放課後児童クラブの世界で「これは聞きたくないな」という言葉、私の独断と偏見のもとに挙げてみます。
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の世界で、けっこう耳にするけれどそれってどうなの?という、「これは聞きたくないよね」という言葉を、私の独断と偏見で選んでみました。あくまでわたくし萩原の感覚ですので、「ええ、その言葉こそ素敵です!」と思う人が間違っているということでは決してありません。ご容赦ください。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<言葉には真実が宿る>
普段から何気なく言葉を使っていますが、その言葉には真実が宿っています。真実というのが大げさであるとしたら、その言葉を発した、使った、記した人の気持ちや考え、あるいはその言葉がよくつかわれる時代の背景がその言葉と表裏一体となって存在しています。ですので、私は「学童指導員」という言葉は、使うべきではないと考えています。指導員という言葉を見聞きした児童クラブ業界の外にいる人は、「ああ、児童クラブの職員=指導員は、子どもたちを指導する人だな」という印象を持つ可能性が高いでしょう。児童クラブの職員が日々行っている子どもとの関りには指導が含まれるでしょうが、児童クラブの仕事=指導ではなく、児童クラブで行われる仕事の範囲の1つの要素に指導が含まれる程度のものです。言葉1つで相手に誤解を招くような言葉遣いは、こと、正確な理解を妨げると想像できる場合には控えるべきです。「放課後児童支援員ではない補助員を含めて職員全てを指し示すときに、指導員という呼称が便利だから」ではないのです。それは「自分たちが便利」というあくまで自己中心的な考え方です。大事なのは、「外の世界が、わたしたちの世界のことをしっかりと正しく理解、評価してくれるかどうか」です。「その呼び方は便利だし、以前から使ってきたから」というのはまったくもって自分たちだけの都合です。その、己の立場しか考えない姿勢こそ、児童クラブの世界を外の世界が正しく理解し評価することを妨げていることに気付かないのは、誠に残念です。「補助員」ではかわいそうだ、児童クラブにおける無資格者は補助ではないのに、という意見を聴いたことがありますが、職種に関してかわいそうも何もありません。資格がある者とない者を呼称で区別することは合理的です。かわいそうだ、というそいう主観的な意見が幅を利かせる業界が異常なだけです。
「指導する」と「支援、援助して子どもの育ちに寄り添う育成支援」とでは、その仕事の範囲、専門性もまた大いに異なって理解される程度のことすら分からない業界では、今後も、決してその地位の向上に世間の理解は得られないでしょう。
と、ここまでが導入部です。「指導員」という言葉が聞きたくないな、ということを述べているのではありません。本題はここからです。指導員という言葉は聞きたくないのではなくて「使うべきではない」と私は思っていますので。
<子どものためでしょう>
子どものためは、いいんですよ。児童クラブに関わる全ての人が「子どものため」と思っているでしょう。だからいいんですが、「子どものために」本来求められている範囲以上の行動や働きを期待される、あるいは期待するということが、私は嫌なんですよね。なお、自分自身が、自分だけに「子どものために頑張ろう」と思うことはまったく否定しませんが、その場合は、あくまで自分でできる範囲でやってくださいね。それは自己責任です。
問題は自分自身で選択することを事実上許さない、無言の圧力です。子どもが喜ぶから誕生日イベントの飾りつけの材料を自腹(ああ、これも聞きたくない!)で購入して家で作業する。子どものためだから。もうね、そういうことはやめましょうよ。誕生日の飾りつけを一生懸命しているの、それ、子どものためではないですよ。「子どものために一生懸命やっている自分を(他者に)評価されたい、(自分自身で)褒めてあげたい」ことと「保護者によく思われない」「事業者(組織のエラい人)に頑張っていると評価されたい」という、あくまで自分自身の「欲」でしょう、本当のところは。
保護者に使うのも感心できません。保護者は職員の前ではおくびにも出さなくても、子育てに悩み、苦しんでいるかもしれません。それを「子どものために頑張ってね」と安易に使ってしまうと、子育てに悩んでいる保護者を追い詰めることになりかねません。よほど順法意識に欠けていて子どもに虐待を繰り返す保護者ではない限り、「子どものため」に日々生活しているのは当然です。それを「子どものため」とことさらに追い打ちをかけることはいかがなものか。
この「子どものため」は、諸刃の剣です。とりわけ組織の上層部、管理職、まして役員や代表者が部下、従業員等に使うと、子どものためにサビ残を強要するとんでもない誤解を招くことが往々にあるので、慎重に使いましょう。それだけ「こどものため」という言葉は、児童クラブの世界において絶対的な権威を帯びた特別な語句だと私は意識しています。
<一生懸命しようと思っていました。やる気はあるんです>
児童クラブの世界、これは現場の職員にありがちですが、「私はこうだと思っていた」「前向きな気持ちでいました」という言い訳が飛び交うことがあります。第三者が見て「あれれ、ちょっとどうしたのかな?あまり仕事に乗り気ではないのかな?」と思ったとき、後日、そのことについて「乗り気ではないと観察された人」に確認してみると「いや、私はとても前向きな気持ちでいましたけれど」と返事がある。「そんな、乗り気ではないと思われるなんて心外です」と口をとんがらせて言うのですが、児童クラブの世界の人はなかなか理解できないことがあります。先の指導員のことでも共通するのですが、「自分自身がどうだというのは自分自身の中だけで通用することであって、他者の評価にはまったく影響しない」という当たり前のことが理解できない。客観視ができない、ということです。
会議で一言も発言しない人は、会議の主宰者からすると、会議の内容や議題に賛成だからあえて発言しないのだろうと通常はみなされます(または、全くの門外漢だった、あるいはこの会議の内容に追いつけない程度の水準の者であったから次から呼ぶべきではないな、と判断されるだけ)。それをのちになって「私はあの会議で話されたこと、決まったことに反対だった。おかしいと思っていた」という人がいます。私は児童クラブの世界にそのような方が多いなぁと感じますがあくまで感覚的なものです。よって根拠はないのですが、ともかく、「あの会議では私はおかしいと思っていた」「違うと思っていたけれど雰囲気にのまれて言えなかった」とのちに言われても、こちらは「はあ?」と思うだけです。まして理事会、役員会で、それなりの肩書がある者からそういわれるのは、「私は無能です」と今さら自己紹介してるのかこの人は?と、私は思うだけです。
<それは法人(又は社名、団体名、NPOなど)がやってください>
これは児童クラブの世界ではなくてこの世間一般によくあることではないでしょうか。私もかつて勤めていた新聞社で大変よく聞きましたし、自分も発していたでしょう、多分。他の人より回数は少ないでしょうけど。えへへ。「それは会社の問題ですよね」というたぐいの発言です。
これが児童クラブになるともっと増える。というのは、特に児童クラブの現場職員は、その職務を果たす先が子どもであり、保護者であることが多く、「誰のために仕事をしているか」が子どもであるという認識を強く持てば持つほど、「子どもが在籍しているクラブ」に対して自ずと仕事の行きつく先を設定してしまいがちになり、いわゆる忠誠心というものが、自分を雇っている組織ではなくて自分が勤務している、配属されているクラブに向いてしまうのです。そのクラブを維持、運営しているのは自分を雇用している組織、団体、法人なのですが、「自分はクラブの人間」であって「その組織や団体は別の存在」という感覚を持ってしまうのですね。
「それは法人でやってください」「その書類は法人で作成して送ってください」とよく現場職員は口にしますが、「あなたも法人の構成員ですよ。あなたは第三者と対応するときに法人を代表して、法人の看板を背にして対応しているのですよ」と私はいつも思うのです。
これは実は事業者、経営側の失態なのです。つまり雇用している職員を「組織、会社、法人の一員として認識させることに失敗している」からです。そんなことでは、組織の一大事になったとき、全員が一丸となって組織を救おうという意識を高揚させることは難しいでしょう。そもそも児童クラブの現場職員は、クラブの運営事業者が公募や指定管理者の選定の際に代わったとしても基本的に継続して働いてくれることを期待されれていますから、新しい会社や法人にたてつかない限りは仕事を続けられます。よっていざとなったときに困るのは事業経営者だけです。それでいいのなら、現場職員が「それは法人の役割ですよね」と多用するのを気にしないでいてもいいのではないでしょうかね。
もっともっとありますが今回はこの程度です。次回は「これが聞けるとうれしい。泣ける。この仕事でよかったと思う」感動的な言葉、児童クラブで聞きたい言葉を私の独断と偏見で選んでみます。ご期待ください。
<おわりに:PR>
弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)