小さな事業規模が多い放課後児童クラブ。将来を見据えて連携を強化しよう。まずは職員の合同研修会から始めては?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブの世界はいま、二極化しつつあります。各地で児童クラブを運営したり介護や学習塾の事業者が進出してきたりで、比較的規模の大きな事業者が児童クラブの運営に乗り出している一方、1法人・1団体が1クラブや数クラブ程度の、とても小さな事業規模の事業者による児童クラブもまだまだ全国各地に残っています。公営クラブもありますが民営化が急速に進展し、規模の大きな事業者に吸収されつつあります。このような状況で運営支援は、1つの運営事業者が手掛けるクラブが1つや数クラブという、とても小さな規模の事業者に呼びかけたいのです。「ほかの事業者と連携を強化していきましょう」と。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<連携強化が必要だ>
 なぜ連携強化が必要なのでしょう。それは、事業規模の拡大によって「事業の質の底上げ」がより容易に達成できるようになると考えているからです。「事業の質」とは、「育成支援の内容」も含みますし、「職員の雇用労働条件の向上による安定した事業運営の継続の達成」も含みます。要は、子どもと保護者への支援、援助の質の向上と、事業運営に関する方面の改善の2方向です。

 なぜ可能になるのか。それはひとえに、事業規模の拡大による予算規模の拡大です。収入が増えます。支出も当然増えますが、収入が増える面と、支出が減らせる面が事業規模の拡大で見られるからです。放課後児童クラブの補助金は「支援の単位」ごとに算定、交付されるものが多いですが、事業規模が拡大すれば通常は支援の単位が増えますから、入ってくるお金は増えます。雇う人が増えますし管理運営する施設が増えるので支出は当然増えますが、単純に考えて、5人の職員に対して行う施策と200人の職員に対して行う施策が同じ内容であれば人数が多くなればなるほど1人あたりに投下するコストは減ります。研修や教育のコストがまさにそうです。もっと分かりやすいのは物品の購入です。まとめ買いをすれば単価が下がるのはこの世の常識。ファーストガンダムではないですが「戦いは数だよ兄貴」は、まさにビジネス面に通用するのです。

 私は、事業規模の小さな児童クラブ運営事業者であって、まして保護者や職員の意見を大事にしたい、地域に根差した運営事業者の理念をなるべく生かしつつ、1事業者1~数クラブの小さな事業規模の事業者ができる限り早期に統合、合併、合流するべきだと考えていますが、一気にそこまでたどり着くのはなかなか難しいのも承知しています。ですので、まずは小さなことから連携して、「一緒に活動する」経験を重ねていくことが大事であると、考えています。

 合流、合併ありきの連携と言われれば、そうです。ただ結果的に合流、合併といたらなくても、それはそれで構いません。冒頭で述べた私見の、児童クラブ業界の二極化はますます加速し、小さな事業者はいばらの道を歩むことになると考えていますが、今まであゆんできた道も、いばらの道でした。それが続くだけの話です。自身の選択でその覚悟をもって我が道を行く事業者もまた、崇高なその理念は高く評価します。ただしそれが、職員や保護者、まして子どもに犠牲や負担を強いて行われるのであれば、それは間違っていると指摘はしますが。

<最初にできる連携は、研修だ>
 私は「市区町村データーベース」として全国の市区町村における放課後児童クラブの実態を、公開資料である市区町村のホームページやインターネット検索で得られる公開情報をもとにとりまとめる作業を続けています。その中ですでに明確となっているのは、1つの市区町村の中で、公営クラブは別として、事業規模の大きな事業者が地域内全ての児童クラブを独占的に運営していたり、複数の、事業規模の大きな事業者が地域内の児童クラブを分け合って運営している地域があることと、1つの事業者、それはおそらく保護者運営に由来する事業者でしょうが、1つないし少数の児童クラブを運営していて、地域内にかなり多数の事業者がある地域もまたあるという、まさに二極化です。

 たとえば、愛知県豊田市は人口41万人超の大都市ですが、公設民営クラブに関しては(株)トライグループ、(株)ホーメックスといった広域展開事業者が市内多くのクラブを運営していますし、福島県郡山市は人口32万人超の大都市ですが、80を超える公設民営クラブのすべて(株)明日葉が運営しています。
 一方、長崎市は人口38万人を超える大都市ですが、事業規模の小さな児童クラブ運営事業者が多数存在しています。大きな都市でも公設公営のクラブが多い地域、例えば岐阜県岐阜市がそうですが、そのような地域は遅かれ早かれ民営化に踏み込むと私は考えています。その際は広域展開事業者が多くのクラブを引き受けることになるでしょう。

 小さな事業者は、保護者運営系か、地域の保育所や認定こども園に併設された社会福祉法人・学校法人系に大別されます。私はこの2つの形態とも、いずれは、合流してまとまっていく大きな流れができると想像しています。保護者運営系は、「年々増える、法令上の義務や補助金の複雑さ、共同作業への理解の希薄化の進行から、保護者運営の負担が限界を超えて運営をあきらめる」流れがさらに加速するでしょう。この流れは、日本版DBS制度の導入が決定的な影響を及ぼすでしょうし、ストレスチェックの全事業者の義務化もまた、保護者運営では手に余る業務負担ですから、純然たる保護者運営(たとえ職員が運営に加わる、あるいは実質的に職員が運営の作業を引き受けていても同じこと)は、いずれお手上げとなるでしょう。その先は、単なる任意事業として希望者や賛同者のみを対象とした児童クラブ運営になるということです。(実はその将来像をすでに見せているのが、川崎市の現状なのでしょう)
 社会福祉法人や学校法人による児童クラブは、特に地方都市に多いですが、こちらは急激な少子化進行による経営難、事業継続の困難から廃業や合併、合流があるでしょう。児童クラブも、それに伴う地殻変動が予想できます。

 事業規模の小さな児童クラブ運営事業者は、なかなか先が見えない時代に急速に突入するというのが、私の勝手な想像です。一方で、運営をあきらめた小さな児童クラブ(しかも、将来的に入所児童数が見込める地域の児童クラブのみ)や民営化に出された公営クラブをどんどん吸収して、事業規模の大きな児童クラブ運営事業者は、ますます規模を拡大してその基盤を強化していくことになるでしょう。

 実のところ、こういう寡占化は、自由主義経済では当たり前のことです。特別な法律(中小企業分野調整法)で大企業の参入が規制されているラムネ、シャンメリー、豆腐などの限られた事業分野は例外ですが、雪だるまは転がせば大きくなるように、大きな事業者はスケールメリットを生かしてどんどん大きくなるものです。

 ですので私は小さな事業規模の児童クラブは消滅する、あるいは土壇場に追い込まれる前に一緒になるべきだと訴えているのです。しかし、独自の理念を大事にしているからこそ小さな事業規模を守っている、あるいは保護者運営や社会福祉法人等の運営ゆえにほかの事業者と合併、合流する考えが生まれないから結果的に小さな事業規模のままであるとも想像できるので、なかなか先に進まないのも分かります。

 ですからまずは、一緒に活動することから始めましょう。一番手っ取り早いのは、それぞれの事業者で働いている職員が同じ場所で同じ研修を受けることです。「共同研修」の実施です。地域によっては、支援員による職能団体が研究会や勉強会を開いていますが、それとは性質が異なります。職能団体による合同の研修や勉強会は「自分の属するクラブにおいて発揮する個々の技能の改善、進歩」を目的としていると私は理解しています。あくまで支援員、職員個人の研鑽のためにあります。(実際の本当の目的は、例えば指導員連絡協議会といった職能団体の存続そのもが目的、およびその団体が賛同する他の団体の支援、なのでしょうが)

 私が考える合同の研修や勉強会は、同じ理論や技法を学ぶことによって、それぞれの参加した職員、支援員が所属する事業者に持ち帰る育成支援や児童クラブに関する理解が事業者の枠を超えた共通認識となることを期待するものです。児童クラブの事業の中核は育成支援ですから、そこに関する理解が同じ方向性になれば、事業者同士で一緒に事業展開を考えることにおいて問題は減っていくでしょう。それこそ、将来的な事業合流の可能性を高めるのです。

 そこまで先のことを計算せずとも、1つの事業者で5人の職員がいて、その5人に対する研修にかける費用と、5つの事業者から職員が参加して25人になっても、その25人に対してかける研修の費用はさして差が出ないでしょうから、1つの事業者が負担する研修の費用は減らせます。1つの事業者が研修に対する予算を決まった額だけ確保しているなら、1つの研修に充てる費用を減らせればその分、いろいろな研修を受けることができます。それは育成支援の質の底上げにつながることでしょう。

 これも1つのスケールメリットです。

 「いやいや、他の事業者と一緒になったら、私たちが大事にしてきた児童クラブの理念が失われる」というのであれば、ではその理念とやらが、他の事業者も大事にしている理念と、何がどう違うのか、冷静に検討してみてはいかがですか。育成支援の本質は変わらないでしょう。変わるとすれば、それまで運営に関わってきた人の持つ背景事情や地域性による、固有的なものであって、それは育成支援の本質を揺るがすものではないはずです。というか、組織や地域によって育成支援の本質が揺るがされるはずがない。結局は「こだわり」「自分たちの世界」を大事にしたいという素朴な思いでしょう。それはそれで大事にしていけばいいじゃないですか。

 私が危惧するのは、自分たちの理念や独自性を守りたいと1事業者であることにこだわり続けた結果、対応すべき義務や制度に対応できず、その結果として公の事業を営む事業者としてふさわしくないと自治体に判断されて補助金の交付が取りやめられ、結果的に利用者からの利用料だけで運営せざるを得なくなり、事業継続が不可能となる事態が多発する可能性そのものです。そうなったら、自分たちがやっていきたい児童クラブそのものが消える最悪の結果となります。つまり、「自分たちの求める育成支援や児童クラブを実現し続けたいなら、まずは事業者として存続できることが絶対的な目標」であるのです。
(これは広域展開事業者にもいえます。事業規模拡大のために、職員研修の機会の門戸を開放し、地域の小規模な事業者の職員を対象に合同研修会を実施していけば、将来的な事業規模拡大に資することでしょう。私が広域展開事業者の運営者なら迷わず地域事業者に呼びかけて共同の研修や勉強会を催しますね。)

 まずは、職員の研修から一緒に始めましょう。育成支援のこと、法令順守のこと、日本版DBSのこと、児童虐待防止のこと、支援に困難な状況のある子どもや家庭のこと、いろいろな分野があります。地域の事業者が相談して、最初は2つの事業者からスタートして始めていくことだって可能でしょう。来年度からぜひ、チャレンジしましょう。弊会も、その後押しをします。ぜひご相談ください。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説「がくどう、序」を出版します。3月10日の発売を予定しています。埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。リアルを越えたフィクションと自負しています。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子どもたちの生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描けた「学童小説」です。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ご期待ください。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)