放課後児童クラブで、こどもたちが過ごしている様子を見たことがありますか? ざわざわして過ごしている様子が実はスゴイのです。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」がアマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください!
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伝統的(=運営支援ブログが指す伝統的な放課後児童クラブとは、放課後児童健全育成事業のうち、より「遊びと生活の場」を重視している形態の児童クラブ)な放課後児童クラブの様子のうち、こどもたちが下校して児童クラブにやってきてまだ間もない時間帯の様子を見たことがありますか? まだ保護者のお迎えが多くないのでこどもたちの人数が多い時間帯です。だいたい、宿題をしている時間であることが多い時間帯です。その時間帯にこそ児童クラブの「質の状況」が現れているのです。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<ざわざわしていても、決して乱雑ではない>
放課後児童クラブはいろいろな運営のスタイルがありますが、学習や運動、芸術など知識や技能を教えることを重視したり、企業の本部が作成した児童育成プログラムのような日々の時間割を忠実に実行したりする児童クラブでは、こどもが児童クラブに登所してから親の迎えで帰るまでの時間のうち多くの時間を、職員の指示や指導に従って行動することが往々にして見られます。場合によっては、私語を一切許さない時間すらあるようです。職員の指示や命令によって、その場にいるこどもたちが一斉に指示命令された内容を実行する。
一方で、伝統的な児童クラブの場合は、こどもはクラブに登所するとたいてい、ランドセルやカバンから勉強道具を出して宿題を始めます。あるいは室内で本を読んだりゲームをしたりして過ごします。上の学年が順次、登所してきてこどもの数がそろうと、おやつがある場合はおやつの時間になり、おやつがない児童クラブ(=それはそれで問題だと私は思うのですが)では外遊びに出かけることが多いようです。
こどもたちが登所してきてまだ間もない時間帯の児童クラブの様子は、職員は当然知っていますが保護者の多くは実はあまり見たことがないでしょう。午後2時台から午後4時台前半の時間帯です。つまり、仕事がよほど早く終わってお迎えにでも行かないかぎり、目の当たりにする時間帯ではないからですね。
そのような時間帯、こどもたちは、室内に並べられたテーブルに座って教科書やノートを開いて、隣や近くに座っている友達と話をしながら、「わいわい」とはいかないまでも「わさわさ」としながら、「がやがや」とはいかないまでも「ざわざわ」とコミュニケーションを取りながら、思い思いに宿題に取り組んでいます。あるいは、読書をして過ごしています。宿題をしているこどもが多い時間帯はたいてい、宿題が終わったこどもはゲームなどはしていません。宿題をしているこどもの気が紛れてしまうからですね。
このような状態を目の当たりにした、児童クラブの実態をあまり知らない大人の人はどう思うのでしょうか。私は仕事がら、そのような時間帯に訪れた大人の感想や印象を数多く聞いてきました。たまたま用事があって早く迎えに来た保護者や、視察に訪れた地域の議員、また行政パーソンといった人たちからですが、たいていの人は「けっこう騒がしい中で宿題しているのですね」「なんかこう、ビシッとした雰囲気じゃないと宿題に身が入らないのでは?」「ところどころで立ち上がっている子がいるけれど、大丈夫なの?」という反応を聞くことが多かったですね。
つまり、「ビシッと、しっかりと、こどもたちをまとめていないのではないのか?」という不安や心配を抱いてしまう、ということでしょう。
心配ご無用、です。むしろ、そのような状態になっていること、児童クラブ側からすれば「そのような、ざわざわとしている状態にさせていること」は、実はとても難しいことなのです。そのような状態を続けられることこそ、その児童クラブの、とても高い質の水準が現れているのです。
<大人の視線は「管理」に偏りがち>
ざわざわと私語を交えながら宿題をしたり本を読んだりしている児童クラブのこどもたちをみて、大人たちの中には「集中できているの?」と疑問を持ちがちなのですね。宿題をするときは黙ってノートに向かって集中して問題に取り組む。黙って鉛筆を動かす。本の世界に集中しながら読書する。それが、大人の考える「理想的な、こどもの宿題の向き合い方。読書の作法」なのです。それを児童クラブのこどもたちは、隣の子や向かいの子と会話をし、時にはちょっかいも出しながら、笑いながら、宿題をしたり本を読んだりする。その様子を見て、大人は「集中できていない!」と不安になり、「この児童クラブは大丈夫なのか? ここの児童クラブの職員は、こどもをほったらかしにしているのか? こどもたちをまとめる技量がないのか?」と、不安や疑念を抱くのですね。
そういう大人は、無意識に、大人にありがちな「こどもは、大人の管理下で統制されて育つもの、過ごすもの」という考え方に支配されて、ざわざわしている児童クラブの子どもたちを見て、不安に思うのです。でも、よく考えてみてください。そんなことを考える大人のみなさん、仕事の時は四六時中、私語を一切せず他人とコミュニケーションを取ることなく過ごしていますか? もちろん、私語厳禁な時間帯があるでしょう。大事な会議の時に私語はしませんね。しかし、そういう時間帯だけではないでしょう。同僚とたわいのない会話をする時間、まったく無いのですか? そんなことは、まずないでしょう。 大人はつい、「こどもはこうあるべき」という模範を目標に、そういう状態になっていないこどもたちの様子を見て「あれはいけない」とダメ出しします。たったひとつのその状態の時間帯にいるこどもたちの様子を切り取って。まず、そのようになっていないかは、自分自身を常に振り返ってもらいたいところです。常に管理されている状態が人間にとって自然な時間ではない、ということは理解してほしいところです。
しかし、もっと大事なことがあります。ざわざわの状態こそ普通であり、その普通の状態を維持できることが実はとてつもなく難しいということを知る、ということです。
<ざわざわの状態を続けられることこそ、児童クラブの高い水準の状態を示している>
実は簡単なことです。児童クラブで宿題をしているこどもたちがざわざわしながら宿題をしているということは、「いま、じぶんたちは、こういうことをする時間帯だ」ということを、しっかりと理解していればこその、ざわざわタイムです。宿題をする、という本質的な目的、目標のことをしっかり理解し、その目的、目標を達成しようとしているのです。そこを決して、逸脱していない。このことが重要です。
これが、その時間において必要な目的、目標を達成しようとしてもその状態を続けられない、逸脱してしまうこどもであれば、どういうことになるでしょうか。児童クラブであれば、宿題をする時間であっても室内で暴れまわったり、外へ出ていったり、あるいはノートや筆箱など物を投げたり、他のこどもにけんかをふっかけたりと、職員の指示に従うことはありません。それこそ、手の付けようがない、乱れ切った状態のクラブになるでしょう。
こどもが、そのような状態になるのは実は簡単です。こどもって、やはり大人とは違って、自制心や自身の欲求をコントロールする力がやはり足りない。これは成長途上なので当たり前です。楽しいこと、面白そうなことがあればこぞって参加したがるものです。そのようなこどもたちが、児童クラブで暴れたり好き勝手に行動することなく、ざわざわしながらも宿題をしたり、室内遊びをしたりする時間を過ごしているということは、「こどもが自身の目的、目標を達成することを忘れずにそのことに取り組んでいる状態を維持している」ということなのです。
これが、どれほど困難なことか、児童クラブの職員や運営に関わるものは当たり前に知っています。「こどもは、大人の指示や言うことに、そう簡単に従うものではない。まして、本来は楽しみではないことについてはなおさら」ということを。
児童クラブでの宿題タイムで、こどもたちがざわざわしながらも宿題に取り組んでいる様子とは、実のところ、「こどもが、今は自分はこういうことをするべきなんだ」ということをしっかり理解してその時間を過ごしているということ。
そしてそれは、こどもたちに「自分たちは、こういうことをするべき時間であるときは、こういうことをするんだ」ということをしっかりと理解させて実践させることを実現した、児童クラブ職員たちの、日ごろからのこどもたちとの関わりの上に成立している、いわば奇跡的な時間でもあるのです。児童クラブの職員であれば、当然ながら実現させなければならないことではありますが、児童クラブの職員ではない人が、児童クラブにいる大勢のこどもたちに宿題に取り組むよう促したところで、ざわざわどころか、とても収拾がつかない状況に陥るのが関の山なのです。
宿題のざわざわタイムが、ざわざわタイムを維持できている児童クラブは、職員の技量、またその児童クラブが培ってきた雰囲気の継続において、とても質の高い状態にある、と考えて間違いありません。
保護者さんは機会があれがぜひ、早めに児童クラブにいって、その時の様子をみてください。その様子で、児童クラブのレベルが分かるのですから。
<こどもたちの自主的なバランスを壊すものは>
こどもたちは、児童クラブで過ごすにあたって、もちろん大人たち=児童クラブ職員たちの指示や指導に従って日々、行動しています。これも軽く考えられがちですが、こどもは、「この場において、この人は信頼できる」という人の指示や話すことでないと、なかなか受け入れません。つまり、お願いしたり指示したりしたことに従ってくれないのです。宿題をしよう、と声をかけても、見ず知らずの、あるいは職員であっても信頼していない人の言うことには、素直に従うことはなかなかないのです。
つまり、職員がすぐに辞めてしまって相次いで新しい人が職員としてやってくるような状態では、こどもはなかなか、職員の指示や指導に従いません。それこそ宿題の時間であっても、「あんなやつのいうことなんてあっかんべー、だ」としてざわざわどころかめちゃくちゃな騒動になります。職員が定着しない児童クラブのこどもが「荒れる」というのは、事実です。
ベテランの職員がいても、こどもたちが落ち着かない状況で代表的なものは「大規模」です。これはもう、こどもの取り組みの意思も、おとなの対応も、とても効力を発揮しない、効果をぶち壊してしまうものです。1つの部屋に60人、70人もいるような児童クラブでは、ざわざわの状態が大規模による集積で「超がやがや」になってしまい、こどもたちはイライラして集中できなくなります。職員がいくら「いまは宿題の時間だから座って取り組みましょう」と声をかけても、こどもたちはその声に従えません。こどもの受忍限度を超える、ということです。これはまた職員にとっての受忍限度も超えてしまいます。大規模は本当に、ひどい状況です。大規模クラブでこどもたちが「荒れている」のは、これはこどものせいでも、職員のせいでもありません。大規模状態を許している国と市区町村の責任であって、大規模状態のこどもと職員はともに被害者である、と思ってください。こどもと職員を「なんですか、この状態は!」と責めないでくださいね。現実的に大規状態で、しかも職員数がそれほど増やしてもらえない場合、こどもの身体的な安全を守る、つまりけがをさせない、トラブルを起こさないようにするには、最後の手段である「強烈な管理的手段」を児童クラブ側は発動するしかありません。それこそ、私語を一切許さない、こどもが自分の意志で行動することを許さない時間帯を大幅に増やす手法だけしか、使いようがないのです。そんな監獄のような児童クラブが少しでも減るよう運営支援は大規模解消を訴えていきます。ざわざわしながらも宿題を楽しみながらやっているこどもたちがいる児童クラブが少しでも増えていきますように。
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弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。
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放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。
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弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。
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「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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