放課後児童クラブのことを、どんどん世間に伝えよう。良い点も、困った点も。知られなければ、変わらない!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。世間、つまりこの世の中、社会のことですが、放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所もおおむね該当します)に関係する人が思うほど、放課後児童クラブのことは知られていないのです。なぜでしょう。それは、児童クラブの側からの発信が足りないからだと、私は感じています。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<思うほど知られていない、それが世の常>
 放課後児童クラブそのものについては、さすがに子育て世帯には存在を知られているでしょう。「学童」という名称や呼び方で親しまれていると言えるでしょう。問題は、その存在と、その実態が、本来の正しい関係ではなく、一般的なイメージで語られていることです。代表的な例を挙げれば、児童クラブ(学童保育所)=子どもを預かる、というイメージですね。
 確かに外形的では、子どもを受け入れて保護者が迎えに来るまで施設で過ごさせるのですから、預かっているという形です。クラブの職員や運営側、設置する行政側も「子どもを預かる」という表現をごく普通にしています。児童クラブ業界側の者も間違って使うのですから無理はありませんね。私は常々、「ことば」の使い方をもっと正確にするべきだと訴えています。言葉、単語、文字は、その言葉や文字が持つイメージをもって相手に理解されるということを、児童クラブの世界の側は真剣に考えるべきです。「預かる」という言葉を児童クラブ側が使うことで、保護者はじめ一般の世間には「児童クラブは、学童は、子どもを預かってくれる場所」という理解を持ちます。当たり前です。だって児童クラブ側が「預かる」という言葉を使うから。それなのに、児童クラブ側は「児童クラブは子どもが育つ場所です。育成支援を行う場所です」と訴えたところで、「だってあなたたちの世界は、子どもを預かるって言うじゃないの!」と反論されたら、それでおしまいです。児童クラブは子どもの預かり場所ではない、児童クラブの職員は子どもの子守りではない、預かって子どもを見ているだけではない、と訴えたいなら、児童クラブの側から「預かる」という言葉を使わないようにしなければなりません。こんな単純な事すら理解できないのは、私は残念ですね。なお、これは「指導員」という言葉にも当てはまります。放課後児童支援員ですよね?指導員でいいんですか?そんなことだから、放課後児童支援員という資格はいっこうに知名度も理解も上がらないのですよ、と言わせてもらいますね。

 さて以上は前置き。児童クラブの世界は、本来の役割がほとんど知られていないと思ってください。またその実態も知られていないということをすべての前提としてください。児童クラブの側があまりにも複雑怪奇な現状にあることも手伝っていますが、それに輪をかけて「児童クラブ側からの発信が少ない」ことが影響していると私は感じています。

 例えば先日、私のもとに埼玉県内の子育て世帯の方からメールがありました。大規模でとてもひどいのです。民間の学童の入所も考えていますが料金が毎月数万円もします。都内やさいたま市の学童がうらやましいです、と。
 児童クラブの世界に関わっていて、特に運営関係に興味関心がある人なら、「都内のクラブは放課後全児童対策で大規模以上の過密状態だったり児童クラブそのものは小学4年生になると追い出されるところばかり。さいたま市のクラブはそもそも待機児童が毎年多数出ているし、民設クラブは保護者の運営負担が過大で市も問題視した結果として2024年度から事実上の全児童対策事業が始まった」ということを知っているので、「いやいや、都内もさいたま市も、なかなかに厳しいですよ」と、説明できるでしょう。
 でも一般の市民、国民には、児童クラブのいろいろな実態、現状は、分からないのです。これも以前に取り上げましたが、旧ツイッターでの発信で、川崎市民とおぼしき方が、小1の壁がトレンド入りしたときに「川崎市は最高。待機はないし料金も無料」という趣旨の投稿をしていました。放課後全児童対策事業の現実は極めて厳しいものがありますが、その実情について情報が保護者ですらその耳に届いていないのですよ。

 これが、児童クラブをめぐる現実であり、極めて不幸な現実です。

 こんな忠告、耳にしたことがありませんか?「伝えたはダメ。伝えたつもりもダメ。伝わった、でなければならない」。そうです。児童クラブの側は意見を発信していると信じて疑わないかもしれない。でも、伝わっていませんよ。残念ながら。これも以前、運営支援ブログで紹介しましたね、「え、学童って保育士が働いているんじゃないんですか?」と思っていたメディア関係者のことを。児童クラブは学童保育所と呼ぶことが一般的ですが、その「学童保育所」という言葉から、「保育所そのもの」だと理解していたのです。
 世間の、児童クラブへの理解は、この程度だという認識から始めましょう。もっと児童クラブに関して、あらゆることを発信しましょう。

<児童クラブの良いことをどんどん伝えて広めよう>
 児童クラブの良いことを世間に広めて知ってもらうことで、極めてすばらしい利点が生まれます。有利な状況が醸成できるのです。それは、「ダメな児童クラブをすぐに見極めやすくなる。ダメな児童クラブの存在や、ダメな児童クラブを運営する事業者にとって肩身の狭い状況が生まれ、退場に追い込まれやすくなる土壌が生まれる」ということです。

 極端な例では、児童クラブにおける子どもの徹底した管理があります。私が聞いた実例では、「子ども達が私の号令で一糸乱れず行動できるようになった!」と自慢している児童クラブ職員がいます。時には職員が指示して子どもたちの行動をコントロールする場面だってもちろんあるでしょう。しかし、号令で子ども達を意のままに動かせるようになったことを児童クラブ職員としての成果として誇る、またそれを認めている事業所が現実に存在しています。(これは、ダメな例として世間に広めていくべき例ですが、残念ながら、それが正しいと思っている組織に属する人にとっては当然、間違っていると思わないので、残念な例として広めることはありえません)

 しかし、児童クラブでは集団生活として許されない部分を意図的に乱したり壊したりしないことを前提に、子どもの自主性や主体性を育むことを目的として児童クラブ職員はしっかりと制御しつつ子ども達自身の行動を促すことが求められるのです。そのような方針で過ごす子どもたちの様子を世間に広める、伝えることで、「なるほど児童クラブというところは、そういうような形で子ども達が過ごしているのか」という理解を世間に伝え、植え付ける。それが広まって行けば、極端な偏りに終始するクラブ、管理でも放任でもそうですが、子どもの育ちにとってあまり好ましくないクラブは「それちょっと、おかしくないですか?」と、世間(つまり保護者にその立場を期待したいのですがね)から冷ややかな目で見られることが、期待できるのです。

 そのために、職員も事業者も保護者も、良かったと思うことはどんどん発信しましょう。地域に向けて、世間に向けて。良いことを広めるには匿名でもいいのです。「善が悪を追い詰める」というイメージですよ。

<児童クラブの悪いところ、問題点は知られなければ改善されない>
 これは当然、知られなければ誰からも救いの手は差し伸べられません。ここで覚悟が必要です。それは、「目の前でひどいこと、ダメなことが繰り広げられている。存在している。それを知ってしまった」というとき、「誰の味方になるのか。誰を助けなければならないのか」を、児童クラブの関係者は判断できますか?行動に及べますか?ということです。
 子どもだけでなく職員も保護者も違法な行為の対象とされてしまうときがあります。それを誰かが知ったとき、言うなれば、誰かが、誰かの人権、権利が不当に違法に侵害されている状況を知ったならば、それを解消するように人として行動しなければなりません。しかし、「見逃してはいけないことは分かる。でも、自分がそれをしなければだめ?誰か他の人が気付いて動いてくれるかも。私が行動するのは、とても無理」と、目を背けること、多くありませんか?その時点で、目を背けた人も、同罪です。悪いことをしている人と何ら変わりがありません。私はそう決めつけます。明らかな犯罪行為は通報の義務があるので論外ですが、例えばクラブ職員が子どもに暴言を浴びせ続ける、暴力的な振る舞いをしていることを目にしたとき、それをそのまま黙って見過ごすことは、職員であれば職責において失格です。勇気をもって行動しなければなりません。匿名でも通報できます。自分の身分や立場を損なうことなく、他の機関に事態を知らせることはできるのです。

 児童クラブの職員は、給料が低い、休みが無い、仕事がきつい、上司や会社がいい加減で困る、子どものことなんか会社は全く考えてない等々、いろいろな文句を言います。SNSでも時折発信されています。それ自体はまったく問題ないですし、勤め人が会社、勤め先の文句を言うのは古今東西、当たり前です。経営者だって部下のことを愚痴ることだって当たり前です。
 困ったことを愚痴として吐き出して解消するならそれでいいんですが、明らかに法令や社内の規範が求める趣旨と違うことが業務として行われている、あるいは行うことを余儀なくされている場合、それを黙って飲み込む、あるいは単に愚痴として吐き出して終わらせることで、果たしていいのですか?ダメですよ。子どもにしろ職員にしろ、誰かの権利を不当に侵害している又は侵害する恐れがある行為が行われている、行われようとしている、あるいは行われた、という場合は、それを正そうとする行動を児童クラブ職員には行ってほしい。

 児童クラブで働くあなたたちは、健全育成に従事する人たちです。または健全育成に従事する人を雇っている立場ですよ。不正や悪を見逃す、見なかったふりをすることで、健全育成の仕事が務まりますか?と、私は言いたいし、言ってきました。その結果、私は今に至っている訳です、良くも悪くも。それはさておき、「うちの児童クラブはダメだ」と思うなら、それを改善するように行動してこそ、責務ある社会人であり、放課後児童支援員であり、補助員です。

<広め、訴える手段>
 世間にどうやって伝えるか。難しいことではありませんよ。例えば、児童クラブの職員や運営者の振る舞いを対象に考えてみます。
「明らかに犯罪行為である、あるいは犯罪行為と思える」→110番でOK。児童相談所の「189」でも良いです。
「犯罪かどうか分からないが、ちょっとひどいと思う」→お住まいの市区町村で児童クラブを担当している部署に電話、あるいは市区町村の市役所や役場へメールで十分です。
「犯罪ではないと思うけれど、児童クラブの方針に疑問や不信感がある」→これも市区町村の児童クラブ担当に相談しましょう。

 疑問や不信感を指摘する場合は、匿名では、単なる「貴重なご意見ありがとうございます」としてメールや電話を扱った人だけで処理されておしまいとなりがちである、という現実があります。特に市区町村の担当者に向けて伝える場合は、匿名ではゴミ箱いき、と思ってください。実名で伝えれば、相手も「存在している住民からの訴え」ということで結果はどうあれ最後まで取り扱います。
 なお、明らかな犯罪行為の告発はもちろん匿名でいいです。「公益通報」制度を利用する場合はそのルールに従ってください。

 児童クラブで体験したり経験したりしたとっても素敵なことも、あるいは「これはどうかと思う」という疑問や不信も、どんどん世間に発信しましょう。今は個人でSNSを利用できます。でも「自分で発信するのは気が重い」という場合は、ぜひ運営支援にご連絡、ご相談ください。匿名で構いません。「こういうことがあるのです。これはどう思うのか、世間に伝えて反応を知りたい」ということがあれば、私に託してください。まったく自慢できるほどの発信力は持っていませんが、発信力ゼロではありませんから。児童クラブに関する意見や疑問、「こんな素敵なことがあったので、児童クラブの人たちを元気づけたい!」というエピソードがありましたら、どうぞ私あてにご連絡ください。

 児童クラブに関係するみなさま、「運営支援ブログ」を、児童クラブに関する情報発信ステーションとして気軽にご活用いただけますと幸いです。

<おわりに:PR>
 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、アマゾンや楽天ブックスが便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください!事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 現在、放課後児童クラブを舞台にした小説を執筆中です。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説になりそうです。放課後児童クラブを舞台にした小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)