将来、放課後児童クラブ(学童保育所)を利用しようと考えている保護者さんへ。「児童クラブのトリセツ」シリーズ1

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。来年4月の放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の入所に向けて申請手続きを済ませている方が多いことでしょう。多くの地域では年明けにも入所の決定通知、あるいは残念な保留通知が届くかもしれません。またいずれ、児童クラブを利用しようと考えている方も多いでしょう。運営支援ブログでは、これから児童クラブに関わることになる保護者さん、関係者さんに向けて、不定期ですが、児童クラブのことについて運営支援の独断と偏見による、分かりやすく(そしてなるべく短く!)紹介するシリーズ「児童クラブのトリセツ」シリーズを始めます。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<その1:放課後児童クラブって?>
 小学生の子どもを受け入れる仕組みです。その子どもは、仕事や他の理由で保護者が家にいない、つまり「留守家庭」の子どものことです。また、地域によって、小学3年生まで、4年生まで、と学年が限定されている地域があります。法律上は小学生が対象ですから6年生まで受け入れる仕組みですが、子どもの数がとても多い地域や、児童クラブを利用したい人の数より受け入れられる施設の数が足りない地域では学年を限定して受け入れていることがあります。困りますね。学年で受け入れを制限している地域は、人口がとても多い大都市(東京都内など)に見られますが、案外、人口が少ない地域(とくに、お役所が直接、児童クラブを運営している地域)にもあります。

<その2:放課後児童クラブと学童保育所は違うの?>
 基本的に同じです。保護者の皆さんは特に気にしないでいいですよ。ややこしいことを書きますと、放課後児童クラブの正体は「放課後児童健全育成事業」と言います。放課後児童健全育成事業を行っている場所が「放課後児童クラブ」となります。また、市区町村が独自に決めるルール(条例や要綱、規則などいろいろな種類があります)で、その放課後児童健全育成事業を行っている場所を「学童保育所」「児童クラブ」「放課後児童会」「留守家庭児童会」などと呼び方を決めていることも普通にあります。例えるならば、「今川焼」を「大判焼」「小金焼」と呼ぶようなものでしょう。

<その3:放課後児童クラブとか学童保育所は、なんのためにあるの?>
 とても大事な大事な問題です。私(萩原)が思うに、児童クラブや学童は、世間から次のように思われていると感じます。「親が留守の時に、子どもを預かってくれる場所」。
 本当は違うのですよ。確かに児童クラブや学童は「子どもを預かる場所」そのものですが、児童クラブの目的は「子どもを預かること」ではないのです。先に書いた、放課後児童健全育成事業は、(子どもを施設に受け入れる、預かった上で)「子どもの健全育成を行う」ことです。そして、その施設というのものは「適切な遊び及び生活の場」であることが必要です。
 つまり、児童クラブは、単純に子どもたちを預かっている場所ではなくて、子どもたちが、職員の適切な関わりのもとに、他の子どもたちと、あるいは一人でも遊んだり生活(=過ごすということ)したりする場所です。イメージとしては「家庭」のようなものです。家庭ですから、遊んだり本を読んだり宿題をしたりしますよね。ただ、ネットゲームができないとか、好きな時間に好きなおやつをチョイスして食べて寝転んで、ということは、ほとんどできません。何十人もの子ども達が集団で過ごすためにある程度の集団行動が求められるので一人一人がまったく自由にということは、なかなかできないことがあります。もっとも、児童クラブに登所(=やってくること。来所)する子どもの人数が少ない土曜日や飛び石連休の間などは気ままに過ごせる時間ができることもありますよ。

<その4:児童クラブに入るのに条件が必要?>
 「その1」で書きましたが、基本的に「留守家庭の子ども」が対象なのが児童クラブです。ですので、「子どもが学校から帰宅する放課後や、夏休みなどの間は日中、留守にしていること」が児童クラブの入所の条件となります。留守をする理由として、働いていたり、親族の介護や看病をしたり、親自身が学校に通っていたり、ということが必要です。また、「子育てが困難な状況にある保護者」の子どもも入所の対象となります。ひとり親である場合や、保護者に障がいがある場合などです。例えば仕事の場合、「週に3日以上働いていること」を条件にしている地域が多いです。
 また、保護者が日中に留守であっても、同居している祖父母が働いていない、あるいは働いていない親族が近くに住んでいる場合は入所の条件に当てはまらないこともあります。
 このあたりは、市区町村ごとにルールを決めています。日本全国すべて統一した基準はありませんから、将来、自分の子どもを児童クラブに入所させたいと考えている保護者さんは、「必ず」事前に調べておきましょう。市役所、区役所、町村の役場、あるいはお住まいの地域で児童クラブを運営している会社や団体に、問い合わせておきましょう。

<その5:必ず入れる児童クラブがあるって本当?>
 本当です。いわゆる「待機児童」(=児童クラブに入所できなかった子ども。新1年生だけでなく新4年生や新3、5年生にもあります)を0人としている地域のうち、「何が何でも、児童クラブに入所希望の子どもは絶対に入所させる」と決めている地域があります。そのような地域では児童クラブの待機児童は生じません。保護者には安心ですね。ただし、とにかく入所させてしまうので、施設に子どもがギュウギュウ詰めである状態であることも多いのです。「保護者の安心を得る代わりに、子ども(と、そこで働く職員)の落ち着いた環境を犠牲にしている」という関係でしょうか。
 もう1つ、実は、児童クラブではない機能を持たせた「児童クラブもどき」の仕組みがあります。いわゆる「放課後全児童対策事業」と呼ばれるものです。これは、地域によっていろいろな呼び方があります。内容は、その小学校の子どもで希望する人は全員、「まず午後5時ごろまでは小学校内、あるいは指定の場所で過ごすことができる」もので、さらに「事前に申請した人は、午後6時や午後7時ごろまで、保護者が迎えに来るまでその場所で過ごすことができる」制度です。多くの地域で行われています。こういう地域では基本的に待機児童は出ません。ですから「小1の壁」も無いのですね。これもまた、保護者には安心ですが、その場所が子ども達でギュウギュウ詰めの場合が多く、子ども(と、そこで働く職員)にとっては、なかなかに過酷な環境であることが多いのです。困りますね。

※このシリーズ、不定期に掲載していきます。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を描いた作品ではありません。例えるならば「大人も放課後児童クラブで育っていく」であり、そのようなテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)