放課後児童クラブの問題点は何ですか?

 放課後児童クラブ(地域によっては学童保育所や、学童クラブといった様々な名前が付いています)の問題点は多岐にわたります。制度上では「市区町村の任意事業に留まっていること」や「投下される国の予算が少なく施設数がなかなか増えず待機児童が解消しないこと」があり、子どもにとっては「入所人数が多すぎる大規模状態が恒常化して、生活の場として機能する環境が維持できない。居心地が悪すぎる」ことが問題です。保育所のように施設の設備について細かい基準が定められていないことも問題です。

 保護者にとっては、待機児童となった場合に就労の変化を余儀なくされることはもとより、せっかく入所ができた児童クラブでも「子どもの受け入れ時間(開設時間)が短く使い勝手が悪い」「小学4年生になると退所させられる」(小4の壁)、「保護者会の負担が大きい」(保護者会の壁)、「子どもが児童クラブに魅力を感じず行きたがらない」(行き渋り)という種々の問題が待ち受けています。
 そして、児童クラブで働く側にとっては、年収200万円台が当たり前の低賃金と、低賃金ゆえに離職者が多く求人応募者が少ないための人手不足による職員1人あたりの過重業務、低賃金ゆえに社会人能力に適性を欠く人物でも採用して働いてもらわねばならないことによる事業の質の低さが深刻です。「子どもの育成支援と保護者の子育て支援」という重要な職務がありながら、社会からなかなか評価されないことと、資格制度が貧弱なことが低賃金の固定要因として機能してしまっています。放課後児童支援員という公的な資格ができましたが、取得が容易すぎることで専門性の向上に対する効果が限定的となり、報酬の引き上げにもほとんど効果がでていません。

 問題は多岐にわたりますが、その原因の最上流に位置するものは、やはり児童クラブに投じられる公費の少なさです。施設数が増えないのも、補助金によって給与額が半ば決められている職員の給与が上がらないことも、すべて国が児童クラブに投じる予算が少ないことが原因です。放課後児童クラブの予算は令和6年度で約1200億円ですが、保育所や認定こども園などの補助金は約2兆円です。児童クラブの整備に責任があるのは市区町村ですが、都内を除き多くの自治体は財政事情が厳しいので、少子化傾向をにらんで児童クラブに費やす予算の優先順位がさほど高くありません。国が児童クラブに投じる補助金の額を増やし、負担割合を多く担うようになれば、児童クラブの整備は進み、職員の雇用条件も改善して人手不足解消に効果があるでしょう。次元の異なる少子化対策、こどもまんなか社会実現のためには、国の思い切った決断が望まれます。

(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)