放課後児童クラブには保護者会(父母会)が絶対に必要ですか?
放課後児童クラブ(地域によっては学童保育所や、学童クラブといった様々な名前が付いています)に保護者会(父母会)が絶対に必要かどうかを考えるのは、運営形態と規定を考えることが必要です。形態や規定の内容によって、保護者会が絶対に必要な場合があります。また、保護者会が無くても問題が無い場合も当然あります。
保護者会が存在しなければならない場合は、放課後児童クラブの「運営主体」に保護者会がなっていること、つまり放課後児童クラブを運営する事業者と保護者会が同一である場合です。この場合、保護者会が放課後児童クラブを経営しているということになりますから、保護者会を無くすことは児童クラブを無くすか、他の団体や法人に運営を代わってもらうことを意味します。また、そのような児童クラブを利用する保護者は、特別な規定を設けない限り、保護者会の会員になります。利用者と運営者が同一である、ということです。
それ以外の場合は、運営主体によって保護者会がどのように位置づけられているかによって異なります。放課後児童クラブという事業を営むにあたり、必要な業務を一部でも保護者会が担っていることが規則規程上で決められている場合、保護者会を無くすことは、その規則規程を変更しない限り、できません。例えば、閉所時刻を過ぎて子どもの迎えに来た保護者から時間外料金を徴収するがその徴収を保護者会が業務として引き受けている、という場合があてはまります。規則規程を変えて保護者会以外の仕組みで時間外料金を徴収することになれば、保護者会はその限りにおいて必ず存在しなければならない理由は消滅します。
市区町村によっては、独自に設けている決まり(条例や要綱など)で、保護者会を児童クラブに設置する、と規定されていることもあります。この場合は、行政がそのルールを変えない限り、保護者会をクラブの運営主体独断で無くすことはできません。
組織運営において必要な業務を担うことが運営主体が設けたルール上、義務づけられておらず、市区町村もまた条例や要綱などで保護者会の設置を義務づけてはいない場合は、保護者会の有無によって放課後児童クラブの運営に影響が出ることはないので、保護者会を置くかどうかは、その運営主体の判断によります。
保護者会が必要なのかどうかは、業務運営上において必要となっているかどうかを判断し、特に設置が義務となっていない場合は、保護者会が本当に必要なのかどうか、保護者会の存在に合理的な理由があるかどうかを事業者が判断することになります。それは最終的には、保護者ひとりひとりの意見を集めて判断されるべきものです。保護者会に期待される役割は事業運営だけではありません。児童クラブにおける子どもの育ちの環境をどうしていくか、どのような方針で子どもの育ちを支え、関わっていくかを保護者の立場として関わっていくことは本来的に子育ての一環として必要なことです。個々の保護者が持つ、児童クラブにおいてこうして子どもが育っていってほしいという希望や要望を取りまとめ、調整し、実際の事業に反省させていくことが必要となった場合に実に有用な存在となります。(もっともそれは、組織体としての保護者会の存在が前提ではなく、適当な機会に保護者が集合して意見を取りまとめる形式でも実現可能でしょう)
なお、放課後児童クラブは国が規定する児童福祉サービスですから保護者会の設置が任意になっている児童クラブにおいて、保護者会に加入しないからといって児童クラブが提供するサービスにおいて、加入している世帯と差別的な対応をすることは許されません。一方で、保護者会が運営主体となっている児童クラブで、児童クラブを利用したいが保護者会には加入したくないという場合の判断は大変困難です。児童クラブを設置している設置主体が市区町村であれば市区町村の判断になるでしょう。また、設置主体が民間であり運営も民間である場合はその事業者が決めているルールに従わなければその事業者が提供するサービスを利用できないのは当然です。ただし、民間が設置して民間が運営していても、その運営には国や行政からの補助金が交付されているという場合は大変複雑な判断が求められます。一概に可否を決められるものではないでしょう。
そのようなトラブルがいつ起きるか分かりませんので、保護者会が運営する児童クラブであっても、実際に運営の役割を担う(=運営責任を負う)保護者と、そうでない保護者のどちらを選べるかについての任意性を確立し、「やれる人がやれることをやる。できない人に無理に押し付けない」などの工夫が必要でしょう。
(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)