学童保育の職員(指導員)が続かない理由は?
学童保育所の職員(一般的に「指導員」と呼ばれることが多い)は、仕事が長く続かないと思われています。実際、短い期間で離職する人が後を絶ちません。
「令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業」の「放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査」では、平均勤続年数が6.2年、平均年齢が47.0歳となっています。保育士の平均勤続年数は約8年と言われていますので、仕事がきつくてすぐに職員が辞めてしまいがちという印象のある保育士よりも、もっと短い期間で離職してしまうのが学童の職員です。
実際の現場はどうでしょう。実のところ、ごく少数の長いキャリアを持つ職員がいて、新しく学童の仕事に就いた人のうちおよそ8割が3年以内に退職、というところが一般的ではないでしょうか。3年以内に退職する者の半数以上は1年以内に退職というのが、運営支援からの印象です。つまり、ごくごく少数の者は長続きするが、およそほとんどの人が3年続かない。平均勤続年数が6年というのは、ごく一部のキャリア数十年の職員が引き上げている数値であって、現場の印象としては3年もいれば職員の顔ぶれはほとんど変わる、というようなものが実感でしょう。
続かない理由は明確です。「低賃金」であり、得られる給与の額と、仕事の量と責任が釣りあわないからです。学童で働く多くの正規職員(常勤職員)は、キャリア数十年ともなれば400万円台に届く人もいるでしょうが、多くは300万円台前後。採用されて数年の若手は200万円台です。とても家庭を構えて暮らせる年収額ではありません。一方、仕事そのものは、子どもの生命身体を必ず守るという重大な責任は当然として、子どもの育ちを支える「育成支援」と、保護者の「子育て支援」の2つが任務です。ただ子どもの子守り、見守りをして子どもを施設で預かっているという単純な仕事ではまったくありません。むしろ、子どもと保護者と濃密なコミュニケーションを交わしつつ相手の成長を支える、高度なコミュニケーション労働であり対人支援の仕事です。にもかかわらず低賃金であり、多くの職員がすぐに消耗しきって離職に追い込まれてしまうのです。これを「やりがい搾取」と呼んでいます。
子どもが好き!で入職する人が多い業界ですが、現実の子どもの荒れっぷり、保護者の無関心ぶりに嫌気がさして辞める学童の職員も当たり前にいます。大変厳しい労働だということを社会全体認識し、仕事に見合った報酬を保障する社会に変わっていかないと、いずれ学童保育所で働く人を探すのは大変困難になるでしょう。実はもう、そうなりつつあるのです。
(運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)