放課後児童クラブの事業者は「安全計画」と並んで「業務継続計画」も策定しよう。事業を営むなら当然のこと!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の事業内容を明確に示す「放課後児童クラブ運営指針」(以下「運営指針」)の改定作業が始まったことは先日の運営支援ブログでお伝えしました。とても重要な動きですので、改正のポイントを改めて紹介します。こども家庭庁から公表された資料には、改正のポイントが紹介されています。次の通りです。
1.「こどもの居場所づくりに関する指針」を踏まえた改正
2.「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」を踏まえた改正
3.「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」の改正を踏まえた改正
4.厚生労働省社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会報告書を踏まえた改正
5.近年の放課後児童クラブを取り巻く動向を踏まえた改正
6.「子ども」の表記を「こども」に統一する

 今回はこの改正において、児童クラブの運営事業者(運営主体)が必ず取り組んだ方が良いこととして、「業務継続計画」について取り上げます。

 業務継続計画は、BCP(Business Continuity Planning)と略して使われます。平たく言うと、大災害が起こったときに、どうやって事業を続けるかという計画です。大災害は自然災害だけでなく経営上の障害をも含みます。

 放課後児童クラブに関する唯一の設備運営の基準である「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令)にも、この業務継続計画について盛り込まれました。紹介しましょう。
(業務継続計画の策定等)
第十二条の二 放課後児童健全育成事業者は、放課後児童健全育成事業所ごとに、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下この条において「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2 放課後児童健全育成事業者は、職員に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施するよう努めなければならない。
3 放課後児童健全育成事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うよう努めるものとする。
(令四厚労令一五九・追加)

 押さえておくべきは「努力義務」ということです。努めなければならない、となっていますね。「なんだ、義務じゃないからBCPを作らなくても違反じゃない」と思わないでください。そう思うようでは、事業の運営者として資格です。事業の運営者であれば、どのような困難があっても事業を運営する術をしっかりと考え、組み立てておくべきです。それを放棄するような責任感の無い輩は、学童保育という世界から退場していただきたい。

 基準省令に盛り込まれたことを受けて、運営指針の改定にも反映されることになりそうです。改正のポイントの「3.「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」の改正を踏まえた改正」の部分において、次のように示されたからです。「新規(努力義務)のため、追記してはどうか。」として、「第6章 施設及び設備、衛生管理及び安全対策 2.衛生管理及び安全対策(1)衛生管理」と「(3)防災及び防犯対策」の2か所に、業務継続計画の文言が追加されています。改正の量そのものはごくわずかですが、運営指針に盛り込まれるのであれば、対応しないわけにはいきませんね。

 安全計画もそうですが、業務継続計画というのは「こういう書式に従って記すこと」というものではありません。事業者が、安全や事業の継続について、その事業者ごとに、組織ごとに、内容を記していれば、それが安全計画となり、また業務継続計画になります。要は、中身がしっかり整っていればよいのです。既存の各種マニュアルを発展させていけば出来上がることだってあるでしょう。

 とはいえ、大手の営利の広域展開事業者ならば完全に整った各種計画を準備するでしょうから、いずれ、公募等でそれら業者と対峙する可能性を考えると、地域に根差した児童クラブの運営事業者であっても、それなりに整った各種計画を用意しておきたいでしょう。その場合は、すでに安全計画や業務継続計画を策定して公表している市区町村や事業者を参考にすればよいでしょう。まったく同じものにしてはもちろんダメですが、インターネットでは十数通りの各種計画をみることができます。それらを参考に、自分たちの組織にぴったりくるものを策定すればよいのです。

 その際は、地震や台風、水害という自然災害や新型コロナウイルスのような感染症に直面したときの事業運営計画だけでなく、社会環境の大幅な変化に対しても計画を備えておくべきです。新潟県燕市は、市内の児童クラブに関して安全計画と業務継続計画を策定して公表しています。
(https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/kyoiku/1/2356/16734.html)
 とても参考になりますが、その内容は重大な災害への対応に終始しています。もちろんBCPは重大な災害時においてどのように事業を継続するかを考えることですからそれで当然ですが、これから新たに策定する事業者、とりわけ、指定管理者制度や業務委託でも公募型プロポーザル制度が導入されている地域の児童クラブ運営事業者は、今後も指定管理者や受託者として必ず選ばれる保障がないのですから、社会環境の激変、すなわち運営が成り立たなくなる事象を踏まえて、「組織としての」業務継続計画をも考えておくべきでしょう。児童クラブの運営を任せられなくなったときに事業者として職員の雇用をどう維持していくか、あるいは雇用契約を解消することになるのかについても計画を立てておくべきです。つまり、児童クラブの運営において、何が最も事業運営を阻むリスクなのかといえば、地震や台風などよりも、事業運営の地位を虎視眈々と狙っているライバル事業者の存在です。地域に根差した学童運営団体はもとより、大手の営利の広域展開事業者ですら、互いに競い合ってシェアを拡大しようと躍起になっているのが、今の学童業界なのですから。

 安全計画や業務継続計画は、利用者はもちろんのこと、働いている職員にも安心感を与えるものです。組織はこのように緊急時の対応を考えている、ということが可視化されるわけですから。学童の運営事業者は直ちに、義務化された安全計画のみならず、努力義務であっても事実上の義務化と理解して業務継続計画の策定に取り組んでください。もちろん弊会もサポート可能です。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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