小学生を無差別に狙った酷い事案。放課後児童クラブの世界は、どんな要請にも対応できるようにしておこう。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「運営支援」を行っている「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブを舞台に、新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描く、成長ストーリーであり人間ドラマ小説「がくどう、 序」を書きました。アマゾンで発売中です。ぜひ手に取ってみてください! (https://amzn.asia/d/3r2KIzc) お読みいただけたらSNSに投稿してください! 口コミ、拡散だけが頼みです!
 2025年5月1日、大型連休の谷間に、こどもが被害者となる酷い事案が起きました。下校中のこどもたちに大型SUVが故意にぶつかったという事案です。ショッキングな事案で報道が相次いでいるのも分かります。この事案を受け、わたしは放課後児童クラブのことを考えました。
(お知らせ:きたる5月4日と5日は、当ブログの更新を休止します。奈良へロングドライブの予定です。大仏と、シカさんと、法隆寺と、石舞台を見学したいと楽しみにしている運営支援です。なおブログは6日以降に再開します。)
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<報道から>
 小学生が狙われる事案や、巻き込まれる事故は残念ながら発生がやむことがありませんが、今回の事案はしばらくの間、放課後児童に関わる人々の脳裏に残るでしょう。この事案を伝えるNHK NEWS WEBが5月2日午前5時42分に配信した「大阪 小学生7人負傷「ひき殺そうとした」無差別に狙ったか」との見出しの記事を一部引用します。
「大阪・西成区で小学生7人を車で故意にはねて重軽傷を負わせたとして逮捕された28歳の容疑者が「数人の小学生をひき殺そうとした」と供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。現場では車が小学生の列に寄っていき、次々とはねる状況が目撃されていて、警察は子どもを無差別に狙った疑いもあるとみて調べています。」
「当時、7人の児童は北から南へ道路の右側を列になって歩いていましたが、後ろから来た容疑者の車が子どもたちがいる右側に寄っていき、次々とはねる状況が目撃されているということです。現場は小学校のすぐ近くにある一方通行の市道で、警察は現場の状況や供述などから容疑者が子どもを無差別に狙った疑いもあるとみて調べています。」(引用ここまで)

 命を奪われる最悪の事態にはならなかったとはいえ、被害に遭ったこどもの中には、顔の骨を骨折した人がいるとも報じられています。心の傷もかなり重いものでしょうし、顔の傷の跡がのちのちまで残るとしたらそれは被害者をずっと苦しめることになります。殺人にまで至らなくて不幸中のナントカではありますが、決して軽微な事案ではありません。

 世間に衝撃を与えたのは、報道で伝えられた次のような内容が影響したのではないでしょうか。自暴自棄になった被疑者がその対象として「こどもに向けた殺意を明確に持ち、それをこどもに向けてぶつけた」ということと、事案に使用された自動車の大きさです。大型のSUVで、こどもたちを殺めようとぶつかっていったという冷酷な行為を、報道に接した人が頭の中で思い描いたときのその描写の残酷さに衝撃を覚えたからではないでしょうか。

 小学生を狙った事件、巻き込まれた事故は残念ながら無くなりません。今回の事件を伝えるテレビ報道では大阪・池田小の事件のことや、川崎・登戸での事件を伝えていた局がありました。私がいまも覚えているのは、2017年に千葉県松戸市で登校中の小学生が殺害された事件や、2018年に新潟市で下校中の小学生が殺害された事件です。新潟の事件では、国が登校下校ルートの安全確認を行うよう関係機関に通知していて、児童クラブもその対象となったので、私も緊急に危険個所の点検を行った記憶があります。交通事故になるとそれこそ数が多すぎて、しかも事故の初報は伝えられてもその後の経過は報道されないことが圧倒的に多いので、その後が気になっている事故はそれこそたくさんあります。

<こどもが狙われたら親として児童クラブを利用したいと思うのは当然だ>
 今回の事案のようなことは大変ショッキングではありますが、日常茶飯事ではありません。皮肉ですがめったに起きないのでショッキングなので、今回の事故を取り上げて「国や自治体は何をしているんだ! こどもの安全を確保するうえで失態があったのではないか?」と責めても仕方ありません。ただ、「模倣犯」には注意が必要です。得てして、事案がショッキングであればそれに触発された者が同種の行為を起こす可能性はあります。
 もちろん、交通安全の備えは常に改善、充実させていくことが国と自治体には求められます。登下校路にガードレールがないとか、狭い道路で歩道がないとか、スクールゾーンの措置(登下校時間帯の通行止め)が十分だったのか、それは今回の事案に関わらず常に国と自治体に対して、こどもと限定せずに「歩行者の」安全の確保の措置が十分であるのかどうかを常に点検し、改善を求めていくことは当然ながら必要です。

 ただ児童クラブの側も、児童クラブを設置している市区町村なども、こどもの安全確保には常に敏感でいていただきたいと私は考えます。例えば今回の事案を受けて、「下校路を通らせるのが不安になった。ちょうど児童クラブが学校敷地内になる。不安が収まるまで児童クラブを利用したい」という要望が届いたとします。私は、その要望にはできる限り寄り添っていく、要望を受け入れる姿勢が必要だと考える立場です。たとえ定員超過の状態であっても、臨時的な措置として受け入れるべきだとします。大規模状態の児童クラブは「悪」の状態であることは疑いませんが、少なくとも二度と取り返せない「人命」は確保できる可能性が格段に高まります。当分の間はどのぐらいなのかは自治体ごとに決めるとして、こどもの命をまもりたいという保護者の願いを、「入所申請期間ではありません」とか「児童クラブはもう満員で入れません」といった、機械的な理由でそっけなく排除するような姿勢は、私は人間性に欠ける恥ずかしいふるまいと感じます。

 極めて衝撃的な事案や事故の影響で、児童クラブの利用に関してとても多くのニーズが寄せられた場合であれば、必要に応じて小学校の特別教室を使用できるようにするとか、近隣の空き物件を行政が補助を出して借りるとか、「こういう場合には、こういう対応をする」という事前の計画や構想を、児童クラブ側や市区町村は、保持していただきたいと運営支援は申し上げます。

 私の実体験でもこうした緊急の利用申し込みに対応したケースがありました。それこそ深刻な事由でしたので詳細は記せませんが、こどもの安全を守る人権上の問題であり人道的な措置なので申請を受けたその場で入所を認めました。おそらくは児童クラブを運営していればそのような緊急に入所をお願いしたいと相談してくる事例は数年のうちに一度や二度、経験しているのではないでしょうか。決して珍しいことではないのです。

<留意するべきことは、こどもの人権を守るための冷静な対応>
 こどもの命を守ることは、人権を守るうえでそれ以上にない重要なことです。今回の大阪の事故のようなショッキングな事案は模倣犯が懸念されますし、地域コミュニティが住宅地や都市部ではほぼ壊滅していることを考えると投稿や下校するこどもたちを「見つめている地域の大人の目」が格段に減っているのでこどもたちに忍び寄る危険を早期に察知し排除することもできません。 まして、大地震などの天災は被害を減らす「減災」の程度によって効果を期待できますが発生そのものを防ぐことは不可能です。

 種々の不安で一時的に児童クラブを利用したいと考えた保護者のニーズにはできる限り応じていくこと。そのために常に余裕を持った入所児童、登録児童にしておくことが必要で、そうなるとやはり「量の整備」は必ず自治体が進めておく必要があります。このことは大前提として運営支援は指摘します。粛々と児童クラブの量の整備を進めるべきです。

 わたしは、放課後の全ての児童を児童クラブで受け入れるべきだとは考えていません。非現実的です。ただし、希望する世帯がちゅうちょなく利用できる状態を保っておくべきだと考えます。
 また、今回の大阪の事案は下校路で起きました。これは、児童クラブについて考えると、児童クラブの立地の場所について議論となる観点です。小学校敷地内に児童クラブがあれば少なくとも今回のような事案に巻き込まれることはなかったわけです。(もちろん、故意にこどもを狙って犯罪行為を企図した者が小学校敷地内に侵入してくればそれはなかなか防ぎようがないのですが)
 児童クラブが小学校敷地外にあって、登所ルートに危険がある場合においては改めてその危険性の軽減、除去の実現に向けて関係各位に相談したり申し入れたりする行動を起こすべきでしょう。ガードレールや歩道、登所ルートにおけるガードマン配置、信号機の設置などです。わたし自身としては、児童クラブの立地については種々の利点、不便な点を考慮すると「小学校の隣接敷地に別棟で建っている施設で、小学校の敷地内部を移動して児童クラブ敷地内に到達できる施設」が理想的だと考えていますが、なかなかそういう施設を整備するのは難しいでしょう。量の整備が重点であればなおさらで、小学校の余裕教室であろうが、徒歩10分かかる場所にある建物のテナントであろうが、できる限り、登所ルートにまつわる危険性を除去、軽減する工夫をしつつ、こどもの居場所を確保することに重きを置いてほしいと考えます。

 一方で児童クラブの事業者も市区町村も、「臨時に入所を認める事例」に対応するルール、規定を備えておくべきでしょう。委託や指定管理、また事業への補助としても公の事業を代行して行っているということに基本的には変わりがないのですから、現場の判断で何でもOK、としてはなりません。臨時入所であっても事前に備えられた規定、ルールにのっとって対応をすることや、事後に組織の運営機関、議決機関で必ず承認、賛成を得るという手続きは必要です。「困った人にすぐに対応できた。うちのクラブって偉い、スゴイ」で喜ぶのは素人サークルのレベルです。保護者からいただいたお金、税金からなる補助金を得て運営しているのであれば、どんなイレギュラーな事態であっても最後にはその組織、団体が持っている規定類によって処理されることが必要です。法治主義です。責任者が専決で速やかに決めることと、その専決の決定、処分を組織、団体が吟味して可否を判断することはセットで必要です。児童クラブの事業者はこのことを意識しておくべきです。

 時には、こうしたショッキングな事案だけでなく地域に変質者や性犯罪者が出没したときに、地域の保護者から「児童クラブが責任をもって送迎してください。パトロールをしてください。うちの子にもし何かあったら児童クラブの責任ですからね」と厳しい申し入れが寄せられることもあります。児童クラブとして対応できる業務外については、当然ながら「そのことは業務ではない」と断ることになります。「万が一のときは訴えますよ!」と言われても、別に困ることはありません。誰が誰を訴えるのかは自由ですから、業務外のこと、責任が及ばないことに対して「訴えられたら困る」と思う必要はありません。かといって機械的に「無理です。うちは関係ありません」と取り合わないのは賢い対応ではないので、親身に相談に乗る口調で「それは役所の〇〇課、そのことは警察本部で、そのことは都道府県の事務所ですね」と、矛先を「他に向ける」ようにスマートに誘導しておきましょう。冷静に、かつ、丁寧に。
 実際、交通安全の施設の整備やパトロールは自治体の仕事ですからね。

 こどもを守るための施策は幅広い。なんといっても児童クラブそのものが、こどもを守るための仕組み、社会インフラです。歩道やガードレールの整備も大事ですし、児童クラブへのさらなる予算もまた必要であることを、何度でも訴えていきます。

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 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 放課後児童クラブを舞台にした、萩原の第1作目となる小説「がくどう、序」が発売となりました。アマゾンにてお買い求めできます。定価は2,080円(税込み2,288円)です。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員・笠井志援が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、群像劇であり、低収入でハードな長時間労働など、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。素人作品ではありますが、児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作に向いている素材だと確信しています。商業出版についてもご提案、お待ちしております。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

(宣伝です:放課後児童クラブのエアコン機器の点検と清掃を考えている方に朗報です。弊会をバックアップしてくれている、埼玉県上尾市の「SVシステム株式会社」(埼玉県上尾市の電気・空調設備施工管理会社|点検・修理・メンテナンス|SVシステム株式会社)が、「児童クラブ限定」で、格安にエアコン機器の点検と清掃を承ります。上尾市に比較的近い地域であればお伺いできます。見積はもちろん無料です。技術者のスキルは超一流。私が以前、児童クラブ運営事業者だったときからの長いお付き合いです。弊会お問い合わせメールで連絡先をお送りいただければSVシステム社に転送いたします。直接のご連絡も、もちろん大丈夫です。夏前にぜひ、エアコンの点検を!)