学童保育所にはどうして盆期間の閉所があるのですか?
学童保育所(この場合、放課後児童健全育成事業を行う学童保育所、すなわち放課後児童クラブのことを指すとします)には、8月のいわゆる盆期間に閉所して子どもの受け入れを行わない施設があります。その数はかなり多く、学童保育所に入所してから「お盆期間、学童やっていないの?どうしよう」と頭を抱える保護者はきっといるでしょう。
まず、盆期間であろうが年末年始であろうが、「放課後児童クラブを開いてはならない」という決まりやルールは、一切存在していません。つまり、盆期間にクラブを開く、休むの判断は、クラブを設置している立場と、クラブを運営する立場のそれぞれの組織が判断をしているということです。
閉所するという判断は、主に、「盆期間中は利用者が少ない」からです。しかしこれは、本来ならおかしいことで、公共の児童福祉サービスである放課後児童クラブですから、利用を希望する者が1人でもいるならば、その立場に寄り添うことが当然です。ところが、利用希望者が少ないから、少数者の立場をあえて配慮しないという判断をしているのが、今の児童クラブの夏季盆期間閉所といえるでしょう。
ところで保育所は、いわゆる「協力保育」(なるべくなら家庭で保育してほしいが、仕事等でどうしても保育が必要なら保育所の登所登園は構わない)を行って盆期間を対応する例があります。保育所は、保育を必要とする子育て世帯がいる限り、自治体は設置して保育サービスを提供する義務があります。ところが学童保育には、その義務がありません。なぜなら放課後児童クラブは保育所と違って、保育サービスを自治体が提供する義務がないからです。あくまでも任意の「放課後児童健全育成事業」ですから、学童保育を必要とする子育て世帯がいても、法的には、対応する義務は誰にもありません。これは、学童保育がもともと、必要とする保護者達が自主的に設置運営して誕生したことに端を発します。保護者同士でお金と労務を出し合って学童保育所を運営していた時代、夏の盆期間は「親は仕事の休みを取ってください。学童を利用する子がいなければ、クラブを開かないで済みます。電気代、水道代が安くなりますし、何より、職員に支払う賃金が閉所日分だけ、安く抑えられます」という事情があったものだと推察できます。
現在の放課後児童クラブは、子育てに必要不可欠な児童福祉サービスです。夏季の盆期間閉所は、どの地域でも早急に解消されるべきでしょう。もちろん、全てのクラブが開所することでなく地域においていくつかのクラブが開所する、いわゆる拠点開所、拠点保育でも構わないので、盆期間でも働く子育て世帯に、学童保育のサービスを届ける体制を確保することが、なにより重要でしょう。尚、「盆期間ぐらい子どもを休ませて。親は子どもと一緒に過ごして」と、よく児童クラブの職員側から意見が発信されますが、自分たちの職責を棚に上げた無責任な意見です。盆期間でも仕事があり、社会活動に貢献している人が安心して勤められる様に子どもの支援、援助を行うべき立場の者が、「子どもが学童を利用しないように保護者は仕事を休んでください」とは言ってはなりません。言いたいならそれは保護者に向けて言うのではなく、「保護者が、休みたいときに安心して仕事を休める社会になってほしい」と、社会に向けて発信するべきでしょう。
(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)