童クラブにもしっかりとした存在意義があることを社会がもっと認知する必要がありますよ、ということです。

<群馬県高崎市が放課後児童クラブを担当する課を新設>
 東京新聞が2025年3月20日午前8時18分に配信した、「「放課後児童クラブ」 高崎市が新年度に支援課 4人体制で発足」という記事です。有料記事ですので全文はHPでは読めません。
 一部を引用しますと、「群馬県高崎市は新年度、放課後児童クラブ支援課を新設し、同クラブへの支援を拡充する。学校の長期休業中の一時預かり促進など現状の課題解決が目的で、職員4人体制でスタートする。」とあります。
 以前、運営支援ブログで高崎市の動きに要注目と書きましたが、いよいよ、具体的な形として動き出すのですね。心強いですね。

 高崎市内の児童クラブは、多くが保護者運営系のクラブということで、運営上の悩みや課題に直面した保護者をどうフォローするのかがかねて問題だったようです。大きな流れとして、保護者運営の系統から組織的な運営に切り替わっていくようですが、その切り替えではさらにいろいろな問題や課題に直面するでしょう。新設されるという行政の担当課が、児童クラブ運営に関わる保護者の負担軽減に資することと、そもそもの大事な役割として、放課後児童クラブの質の底上げ、従事する職員の雇用労働条件の改善に、指導力を発揮していただけることを期待したいです。

<民間企業に任せたからサービスが向上したのではないでしょう?>
 児童クラブを民間企業に任せたらサービスが向上した、という記事がありました。NHKの、宮崎NEWSWEBです。2025年3月19日11時33分に配信された、見出しが「宮崎市の児童クラブ 民間委託で新年度から利用時間延長へ」という記事です。(宮崎市の児童クラブ 民間委託で新年度から利用時間延長へ|NHK 宮崎県のニュース

 一部引用します。
「人手不足により半数で実施できていなかった宮崎市の児童クラブの利用時間の延長が来月の新年度から民間に委託してほぼすべてのクラブで行われることになりました。」
「共働き世帯などの小学生を預かる放課後児童クラブについて宮崎市は今年度から保護者の要望を受けて終了時間を1時間長い午後7時土日や長期の休みは開始時間を30分早い午前7時半からとしました。しかし、63のクラブのうち、およそ半数の32のクラブで事業を委託している社会福祉協議会や社会福祉事業団の人手不足などを理由に延長が出来ていない状況となっていました。このため市では、来月からの新年度、民間企業に委託するなどして延長が出来ていなかった32のうち30のクラブで対応できるようになり、ほぼすべての児童クラブで受け入れ時間が延長されることになりました。」

 記事をよく読むと、民間委託といってもすでに社会福祉協議会や社会福祉事業団が運営しているクラブが、民間企業の運営になったら利便性が向上したという内容であって、見出しや記事のリードの部分にある「民間委託、民間に委託」というのは厳密にいえば間違いですね。社協も事業団も民間団体です。営利企業ではなく、準自治体のような公の性質が強い団体ですが、公ではなくてあくまでも民です。

宮崎市では、そのような準公務員のような人たちが従事する児童クラブを、民間企業つまり営利企業に任せることにしたのですが(企業としては明日葉社、アンフィニ社、の2つの広域展開事業者のようです)、そうしたところ、児童の受け入れ時間の延長が可能となった、という記事です。

 これは、因果関係が明確になっていない、残念な記事です。社協や事業団の運営ではできなかった受け入れ時間の拡大延長が、なぜ営利企業の運営ならできるようになったのかの取材や説明が提示されていません。なぜ社協や事業団の運営のときは受け入れ時間の拡大ができなかったのか。行政から交付される補助金の額が足りずに必要な労働力分の職員を雇用できなかったのか。社協や事業団の労務管理の問題で実施できなかったのか。ではなぜ広域展開事業者になったら受け入れ時間の拡大ができたのか。行政から渡される補助金の額の変化はどうか。増えたのか?変わらないのか?
 こういった点を明らかにしないで、ただ単に「民間企業に委託先を変えたら、子どもの受け入れ時間が拡大しました」とだけ伝えるのは、報道機関としては残念です。

 記事には市長のコメントが紹介されているので、その部分も引用して紹介します。
「清山市長は「経験が豊富な民間に委託することでノウハウを生かしたより質の高い児童クラブを展開できると期待している」と話していました。」

 広域展開事業者は確かに全国あちこちで児童クラブを運営しており、児童クラブの運営経験は豊富です。だから、子どもの受け入れ時間の拡大ができたのですか?受け入れ時間を拡大するのは職員の勤務時間を延長しなければなりません。経験が豊富というのが、まさか人件費を増やさないままで職員の労働時間のみを伸ばすことができる経験に長けている、ということでは困ります。児童クラブが開いている時間が延びれば当然、必要な労働力が増えるのですが、その分の人件費はどうなっているのでしょう?記事は残念ながらその点について増れていません。

 おそらくですが、全国各地にて、公営クラブを民間企業にゆだねる際、それまで児童クラブに出していた金額よりはるかに多い額を児童クラブに出すことが一般的ですから、宮崎市の事例も、その例にならっているのではないでしょうか。この、公営や、準公営に近い社協等運営のクラブに対しては出せなかった金額を、民間の営利企業に任せるときにはドーンと増やして出すという現象は、いったいどういうことなのでしょうか。よくきく話では、公営の民営化の場合は、表に出てこない人件費分や放課後児童健全育成事業として予算化される額以外の経費分が確かにあって、その額を表にしているだけだ、というものです。しかし、それとて証拠のある話ではないです。

 公営や準公営にはお金を出し渋り、いざ民間企業に出すとなったら補助金をドーンと増やす。いやいやそれなら、公営時代や準公営の社協などにも、同じぐらいの額を用意してみたらどうなの?と私は言いたいのです。もっとも、同じ額なら、よっぽど効率的に、生産性を向上させて児童クラブを運営できる自信が、多くの民間の児童クラブ経営者にはあるでしょう。私にもあったし、今もありますし。

 NHK宮崎にはぜひ、民営化のその後を引き続き報じてほしいですね。 

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)