放課後児童クラブへの国交付金の最新情報が出ました。新たに設けられた常勤2人分の額は、残念!(5/26追記)

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に対する補助金(子ども・子育て支援交付金)の最新情報(第4次改正、5月21日付)をお届けます。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<新設された常勤職員2人分は、655万2000円!>
 まずこの資料(子ども・子育て支援交付金交付要綱)は、フェイスブック「学童保育応援団」が、「NPO法人子育てひろば 全国連絡協議会」のウェブサイトにて公表された情報を、フェイスブック上で紹介したものです。学童保育応援団と、NPO法人子育てひろばに感謝申し上げます。

 令和6年度(2024年度、行政資料なので元号表記とします)の放課後児童クラブへの補助金は、なんといっても常勤2人分への新たな補助金が注目でした。交付要綱には、655万2000円で提示されています。
 以前の運営支援ブログはこの新たな補助金について紹介しました(2023年12月20日付)。そこで私は「来年度から期待される補助金の改善では、これが年収310万円程度の常勤2人分+年収181万円程度の非常勤職員1人分を目指して、こども家庭庁は予算を請求しているようです。ぜひこれは、当然のごとく、実現されることを望みます。」と記しました。結果として、310万円(常勤職員分)掛ける2人分→620万円(常勤2人分)+181万円(非常勤職員1人分)=約800万円とはならず、ほぼほぼ「常勤2人分」だけで収められた形です。非常勤職員の分は、考慮されなかった模様です。

 655万円が常勤職員2人分であれば、1人分にしてみると、これまでの常勤職員1人分310万円よりも15万円ほど上積みになっていますが、放課後児童クラブでは非常勤職員の存在が極めて重要です。その非常勤職員分の補助金が考慮されていないとならば、これは問題です。私は大変、残念に思います。こども家庭庁にはぜひ来年度以降、早急に、常勤2人分+非常勤職員2人分=325万円掛ける2人分+181万円掛ける2人分=約1020万円の補助金を設定していただきたいものです。

<前年度からの比較>
 以下、新たに示された交付金の主な情報について紹介します。

項目令和6年度令和5年度差額
放課後児童支援員(常勤職員に限る。)を2名以上配置した場合(250日以上開所)6,552,000円(児童数36~45人)なし
放課後児童支援員(常勤職員に限る。)を2名以上配置した場合(250日以上開所)で児童数71人以上の場合4,601,000円なし
放課後児童支援員(常勤職員に限る。)を2名以上配置した場合(250日以上開所)の長時間加算分671,000円(平日)
302,000円(長期休暇分)
なし
放課後児童支援員、補助員(以下「放課後児童支援員等」という。)を配置した場合(常勤1人+補助員1人)(250日以上開所)4,868,000円(児童数36~45人)4,734,000円134,000円アップ
放課後児童支援員、補助員(以下「放課後児童支援員等」という。)を配置した場合(常勤1人+補助員1人)(250日以上開所)で児童数71人以上の場合2,917,000円2,917,000円同額
放課後児童支援員、補助員(以下「放課後児童支援員等」という。)を配置した場合(常勤1人+補助員1人)(250日以上開所)の長時間加算分421,000円(平日)
190,000円(長期休暇分)
409,000円(平日)
184,000円(長期休暇分)
12,000円
6,000円
アップ
放課後児童支援員1名のみ配置した場合(250日以上開所)4,088,000円(児童数36~45人)3,978,000円110,000円アップ
放課後児童支援員1名のみ配置した場合(250日以上開所)の長時間加算分277,000円(平日)
125,000円(長期休暇分)
271,000円(平日)
122,000円(長期休暇分)
6,000円
3,000円
アップ
障害児受入推進事業2,059,000円2,009,000円50,000円アップ
放課後児童クラブ運営支援事業・賃借料補助3,374,000円3,066,000円308,000円アップ!
放課後児童クラブ送迎支援事業・待機児童が既に100人以上発生している市町村に所在する放課後児童健全育成事業所の場合1,073,000円なし
放課後児童クラブ送迎支援事業(従前どおりのもの)536,000円521,000円15,000円アップ
放課後児童クラブにおける要支援児童等対応推進事業1,369,000円1,330,000円39,000円アップ
放課後児童クラブ育成支援体制強化事業1,500,000円1,451,000円49,000円アップ

 主なものを抽出して紹介しました。なお、いわゆる運営費は、児童の数で区分されています。いわゆる適正規模である36~45人が最大で、これを下回る、あるいは上回るごとに減額されることは、児童クラブの経営、運営に携わる方ならご存じのことでしょう。表には書き込みませんでしたが、「常勤2人分」でも「常勤1人+補助員」でも、適正規模を下回ると人数分掛ける26,000円が減額されます。適正規模を上回ると75,000円が減額されます。

 金額と並んで注目されていたのが、常勤職員の定義です。交付要綱には「常勤職員とは、法定労働時間の範囲内において、原則として放課後児童健全育成事業を行う場所(以下「放課後児童健全育成事業所」という。)ごとに定める運営規程に記載されている「開所している日及び時間」のすべてを、年間を通じて専ら育成支援の業務に従事している職員」と定義されました。
(5月26日追記です。愛知県保育連絡協議会が旧ツイッター(X)へ、この常勤に関するQAを投稿されました。感謝です。それらの情報をまとめると、「1週間における総開設時間の8割以上を勤務している者を常勤とする、とあります。その時間の上限は40時間とされています。ということは週の所定労働時間が40時間であれば問題なく常勤職員として、新たな補助金の対象となります。また、学校の授業がある日において、月~金が午後2時から午後7時までの開所、つまり1日5時間で合計25時間開所、土曜日が午前7時から午後7時までの12時間開所の場合、(25+12)÷7(or6?)、の式の数値によるものとなるでしょう。7日の場合は5.28時間ですし、6日の場合は6.16時間になります。いずれにせよ、週30時間~32時間の週所定労働時間であれば、この補助金の対象となるでしょう。年度途中の退職については、途切れずに常勤2人職員体制が確保できていれば対象となると示されました。月割にはしない模様です。これは致し方ないでしょう。急な常勤職員退職の場合は、後任が見つかるまで、非常勤職員を週の所定労働時間32時間で勤務してもらうなどの工夫が必要となります。なお、国は、この補助金に関する常勤職員と、処遇改善等事業に関する常勤職員について、前者は質の確保、後者は賃金水準の引き上げであって両者の目的が違うので取り扱いを統一しないとしていますが、どうしてややこしいことをするのでしょう。はっきりいって意味がありません。統一するべきです。いずれにせよ、すでに週30時間以上の常勤職員を2名配置して運営していた事業者には、大いにメリットがある制度です。)

 (以下、当初に記載したものです。これはこれまで国側から示されてきた情報と違いがありません。このことについては、地域に根差した運営団体であれば、所定労働時間を1日6時間以上としていれば、平日については開所時間すべてを勤務時間に充てられますから問題ありません。午後2時開所で午後6時閉所の4時間開所であれば、1日の所定労働時間4時間で常勤職員の定義になりますが、現実的には午後6時閉所を貫ける児童クラブは極めて少ないので、問題ないでしょう。)

 問題があるとすれば、研修や育成支援準備のため午前中の勤務時間を保障したい考えと、児童の登所時間帯での勤務で足りるとする考え方の対立で、要は「研修などを考えると1日の所定労働時間は6時間では足りない(もしくは週30時間では足りない)」という考えと「6時間あれば充分だ(もしくは週30時間で充分だ)」という考え方の対立ですが、これは以前から続く問題であり、今回の常勤2人分の補助金の設定とは区別して考えるべきです。週40時間を求める声が現場の放課後児童支援員などから強く聞こえてきますが、労働時間を短縮することは決して悪いことではないので、週35時間程度の労働で、安心して暮らせるだけの収入が得られるのであれば、いいのですが。

 交付金はおおむね、例年通り、前年度より増額されています。賃借料補助が30万円以上の増額なのはありがたいですが、それでも現状、あらゆる値段が上がり、それは家賃も同じですから、せめて50万円以上の増額が欲しかったところです。障害児受入推進事業は5万円の増額となりましたが、これも、今後の被用者保険の拡大などを考えると10万円程度は最低でも増額が必要でした。

<児童クラブ事業者側は、市区町村に必ず予算組みをしてもらおう>
 これら補助金の増額も、市区町村が、予算を組まねば実際に事業者の収入に反映されませんし、職員の収入増には結び付きません。よって、市区町村が、この令和6年度の交付要綱に従って、改めて令和6年度の放課後児童健全育成事業の予算を組みなおし、補正予算として年度内に増額分を予算化することが重要です。

 とりわけ、これまで常勤2人がいるクラブは473万円で補助金を計算していたところを655万円で計算できるわけですから、差額は182万円になります。1単位あたり182万円の増額となります。仮に、40単位を運営している事業者ならば、7280万円の増額となります。これは極めて大きい収入増です。

 困るのは、補助金ビジネスに夢中の広域展開事業者が、この差額分をそっくりそのまま会社の利益に計上してしまわないか、ということですね。市区町村はぜひ、その点に配慮してください。増額分が、運営事業者が行う事業と職員給与に還元されることを確認してください。今後は賃金条項付の公契約条例を整備して最低賃金レベルの賃金ではない賃金水準を設定してください。

<おわりに>
 実のところ、新たに設定される常勤2人分の補助金額には、それほど期待していたわけではなかったのですが、こうして実際に決まった金額を見ると、やっぱり残念です。今までと比べて前進したことは間違いありません。その点において、こども家庭庁の努力は評価に値します。値しますが、「こどもまんなか社会」を掲げ、「次元の異なる少子化対策」を掲げている、これらの国策がある中で、少子化対策として重要視されている放課後児童健全育成事業に対しては、もっともっと補助金による下支えが必要です。そもそも、現状が劣悪すぎるのです。

 来年度以降は金額のさらなる引き上げと、交付金が事業者の利益に転嫁されない仕組みの整備もあわせて実施してほしいと期待します。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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