放課後児童クラブの充実、整備進展は超党派で。子育て支援に政党の思惑は不要。まして利用しようなど大迷惑!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の充実は、政党の区別は関係なく超党派で推進されるもの。古い時代の考え方では困ります。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<子育て支援は超党派が当たり前>
 日本版DBS法案が衆議院を全会一致で可決し、参議院に送られました。運営支援ブログでも触れましたが、このことはまさに子育て支援の環境を整える重要な方針については、政党のしがらみやイデオロギーを超えて、合意できる、理解できることを示しています。地方議会でも、そのようになっていると信じたいです。

 だいたい、子育て支援については、「それはやりたくない」と言えば、有権者からそっぽを向かれるのは当然です。子育て世帯だけではなくて、孫がいる世代も含めて、子育てに関して(それが例え選挙だけでの口約束であったとしても)せっせとアピール、公約を掲げない候補者は、票集めがおぼつかないのは当然です。その点、確実に1980年代ごろとは異なっています。今の時代、どんなレベルの選挙でも、子育て支援を訴えない候補者はいませんね。

 この点、有権者において、「この候補者は、この会派は、本当に子育て支援に尽力するのだろか」と見抜く眼力が必要です。誰もかれもが「待機児童を解消します、子どもの居場所を作ります」と言っている中で、本気なのか、選挙向けの単なるアピールなのか、有権者が判断しなければなりません。そのためには、特に地方選挙においては、どの議員が、どのような子育てに関する議案や請願に賛成しているか、常日頃から確認しておくことが必要です。また首長選では、選挙時に掲げた公約について何かしら前進しているのかどうかも、意識して確認しておくことが重要です。

 超党派による「子育て支援を充実します」という大合唱。その時代に試されるのは、まずは有権者が投票に行くこと。そして投票する際は、「この候補者が言っていることは本当か」の眼力です。見識です。そして仮に、投票をして当選した方が、公約そっちのけで子育て支援に向き合っていないのであれば、次からはその候補者に投票しなければいいのです。地方議会はけっこう僅差で当選、落選が決まりますから、有権者1人1人の行動は候補者にとって命運を左右します。自信をもって投票行動をしましょう。

<今なお残る残念な構図>
 ところで、政治家や首長には、まだまだご年配の方々がご健在です。ご年配の方でも立派に国家、地方自治のために尽くされている方々は大勢いらっしゃいます。必ずしも年齢だけで、議員、政治家の良しあしは判断できません。しかし、私の見聞きしてきたごく狭い経験では、「残念な」議員や政治家がまだ存在しているようです。

・残念なことその1
 「学童?ありゃ、アカだよ」と平気で口にする年配の議員、政治家は、まだなお存在しています。いまどき、アカもクロもシロもありません。だいたい、差別的な用語です。政党の違い、イデオロギーの違いはあって当然ですが、子どもが安心安全に過ごせる場をどうやったら整備するのか、どうしたら子どもの豊かな放課後を確保できるかを考えるに、イデオロギーの違いはゼロではないにしろ、それほど多くはないでしょう。しかし、未だに、学童を応援する=アカという見方は残っています。
 歴史を振り返ると、放課後児童クラブが法制度に組み込まれる前の時代は、児童クラブ、学童保育所の設置に関して尽力したのは共産党をはじめとする、いわゆる「革新」と呼ばれる一部の政党が中心でした。それは、いわゆる保守の立場(注:地方の議会においてはイデオロギーの保守よりも地場産業に仕事を流すことによって成立する既得権益を確保、手放したくない似非保守だらけではないかと言えますが)が、1970年代、あるいは80年代に入っても、「子育て支援?子どもは元気に育つもんだ」という偏った「男性的な」見方だったり、学童保育所の設置に尽力した政党への対抗意識から子育て支援に冷淡な保守議員、保守政治家がいました。
 私に言わせれば、むしろ、そうした保守的なスタンスの者が積極的に子育て支援に関わらなかったことが、みすみす、対立軸の側を有利にする「票田」に追いやった原因です。その点、保守側の認識の浅さが放課後児童クラブへの予算投下の遅れ、少なさに影響し、今なお、施設整備面で遅れている要因でもあると私は考えます。だいたいにおいて、保守の観念としては、家族、家庭に立脚した地域社会のまとまりが国家観の基礎にあるはずです。児童クラブがしっかり整備されていけば、まさに家族、家庭を補完する、あるいは一部において代替する機能を発揮するわけですから、保守側が児童クラブの整備を進めることは、自らの勢力を育てることにつながったはずなのです。それを行わなかったことは保守の失態です。最近は、少子化対策待ったなしなので国政与党も児童クラブの補助金を増やしてはいますが、それが「保守の基盤を固めるための児童クラブの整備」の観点で、1990年代から取り組まれていたならば、児童クラブをめぐる環境はもう少し良好になった可能性があります。残念です。

・残念なことその2
 一方で児童クラブ、学童保育所を以前から応援してきた側です。歴史的に共産党をはじめとするいわゆる革新側が児童クラブの充実に尽力してきたことは確かです。しかしここにも残念なことがあります。先に述べたように、圧倒的に与党側にいる保守系との対立から児童クラブへの予算投下が進まなかったことは保守系の側の見識の浅さがあったとはいえ、ことさらに、児童クラブの勢力は自分たちの勢力範囲内であることを誇示する姿勢があったことが、ますます、意味のない子育て支援をめぐる対立を深めていったことです。
 例えば、革新勢力が集まる集会に児童クラブを応援する、あるいは運営を支えている職員や保護者が動員され、挙句の果てには「旗」さえ持たされて、集会の規模感を構成する「にぎやかし」に利用されてきたことがあります。参加する職員や保護者は実際、その勢力が信奉する思想やイデオロギーにまったく興味がなく、「学童を応援してくれているから、その義理を果たすため」という事情であったとしても、そういう集会に毎回、律儀に参加していれば、「ああ、学童は、あっちの人たちなんだな」というこれまた浅はかな理解を保守側に持たせ、そこでまた、児童クラブの充実に予算を多めにさいてもらえない、ということになっていたのです。

 つまり、児童クラブの充実のために必死な保護者、職員の気持ちを革新側はうまく利用してきたことは言えますし、その様子を見た保守側は児童クラブに冷淡になっていた。これが、以前まで存在したであろう残念な構図ですし、その残滓がまだ、年配の方々に残っている。また業界団体にも一部残っている。それが「アカ」だの、「アベ」だのといった、対立する政治勢力の側を頭ごなしに切り捨てる言動につながっているのです。

 本当にバカバカしいですね。うんざりです。

 私が経験したことを1つ紹介します。かつて、放課後児童クラブの配置基準が参酌化されたときのこと。とある自治体では、とある会派が中心となって、その参酌化に反対する請願を行いました。その、とある会派が主張することは半ば機械的に、多数の与党会派によって葬り去られています。その請願についても同様でした。ということは、とある自治体は、放課後児童支援員の配置を参酌基準に合わせて基準条例を改正することになります。
 ところが、実際には、参酌基準にしないで、自治体としては放課後児童支援員の配置を引き続き条例で求める内容を提案した行政執行部の案が、ほぼほぼ全会一致で可決されました。あれれ?どういうこと?

 つまり、とある会派が主張することは、その中身に関係なく、常に多数会派によって退けられるということです。中身ではなく、「誰が提案したか」で判断される、なんともばからしい出来事でした。

<これからは「質」だ>
 子育て中の方々が相次いで選挙に当選するようになり、子育て世帯の声を多く聞こうとする政治家、議員が増えてきているのは大変喜ばしいことです。私も時々、議員の方と話をすることがありますが、皆さんとても真摯に子育て支援の方策について深く学び、考えていることが分かります。政治的な党利党略、会派の思惑といったものではなく、地域における子育て支援、子どもの過ごしの充実のために施策を打ち立てたい、という思いからです。本当に心強いことだとうれしく思います。

 一方、児童クラブについては、その制度が「緩やか過ぎた結果、独自の発達をし過ぎてしまった」ことで、議員や政治家の方にはなかなか分かりにくいことがあります。児童クラブは、子どもを預かってくれる場であるという理解に留まっている方も多数おります。それは、たぶんに、議員や政治家にレクチャーする行政執行部の側の知識が浅いことが影響しているでしょう。

 これからは、児童クラブの「量」だけではなく、そこでどのような子どもへの支援、援助が行われているかの「質」に注目する議員、政治家が増えていくことを期待します。育成支援において高い質を実現するために必要なことは何か、例えば指定管理者や公募プロポーザルにおいて、見た目だけの安心感よりも育成支援における安心感を本当に持っている事業者を選べる仕組みを構築するなど、「どうやって高い質を実現できるか」の観点を、議員や政治家にはぜひ意識をしっかり確保していただきたいと私は考えています。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、7月上旬に寿郎社(札幌市)さんから出版されます。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)になる予定です。正式な情報は随時、お伝えしますが、注文は書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。特に埼玉近辺の方で、まとまった部数をお買い求めいただける方は、萩原まで直接、ご相談ください。その方が個人的にもありがたい(なにせ、ある程度のまとまった部数が手元に届くので)です。発売まで、もうまもなくです。どうぞよろしくお願いいたします。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)