学童保育所は、質の高い育成支援が継続して行われることが必要。営利企業運営ではどうしてもこの点が不安!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。
前日に続き、営利企業(株式会社のこと。しかし、形式は非営利法人でも、理事長など役員陣が、がっぽり報酬を確保する社会福祉法人のような形態も、事実上は営利企業ですね)による学童保育所の指定管理者運営を取り上げます。本日はとても分かりやすいテーマ。学童保育という補助金ビジネスを手掛ける営利企業が学童保育所を運営することに伴うリスク、それはつまり「突然の閉鎖で子どもの行き先が無くなる」ということです。利用していた学童保育所が急に無くなるなんて、そんなひどいことが、過去に起こっているのです。
2008年(平成20年)10月30日、首都圏で合計29カ所で学童保育所や保育所を運営していた企業が倒産しました。その結果、学童保育所も保育所も一斉に閉鎖されたのです。30日の夜にこの情報が保護者にも伝わり始め、翌31日には利用世帯に企業が文書で閉鎖を通知。そして11月1日には完全に閉鎖されました。つまり、多くの保護者には、31日に「今日をもって閉鎖します」と伝えられたわけです。当時、私は子どもが小学1年生で学童保育所の利用が半年に過ぎない単なるイチ利用者でしたが、このニュースは鮮明に覚えています。
認可保育所の場合は行政が責任をもって入所児の転園先を見つけたようですが、無認可扱いの保育所の場合は、保護者が自力で転園先を探すことになり、困惑と怒りの声が報道で伝えられました。しかし、法律で手厚く守られている保育所でその程度ですから、学童保育所を利用していた保護者は途方に暮れたという話が伝えられていました。
前日のブログで、学童保育の補助金ビジネスはオイシイと私は書きました。この事案は2008年ですから、今よりはるかに補助金単価が低いころ。それでも、当時から学童保育の営利企業進出は行われていました。なお、この企業の倒産の原因はよく分かりませんが、報道では、急激な事業拡大による資金繰りの困窮と企業の経営幹部がコメントしていますから、事業計画の失敗だったのでしょう。職員の給料遅配もあったとのことです。
このことは、営利企業の場合、学童保育事業そのものではなく他の事業部門が引き起こした要因であっても、その企業の経営状態が悪化すれば学童保育事業の閉鎖、企業本体の倒産などで利用者が学童保育を利用できなくなる事態が起こりうるということを示しています。公営の場合は倒産は起こり得ませんし、閉鎖にしても数年前に通知されるでしょう。民営でも非営利法人は確かに破たんのリスクはありますが、非営利法人はほとんどが学童保育のみを事業としている法人であって、他の要因で法人運営が破たんするリスクは極めて限定的です。となれば、急に事業継続が破たんすることは、かなり起こりえないでしょう。もちろん、ゼロではないですが、営利企業と比較すればそのリスクは低い、と言えます。
また、関西地区の大手私鉄が開設した民間学童保育所(放課後児童クラブではない、利用者の利用料を収入源として運営する学習支援系の学童保育所)が運営から撤退したというニュースもありました。2020年度をもって閉鎖されたのです。新型コロナ流行を受け、事業の拡大が思うように進まなかったことが理由とされています。こちらの場合は、約半年前に利用者に通知され、事業者は近隣の民間学童保育所への転園を紹介し、また職員はグループ会社での雇用も紹介するなど、さすがに大企業なりの手当はしたようです。
上記民間学童保育所の場合、むしろ学習塾と近い位置付けですし、補助金を受けている学童保育所とは状況が異なりますが、営利企業の場合は企業(事業者)の倒産、破たんや経営方針の変更よって施設の閉鎖が現実として行われる、それも突然に行われることがある、ということを、多くの保護者、そして行政担当者はしっかりと認識してほしいと私は思います。
以上は事業者の倒産や経営方針の変更による学童保育所の閉鎖リスクの事例紹介でした。次に、学童保育所の事業者が起こした事案、トラブルについて触れます。
この点では今年、2023年7月から相次いで明るみになった東京都内の学童保育所や児童館等の運営事業者による不正が真っ先に挙げられます。こちらは非営利法人による、配置人員の虚偽報告による補助金の不正受給でした。都内のいくつかの区で同種の虚偽報告が発覚しました。学童保育の運営に関し、世間からの信頼を失墜させた極めて残念な事案でした。当然、この事業者は以後、虚偽報告を行った地域では指定管理者選定の応募の資格は与えられませんし、虚偽報告を行っていなかった地域でも、以降に行われる再公募に応じても選ばれる可能性は低くなると思われます。
また、2021年3月には北関東の県庁所在地の学童保育を巡って、学童保育の運営を事業の中核としている企業が12の学童保育施設を運営する指定管理者を取り消されたことに端を発した行政と事業者の対立という事案がありました。これは、事業者を指定管理者とする予算案が議会委員会で否決されたことで、市が指定管理者の指定を取消したところ、事業者はそれを不服として仮処分申請して対立が続きましたが、その後、双方が和解し、指定の取消しではなく、同年6月の議会にて指定管理期間が終了する内容の議案を提出し、その採決日に終了させるという、いわば事業者のメンツを立てた形での決着になりました。
この事案は事業者の事業内容に議会委員会で不安が集まったことが発端だったようです。報道(産経新聞2021年3月16日19時35分)によると「職員採用に際し説明が二転三転するなど苦情が多数あり、今年に入り市が指導などを続けてきたが改善されなかった。同社が担当予定だった12施設は計約130人のスタッフを必要としているが、開設まで2週間と迫った現在でも正式契約が約1割という。」(引用ここまで)。
またこの事案は、指定管理者の選定が行われたとしても、最終的にはその指定管理料などを盛り込んだ予算案が議会や所管委員会で否決されれば、振出しに戻る可能性がある、という前例にもなっています。
学童保育も日々、継続的に、子どもが利用して職員が勤務をしていれば、まさに事業、ビジネスです。事業、ビジネスには、その世界に当てはまるルールがあり、作法があります。事業者は、経営がうまくいかなければ倒産したり、経営方針を変えます。当然すぎるほど当然です。学童保育事業が順調でも、ほかの分野で損失が膨らんだり財務内容が悪化したりすれば、その事業者が突然、学童保育事業を閉鎖したり手放したりすることは、当然ありうることです。その際、途方に暮れるのは、保護者であり、その市区町村です。
また、基本的に営利事業ではない学童保育を事業の中核に据えている場合、事業者が利益を確保しようと躍起になればなるほど人件費を削ることにならざるを得ず、結果、上記の北関東の例と同様、人が集まらず事業の実施が遂行できない事態になる可能性があるのです。この場合も、最終的には、迷惑をこうむるのは子どもであり、保護者であり、そして市区町村の学童担当者です。
もちろん、非営利法人だから業務運営上のリスクが低いとは決めつけられません。上記の都内の虚偽報告は業界でも有数の規模の非営利法人でした。保護者会由来の非営利法人は、逆にビジネスの作法を知らず、コンプライアンスにも意識が低いので別の意味の運営リスクがあります。が、突然の破たんによる閉鎖というリスクの点ではさほど高くなはありません。
学童保育所を利用する保護者の人、事業者を選ぶ市区町村は、「継続的に、安定的に、質の高い(=子どもが通いたいと思う空間と場所であること)学童保育を運営できる事業者はどの事業者なのか」という観点を最優先に、学童保育の運営事業者を選んでほしいと私は思います。
どのような視点であれば継続して安定して学童保育所を運営できるのかについては、「あい和学童クラブ運営法人」がお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。
育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!
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