学童保育所は、保護者のニーズ、要望にしっかりと向き合おう。唯我独尊では、いずれ衰退します。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育と呼ばれる世界の中でも、放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)は、法令でその存在根拠が示されている、とても重要な存在です。子どもの育成支援と、働いている保護者の就労などを支えてその子育てを支援する役割です。従事している人は、子どもの育ちと保護者の支えという使命にプライドを持っています。それはとても素晴らしい事です。
 ですが、そのプライドが、唯我独尊になってしまったら、どうなるのでしょう。

 学童保育所を利用する保護者の多くは、働きながらの子育てです。日常生活で、時間的な余裕があるとは、とてもいえません。仕事と家事、育児を同時並行で行う日常は、とても忙しいものです。そんな保護者に、いまだに多くの学童保育業界は、「事業の運営」という負担をかけているケースがあります。
 その負担とは、運営にまつわる種々の業務、例えば各種料金の徴収や会計業務、補助金の算定根拠となるデータの収集と整理と行政への提出、さらには大規模化した場合の学童保育所分割に向けての物件探しなど、かなり多くの分野に及んでいます。当然、保護者にそのような業務を託している学童保育所では、常に保護者からの「どうして、そこまでやらなければいけないの?」という疑問の声が満ち溢れています。

 この声に対して「保護者が、子どもの育ちに関わるのは当然。学童保育所は、保護者が運営に参画してこそ、子どもの育ちにとって理想的な学童保育所になるのだから」というのが、従来から続く保護者運営を求める学童保育の世界の回答です。でも、果たしてそれは、今の時代、正しいのですか?

 国が勧めている学童保育の整備形態は、放課後児童クラブよりも、圧倒的に「全児童対策事業」と呼ばれる、放課後子供教室と放課後児童クラブが一体化したシステムです。「小学校の余裕教室を活用し、退職教員などのボランティアを中心にした、児童であればだれでも利用できる、子どもの居場所」です。
 利点としては、「基本的に待機児童がない」「利用料が傷害保険料や工作代などの実費分のみで低額」、そして何より「保護者が運営に参加を求められることが無い」ということです。

 実際、全児童対策事業が大々的に実施されている地域の保護者からは、かなり好評です。SNSでも、歓迎する意見が圧倒的です。

 従来型の放課後児童クラブ(育成支援系の学童保育所)で、保護者が運営に参画しなければならない地域からは、毎年のように、保護者の労力負担解消を求める声がメディアで伝えられるのと、実に対照的です。

 このことを、学童保育業界は、真剣に受け止めているのでしょうか?

 従来型の学童保育所の業界は、全児童対策事業について否定的です。確かに、全児童対策事業には、「子どもの育ち」を重視するような施策は、見られないと言ってもいいでしょう。いろいろな体験をさせたり勉強をさせたりしていますが、子どもたちが主体的に物事を考え、子どもたちが遊びながら社会性を養っていくという要素は、現在主流となっている全児童対策事業には、ほとんどないと言っていいでしょう。「だから全児童はダメ。本当に子どもにとって良いのは、学童保育所なんだ」と、自分たちの優位性にただ浸っているだけになっているように、私には思えます。

 いいですか、保護者の圧倒的多くは、保護者参画が必要な学童保育に「うんざり」しているのです。ごく一部の保護者が賛同したとて、実際に自分の労力をボランティアで提供することには、当然、二の足を踏みます。ある一時期には参画できても、通年において運営に参画するのは、やはり負担が大きい。そういう保護者の声がたくさん上がっているのに、学童保育業界側は「保護者が参画してこそ、良い学童保育所ができるから、保護者はしっかり頑張ってください」と言っている。

 その状態の帰結は、当然ながら、行政による「保護者負担が無い形での、子どもの居場所作り」の推進なのです。それが、全児童対策事業という形で、全国のあちこちですでに実現しているのです。

 この時流の流れに対する学童保育業界の対応は、まったくといっていいほど、非現実的です。なぜなら「私たちがやっているこのスタイルこそ、子どもにとって良いのだから」と、理念だけを声高に主張して保護者に押し付けているだけだからです。

 今、学童保育をめぐる情勢は急激に変わりつつあります。この時代の流れの中で、保護者負担が厳しい地域においては、急激に全児童対策事業が拡大するでしょう。その結果、従来型の、業界が素晴らしいと言っている学童保育所を選択する保護者は、急減するでしょう。そうなれば、施設数が減るので雇用が失われます。
 なにより、学童保育業界が大事にしてきた「子どもの育成支援」を実施する機会と場所が、失われることになるのです。どうして、そんな単純なことに、気が付かないのでしょう。私には不思議です。

 このことへの対応は2つしかありません。
 まず1つ目は、事業運営に対する保護者の負担をゼロにすること、です。保護者が、全児童対策より学童保育所を選択するような事業のスタイルにするしかありません。
 2つ目は、全児童対策事業を自ら行うように行政に働きかけることです。全児童対策事業の中で少しでも育成支援の理念を反映できるように、育成支援の専門職が、全児童対策事業の場で従事できるようにするのです。

 特に1つ目の対策は、やろうと思えばすぐに取り掛かれます。

 学童保育が今後も命脈を保つためには、保護者のニーズをしっかりと汲み取り、時代の流れを読み誤ることなく、事業運営をすること。学童保育所の運営は「ビジネス」です。事業が衰退することがないように、ニーズを把握して安定かつ継続的に存在できるための事業計画を立てることを、もっと真剣に考えることが必要です。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所をめぐる構造的な問題について、その発信と問題解決に対する種々の提言を行っています。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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