放課後児童クラブに関わる人に必要な意識。それは「時は金(カネ)なり」。そのカネはどこから来ていますか?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に向けてお小言を申し上げます。時間は有効に使いましょうねということ。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<学童のために働いた!気分は気持ちいいですけどね>
 私は子どもが学童保育所に入所したことをきっかけに放課後児童クラブの世界に関わりました。保護者会の会長、運営法人の代表、その地域の連絡協議会にも参加しましたし、児童クラブ関連の会議や会合にはどのくらい参加を重ねてきたでしょうか。その経験を踏まえて申し上げると、「保護者が関わる児童クラブ業界の会議はやたら長い」ということです。

 長いことが全部ダメとは言いません。長い会議では議論が活発に交わされておりそれだけ充実した意見の交換ができており、出席者の児童クラブに関する理解が深まっているのであれば素晴らしいです。そういう会議もたくさんあるでしょう。また、特に保護者運営系事業者や団体の会議では、顔を合わせて意見を交わせる機会が月1回か数回程度しかないためにそれまでに抱えている議案や課題、問題もまた多くなり、それを会議で取り上げると必然的に長い時間がかかることも理由でしょう。

 しかし、保護者系の児童クラブの会議が長い理由を私なりにはっきりと申し上げれば、児童クラブに関することを話すのが好きな人が多くてついいろいろ話したくなってしまいたくなること、問題や困ったことが多い業界なのでそのことについて愚痴交じりの意見を述べたくなること、そして「会議は仕事」という感覚をあまり持てていない方が大多数である、ということではないでしょうか。むろん私の独断と偏見ですが。「会議は仕事」というのは「会議に参加している1分、1秒に、会社の経費が費やされている」ということですが、参加者の多くを占める保護者は基本的に無給で非常勤ですから、経費を使うという意識を持つことはほとんどない。職員も会議に参加していても、実は児童クラブの職員の多くは経済的な観念、コスト意識にはほとんど関心がない、という実態も影響しているでしょう。

 でも、子どものため、保護者のため、職員のため、児童クラブの世界をより改善に導くために、あれこれと話して意見を言い合うのは、楽しいですね。時間をかけていろいろと意見を出し、他の人のいろいろな意見を聴くこともとても楽しい。自分の知見を広げることは喜ばしい。児童クラブのために貢献している、という気分になるのは心地よいものです。

<児童クラブの世界もタイムイズマネー>
 児童クラブについて多くの人が集まって意見を出し合うことは良い事ではありますが、会議は本来、議題や議案について意見を取りまとめる、見解をまとめ上げるということができれば終了です。そのために必要な時間は短かければ短いほど良いことは言うまでもありませんね。まして、何かと予算不足の業界です。2時間かかった会議が1時間で終われば、使われた経費は半分になりますよ。その点に意識が及ぶ人はなかなかいない。私のように常に経費や人件費を念頭に費用対効果を気にして会議を主催していた人に、私はほとんど出会ったことがありません。

 会議がオンラインで、参加者は全員自宅から参加して、会議参加者が全員保護者である、というのであれば児童クラブの運営事業者が支払う経費は無いでしょう。だからといってダラダラと長い間、会議や会合を開くことの是非については、そこに参加している個人の価値観ですからなんとも言いませんが、児童クラブの会議に関するそのような感覚が身に付いてしまうと、職員が参加する会議だったり経費分を児童クラブの運営事業者が負担する会議だったりで、ダラダラと長い会議を開かれてしまう原因になりかねません。

 児童クラブの収入は、保護者から徴収する利用料と補助金(公金)です。それぞれにたいへん貴重な財源です。1円たりとも無駄に使ってはダメだ、という意識を実はしっかり持てていないことが、私は「児童クラブのゆるゆる会議現象」の理由の1つだと考えています。どうしてでしょうね。保護者系の児童クラブの世界は、その参加者の特性ははっきりと二分されているというのが私の持論で、それは「学童大好きな人」と「無理やり、強制で参加させられていてとにかく早く会議を終えてほしい、任期が過ぎてほしい」との区分です。後者にとってはあらゆる児童クラブの会議は苦痛でしょうしできることなら欠席したい。前者にとっては、児童クラブについて話すこと、話したいことがたくさんありすぎて時間が長ければ長いほどよい、ということです。(私も本質的には当然、話すのが大好きです。ぶっつづけで何時間でも大丈夫です)

 しかし、生産性向上こそ今の児童クラブに最も必要なことです。限られた予算をどう有効に使って育成支援の質を向上させていくことか、そのために全力を費やさねばならないのです。会議は無駄な時間とは申しません。事業の方針、施策を決めるのは会議です。会議は大事だからこそ、回数を増やして議題、議案を処理できる限り多くのものを処理することが必要です。そうです。時間が長い会議なら、議論し、合意に至った議題、議案をたくさん積み上げればよい。そうではないのであれば、時間を短くし、回数を増やしていくべきしょう。たまにしか顔を合わせない者同士だからつい話が脱線し、盛り上がってしまう。月1回しか顔を合わせない者より1日おきに顔を合わせている人なら議案の意見交換にすぐに没頭できるでしょう。極端な例で言えば、月1回3時間の会議より、毎週1回1時間の会議が良いし、週2回30分の会議でいいのです。

 残念なのは未だに、金の話、経費の話をすることを嫌がる風潮があることですね。「福祉はカネじゃない」「カネのことばかり言っていたら、やる気が萎えてしまう」ということを言う人がいまだにいることが私には不可思議です。善意があれば電気を使えるのですか?善意があれば働いている職員が暮らせるだけの金銭を支給できるのですか?福祉は金じゃないということを平然と言う人に限って本業は別にあってそこから自分の生活費はしっかりと確保している人であるということが珍しくありません。事業者を運営する立場の者にとっては聞き捨てならない言葉です。会議を開く場所代を確保することだって大変なんだぞ、ということです。

<実りある会議を実現させるために大事なこと>
・時間の意識。大前提です。保護者にだって家事や自分の生活があります。全員が、学童の為なら自分の時間を削っても大丈夫という保護者ばかりではありません。まして職員であれば、会議は通常、仕事です。会議に参加した分の賃金がしっかり支給されているならともかく、児童クラブの世界はそこが無頓着なことが多い。給料も出ないのに、クラブの仕事で疲れて早く休みたいのに、保護者の話で盛り上がっているクラブの会議は本音では苦痛で仕方ありません。時間は有限である意識は欠かせません。

・目的の意識。会議の目的は議題、議案を処理すること。そのために会議の進行が重要です。司会者、議長の役割が重大です。議論が盛り上がってきたときには話が脇道にそれていくことがよくありますが、盛り上がってきたときこそ議論をうまく集約させる技術、ファシリテーションの技術が必要です。児童クラブの幹部職員は、ファシリテーションの研修が必須であると私はかねて主張していますが、児童クラブの世界の会議はとかく脇道にそれることが多い、あるいはそれないまでも持論を延々と主張する職員が珍しくないので、会議の時間を有効に使うために必要な技術であるということです。

・業務の意識。会議は何のため?今後行うことについて方針を決めるため。仕事です。仕事ですから効率が大事です。質も大事です。時間が固定なら、その時間内でどれだけ議題、議案を片付けられたか。議題、議案が固定なら、どれだけ短い時間で議題、議案が片付いたか。それが大事だということを意識しなければなりません。ということは、「段取り」「下準備」が大事になりますね。事前に討議する内容が決まっているなら事前に会議の参加者にその議題、議案について考えてもらってから参加してもらうことが大切です。緊急に討議が必要で事前資料が揃わない場合は、「どこまで、本日の会議で処理するのか。最低限ここまでは議論をして合意をしておく必要がある」ということを、その議題を討議する前に明示し、この議題に費やせる時間もまた明示したうえで、司会者、議長が議論を組み立てていくことが重要です。つまり「会議は仕事」なのです。会議が上手な人は社会人能力が高い人ですね。

・思いやりの意識。保護者系の児童クラブの世界は、誰しもが児童クラブが大好きで運営に関わっているのではありません。クラブにおいてくじ引きだったり断れなかったりで役員になってしまい、興味も関心もない児童クラブの運営に強制的に関わされている保護者だっているはずだ、という意識を特に会議を主催する側は持たなければなりません。そのような人たちに、単なる負担感だけを残して終わるような会議にしてはなりません。いろいろな手法があるでしょうね。分かりやすい会議の進行もそう、議題や議案について全員が知っているはずだという前提ではなく知らない人がいるかもしれないと分かりやすい背景説明から始める(あるいは資料を用意する)こともそうですね。議題や議案についての重要性、専門性に対応して会議の参加者を区分するということも、よく分からないまま参加している保護者には丁寧な仕組みです。全員が参加する会議で取り上げるのではなく会議を分割して例えば専門委員会、常任会議のような専門性や責任の度合いに応じて議題や議案を振り分けていくことです。最後の決定は全員参加の会議で行うことになります。

・意見を言う意識。企業系の児童クラブでは役職が上の者、上司の意見が絶対で、役職が下位の者は「物を申せない」という雰囲気になってしまっていることが想像できます。あるいは、現場職員には「何でも発言してくださいね」と柔らかな雰囲気を打ち出していっぱい意見を言わせても、実はそれを基に組織の方針や施策が決まることは全くない、つまり「ガス抜き」として会議が利用されていることもあります。方針はすべて上で決まっている、現場はいくら言っても無駄だ、という意識にさいなまれます。でも、あきらめてはダメです。たとえ効果が期待できなくても、これはおかしい、これは賛成だ、という意見は言わねばなりません。自分の主義主張を明確にしておくことは社会人として当然です。よく「言った、言わない」で揉めることがありますが、「明確に言った、発言した」ということが誰から見ても明らかなら、言った言わないの問題はおこりません。常に意見を言う、はっきりと主張することは児童クラブの世界に欠けている姿勢です。意見は必ず言いましょう。会議に参加して何も言わなければ「仕事をしていない」のと同義ですよ。会議を進める立場の人は、意見を言い出しにくそうにしている人から積極的に意見を吸い上げましょう。それもまた仕事です。

 確かに児童クラブの事を話すのは、児童クラブの事を真剣に考えている人、この業界をより良くしていきたいと願う人にとっては、本当に楽しい時間です。であれば、会議とは別に時間を取って意見懇談会でも開けばいいのですよ。でもそういうことはあまりないんですね。保護者役員や職員がそう頻繁に集まれないということもあるでしょうが、月に1回ぐらいなら意見懇談会ぐらい設けられるでしょう。議題や議案に沿ったこと以外を自由に意見しあえる場もまた参加者同士の相互理解に重要ですから、それもまたよりよい組織運営を助ける効果が期待できますね。

<おわりに:PR>
 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。お近くに書店がない方は、ネット書店が便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
(関東の方は萩原から直接お渡しでも大丈夫です。なにせ手元に300冊届くので!書店購入より1冊100円、お得に購入できます!私の運営支援の活動資金にもなります!大口注文、大歓迎です。どうかぜひ、ご検討ください!また、事業運営資金に困っている非営利の児童クラブ運営事業者さんはぜひご相談ください。運営支援として、この書籍を活用したご提案ができます。)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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