学童保育の運営事業者さん、規則規程類はそろっていますか?日本版DBSに対応する厳格な情報管理規程が必須!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 現在、国会(第213回通常国会)の会期中です。会期は6月23日まで。私が気になっているのは学童保育(この場合、放課後児童クラブ)関係の予算と、「日本版DBS」です。法案は提出されたのでしょうか。国会での取り扱いの流れがよく分かりませんが、報道がほとんどないので、一体どうなっているのか気になっています。

 最近の報道では、学童保育は任意の扱いになっています。朝日新聞デジタルの有料記事(2024年1月25日5時00分)を引用します。
「日本版DBSでは、事業者が性犯罪歴を確認した場合、仮に雇う場合でも配置転換などの措置が求められる。学校や保育所については確認を義務化する。一方、放課後児童クラブや学習塾などは、任意の認定制の対象とし、認定事業者であることの広告表示を可能にする。」(引用ここまで)
 NHKニュースの記事(2023年12月28日 16時53分)です。
「政府は、子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」を導入するための法案の概要をまとめました。学校や保育所などに、教員や保育士の性犯罪の前科を国が発行する書面で確認するよう義務づけるなどとしています。(中略)それによりますと、学校や保育所、幼稚園などは、教員や保育士に性犯罪の前科が一定の期間内にあるかどうか国に問い合わせ、発行される書面を確認し、前科がある場合は子どもと接しない業務に異動させるなど、被害の防止措置を講じるよう義務づけるとしています。放課後児童クラブや学習塾など民間事業者に対しては、被害を防ぐ体制が確保できていると国が認めれば、学校などと同様に性犯罪の前科の確認が義務づけられる一方、国から認定された事業者であることを広告などに表示できるようにするとしています。」(引用ここまで)

 私が重要と思う点です。
・放課後児童クラブは、被害の防止措置を講じる努力が求められる。
・「被害の防止措置が万全です」と国から認定された事業者であるかどうかが、放課後児童クラブの事業者として市区町村や保護者から積極的に選択される重要な要素となりえる。

 子どもたちを性犯罪の被害から守るために、学童の事業者が積極的に日本版DBSに取り組むことは必要です。制度にいろいろ不備はあるでしょうが、それは随時改善してもらうとして、再犯率が高いと言われる性犯罪の前科がある人物が学童保育の世界で働くことへのハードルを高くすることは必要だと考えます。(もちろん、罪を償った人が過去の行為によって永遠に権利を制限されることは基本的人権において問題でもあると私は考えます。子どもを性犯罪の被害から護ることと、人であれば必ず守られる権利との兼ね合いは、社会で議論を深めてその基準を決めていただきたいと思います)問題は、この日本版DBSを学童保育の事業者が導入するとしたら、被害の防止措置、その全容はまだよく分かりませんが、重要と私が考えるのは、対象者が存在した場合の措置に関するルールの策定と、対象者を含めて全職員の性犯罪歴を厳重に管理するためのルールの策定です。

 これらは、日本版DBSの導入を目指すことが求められる学童保育の事業者であれば、任意団体である保護者会も含めて、策定が必要となるルールでしょう。すでに、ほぼすべての学童保育の事業者には、利用する子どもや世帯に関する個人情報を管理するための規則規程類が定められているでしょうし、職員のマイナンバーを管理するためのより厳しい情報管理規則規程類もまた、整備されているでしょう。これから策定が必要となるはずの、日本版DBSに対応した情報管理の規則規程類は、それら今まで整備されていたものよりはるかに厳しい情報管理と情報の運用が求められるはずです。個人の犯罪歴はその有無だけですら極度に高度なプライバシー情報です。そのような情報が、安易な取扱いで事業者の中で安易に広がってしまう事態は絶対に許されず、仮にそのような事態になってプライバシー権を侵害された者は、たとえ以前に性犯罪歴の前科があろうがなかろうが、ずさんな管理ををした事業者に対し損害の回復を求める法的措置に出ることが可能でしょう。

 実際にどのような厳重な情報の秘匿措置が求められるのか、今後、国から何らかの教示があるといいのですが、そうならないことも可能性として考え、これまでとは比べ物にならない基準での厳しい情報管理体制を、ルールにのっとって構築しなければなりません。

 「いや、うちは1クラブだけの小さな事業者だから」とか「保護者会運営だから」という理由で、日本版DBSを導入しないという選択を考える事業者があるかもしれません。それは、私としては、残念な対応と考えます。確かに、過去を含めてすべて承知している身近な人しか採用しないという小さな事業者や保護者会なら、一般に広く求人する事業者よりも、性犯罪歴がある人物を採用する可能性は低いでしょう。だからといって、制度として、子どもを性犯罪の被害に遭う可能性を低くする制度の導入をためらう理由にしてはならないと私は考えます。

 何より、最大の理由ですが、「事業者として管理運営体制が整っている営利の広域展開事業者は当然、日本版DBSへの対応完備を誇るであろう。それが市区町村や保護者からの信頼を集める重要な要素となり、日本版DBSへの対応が遅れている事業者と比べると、指定管理者の選定で確実に有利になる。ますます、営利の広域展開事業者はそのシェアを拡げることになる。日本版DBSへの対応の差が、今後の学童保育運営を可能とするかどうかのカギとなる可能性がある」ということです。

 日本版DBSへの対応において認められるという広告で、「当社は、国が認定した、子どもを性犯罪歴のある人物から守る日本版DBSの対応を完備しています!安心してお子さまをお預かりいたします」と大々的にPRされた場合、多くの保護者は「それは安心だ」と思うのは当然です。市区町村も当然、高く評価します。規則規程類が整わず、日本版DBSの認定が取れない、あるいは様子見をする小さな非営利法人は、今後、この日本版DBSの対応1つをとっても指定管理者の公募において競われる得点競争において不利になるということは、充分に起こりうるのです。

 もちろん、子どもを性犯罪の被害から守れる事業者が学童保育を担うべきですから、それにおいて営利か非営利かどうかは本質的な問題ではありません。ただ、子どもの育ちを第一にクラブを運営しています!と誇らしげにうたうのであれば、子どもの最善の利益を守る仕組みの一つであろう日本版DBSへの対応について積極的に取り組むべきです。そして、日本版DBSの欠点も含めてしっかりと調査研究し、今後の取り組みについてモデルケースを提示するなど、育成支援を大事にしている学童保育の業界は、多くの中小規模の事業者が、この制度に適応できるようにしなければなりません。法案が成立するのかどうかもまだ分かりませんが、大至急とりかかるべき重要な課題であると私は考えます。むろん、弊会としても情報収集に努め、現状においてどのように対応するべきか調査研究していきます。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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