放課後児童クラブの経営・運営に従事する皆様、年度替わりのルーティン業務、大丈夫ですか? 忘れていませんか?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の挫折と成長、保護者の子育ての現実を描く人間ドラマであり成長物語「がくどう、 序」がアマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください!
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 本日4月14日は、熊本の大地震の発生から9年となるのですね。こういうタイミングで防災について児童クラブで考えることは大切ですよ。
 さて新年度も、はや3週目を迎えました。事業の経営者、運営者であれば、年度替わりのタイミングで実施することが必要な業務がいくつかある場合があります。児童クラブ事業者の経営者、運営者にとってもそれは同じ。それは任意団体でボランティア保護者が組織運営に従事している場合でも変わりません。必要な年度替わりにおけるルーティング業務は決しておろそかにしてはなりませんよ。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<三六協定>
 放課後児童クラブで働く職員の勤務時間(=所定労働時間)が1日8時間、週40時間となっている場合、児童クラブの経営者・雇用主が、職員に対して時間外勤務をさせる場合は、事前に、法令に定められた手続きを行っておく必要があります。それがいわゆる「三六協定」というものです。この三六協定の手続きをしていないと、職員に残業をさせてはなりません。法令違反です。三六協定についてはインターネットで検索すればいろいろ解説されています。厚生労働省のHPでは、次のように説明されています。

労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間・1週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」といいます。
法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合には、「労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結」「所轄労働基準監督署長への届出」が必要です。36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」などを決めなければなりません。
(36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針)

 三六協定は毎年の作業です。4月1日や4月の上旬から1年間、となっている場合は、その期限の日が到来する前に再び三六協定を成立させて労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。経営側と労働者側との間で結ぶ協定ですから、労働者側の代表者を当然、決めてもらう必要があります。ですので、1日や数日で用意ができる作業ではありません。年度替わりのタイミングで期限が到来するようになっている協定になっているのであれば、その1か月前から協定締結の準備をしておきましょう。

 もう一度念を押しますが、三六協定を国に提出しない状態で、クラブ職員に時間外労働を行われてはなりません。れっきとした法令違反です。いわずもがな、三六協定さえ結べば残業させ放題、ということでもありません。

<年次有給休暇の確認>
 年次有給休暇、いわゆる年休、有休は、働き出した日を基準に半年後、そこからまた1年後、という間隔で日数を数えていく決まりです。規模の大きな事業者、会社では便利な勤務管理ソフトを使っているので自動的に従業員の年休の日数を算定してくれますが、そんな高価なソフトはなかなか使えない地域に根差した児童クラブ事業者は、労務担当者の手作業で年休の日数を管理することが通例でしょう。
 年度途中の採用が当たり前になっている児童クラブ業界は、入社日があまりにもまちまちですので、年次有給休暇の算定日を4月1日にそろえておく方が、年休の算定日数を間違えるというミスを招くおそれが減ります。ということで、4月1日になったら、年休付与の対象となっている職員、スタッフの年休の日数をしっかりと更新しましょう。そしてそれを職員、スタッフに伝えましょう。
 言わずもがなですが、年休付与の対象となっている職員、スタッフがいる限り、児童クラブの事業者側は年次有給休暇の管理簿を作成し、それを保存しておくことが法令で義務付けられています。怠った場合は罰則もあります。

 年度途中で採用した職員の年休の付与日を4月1日に変更する際は、職員の年休付与日数に変化が生じる場合がほとんどです。これをしっかり確認しないと労働者に不利な日数付与になってしまうおそれがありますから、年休の付与日(基準日)を変更する場合は社会保険労務士に相談することをお勧めします。

<昇給に伴う変更事項>
 年度替わりで昇給する場合が多いですね。定期昇給いわゆる定昇ですが、まずそもそもの話ですが、事業者として給与表は策定していますか? 入社年次やキャリア、役職の有無によって基本給は異なりますが、それらを網羅した給与表を必ず作成し、職員に周知しましょう。そして事業者側が重要なのは、年度が替わって昇給があった場合の、割増賃金の計算式における数値の変更を怠らないこと、です。

 基本給が変われば当然、時間外賃金や深夜労働、休日労働に対して支払うことが義務付けられている割増賃金の計算式における単価の額が変更となります。給与計算ソフトを使っていても、そもそも昇給して決まった新たな額を入力しないと、今までの基本給に基づいた割増賃金の額が計算されてしまいます。年度替わりのルーティン業務は、年度替わりで異なるあらゆる情報、データの更新に尽きる、といっても過言ではありません。しかしこれを面倒だからと手を抜くと、労働者にとって不利なことになってしまいますし、何より、事業者、経営者に対する職員からの信用と信頼を失います。データの更新という地味な作業こそ、大事なのです。そういう作業、私は大好きです。

<労働条件通知書は必ず作成して交付しよう>
 年度が替われば、年休の付与日数や、前年度からの繰り越し分を合算した保有日数が当然、変わります。昇給があれば基本給が変わりますし、時間外労働や深夜労働、休日労働の時間当たりの支給額(割増賃金の額)も変わります。また、前年度中に、労働に関するルールや決まりが変更になった場合も、あるでしょう。

 よって、年度替わりには、すべての職員に「労働条件通知書」を必ず交付しましょう。前年度に作成した書面に変更分を反映させて作成すればいいのですから、それほど面倒な作業ではありません。無期雇用の職員であっても年休日数など結構、変わっている項目がありますから、無期雇用、有期雇用に関わらず、毎年、書面を作成して交付しましょう。こういう地味な作業もまた、職員の事業者に対する信頼を増すことになりますよ。

 これら、細かいようでも大切な労務面について不安があれば、「あい和学童クラブ運営法人」にご相談ください。漏れていたり工夫できることがあるかどうか、若干の費用はお支払いいただきますが、確認することができます。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)