学童保育所の「あり方」が問われています。育成支援の場であるか、単なる居場所に過ぎない場になるか。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 フェイスブックの「学童保育応援団」がアップした読売新聞の記事で、岡山市の学童保育待機児童について報じているのを読みました。2024年度は今年度の3倍以上となる600人以上になる見込み、とのこと。記事は10月12日5時にアップされているもので、一部を引用すると、「市が来春小学校に入学する子どもの数や各施設の利用率などをもとに推計したところ、申請者は1万50人となり、新たに増やした定員計約330人分を計算に入れても600人分足りないという」とのことです。

 岡山市だけではないでしょう。おそらく全国で、同じような状況だと私は考えます。つまり、小1の壁は、2024年の春は、いっそう高く分厚く新1年生の保護者の前に立ちはだかるのです。

 私は、学童保育、この場合は放課後児童健全育成事業たる放課後児童クラブですけれども、国民が必要とする限りは利用が出来なければならない基礎的な児童福祉サービスと考えています。法令上は「事業」であって法定任意事業に相当するのでしょうが、150万人近い小学生児童が利用していることを考えると、保育所と同じように市区町村が事実上、義務として行うべきであると私は考えます。

 そうであるなら、待機児童がますます増えることは、国民の児童福祉サービスを享受する権利を侵害することですから、国や地方自治体は全力を挙げて待機児童の解消、すなわち放課後児童クラブの整備を進めなければなりません。ところが、現実には、放課後子供教室と放課後児童クラブとの一体型や、さらにそれを融合させた「全児童対策事業」を推進することで対応するほか、なくなっています。小学校の余裕教室を利用する放課後子供教室や全児童対策事業の方が迅速に、かつ(これが重要)低コストで整備ができるからでしょう。

 さて子ども家庭庁は、放課後児童健全育成事業を、こどもの居場所づくり事業として位置づけています。その「居場所」の意味合いを考えると、「居場所としての機能」が「育成支援を行う場としての機能」より優先度が高いことがうかがえます。待機児童の急増が、さらに「なんとか居場所を早急に用意せねばならない」というプレッシャーを後押しします。とにかく、居場所を作らないと待機児童が解消しないからです。

 一方、2022年に改正された児童福祉法で新たに導入されることになる「児童育成支援拠点事業」が気になります。解説資料にはこうあります。
児童育成支援拠点事業(学校や家以外の子どもの居場所支援)
・ 養育環境等の課題(虐待リスクが高い、不登校等)を抱える主に学齢期の児童を対象
・ 児童の居場所となる拠点を開設し、児童に生活の場を与えるとともに児童や保護者への相談等を行う
・例)居場所の提供、食事の提供、生活リズム・メンタルの調整、学習支援、関係機関との調整 等

 ニーズが集中して整備もままならない放課後児童クラブの役割を新たに設置する事業に振り分ける狙いがあると私は考えます。さらにもう1つ、「親子関係形成支援事業(親子関係の構築に向けた支援)」も新設されました。
こちらは、以下の事業を行います。
➢・要支援児童、要保護児童及びその保護者、特定妊婦等を対象
➢・親子間の適切な関係性の構築を目的とし、子どもの発達の状況等に応じた支援を行う。
・例)講義・グループワーク・ロールプレイ等の手法で子どもとの関わり方等を学ぶ(ペアレントトレーニング) 等

 これも、放課後児童クラブも対象としてきた要支援児童とその保護者への支援を担う新規事業です。やはり放課後児童クラブの任務を振り分けられる新規事業であると私には感じられます。

 これらのことを考えると、私は、国の狙いとして放課後児童クラブは「子どもが、その場で、とにかく過ごせればいい、文字通りの居場所であればいい」と考えているのではないかと想像するのです。そうすることで、有資格者である放課後児童支援員の配置は法定任意にすることができ、施設の整備も専用区画や静養室といったコスト増になる部分を削減することができ、待機児童の増減に対応した施設の整備も、スペースの確保程度の作業に収まるために容易になるからです。

 こうなると、待機児童を急速に減らすことが可能になるでしょうが、放課後児童クラブはそれこそ「単なる子どもの居場所」に過ぎなくなるわけですから、放課後児童支援員をはじめとした職員は、「子どもの見守り」が主な任務となり、学童保育業界が求めている専門職への理解どころではなく、「誰でもできる仕事」として扱われることになるでしょう。当然、そこには、高い賃金など望むべくもありません。放課後児童支援員も、単なる形式的な資格に朽ち果てることでしょう。

 私には、今この時点、学童保育の命運が定まりつつあると思えてなりません。学童保育所=放課後児童クラブが、子どもの育ちを大事に、育成支援を最重点の任務として存在感を増そうとしてきた中で、国から「はしごを外された」ことになるのではないかと思っているからです。

 いま、学童保育業界は、「私たちは育成支援を行うことが任務である」ことを引き続き国や社会に確認を求め続けることに加え、仮に私が想像するような残念な展開に進んだ時に備え、単なる居場所と化した場所で働く職員の待遇や子どもの健全な育ちをどう保障していくのか新たな方策を考え始める時に来たのだと、私は考えます。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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