放課後児童クラブ(学童保育所)に男性職員は絶対に必要です。もっと男性職員が増えるために必要なこととは。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。私は、放課後児童クラブに男性職員は不可欠だと考えています。残念なことに、児童クラブで男性職員が何かしらの不祥事を起こして報道されるたびに、SNSやインターネットの掲示板には「男性職員はダメだ」と書き込まれますが、中にはそう思う方がいるのも当然でしょう。ただ、圧倒的多数の意見であるとまでは言えないでしょう。しかし現実には男性職員、男性の放課後児童支援員、補助員はそれほど多くありません。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<男性職員はどのぐらい?>
放課後児童クラブで働いている職員の男女比を調べた調査はあるのでしょうか。私は今まで見かけたことがありませんが、およそ、1つのまとまりの職員集団があるとしたら、だいたいのところ3割前後の人数ではないでしょうか。私が以前に運営に関わっていた法人は、正規職員で100人を超える人数でしたが男性職員の割合は3割に届くか、届かないかという人数だった記憶があります。また先日、愛知県内の事業者で研修講師を務めましたが、受講者の男性の割合も3割ほどでした。
男性職員が少ないのは確かですが、もっと正確に考えると、「家庭を持ち、主に1人で生計を支えている男性職員」が少ない、ということです。というか、男性の児童クラブ職員がその収入だけで家計を支えている例は、ほとんどないでしょう。その原因はもちろん、得られる報酬の低さ、収入が十分ではないから、です。「放課後児童クラブに従事する職員の1人当たり給与(手当・一時金込)は、月給払いの常勤雇用者が285.7万円(平均勤続年数6.1年)」(調査は令和3年度、出典は「放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査」)であれば、とても家庭を1人で支えられるだけの収入は児童クラブ勤めでは得られないのです。
一方で、単身の男性や、結婚していても共働きで家計に関して収入が配偶者とさほど変わりがない、あるいは配偶者による補助的な収入を得て(なんとかであっても)生活ができている男性職員は、絶対数は少ないものの、男性の児童クラブ職員としては一般的です。
数年前には、男性の児童クラブ職員が仕事をあきらめた、という記事が報じられたことがあります。また、結婚を機に、あるいは子どもができるのを機に、男性が児童クラブの職員を辞めて転職した、という話は、珍しいものではありませんでした。「学童で働いた、子どもをあきらめた」の世界を避けるために、本当は続けたい仕事なのに、カネのために辞めざるをえなかったという残念な例は、全国の児童クラブで数えきれないほどあるでしょう。
児童クラブに関する調査は、国(こども家庭庁)や業界団体(全国学童保育連絡協議会など)が定期的に行っていますが、児童クラブで働いている人に関する調査、例えば暮らしを支えている立場なのか、暮らし向きはどうか、というような調査は児童クラブの事業そのものとは離れるのでなかなか実施されないでしょう。しかし、職業としての児童クラブ職員の実態を知るためには、ぜひとも、そういった生活面や家庭面での調査も行ってほしいと期待します。
<男性職員は嫌がられる?>
旧ツイッター(X)では、男性の「保育士」について時折、投稿が相次ぎます。保育士の業務における男性と、放課後児童支援員等の業務における男性とは、異なる業務の領域が多すぎて、比較して検討することはふさわしくないと私は考えます。端的に申せば、おむつに関する作業、仕事です。児童クラブにおいては、おむつの扱いはありませんし、下着を職員が着脱、脱がせたり着せたりすることはありません。男性の保育士に対する世間一般の誤解や不安は、主にそういった作業に関する部分が大きいのかな、と私は想像します。もちろん、保育士であろうが放課後児童支援員であろうが、職員が子どもに対して性暴力を、それも男性職員が女児に対して害を加えた場合は、「男性なんてダメだ!」の批判が短期間であれ、巻き起こるのは通例ですが。
現場で働いている女性職員たち、そして児童クラブを利用している保護者たちからも、私は「男性職員は嫌だ」という強い否定の声を聴いたことが記憶にありません。むしろ、保護者側からは「元気な男性職員がいてくれたら、遊びの幅が広がるのに」「このクラブはちょっと荒れ気味だから、男性職員がビシッと雰囲気を引き締めてほしい」(実はこれは由々しき事で誤った考え方ですが)、という声を聴くことの方が多かった。また現場の女性職員からは「重いものを持つのに困るので男性がほしい」と言われたことも一度や二度ではありません。この場合は職業の専門性というよりも単に「道具」としての男性の必要性、なのでしょうが。。。
あくまで感覚的なものでしかありませんが、児童クラブの現場で、男性職員が嫌がられる、ということは、めったにないのではないでしょうか。むしろ、男性職員が必要な場面が多いのに、「年齢が若い」男性職員が少ないということに残念さを感じている現場職員の方が多いのではないでしょうか。なおシニア世代の男性職員、年金の足しに働いているという男性の職員はけっこういます。
運営側からすると、男性職員を雇用して配置するにあたって考慮しなければならないのは、児童クラブに在籍している女子児童との関わりにおいて、女性職員が対応、措置しなければならない事態(例えば、生理への対応)が起こりうることです。よって男性職員だけで勤務する時間を絶対に設けないことです。
夏場など、外で水遊びをした場合の着替え時などにおける男性職員の行動への指示も必要です。更衣室など施設が整っていない場合がほとんどですから、女子児童が着替えるときは男性職員(というか、男子児童も)はどこま別室で待機して、女性職員が女子児童の対応に当たる、ということです。もしいまだに、低学年だからといって男女が同じ部屋で同時に着替えをさせている児童クラブがあるとしたら、それは問題です。
もう1つ、運営側が配慮、考慮しなければならないのは、なかなか難しいのですが「女性の世界」との関わりです。私は男女問わず人間関係はあらゆる局面において複雑であると考えていて、人間関係の類型や形態において男女の差を気にしたことはないのですが、なんというか、「女性同士」の駆け引き、気配り、勢力争いというようなものに男性職員が関わることがないように男性職員に前もって注意を促しておくことは、やっておくべきだと考えています。特に、女性が多い補助員、つまりパートやアルバイトですが、女性のパート職員同士のさや当て、いざこざは、時として起こってしまいますから、正規の男性職員が「どちらかの勢力」に肩入れしていると相手側が騒ぎ立てると事態が複雑になってしまいます。
しかし、男性職員が、その存在を完全に全否定される、という局面は、遊びの幅、遊びにおける活動の程度が相当程度活発になる児童クラブにおいては、ほとんど無いのではないでしょうか。むしろ、男性職員がいてほしい。
また、これは根本的な問題を解決しなければならないのですが、児童クラブにおける集団生活になじめない、なじむことがなかなかできない子どもが時として暴れる、職員の指示を無視してしまうときに、現場の職員からも男性職員が欲しい、という声を聴きます。先にも少し書きましたが、男性職員の「威圧」によって児童の集団を統制する、コントロールするというのは育成支援では禁じ手です。ただし、暴れてしまっている子どもを、他児および職員、そして暴れている子ども自身への被害(けが、傷など)を防ぐために、その衝動的な行動を落ち着かせるために子どもを「確保する措置」は、特に暴れてしまっている子どもが高学年ともなると、女性職員には荷が重い措置です。こういうことが多発する児童クラブでは、どうしても男性職員に頼る局面が増えるのもまた事実です。
児童クラブでは男性職員が嫌がらることは、ほとんどないでしょう。むしろ、男性から「続けたいけど、続けるのが厳しい」面があるのではないでしょうか。それは、「児童クラブの仕事をずっと一生の仕事としたいのだけれど、暮らすのがなかなか難しい」という現実的な問題です。
<男女関係ないですが、しっかり暮らせる賃金を>
先に引用したように、児童クラブの仕事は勤続年数6年程度で300万円に届きません。キャリア10年でも300万円前後程度でしょう。平均の値ですから、児童クラブの事業者によっては、キャリア10年でその事業者内でそれなりの職位についていれば、手取りで300万円台を実現していて、家庭を持っての生活もそれなりにできる、という事業者もあるでしょう。そういう事業者が増えてほしいです。
これは男女問わずです。男性だろうが女性だろうが、児童クラブで正規職で働いている限り、生活を営むに不便のないだけの賃金、報酬が実現できる業界に、早くなってほしいです。そのために必要なことを、それぞれの立場にいる方々がずっと続けていくことが必要です。
<どうしても持たれる先入観に対しては現実の行動で見返そう>
児童クラブの男性職員による残念な事案、事件が報じられると、どうしても「男性職員はダメ。危険」という偏見が一時的にせよ巻き起こります。児童クラブの世界を実際に何も知らないで、単に文句が言いたいだけの人がSNSに書き込むのは防げませんが、大事なことは「実際に児童クラブに関わっている人、関わっていた人が、そうした偏見や誤解を持たないようにすること」です。つまり、児童クラブに今、子どもを通わせている保護者が「確かにうちのクラブの男性職員もちょっと心配」と実際に感じてしまっては、困るのです。まったく関係のない人ではない、実際に関係のある人から疑念や不安を持たれては、それは絶対にまずいわけです。それが社会全体に積み重なっていくと、「やっぱり児童クラブには男性職員は危険だ」という誤解や偏見が、「一般的な感覚」に昇華してしまいかねないのですから。
それを防ぐには、児童クラブの側、つまり運営側と実際に働いている職員が、「私たちは児童クラブにおいて子どもへの加害、犯罪行為は絶対に起こさない」という決意を常に表明し、その決意を具体化させるための「研修」を、必ず定期的に行うことです。そしてそれを、子どもはもちろん、保護者にしっかりと情報公開、情報提供することです。可能であれば、平日の午前中に行うことになる、子どもへの性暴力を防ぐための職員研修の様子を、希望する児童クラブの保護者に見学してもらうことも良いでしょう。また、めぐりあわせが良く、児童クラブの保護者にそうした研修の講師を務めるに適任の人がいれば、「当然、報酬を支払って」、講師を務めてもらうことも良いでしょう。後日、講師の立場と保護者の立場の双方から、保護者懇談会等で研修の様子を伝えてもらうと、より良いでしょう。
私の願いは、男女問わず、「児童クラブの仕事は、育成支援は、一生を通じて続けられる仕事だ」ということが現実に実現することです。「一生を通じて続けたい仕事」という認識は、すでに多くの人が感じていますから。後は、実際に安心して生活ができる収入が得られる仕事、業種になることです。これが本当に厳しい。でも、成し遂げねばなりません。弊会はまさにそのことを訴えたいがために活動をしています。そういう時代になれば、若くて家庭を持っている男性職員だってごく普通にあちこちの児童クラブで従事していることでしょう。補助金が増えることが最も大切であって、児童クラブが果たしている役割が正しく理解されることで社会が応分の負担を増やしていくことが必要です。
<おわりに:PR>
弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
☆
弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
☆
放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
☆
放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を出版します。3月10日の発売を予定しています。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。
☆
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
☆
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)