放課後児童クラブの現状と課題は?

 放課後児童クラブ(地域によっては学童保育所や、学童クラブといった様々な名前が付いています)の課題は「施設の整備が整わないことによる質と量の問題」があり、「職員不足や職員の低賃金による離職率の高さ、事業の生産性の低さ」があります。実はそれらの課題を引き起こす「制度上の問題」があります。

 施設の整備、特に「施設数」が整わないために待機児童が発生している地域があります。待機児童の解消は国も重点に挙げていますが、施設数の整備が、児童クラブを利用したい児童数の増加に追い付かず、待機児童が解消しずらい状態になっています。一方で、待機児童が生じていない地域は、児童クラブを利用したい児童をすべて施設に入所させることになりますが、その結果、いわゆる「大規模状態」、児童1人あたりおおむね1.65平方メートルという厚生労働省令の基準を下回る過密状態になることを余儀なくされています。ここに、児童受け入れにおける「質の低下」が顕著にみられます。ギュウギュウ詰めの環境で子ども達がストレスをためこみ、トラブルが多発します。そのような現場で働く職員は疲弊消耗し、早期に退職します。施設の整備が遅れることは、職員の雇用にまで影響を及ぼしています。

 児童クラブの職員の賃金は、国や自治体からの補助金の額でおおむね決まってしまいます。国は児童クラブの職員の賃金額をおよそ310万円程度と想定しています。人数は1人ないし2人です。さらに180万円程度の年収の補助員(非常勤)職員も1人想定しています。しかしその全額を国が補助しているわけではありませんし、職員数はとても1人や2人では足りません。足りない分は保護者から徴収するか、人件費を皆で分け合うことになります。なお、国は児童クラブを利用する保護者が運営費用の半分を負担することを想定しています。この、国の児童クラブへの補助金の少なさのため児童クラブの職員の低賃金が固定化し、かつ、職員数を増やせないために職員1人あたりの仕事量が大きくなっています。それらが招く雇用労働条件の厳しさが、職員の定着を妨げ、数年しか続かない離職率の高い業界とさせてしまっていますし、仕事のできる人材の流入を妨げています。

 上記の問題は、放課後児童クラブが保育所と異なって「市区町村が、任意に行う事業」と位置付けられていることに原因があると考えられています。放課後児童クラブは小学生の4人に1人が利用する社会インフラですが、あくまで任意事業であって、自治体が必ず実施しなければならないものではなく、補助金も自治体の裁量によって適用する、しないが決められてしまいます。また、民間企業に広く運営を委ねる流れが定着しており、交付される補助金を事業に適切に使わずに事業者の利益として計上する傾向が強いとも言われています。国の調査では、特別区にあるクラブでは、1クラブあたり年間800万円を超える利益を上げているというデータもあります。投じられた補助金が職員の賃金や、子どもにかける教材費や行事費に充てられず、事業者が利益として吸い上げる構図が野放しにされています。この構図が改善されない限り、児童クラブの厳しい現状と課題はずっと解決されないままでしょう。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)